2017年11月22日

きりもみ(五話)

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五話 サディスティック


 性奴隷の入り口に洋子を立たせてやったというだけで胸のつかえがおりたわけではなかったが、智江利の手に握られたバイブの責めに激しく反応する洋子を見ていて、しばらくは智江利女王のお手並みを拝見しようと思った美希。あれほどSM的な美文を書くのだから、智江利が思う性奴隷とはどういうものかを知っておきたい。
  こういうことのはじめてな美希には怖さもあった。限度を知らない。智江利なら知っていると考えたからだった。
 「頭がおかしくなるほどいいでしょう。でもダメよ、イカセたりはしないから」 激震するバイブを止めて無造作に抜き去って、それでも腰を振る洋子の尻を手でパシンと叩くと、智江利は美希に目配せして柱越しの手錠を外し、次には綿の黒いロープを手にすると、手首で縛って両手を上げさせ、古い家の天井裏に交差する太い梁にロープの尻を投げ上げて、両手を上にヌードをのばしたポーズで吊ってしまう。
  そのときすでに、なかば逝きかけた洋子はとろんと目を溶かしていて、まっ白な総身がわなわな震え、綺麗な尻肉が波紋を伝えて波打っている。

  これが洋子の正体。しかし美希にとっては見下すよりも可愛い姿に映ってならない。
  智江利は、いつものやさしさをよそに、目は厳しく、なのに言葉だけは穏やかだった。
 「おまえは捧げたいって言ったそうだね?」
 「はい、女王様」
 「捧ぐということ、そうやすやす言えたものじゃないってことを教えてやる」
  女声トーンの男言葉。演劇の中の台詞のようにも聞こえ、智江利の演技力に感心したし、智江利がこの後どうするかも確かめておきたかった。
  智江利はM性が強いはず。それとサディズムが結びつかない。これから智江利とつきあっていく上でもスタンスを見極めておかないと。美希の中にそうした計算もあったからだ。
  縛るにしても手首だけ。ネットで見たような麻縄でなくソフトなカラーロープ。そんなものは手芸屋にだってあるものだし、バイブぐらいならオナニーするのに持ってる女もいるはずで。それともSMチックな道具はこれからなのか。そうしたものが用意してあるのか。もしも智江利がそんなものを並べだせば私だってここに来るのは危険かも・・美希はしばらく監察しようと考えた。

  両手首で吊られたしなやかな肢体。つま先立ちほど厳しくなくても踵が少し浮いている。子を持つ母の裸身はやっぱり違うと美希は感じた。
  そうやって洋子を吊っておき、智江利は前に立ってにやりと残忍に微笑む。恐怖の演出。それもマゾを打ちのめす計算なのか。智江利はふっくらふくらむとまでは言えないBサイズの乳房の先でツンと尖る二つの乳首を指先でつまみ上げ、こりこりとコネるようにして、恐怖に引き攣った洋子の顔を覗き込む。
 「ほうら気持ちいい。気持ちいいね!」
  豹変する強いトーン。
 「はい、女王様」
 「捧ぐとはNOの封印、何をされてもYESだからね」
 「はい、女王様」
 「だったら本気で躾けていくよ。NGなし。私のSMはペットを飼うことじゃない。きゃーなんて悲鳴は悲鳴じゃない。甘えてんじゃないよ、わかったね!」
 「はい、女王様!」
  面白くなってきた。智江利はどうやらマジのよう。美希はゾクゾクするような不思議な感覚が下着の底から衝き上げてくるのを感じていた。

  S女らしい口ぶりでさんざん洋子を怖がらせ、智江利は床に散った洋子の服の中からブラとセットの青い花柄のパンティを手にすると、丸めて口に突っ込んでガムテで声を封じてしまう。奴隷の眸色が変わってくる。怖いのだろう。バイブの快楽に溶けかけた眸がキリリと焦点を結んでいる。
  洗濯バサミを手にする女王。だけどそれにしたって金属製の恐ろしげなものじゃなくギザギザの浅いプラのもの。バネがどれほどのものかは想像がつく。よくコネて勃たせた乳首の左、右と、開いた嘴で捉えて閉ざし、ガムテで封じられた口から「むぅ!むぅ!」と痛みを訴えるくぐもった声が漏れだした。
 「痛みから逃げるから痛いんだ。愉しむように胸を突き出し受け入れる!」
  洋子は「はい」と応える代わりに深くうなずく。
  ネットで見たSMなら、ここで鞭が登場する。そう思って見ていると、智江利が持ったのはベルト。女物のジーンズに合わせる革の厚い、しかし幅の狭いもの。バックルを手の中に革を巻いて長さを合わせ、ヒュンと空打ちをしておいて、横に立ち、奴隷に命じた。
 「尻を上げる!」
  クイと反って、まっ白な双丘が突き出される。パシパシとなだめ打ちを二度浴びせ、大きく振り戻された茶色の牛革がパァンといい音をさせて尻肉にはじけた。

 「うぐぅ!」
  尻を引き、黒い毛群が飾る恥丘を突き出して身をよじり、そのとき左右の洗濯バサミをぶらぶら揺らしてもがく洋子。二度三度とベルト打ちが続いていくと奴隷の尻に赤い鞭痕が浮いてくる。
  まるで傷のない白桃のような尻に見る間に惨い条痕が増えていき、背を打たれ、腿の裏を打たれ、また尻を強打されて、奴隷は脚を折って身をよじり、背を打たれて反り返り、尻を打たれてデルタを突き上げ、泣いて化粧を崩してしまい、ひどい顔になっていた。
  いい気味だわ、ザマミロ!
  美希は積年の恨みが消えていくのを感じていた。
 「ほうらもっとよ、だんだんよくなる!」
  パァンと尻に鞭が弾け、「ぐわぁ」と獣の声を上げ、なのに毛群の奥底へ指を入れられ嬲られて、奴隷はとたんに「ンふ、ンふぅ」とよがり声を漏らし出す。
  背も尻も腿の裏も真っ赤。条痕が重なって奴隷の背面赤一色のありさまだった。
 「さあ美希、出番だよ」
 「ふふふ、うん」

  女王、チェンジ。
  痛みと快楽と狂乱と。頬を火照らせて赤く染める洋子。顔も裸身も汗が浮いて、イキ狂った牝の姿はこんなものと思えるほど堕落している。
  乳首を潰す洗濯バサミの両方をつまんだ美希。ちょっとヒネるようにして顔を覗くと、両目から涙が流れて川となる。
 「嬉しいよね洋子、奴隷は夢だったもんね?」
  うなずく洋子。美希はちょっと不思議に思う。おいおいマジかよ? 信じられない思いがどこかにあって、もしやマジで喜んでる? と思えてくる。
 「乳首痛いよね? 外してあげよっか?」
 「いわぁい、るるして」
  痛い、許して。ガムテで声を奪われて喃語のように言う洋子。どう言っていいのかわからない妙な昂揚を感じる美希。

  二つの洗濯バサミを一緒に開くと、それだけで洋子は「ぐわぁ」と唸るような悲鳴を上げて身悶えする。ぺしゃんこの乳首。可哀想だわ。
  薄型乳首の両方をつまんでやって、ちょっとコネ、力を入れてヒネリ上げる。
 「ぐわぁ! ぎゃぅう!」
  足をバタバタ、その場走りで上げたり降ろしたり。
 「あっはっは、痛いんだ? あっはっは!」
  これでもかとヒネリ上げると可哀想な乳首から白い脂がにゅるりと搾り出されてくる。
  薄型乳首がまあるい乳首に戻っていって、そのとき美希は色素が少し濃いと感じた。赤ちゃんに吸わせた母の乳。そう思うとまた憎しみが湧いてくる。

  ベルト。智江利を真似てバックルを握り、長さを合わせ、ヒュンヒュンと空打ちを二度。
 「じゃあ美希女王様は前かな。ふふふ、覚悟なさいね!」
  パァンと腹、ベシッと乳房。そのときに乳首にヒットしたらしく、奴隷は断末魔の声を搾り出す。
 「ぐわぁう! いわわい!」
 「痛いって? 何言ってんだろ、このマゾ? あっはっは!」
  めった打ち。怒りにまかせためった打ち。吊られた裸身が垂直ミミズのようにくねり暴れる。
  ところが。 ある一瞬、腹にベルトが弾けたとき。
 「ンふぅ! ンふぅぅ」
  声が甘くなっている。ベルトを持たない左手で股ぐらを嬲ってやると、奴隷は全身赤い裸身をしならせて、泣き濡れた眸を閉じて、鼻孔をひくつかせてよがっている。
 「いいんだ?」
  うなずく奴隷。ンふぅンふぅと燃える吐息を吐いている。ひどい濡れ。

 「バイブよ美希」
 「あ、うん、そうだね、次はイキ狂い?」
  太いバイブに糊のようにまつわりついて乾きかけたマゾ汁。美希は手に取り、洋子の鼻先に突きつけてやって、にやりと笑い、腿を開かせ、ぐちゃぐちゃとラビア嬲って、無造作に根元まで突っ込んで、腿をぴたりと閉じさせる。
 「落としちゃダメよ! 拷問だからね!」
  そしてスイッチをと思ったのだが智江利が待てと言う。
  智江利の手にイチジク浣腸。それを見た奴隷が激しくイヤイヤをして首を振る。
 「拷問されたい! おとなしく尻を開いて!」 と、そんな智江利の声で奴隷は力を抜いて尻を上げた。指先で尻肉を開くようにしてアナルを覗き、
 突き刺してチュルと搾る。
 「さあいいわ、こうしとけば尻を締めるから」
 「なるほどね、そういうもんか」
  美希は笑い、いよいよバイブのスイッチに手をかけた。弱。誰がイカせてやるもんですか!
  ブゥゥン
「はぅ! むぅ! ンンーっ!」
  目をカッと見開く奴隷。総身がたがた震えだし赤い尻が波打ってたわんで締められ、弛み、震えは顔に伝わって、頭までがわなわな震える。

 「ンンーっ! ンンンーンっ!」
  ンにテンテンのワープロ変換不可能な濁ったよがり。尻肉を締めていないとアナルが弛む、といって括約筋が膣を締めて強い快楽に襲われる。
 「ふふふ、面白い」
 「ね。なかなかいい素材だわ」 と智江利も笑う。
  きっと地獄の快楽よ。ザマミロって気持ちの反面、パンティの奥底できっぱり濡れる性器を感じる美希。黒目を回すようにイキ続ける奴隷を見ていて、火照ってくる女体を感じる。だけど、なぜ?
  この程度のSMなら想像したよりずっとライト。だいたいネットはヘビイすぎると美希は思う。

  しかしそれも智江利が仕掛けた罠のひとつ。美希には思いもつかないこと。智江利が手ぐすね引いて狙うのは美希。まさかそうとは思っていない。

 「さあ、もういい、そろそろよ」
  そういうと智江利はバイブを停め、太い梁から吊ったロープをほどいてやって、即座に後ろ手に縛りなおす。奴隷は崩れたくても崩れられない。立って尻を締めていないと出てしまう。ガムテを許され丸められたパンティを吐き出すと、唾液が糸を引いて布地がぐっしょり唾を吸っている。
 「外に出なさい」
 「えぇそんなぁ、お願いです、おトイレへ」
 「また拷問? NOは禁句って言ったでしょ。いい子でしょ洋子って?」
  智江利がやさしい言葉で言う。それはそうよ、だって智江利はやさしいし本質はMなんだから。私に対してSな智江利になれっこない。
  と、そう思わせる智江利の罠。
  智江利は次に、木でできた大きなしゃもじを手に取った。そのへんも美希を安心させるキッチンSM。先の四角いヘラで奴隷の尻をピシャリとやって歩かせる。
  外は一気に明るくなって、森の中にぽっかり拓けた広場のような薄い草の地べた。素っ裸で外に出され、奴隷は腰を曲げて恥ずかしそうに歩いている。そろそろ限界。

 「もうダメです、出ちゃう」
 「したいの?」
 「はい、女王様、ああ出ちゃうぅ」
  智江利は笑って美希と目を合わせると、家の裏の急傾斜の際まで裸の奴隷を歩かせて、けれど林との境の薄い草の地べたを指差す。
 「こんもり盛って出しなさい」
 「そんな、そんなぁ、ああダメ、出ますぅ」
  二人の女王に背を向けて、ベルト打ちで全身赤い白い女がしゃがみ込む。浣腸の結末などは知れている。美希も便秘がちでときどき座薬を使っていた。
 「見ないでお願い、見ないでください」
 「ふふふ、見ないでじゃなく、コレだもん」
 「ああ嫌ぁぁ。あ、むぅ、あっあっ!」
 「あっはっは、何だよそれ? どんだけ喰った? あっはっは!」
  デジカメのシャッターが排便の一部始終を追いかけた。
  笑う美希に、ほくそ笑んで智江利が言う。
 「これでブログでも立ち上げましょ。タイトルは『ママさん奴隷、ヨウコの調教日記』なんてどう?」
  それから智江利はサンダルの裏で奴隷の背をちょっと蹴って言う。
 「いいこと洋子、月に一度はここで調教。そのほか美希女王と調教よ。写真もいっぱい撮ってあげるからブログを楽しみにしてらっしゃい。いい子でいないと顔出しブログにしちゃうわよ」

  とは言ったものの、それからは思った通りで女二人で一人を責める、レズというのか快楽調教と言えばいいのか、バイブも使うし電マも使う、よがらせ調教。縄も鞭もない、想像通りの夜になる。そんなものはSMなんかじゃなく、奴隷にとっては地獄のご褒美。イキ続けるだけの時間が過ぎていく。

  美希の部屋。洋子のほうは実家だからこうするよりない話。職場の音楽スクールで何食わぬ顔ですれ違い、週に一度は美希の部屋。
  しかし美希は二人になると女王になれない。女王と奴隷っぽいレズなのだが、挨拶だけはきっちりさせた。部屋に入ると奴隷は裸。赤い大型犬用の首輪を新調し、それだけさせて平伏させる。
 「お会いできて幸せです、女王様」
 「よろしい、いい子になったね、ちゃんと言える」
 「はい、女王様、どうか可愛がってくださいませ」
  仕事から戻って夕食の美希は、キッチンに立ち、上は着ていても下はベージュのパンティだけ。まっ白な脚線が美しい。
 「一日仕事で汚れてる。お尻を舐めて」
 「はい、女王様、うふふ」
  洋子が笑う。洋子にとっての捧げる時間は、誰かに尽くしてやりたい母性だと、もちろん美希は見抜いていた。

  流しに立つ女王の尻にすり寄って、パンティを膝まで下げて、そのとき突き出される白桃の双丘を舐め回し、それが気持ちよくて開かれる尻の底へと顔を突っ込み、アナル舐め。よく舐めて綺麗にすると、さらに上げられる秘部の前へと舌をのばす。
 「おまえも濡らすんだよ。女王の喜びは奴隷の喜び」
 「はい、女王様、濡れてます、もう」
 「うんうん、それでいい。そのうちいろいろ揃えてやるから」
  快楽調教の道具のことだが、口だけでそんなものを自室に置くつもりのない美希。あの洋子に君臨する。それだけでよかったからだ。
 「あぁぁ感じる、いいよ洋子、感じるよ」
 「はい。ンふふ」
  洋子はこうされたがっている。罪悪感なんてない。酔うように美希は尻を振り、甘い感覚を愉しんだ。
  奈良原書房というのか、その奥の喫茶室にも連れていき、マスターの目のある中でSM写真集を開かせる。洋子はきっと濡らしていると思うだけで私は勝ったと思えてくる。

  しかしそんなものはプロローグにもなってはいない。マゾ牝智江利の主は奈良原書房のマスターであり、二人揃って育てていける奴隷を探そうということになっていた。
  智江利を育てたSである奈良原和基は、美希の中にいまは眠る底なしのM気質を見抜いていた。智江利を引き合わせ、女同士の関係をまずつくらせて、しかしそれは蟻地獄。美希はまんまとハマってしまった。
  あれから一度智江利の家で洋子を躾け、自室でも週に二度はペットの扱い。マゾ牝洋子のブログもできて、洋子は蜘蛛の巣に捉えられたも同然だった。
  美希は安心できている。女同士の変態的ないい関係がストレスを吹っ飛ばし、それは洋子もそうで、二人ともに満たされる。
  心が楽になると再婚を考えてもいいと思えるようになっている。次こそきっと男を見抜いて結婚する。そうした希望もあったのだったが。

  マスターが言う。
 「この間、僕のほうから行って来たよ、真木ちゃん家」
 「あらそう? 陶器でしょ?」
 「そうそう、造って運ぶでは可哀想かなって思ったものだから」
  と言われて棚を見ると作品の数が増えている。智江利との関係ができてから美希も花器を買ったし洋子もコーヒーカップのセットを買った。徐々に売れるようになっている。智江利のためにはよかったと美希は思う。

  洋子の奴隷記念日から二月が過ぎていた。
  その日も日曜で明日が休み。美希は当然のように洋子を連れて智江利の家に向かっていた。道も走り慣れてスイスイ。ただしかし今日はちょっと空がよくない。台風が関東を狙っていると予報が告げた。あのあたりで豪雨になると、山道が通行止めで遮断されてしまうはず。火曜日あたりからが危ないらしく、まあその前だからいいかと思った。
  洋子には奴隷らしい露出スタイルのマイクロミニ。美希も気がゆるんで素足にミニで出かけてきている。

  いよいよ智江利が行動に移す日であるとも知らず・・。


2017年11月20日

きりもみ(四話)

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 四話 ティータイム


 そのとき美希は、自室のデスクでノートパソコンに映し出される女を読んで、傍らに紅茶を置いていた。いつもなら角砂糖を一つ溶かすのだったが、そのときはなんとなくストレート。ソーサに置いたままの白く四角い角砂糖を眺めている。ティースプーンに飲み残して冷えた紅茶をちょっとすくい、角砂糖の上にぽたりと落とした。
  硬くかためられた性のガードが、わずかな水分を与えられただけなのにぐずぐず崩れて、その代わり甘い汁へと変化していく。まるで私のようだと思って見ている。角砂糖はこうして湿り気を欲しがるもの。ひとたび崩れだして甘さを知ると二度と元には戻れない。

  ちょっと信じられない夜だった。同性の性とはどういうものか、互いに逆さにまたがり合って、智江利の本質を見せつけられた。女の花園なんて美的な表現にはほど遠い、醜いまでの牝の実態。肌の白い智江利なのに、その花の棲息するあたりになると色素が濃くなり、濡れをからめた淫らな毛が肉ビラの花にまつわりついて、もっと舐めてと欲しがるように綺麗なピンクの膣口をぽっかり開く。
  それと同じ景色を私は智江利に見られてしまった。朦朧とするほどの快楽の中でよくは覚えていなかったが、美希は女の性のあさましさを思い知り、どう繕ってガードしようと女は結局それを欲しがる生き物なんだと認めなければならなくなった。
  けれどそれで洋子を見る目が変わったわけではなかったし、同じステップに立てたとも思わなかったが、洋子は学生だったあの頃からそんな性を愉しんでいたのかと思うと、ますます負け続けた自分が口惜しくなる。

  いまさらもう短すぎるミニなんて穿く気もしない。エロがキュートであった時期はすぎた。だけど、そうだとしたら私の性はどうすればいい? デスクにいて智江利の書く文章をぼーっと追いかけながら、美希は考え込むわけでもない妙な思考に取り憑かれていたのだった。
  子供を産むという女の使命を果たした洋子。なのに私は結局そこへは行けないのかと思ったとき、洋子はやっぱりいまいましく、私をこんな感情にさせた智江利のことさえ憎く思える。
  数日が過ぎていったその日、美希はそうは思うのだったが、もっとも腹立たしいのは、あのときのことが綺麗な文章にまとめられ、読んでいて性器が疼いてくることだった。濡れている。でもどうして?

  恋人時代からの夫との性とは高みが違う。そこにまさか罠があったなんて思ってもみない。素の私が狂乱したとしか自覚できない美希にとって、智江利の文章は衝撃だった。

 ビアン。私は私を愛するように
 私とおんなじパーツでできたカラダを愛す。
  潮を噴くのよ。わかる? 失禁しちゃうの。
  そんな姿を見せ合える愛人に私は出会った。

  愛人というレトロな言葉も、まさにと思える。肉欲のためにだけ一緒にいる女と女。そしてまた、潮を噴いて狂乱した私自身が信じられない。いっぱしに知ったつもりの私のセックスって何だったのよ。ピークの波形がまるで違う。ほとんど崖を駆け上がる急角度の性感覚が大気圏を突き抜けてしまったよう・・悲鳴、絶叫、掻き毟り、もがき・・あらゆる女の醜態を晒しつくして、挙げ句、おしっこを噴き上げて気を失った。
  美希は、一滴の水に崩れていく角砂糖を声もなく見つめていた。

  また数日。そしてその日、美希はピアノを教える仕事の後でたまたまタイミングが合ってしまった洋子を誘って自分の部屋へと帰り着いた。どうしてまた憎しみの対象を誘ったのか。説明のつかない感情だったが、二人きりになって話してみたい。そのときはいくら何でも仕事の帰りで二人ともに普通の姿。
 「なんか妙な気分だけど嬉しい気がする」
 「そう?」
 「だってあんた、私なんて嫌いでしょ」
 「そうね嫌い。いまでもちょっとは嫌いだけど、じつはね洋子」
  それで美希はモニタに映る智江利の感情を見せつけた。見知らぬ女の赤裸々な告白。Mでありレズであり、自虐に濡れる変態女の感情を。
  洋子は目を丸くして智江利の言葉と美希の顔を見くらべていた。

  美希は言う。
 「ハマってるのよ、それに」
 「へええ美希が? ちょっと信じられない感じだな」
 「主人とダメで独りになって、なんて言うのか、魔が差した?」
 「ふふふ、魔が差したはよかったね。だけどわかるよ、あたしなんてあの頃からそうだった。恋でしょ愛でしょエッチでしょって思ってたし、その結果がどうなるかも見透かせた」
 「見透かせた?」
 「妊娠よ」
 「ああ、なるほど」
  洋子は悟りきったようにほくそ笑み、いまさら何を言うかといった眸の色で美希を見ていた。

  洋子が言う。
 「だけどそれは遅くないよ。一歩踏み出したとたん拓けてくるもの。こういうものにハマるって、いいことなんだから」
 「そうかな。悶々としちゃわない?」
 「発散する」
 「男で?」
 「それでもいいけど、この人みたいな妄想、自虐もいいでしょうし、それでオナニーしちゃったりも素敵よね」
 「洋子もする? オナニーなんて?」
 「するよ、もちろん。妄想しながらアヘアヘだわよ」
 「どんな妄想?」
 「あたしってMなのよ」
 「え?」

  この子がM? まるで逆だと思っていた。
  あの頃からフェロモン振りまき、明るく振る舞って男たちにちやほやされた。行動的で明るいMってアリのかしら? どう考えてもそぐわない。
  洋子は言った。
 「勝手気ままにやってきて、だけど他方、誰かのために捧げる一瞬があってもいいなって思うから。満たされるだろうなって想像しちゃうの」
 「出会えなかった?」
 「それがすべて。出会えていたら変われていたって思うわよ」
  洋子は母性に生きる女。子供が好きだからいまの仕事に打ち込んでる。 そういう意味では共通点はあるのだが、このとき美希は面白いと感じていた。智江利はMにもSにもなれる人。私だって相手が洋子ならSになれる自信はある。

  美希は言った。
 「ご主人様? それとも女王様?」
 「どっちだっていい。迫られればおしまいなんだし」
  美希はちょっと考える。言葉を探す。
 「洋子って外泊したりは? エッチでホテルとか?」
 「しょっちゅうよ。もっとも相手は女友だちだったりするけどね。話し相手がほしいから、そうするとホテルで一夜」
 「それでレズ?」
 「ないね。いまのところそっちはない。それってバイよ美希。ビアンじゃないから」
 「そうなの?」
 「レズは男を受け付けない」
 「あ、そっか」
  この洋子なら受け入れる。と言うより、迫れば堕とせると感じた美希。
  そしてMへの変化は劇的に・・奈落の底へ堕としてやると美希は思う。

 「・・ということなんですね」
 「うむ、それは面白い。とやかく言わんから好きにすればいい」
 「ただし徹底的に? ふふふ」
 「それもおまえの考えひとつ」
 「はい、ご主人様」
  奈良原書房の、なんとも妙な喫茶室のカウンター。電話中。
  美希が覗いたちょうどそのとき、マスターは電話を終えて携帯をカウンターに置くところ。
 「ども」
 「うんうん、いらっしゃい」
 「今日はコーヒーがいいかな」
 「はいよ」
  そのとき美希は、ほとんどはじめて本を持たずに椅子に座った。例によって客はなく、カウンター越しに向かい合う。
 「あれから真木さんは?」
 「いいや」
  そしてふと焼き物が置かれた棚を見ると、あのとき補充されたはずの陶器がかなり減ってしまっている。
 「売れるんだね?」
 「だね。近頃では覚えられたのか、ちょくちょく見に来るお客さんが増えてきた。真木ちゃんの作品は轆轤を使わない手びねりが多いから、一つとして似たようなものがないだろう。最初は生け花の本を探しに来た人が花器を見つけて買っていったのがはじまりでね」
 「やっぱり花器?」
 「そうそう。でその人、生け花の師範でね、生徒さんも噂を聞いてやってくるようになったというわけ。口コミでひろがって、皿なんかも売れるようになってきた。だから真木ちゃんも造ることにいっぱいいっぱいで、ここにもそう来なくなった」

  美希はちょっと笑ってうなずいて、喫茶コーナーのすぐ横にあるアダルトブックの棚を横目に見た。コーヒーのできる間、美希は立ち、そのへんの棚に歩み寄って見渡した。
 「ねえマスター」
 「お?」
 「売れるの、このへん?」
 「売れるね」
 「女の人も買っていく? それはないでしょ?」
 「ある。と言うか、いっぱいいるよ。そのへんの奥さん連中だとか。若い子だとアニメッチが多いけど?」
 「は? アニメッチって?」
 「アニメのエッチ」
 「け。何でも略すな、わかんねーじゃん。あははは」
  笑ってごまかす。SMの写真集なんて表紙を見るだけでどきどきする。
  部屋にいてネットで見る限りはそうでもない。他人の目がある中でそういうものに興味を示すことが恥ずかしい。
  美希はアダルトアニメの本を手に取って椅子へと戻った。マスターはチラとそれに目をやったが、もちろんとやかく言ったりしない。
  つまりは漫画の本であり、レズ、BLとさまざまタイトルのある中で『妻という犬』というタイトルが気になった。人妻が性奴隷に堕とされていく、なんともありきたりの筋書きなのだが、パラパラとめくるだけでも胸が苦しい。

  覚悟なさいね洋子。

  息を殺してページのシーンを追いながら美希は内心わくわくしていた。
  明日が仕事で、その足で智江利の家へ向かう手筈。明後日は仕事は休み。一夜で奴隷にしてやると、そんな計画を練っていた。これまでの口惜しさを晴らしてやる。よくも馬鹿にしてくれたわね。
  しかしそれは、智江利との夜を知るまでの単純な敵意でもなさそうだと、
このとき美希は漫画の妻が鞭打たれるシーンを見ていてそう感じた。
  仕事先から洋子の住まいは遠くなく、洋子は実家。子供を委ねて出られる立場。クルマは洋子が運転する。可愛い赤のコンパクトカー。智江利の赤いポロと並んだときに、女友だちが遊びに来ているとしか思えないだろうと考えた。

  マゾへの旅立ちは劇的に・・ふふふ覚悟なさいね。

  クルマに乗って、行き先はボカしてあった。洋子は智江利と美希が知り合いだとは思っていないし、奈良原書房のことも知らない。
  何も知らずに連れ出され、帰るときには性奴隷。劇的だし、決定的に支配できると考えたのだ。陶芸家の友人がいるから行ってみないか。それだけの誘いだった。
  美希は仕事のスタイルのままだったが、洋子は一度家に戻っていたからミニスカートに穿き替えている。それも、そうなるだろうと思ったこと。洋子はスカートが好きでプライベートで滅多にパンツを穿かない人。計算ずくの旅立ちだった。
  智江利の赤いポロの隣りに、やっぱり赤い洋子のクルマ。女はどうして赤なんだろうと可笑しくなる。
  そして今日、田の字造りの家の中で、あのときは締め切られていた襖の一方が襖ごと外されて解放されてあり、そこがアトリエ。畳を剥がした板床に轆轤が置かれ、そのほか陶芸の道具がそこらじゅうに置いてある。

 「真木さん、こちら友だちの高島さん」
 「真木です、よろしくね」

  ふふふ、なんとまあ平和な初対面。それからもしばらくは女三人でお茶にしておき、あえて陶芸の話に持ち込んで洋子を立たせ、そのとき智江利が豹変して柱に追い詰め、柱に後ろ手を回させて、背後で待ち構える美希が手錠をしてしまう。古い家の田の字造りは襖を外せば柱だけが残るもので、泣き柱となるからだ。
 「何するの! ねえ美希!」
 「おしまいよ洋子。彼女が智江利さん。私たちってそういう関係なんだよ」
  背中に柱を抱かされて身動きできない洋子。
  智江利と美希が入れ替わり、後ろから智江利がピンクのTシャツの胸を両手にくるんで揉み上げて、前から美希がにやりと笑って詰め寄った。
 「奴隷になるの、それしかないの」
 「何言ってんの! あんたたち、おっかしいんじゃない!」
  美希の面色から笑顔が消えて、美希はいきなり洋子のスカートの前をめくって、無造作に手を入れた。パンストさえ穿いていない素足のミニ。

  そのとき智江利が柱越しに回した両手でTシャツをたくし上げ、青い花柄のブラを跳ね上げて、こぼれるというほどないBサイズの乳房を揉みしだきながら、すでに乳輪をすぼめて尖る両方の乳首をコネまわす。
  美希と智江利は似たような体つき。しかし洋子は背丈がちょっと二人よりは低い。あの頃細かった体も子供ができたことで幾分ふっくらしたかと美希は感じた。
 「あ、嫌ぁ、ねえ嫌よ」
 「ほんとにそう? 洋子あのとき言ったよね、相手は女だってかまわないって」
  スカートをめくった前から手を差し入れて、パンティの上から熱い股間をまさぐる美希。洋子の目が恐怖に吊り上がり、頬が青くなっている。
 「じゃあこうしましょう。こうされて濡れなければおしまいってことにしてあげる。ふふふ、さてどうなることやら」
  後ろからの愛撫と前からの蹂躙。パンティのデルタ上から手を入れられて、洋子は腿を閉ざして拒んでいたが、息はすぐに乱れだし、青かった頬にも赤みが差して、目が据わりだしている。
 「ほうら洋子、気持ちいいね、くちゅくちゅよ」
 「はぁぁ嫌ぁぁ、あん、あっ!」
 「嫌なのにどうして濡れるの? ほうら濡れる、もっと濡れる」
  このとき智江利は、あのときの種明かしをしていない。コーヒーにも仕掛けはなかったし、美希の指に媚薬を濡らせたりもしていない。

  それなのに洋子のカラダは震えだし、息が甘くなってくる。
 「はぁぁ、ンっふ、ぁぁ、ぅぅン」
  美希は微笑む。
 「堕ちたわね洋子。素直になって奴隷になるの。あたしはS、智江利もS。夢だったでしょう、こうされるの。ふふふ」
  スカートの腰に手をやってホックを外しファスナーを降ろしてやる。ミニスカートがすとんと落ちて、ブラ同様の青い花柄のトライアングル。
  パンティの両側に手を入れて一気に下げる。襲われる性の波に波打って揺れる白い腹に妊娠線。それだけで美希は腹立たしい思いがした。
  鼻孔をひくつかせて目を閉じる洋子の頬に頬を寄せ、そうしながら毛群の奥底をまさぐって、美希はそっと言うのだった。
 「よく濡れるいい女よ洋子。可愛がってあげようと計画したこと。あたしたちの気持ちを受け取ってくれるわね?」
 「嫌よ嫌、もうやめて」
 「あらそう、やさしくしてあげようと思ったのに、それだと拷問になっちゃうわよ。足を開きな! なんなら鞭で開かせてやってもいいんだよ!」
  豹変する美希。

  洋子は唇を噛んで見つめたが、乳房と乳首、そして性器への刺激が激しくなると、ついにこくりとうなずいた。
  そろそろと足が開かれ、今度こそはっきりと腰がくねるように回りだす。
 「ほらもっと!」
 「ンふ、ぅぅ、はい」
 「あたしは美希女王、それに智江利女王様! わかったね!」
 「はい、美希女王様、智江利女王様」
  洋子の目に涙が溜まって、それなのに息がどんどん乱れだし、腰がクイクイ入ってくる。
 「いいの? どっち!」
  美希に迫られ、洋子は大きくうなずいた。
 「いいです、あぁ感じる、ありがとうございます女王様」
 「ふふふ、よろしい、それでいいのよ。気絶するまで可愛がってあげますからね」

  勝った! とうとう洋子を組み伏せた。

  智江利が笑って一歩離れ、美希は大きな断ち物バサミを手にすると、それを鼻先に見せつけて、柱越しの手錠では脱がせきれないブラとTシャツに刃を入れて無造作に断ち切った。
  そして一度は離れた智江利がディルドタイプのバイブを手にして戻って来る。美希と交代。前に立った智江利。
 「ほらごらん、いやらしい形でしょ。これでズボズボ。欲しかったら足を開いてアソコを突き出すの」
 「あぁ嫌ぁ、狂います、お願いだから」
 「鞭よね智江利」
  そんな美希の声が背越しに聞こえ、洋子はがに股に足を開いて毛群のデルタを差し出した。

  ブーン・・ビィィーン

「はっ、あはっ」
 「まだ何もしてないよ。ほうら欲しい、欲しくて欲しくてヌラヌラにしちゃってる」
  いきなり激震する太い先端を充血するクリトリスに押しつけてられて、洋子は絹を引き裂く悲鳴を上げた。
  ストロボの閃光が、もがき乱れる素っ裸の女を照らしたのはそのときだった。