2016年11月09日

フェデリカ(三話)

三 話


 ピトンと二人の夕食を終えて、フェデリカは最上階・・と言っても三階にある自室へと戻っていた。
 この白亜の石の建造は上より横にひろがった建物で、女王たるフェデリカ、侍従のピトン、そして四人の衛兵長が暮らしている。城とは言えない小さな建物。森を拓いて石垣で一応の敷地をつくり、それはちょうど村のように白亜の城を中心に同心円を描くように建物が並んでいて、女兵士たちが散らしてあった。 貢ぎ物として連れて来られる男どもは、別棟の牢舎につながれているのだったが、そこは女と男のこと。最下層のマウスはともかく、ドッグたちは夜な夜な女たちに呼ばれて牢舎にはいなかった。
 夜になって雲が出たのか今宵は空に光はなかった。女王の居室は円形にゆったり造られて、中ほどに天蓋のない大きなベッド。壁際に大きな化粧台。ドレスを掛ける衣装部屋、それに手洗い場がついている。南向きの窓際にはローズウッドでできた円形のテーブルと椅子が二脚・・豪華であり清楚な白の空間だったが、フェデリカのために、ベッドの足下の側に、左右に少しの間を空けて異様なポールが二本立っていた。


 ポールは鉄で石の床に固定される。高さは二メートルあまり。直径二十センチほどもある太いポールで、白基調の部屋にあってポールだけが黒く塗られていたのだった。
 そんな空間に戻ったフェデリカ。テーブルには白磁のボトルに赤い酒が用意され、やはり白磁の小さなコップが置いてある。フェデリカは黒のロングドレスを着たままで部屋へと戻り、まず先に白いコップに赤い酒を少し注いだ。ワイン。 と、そのとき、セシリアとダマラが衛兵の姿のまま、それぞれ一人ずつ後ろ手に手錠を打った全裸の男を引き立ててやってくる。
 先にダマラが、ポールの一方に事もなげに一人を据える。後ろ手の手錠の片方を外してポールを背抱きにさせ、ポールの後ろでふたたび手錠を整える。脚は固定されていない。最後に木の棒でできたギャグ(猿轡)を噛ませて据え付け完了。
 それからダマラは腰の短剣を抜くと、セシリアが引き立てた新入りの喉元に突きつけて、セシリアがもう一人の男を同じように据え付けていく。
「ギャグはよろしい、後で私がします」
 フェデリカに言われ、セシリアはちょっと微笑んで言った。


「この者はおとなしくしておりました。女たちにいじられて勃起させ、笑われてもなお、ただ黙っておとなしく」
「そうですか、わかりました。それで他の者たちは?」
 その問いにはダマラが応じた。
「男二人は可もなく不可もなくといったところでしょうか。処理の後、配下の者どもに下げ渡したところ、喜んで責め部屋へと引き立てていきました。女の方は、
ついいまコンスタンティアの部屋を覗いて来ましたが、『悪い女ではない、素直でやさしいところがある』 とコンスタンティアが」
「よろしい、わかりました」
 フェデリカは微笑んでうなずいて、衛兵二人は頭を下げて出て行った。


 女王フェデリカと全裸の男二人の空間・・。
 フェデリカは二人に背を向けて黒いドレスを脱ぎ去った。下着さえ着けてはいなかった彫像のような白い裸身。しかしやはり白人の肌とはニュアンスが違う。ウエーブの美しいロングヘヤーは赤毛であり、手入れされた下腹の淡い翳りも黒より赤毛に近かった。乳房は豊かに張り詰めて、くびれて張り出す扇情的な女王の全裸。身につけているものといえばスリッパのような履き物だけ。
 セシリアに引き立てられ、はじめてこの部屋に入った男は呆然として見つめていた。まさか全裸に・・それも神々しいまでに美しい。もちろんダマラに引き立てられた男のほうも、すでに勃起させてしまっている。
 小さく白いコップを手にすると、フェデリカはまずダマラが連れてきた男のほうへと歩み寄り、男の小さな乳首を弄んで妖艶に微笑んだ。
「こうしていただいて嬉しいよね・・ふふふ」
 男はギャグを噛まされた不自由な声で『はい』と応え、半ば勃起させたペニスをさらにビクビク勃てていく。こちらも若い。明らかに若い男。
 フェデリカは、ギャグで閉じない口から唾液を垂らしはじめた男の体を楽しみながら、もう一人の男に言った。


「男は女がいいと言いますが男の体もまた素晴らしいもの・・ほかの皆は知りませんけど男の体はやさしく愛でて楽しむもの・・ほらこうして・・小さな乳首は弄び、分厚い胸には頬を擦りつけ、男の固いお尻を撫でてやると力みが緩んでぷるんと震える・・これが好き・・でも・・ふふふ」
 フェデリカの白い手が血管を浮き立たせて勃ててしまったペニスをそっとくるみ、そろそろと撫でさする。男はかすかに甘い声を漏らしだし、うっとり目を閉じている。
「だからね、そっちの生意気な坊や。私は皆のように男の体に傷をつけたりしないのよ。せっかくの美が壊れてしまう。ですけどここは許せない。心を込めて接してあげると、男は皆、体を狙ってここを勃てる。私もそうして産まれてきた。父は悪魔、母親は借金のカタに売られた娘・・シチリア(=イタリア)の出でね、貧しい家の娘だった。奴隷商人に連れて行かれ、ブリテン(=イギリス)へと渡る船に乗せられて、そのときに私の父、キャプテン・ブノワに拉致された。私はそんな悪魔と淫売の間の子。私の血など私一代で葬りたい。だから私を孕ませることになる男のペニスに腹が立ってしょうがない・・こうしてやるのよ」


 フェデリカは静かに言うと、テーブルに酒のほかにもうひとつ置いてあった黒い革の鞭を手にした。乗馬鞭の先を大きく丸くした、亀頭打ちの鞭だった。
 フェデリカはギャグを噛む男に言った。
「この私に対して勃ててしまった罰ですよ・・ふふふ・・なのに嬉しい・・不思議なものだわ男って」
 男は嬉しいと嬉しいとうなずいた。
 横はたきに赤黒く張り詰める亀頭を狙う。ベシと湿った音が石の空間に響き、ペニスが振り回されて、獣の咆吼そのものの悲鳴が響く。
 男は腰を揺すって痛みにもがき、尻を引き、しかしすぐに腰を突き出し、さらなる鞭をせがむのだった。
「ふふふ、ますます硬い・・いやらしい。よくお聞き坊や、私はね、こうして全裸の私に欲情し、肌を撫でられて陶酔し、亀頭を打たれて涙を流し、イケなくて苦しくて、せつなくて・・静かに泣く男が好き。全裸の私はおまえたちに陰部を見せつけながらベッドに眠る。朝になれば男たちは疲れ切ってポールの下に崩れている。そんな姿を見るのが好き・・」
 数度の鞭で戦士だった男の目から涙がこぼれた。
「ふふふ・・泣いちゃった・・可愛い子よね・・」


 そしてフェデリカは、手の中で鞭をピシャピシャ鳴らしながら、もう一人の新入りの前へと歩み寄る。こちらはギャグを許されている。
 セシリアとダマラが引き立てた二人の男は、髪の毛を剃り上げられたスキンヘッド。陰毛も奪われて脇毛もなくし、顔の中の眉毛さえも剃られていた。それをここでは『処理する』と言う。
 ヌメリとした不気味な風体。男からすべての飾りを消し去った本性の姿なのかもしれない。
 ただ違うのは、ダマラが引き立てた男の体には無数の鞭傷があったこと。
 妖艶な笑みをたたえながら新入りに歩み寄るフェデリカ。
「怖いよね坊や?」
「はい少し」
「素直でよろしい。ですけどおまえは生意気すぎる。心を見透かし、悟りきったようなことを言う。作戦が聞き入れられなかったと言いましたね。どういうことか言ってごらん」
「はい。こちらの兵は2700、敵はおよそ三倍の8000以上。まともにやりあって勝てるはずがありません。そこで私は敵の大軍を草原ではなく森へと誘い込むことを提案した。そういう地形でしたので」
「・・それで?」 と言いながら、フェデリカの白い指先が男の小さな乳首をつつくように弄ぶ。


 男は一瞬、甘く目を閉じ、それから言った。
「そうすれば数千数万という援軍が得られるからです」
「援軍?」
「スズメ蜂の森ですので、心せず踏み込めば・・ンふ・・」
 男は今度こそ熱い息を吐いて目を閉じた。
「ふふふ・・乳首をいじられて気持ちいいようですね」
「はい、ありがとうござます・・気持ちいい・・」
 フェデリカは指先で男の額をちょっとつつくと、一歩離れて体を見回す。
「蜂ですか・・なるほど。子供じみた作戦だということよね?」
「そうです。私は花屋で蜂の怖さは知っている」
 フェデリカはちょっとうなずくと、屹立してビクンビクン揺れるペニスの先にそっと鞭を寄せていく。
「男の名など無用のものですが、おまえの名は?」
「ロランドと申します」
「・・ロランド・・覚えておきましょう」
 そしてフェデリカはテーブルへと戻って鞭を置き、ワインのコップを手にふたたびロランドに歩み寄る。


「先ほどの話・・ここにタイガーなんていないのですよ。男三十数名のうち十名ほどがマウス、残りはドッグ。それはこういうことなのね。タイガーがいなかったわけではない。けれどそのうち女兵士の誰かが私のところへやってくる。さあロランド考えて、何を告げに来るのでしょう?」
 ロランドはフェデリカの美しい眸をまっすぐ見つめて沈黙した。宝石のように輝いている。フェデリカは鞭先で亀頭を嬲りながら意地悪く言う。
「先程来の私の言葉を聞いていればわかるはず・・さて・・ふふふ」
 少し間を空けてロランドは言った。
「結婚させてほしい・・いや・・子ができた・・妊娠したと?」
 フェデリカは眉を上げて首を傾げた。
「衛兵が母となって城を出て行く。腹の子の父を連れてね。おなかに子が入れば、それはすなわち、その男を愛してしまったということで・・」
 フェデリカはワインのコップに口をつけ、少しの飲み残しをロランドの口にコップをつけて飲ませてやって、それからもう一人のドッグ同様に棒状のギャグを噛ませ、テーブルへと戻って行く。
 魅惑的に蠢く白いヒップが美しい。男たちは見つめている。


 女神のような白い裸身が鞭を手にロランドの前に立ったとき、ロランドは勃ててしまったペニスを突き出し、目を閉じた。
「覚悟はいいようね・・いい子」
 横振りの鞭先が亀頭だけを捉えていく。ロランドに数打、もう一人のドッグに数打。交互に鞭打つ。やがて亀頭が青く腫れ、それでも男たちはペニスを差し出し服従する。
 心地よい射精など与えられるはずもない。亀頭の薄い皮膚に血が浮くまで鞭打たれ、ロランドも涙をためた。
「いいわ決めました。ロランドにはもっとも恐ろしい試練をあげる。明日からの二日間、おまえはコンスタンティアに預けましょう。男なんて大嫌い。虫酸が走る。立てなくなるまで責められる・・今夜はもういい、眠りたい・・おやすみなさい」
 フェデリカは全裸のまま、足下の男二人にあられもない姿を見せつけて眠りについた。


 その頃、コンスタンティアの居室では・・。
 めずらしくも連れて来られた女奴隷はフランス女で、名はバティ。歳は二十六であるという。こちらは髪の毛も陰毛も奪われず、最前からひたすらイキ狂ってもがいていた。白い裸身に傷はなかった。あの残酷なコンスタンティアが厳しく接しないということは、バティがやさしい女であったから。夫の暴力に耐えられず殺してしまった。男嫌いのコンスタンティアにとって理解できる話であった。


 コンスタンティアは身の丈185センチ、バティはごく普通のサイズであり、さながら大人が少女を嬲るようなもの。腕力のあるコンスタンティアに腰をつかまれて裸身をYの字に逆さに抱かれ、濡れそぼる花園を舐められている。脚をもがき、大きなコンスタンティアの太い腿を抱き締めて、朦朧とする意識の中で、だらだら唾液を垂らし、泣いて泣いて涙を流し、長い髪を振り乱して悶えている。
「あぁぁ、もうお許しを・・狂ってしまいます、コンスタンティア様・・」
「狂え狂え、ふっふっふ! 毎夜毎夜、至極の快楽を教えてやる」
「ああ・・はい・・生きていられて幸せです」
「そうだな、命こそすべて」
 腰抱きに逆さだったバティの裸身がぶん投げられて大きなベッドにバウンドした。バティは正体をなくしている。頭に血が下がって意識がかすむ。
 ぐでぐでの女体を腕力で開かせて、二本まとめた太い指が、だらしなく開ききった女陰を突き抜く。
「ぁおぉぉーっ!」
 バティの背が折れるほどに反り返り、がたがた痙攣したと思ったら、がっくり崩れて動かない・・。

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