2016年12月14日

自虐~ふたつの心を持つ女(七話)


七話


 お店のカウンターに赤い薔薇を活けておく。花瓶ではなく大きなグラ
スに数本ですけど。そしてその中に一輪だけ白い薔薇。玲子を心待ちに
する気持ちが生まれていた。毎日来る人じゃない。それまでは週に二度
ほど。でも、あんなブログを私に見せて、それでも来てくれるのだろう
か。それから二日、ちょっと不安。
 三日目に彼女が来てくれて、私は嬉しくてならなかった。

 自虐は独りこっそりと。だからこその自虐だし、私にとっては唯一信
じられる私の姿。他人を引き込んでしまったら崩れてしまうと思うので
すが・・。
「拝見しました」
「うん・・私ってそうなの」
 夕方を過ぎた時刻はお客が絶える。夜まで開けていると夜の顔ぶれが
集まるのでしょうが、私は夜の顔を見せたくなかった。それでももし誘
ってくれる人が現れたらと、それが怖かったのかも知れません。
 意気地なしだわ・・情けない。寂しいし惨めだし、でもだからお部屋
に戻ってそんな私に罰をやれる。

 私は薔薇の中から彼女のために活けてあった白い薔薇を抜き取って、
セロハンで一輪だけの花束をつくります。
「私に?」
「お見えになったら差し上げようと思って」
「ねえママ、何で白? 赤があるのにどうして?」
「さあ、何ででしょうね」
 白い薔薇には純潔そして尊敬という意味がある。
「尊敬するから」
 そしたら彼女、えっと言うような面色で見つめてくれたわ。

 偽らざる私の気持ち。ポーズのない女心の奥底までをあんなふうに
動画にできる勇気というのか潔さというのか、とても私にはできそう
にありません。
「動画も見た?」
「ふふふ、ええ。ドキドキしちゃって・・でも羨ましくて」
「ありがとう。他人を巻き込んじゃいけないのよ。リアルだと自虐で
はなくなっちゃう。ネットはいいの。人知れず誰かが勝手に見ていく
だけだもん。動画なんて一度きりよ。エスカレートしていくのはわか
ってるし、そうなるともう狂ってしまいそうだから」
 そうなんです、動画はそれしかなかったし画像さえもありません。
せつせつと綴った玲子という牝の姿に、私は感動していたんです。

「わかる」
「ほんと?」
「わかる」

「うん・・それで白い薔薇?」
「あなたの動きに私の声が重なった」
「どういうこと?」
「オナニーしちゃった。揺さぶられて、うーん、感動して・・獣みた
いに果ててしまった」
「ママ好きよ」
「私も。似たような想いがあるからね」
 このときほど胸が高鳴った記憶がなかった。自虐を見せ合うなんて
これっぽっちも思ってなかった。あの映像の中に、私は私の叫びを聞
いたのでしょう。

 今日の私はエスカレートしてました。股縄パンティ、ロングフレア。
それはよくあることですけれど、少し小さなゴムの勃起を膣に突き刺
して過ごしていた。
 崩れそうです。感じるなんてものじゃない。体から湯気が立ってい
そうで、気づかれたらどうしようって・・でもだから燃えていた。

 リアルの王様はいらないと玲子は言います。内なる声を彼女は王様
と表現する。私だってリアルなご主人様は求めない。
「どうしたって裸になれない」
「そうね」
「最後のところで甘えてしまう」
「だと思う」
「ママもブログやってみたら?」
「どうかしら・・結局ポーズになるような気もするし」

「ありがとう、これ・・嬉しい」
 そう言って玲子は白い薔薇の花にキスをした。瞼を閉ざしたときの
長い睫毛が心なしか濡れていたような気がします。
「いまね」
「ええ?」
「ママのラビアにキスしたの・・尊敬を込めてキスしたの・・渇いて
るなら濡らしてあげたい」

 抱き締めてあげたくなった。衝き上げる激情と膣の責めが、このと
き私の背を押した。
「じゃあ、プライベートモードになさいよ」
「どして?」
「私もそうする。玲子だけに私を晒す」
 そしたらあの子、今度こそ涙を浮かべてうなずいた・・。 

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