2016年12月21日

自虐~ふたつの心を持つ女(十五話)


十五話


 愛してくれる相手に対してどんな言葉を使ってみても、私にとっ
て私以上に愛せる人はこの世にいない。
 私は愛に傷つく私自身を見たくない。壊れてしまうし生きていけ
ない。
 そうした自分可愛さがきわまって、だから人を愛せず苦しんでい
たんだわ。無償の愛・・自己犠牲なんて、さももっともらしく美化
するけれど、それだって、いま私は誰かを傷つけているわけじゃな
いと、その事実に安心していたいだけ。

 自虐は究極の自己防衛であり、弱い私に罰を与えて許してくれる
神のような存在を求めているだけ。偶像のご主人様。そんな主が玲
子に乗り移って私を罰してくれている・・。
 玲子の部屋に行くときは、私が玲子の王様の声を聞いて罰してあ
げている・・。

 丸椅子に最後の一衝き、お尻を打ち付けたまま動けなくなってし
まった全裸の私を、玲子は後ろからそっと抱いて、椅子から抜くよ
うに立たせてくれた。椅子の座面も、フローリングの床にまで失禁
が飛び散っていて、なのに私はアクメの海を泳いでいる。
 ハッとしました。いつのまにか玲子も全裸。熱いほどのぬくもり
が私の全身をくるんでいた。

「愛してるのよ夕子のこと」

 耳許に疼くようなそんな言葉に、私はまたゾクゾク震え、泣いて
しまってすがりついていくんです。
「可哀想ね、誰も愛せず苦しむ夕子が可哀想・・」
「ああダメ・・やさしくしないで・・ああイクぅ・・」

 愛しています玲子様・・。
 心の中で叫びながら、でも、これは愛だと悟った瞬間、めちゃめ
ちゃに虐められたくなってくる。玲子に乗り移った私のご主人様に
すべてを捧げていたくなる。

 これは自虐よ・・身を捧げるという自虐・・きっと愛だわ。

 ぐるぐる回る目眩のような思考の中で、私はついに玲子の愛に屈
してしまっていたのです。愛に屈した女は相手に対して私が向ける
以上の愛を求めてしまうもの。女のエゴ。
「愛してるの玲子」
「うん」
「ねえ、愛してるのよ玲子、それでもいいの?」
 玲子は私の乳首を両方ツネって、呻く私を笑って見ている。
「同じことを考えてるのね。私の王様は私にとって都合のいい存在
だった。苦しみもがけば必ず許してくださったし、心が浄化された
もの。だけど夕子を愛そうと思った瞬間、必ず許されるって確証を
失った。どれほど尽くしても届くかどうかがわからない」

 想いはそのまま。玲子は私を映す鏡だと思ったわ。

「さあ綺麗になさい。愛液の泡立つディルドも失禁で汚した椅子も
床も、這いつくばって舐めるんです。動画にして私のブログに晒し
てしまう。私のブログで夕子が晒され、夕子のブログで私が晒され、
そうやって深めていきたいから」
 嬉しくて私はうなずき、自分が汚した愛の汚物を舐めにかかった。
動画モードのスマホを向けてほくそ笑む玲子が恐ろしく、私はまた
奴隷に徹して震えていられる。

「共通のご主人様がほしいわね」

 冗談だとは思うのですが、玲子のそんな言葉に、私は汚物を舐め
取りながら、いまにもイキそうな錯覚を覚えたわ。
 玲子も私も求めるものは男性なのです。熱い血で膨張するものを
膣やアナルや口にいただき、無我夢中で・・そう無我夢中で女を生
きる人になりたい。
 そのときはじめて自虐は完成すると思えるようになっていた・・。

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