2016年12月14日

自虐~ふたつの心を持つ女(六話)


六話


 でも・・自虐にもマンネリはあるもので、マンネリは激しい自己嫌悪
を連れてくる。カフェという人前で、その店のママがじつは股縄パンティ
に苦しんでいる。お部屋に戻ってディルドを突き立て、トイレさえも
お部屋に置いたバケツですませる。ふと冷静になったとき、私はなんて
変態だろうと死にたい思いがするほどで。

 カフェをはじめて、日々の時計は遅くてもカレンダーは次々めくれて、
気がつけば一年が経っていた。つまり自虐的な性に溺れてそろそろ一年。
その間の私にはアクメが一切許されてはいなかった。

 その人は私と同年代の女性です。お店に来はじめたのは二月ほど前。
最初は二人席に陣取って、何度来てもカウンターには座らない。そんな
彼女がそのうちやっとカウンターに来てくれた。なんとなくですが、私
だって知らないお店に通い出すとしたら、そんなカンジなんだろうと思
ったわ。知らない人は怖いから。
 彼女は玲子、私よりひとつ下の三十二歳。私のように結婚を怖がった
人でした。何度も通って私のことを探っていた。話し相手がほしいと
いう気持ちもよくわかる。そんな玲子が突然言ったの。

「自虐癖があるのよ・・恥ずかしいけどそうなの・・」

 深いところは隠しておきたい。だけどそのうち、こんなことを聞いて
くれる人がいるものかしらと試してみたくなる。タイミングが合ったと
いうのか、私もそんなことを考え出していたからね。

「私なんて叩き直されないとダメみたい。狂ってるって思うんだけど、
解放されるところが他にない。ウジウジしてる自分が嫌・・」

 彼女は保育士。私鉄でいくつか行った街にある保育園に勤めている。
それもまたわかる気がした。子供たちに囲まれていて、可愛いと思う
反面、私には子供はやってこないと寂しくなる。同じ女ですものね、
私もじつはそんなようなことを考えたりするんです。

「ママなら聞いてくれるかなって・・自虐の中にしか、ほんとの私は
いないのよ。わからないならいいのよ、わかってくれなんて言わない
から。淫乱、変態、あと何だろ・・マゾ? 汚れた欲望が湧き上がっ
て抑えられない。自己嫌悪に陥って、それさえも自虐癖を満たす歓び
に変わってきている」

 救いがたい孤独・・私そのままの愛への渇望・・私そのままの自虐
への歓喜。似たような人がいた! 嬉しかったのは私のほうです。

「ブログやってるんだ」
「え?」
「見てほしい・・どれだけ私が牝なのかを知ってほしいの」

 生唾が湧いてきます。牝という言葉に、この一年あったことのすべ
てが蘇ってアソコを疼かせ、それは泣きたくなるほどで・・。
 その日の私は、お部屋に戻っていつものように日課の責め。股縄パ
ンティはベトベトになっていて、太い勃起が苦もなく貫く。
「あぁぁ・・狂いそう・・」
 乳首にもいつもの責めを与えてやって、全身わなわな震えながらパ
ソコンに向かいます。

『私はSよ、私はMよ』

 タイトルを検索するとホワイトベースの綺麗なブログが現れた。
 1ページに記事がひとつ。ふとサイドバーのアーカイブを見てみる
と開設は三年前だわ。最初の頃は書いていて、中飛びするようになり、
半年ほど前から集中して書かれてある。
 とにかくトップページの記事を読む。テキストだけで画像はない。

 今日の玲子
 ステキなお店を見つけたの。カフェです。
 見つけたのはずっと前なんだけど今日はじめてママと話した。
 ママといっても私よりちょっと上で不思議な人だわ。
 だって、私の自虐を黙って聞いてくれたもん。

 胸が苦しい。真下から体に突き立つディルド、それに乳首の責めが
心地いい酔いを連れてきた。

 ここで私を公開してきた。だけどリアルでは誰も知らない。
 今日はじめて私は私を告白できたわ。自虐マゾ。
 私の中にいる王様の声を聞いて、奴隷の私はもがくのみ。
 嬉しいよママ。ときどき話していいですか?

 ブログの存在を私に告げて書いている。私へのメッセージ。
 だけどブログにはコメントするボタンがありません。こういうこと
を女が書くと興味本位に書き込んでくるチャラ男は多いでしょう。
 本意をわからず言われたくないと考えるのはあたりまえ。
 メールフォームもついていない。一方通行だったのね。

 そして次のページへ進んだとき、私は慄然としましたし、そしたら
そのとたん、私のご主人様がおっしゃいました。
『尻を浮かせ、尻を沈めろ、さあイケ!』
 ああそんな・・はじめてのご褒美です。

 玲子・・私と同じように丸い椅子にディルドを勃てて、お尻を浮き
沈みさせて・・羨むほどの声を上げて責められている。
 動画がアップされていたんです。
 モニタ全面に真っ白な腰から下を映していて、お尻がキューっとす
ぼまって、肉がゆるんで・・クチュクチュいやらしい音までが・・。

 ああ私がここにもいた!

「おおう、ご主人様ぁ! あっあっ! おおぉーっ!」

 あられもない声を上げて、めくるめく快楽の底へと、私はきりもみと
なって落ちていく・・意識が遠のく・・。 

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