2016年11月14日

螺旋の舌(三話)

三 話


 良妻賢母を通してきたつもりでいたのに、私のいったいどこに淫欲は潜んでいたのか。
 流美はそんな自分自身に驚かされていた。これからどんなことが起こるのか。困惑よりも期待のほうがはるかに大きい。昼食を終えた三時前になって別荘の前にクルマが停まる。一台に三人が乗ってきたようだった。男は学生ばかりでありバイト感覚と聞いていたから、どれほど軽薄で、あるいは病的な人たちが来るのかと思っていたら、まったくそうではなかった。
 清潔そうで真面目なタイプ。三人それぞれにコットンパンツの姿。スリムで、ハンサムとまでは言えなかったが好感の持てる青年ばかり。
 女四人は、すでにアイマスクで目を隠していたが、隠すのは目元だけで顔の輪郭はそのまま。ちょっと不安。

 それはともかく流美は意外だった。そんな流美の妙な面色を察して朋子が言った。
「どう、みんないい子でしょ? 真面目な子ばかりだよ」
「そうみたい」
「ただちょっとMっぽいと言うのか女性崇拝の発想をする子たちでね、だけどマゾではないんだよ、SMなんてするつもりナシ」
 それで流美はほっとできた。そういうセックスがあるのは知っていたし、そんな怖いシーンには耐えられないと思っていた。
 朋子が青年三人を紹介する。
「純ちゃん、秀ちゃん、この二人は二十歳。それからタッくん、一つ下の十九なんだ。みんな可愛いでしょ」
 向かって左からの紹介。男三人が初顔の流美に上目がちの恥ずかしそうな視線を向ける。六つの眸が集中して流美は頬が火照るようだ。
「いいわよ、シャワーしてらっしゃい」
「はい、お姉様」
 純と呼ばれた青年が返事をし、三人揃って浴室へと消えていく。

「さあ、あたしたちも・・」
 女三人はあっけらかんと下着姿。流美は一瞬躊躇したが、もはや後には退けなかったし、退く気もなかった。
 流美が黒のレース、朋子が白に花柄、一番年上でグラマラスな香子は目の覚める赤、しかもTバックパンティ。もっとも若い富代が青に花柄。アイマスクは仮面舞踏会で使うような羽根でできたもので眼鏡タイプ、耳にかけるだけのもの。
 女たちはすでに心が上気し蒸れるような女っぽさを発散している。
 流美は思いのほか激しい自分の性反応に戸惑っていた。ゾクゾクしはじめ濡れる感覚がパンティの底にある。
 別荘のLDKは板の間で広く、その一方にダイニングテーブルの木の椅子を横に並べて女四人は足を組んで座っている。この別荘はログハウスを意識して造られていて、LDKに天井はなく、太い丸太の梁がクロスして露出するワイルドな造作。

 青年三人がそれぞれ黒のビキニブリーフの姿でやってきて、女たち四人の前に少し間を空けて横に並んで立つ。三人とも男にしては肌が白く、裸になるといっそうスリム。ブリーフのもっこりが目立っていて、すでに男性反応を示す子もいる。半ば勃ったペニスが小さなブリーフからいまにも亀頭を覗かせそうだ。
 それだけで流美は、はっきりとした濡れを悟っていた。
 朋子が言った。
「じゃあはじめましょうか。今日はこういうことがはじめてのお姉様もいるから君たちも考えてね。いつもとは違う趣向を考えたから服従なさい」
 青年三人が恥ずかしそうにうなずいた。まだ子供。可愛いものだと流美は思った。
 朋子が言う。
「今日はね、こんなものを用意したの」
 朋子が指先にサイコロを一つつまんで持っている。
「これで私たちの順番を決める。言われた通りにするんだよ。じゃあお脱ぎ、ご挨拶からはじめなさい」

 男三人の手がブリーフにかかった。流美は息詰まる緊張を感じた。一斉に全裸となる若者たち。三人ともに胸毛もなくて体毛は薄いほうだが、陰毛は濃く、裸にされたとたん皆が勃起をはじめている。
 三人はその場で平伏して、一人ずつ顔を上げて言うのだった。
「純一です、お言葉には服従いたします、どうかよろしくお願いいたします」
 そのとき流美は、香子、富代、流美、朋子の並びの中で、隣に座る富代の横顔へと視線を流した。アイマスクをしていても眸がキラキラ輝いて、すでに上気しているらしく甘い息を吐いている。
 朋子が純一に言った。
「うん、いい子。はい次よ」
「僕は秀幸と言います、絶対服従をお誓いします、よろしくお願いいたします」
「うんうん、はい次」
「た、達也と申します・・あの・・どんなことでもしますので、どうか可愛がってくださいますよう・・はい」
 達也は十九歳で一つ下。緊張して息が乱れ、股間のものが上を向いて怒っていた。

「はい、よろしい。ではお立ち」
「はい!」
 若者三人は立ち上がると、脚を肩幅に開き、両手を頭の後ろに組んで性器を隠さない。三人ともビクンビクン脈動し、女たちは嬉々として若い勃起を見つめている。流美もそうだ。もはや開き直り。二十五年前の記憶が薄らいで、いまそこにある若い男性の欲情に胸を熱くしていた。男が勃ててくれることは女としては嬉しい。
「じゃあ、香子からサイコロ」
 朋子から小さなサイコロを受け取ると香子は手の中で弄び、硬い板の間の床にぽんと捨てる。サイコロは跳ね、男たちの背後へと転がっていってしまう。
 朋子が言った。
「さあ、みんなで拾って。膝をつかない四つん這い。脚を開いてヨチヨチ歩く」
「はい・・あぁン、はい!」
 男三人が一斉に後ろを向いて手を着いた。膝が曲がった四つん這い。
 女たちが笑う。
「あははは! まあいやらしい! あははは!」
「もっとお尻を上げてアナルまでお見せ! あははは!」

 流美は生唾を飲んでいた。男性の奥底がフルオープン。緊張のためなのか睾丸が縮み上がって、勃起したペニスが頭を振ってペコペコ揺れて、尻を締めてすぼめたアナルがひくひくしている。
 まさにそんなスタイルでよたよた這う若者三人。流美はパンティにつつまれていて閉じたラビアをこじ開けるように漏れ出す愛液の奔流をどうすることもできなくなった。
 男の一人、達也が最初にサイコロにたどり着く。
「三です」
 サイコロを歯でくわえて這い寄る三人。次は富代。富代はさらに意地悪く遠くへ転がす。カンカンと乾いた音を立ててサイコロは跳ね転がって、壁際で止まった。這う距離が長くなる。女たちが囃し立ててゲラゲラ笑う。
 純一が言った。
「四でした」

 次に流美。流美はそっと転がした。羞恥と、這ったことで顔の赤い男たちが可哀想。サイコロはすぐ背後で止まり、またしても達也が言った。
「一です」
 朋子は振らない。一が出たら勝負あり。一の勝ち。
 朋子が嫌味のようにほくそ笑んで流美を見た。
「あらま・・ビギナーズラックとはこのことだわ。流美がトップ。トップが決まればそのほかどうでもいいんだから」
 そして男たちに言うのだった。
「いいわよ、お立ち」
 脚は肩幅、両手は頭の後ろに組む。先ほどのポーズ。トップの流美を椅子に残して女三人が立ち上がり、それぞれ男の前へと歩み寄る。
 香子は秀幸の前に立って穏やかに微笑んだ。
「いい子ね、恥ずかしかったね・・ふふふ・・よしよし、いい子・・」
 女三人それぞれが、縮み上がる睾丸をそろりと撫でて、怒り狂うペニスの裏を撫で上げて、男の小さな乳首を弄ぶ。
「ぁン・・ぅぅン・・」
「ほうら気持ちいい・・いい声だけど、もっと甘くよ」
「はい、あぁン! あぁン!」
「あははは、そうそう、ますますビンビンなんだもん・・そうでしょう」
「はい・・ぁぁお姉様ぁ・・感じます・・ぁぁン!」

 二回りも歳の違う母のような女に嬲られて、男たちは女そのもののよがり声。朋子は純一の乳首をつまみながら、取り残された流美に言う。
「流美は当たりで四番目よ・・外れ三人が十秒ずつ、当たりの流美が倍の二十秒・・おいで流美、最後に並んで」
 ペニスを勃てて、並んで立つ男たち。その左の純一から、朋子、香子、富代、そして流美が順に並ぶ。
 朋子が流美に言った。
「私たちは十秒おしゃぶり・・一人ずつ順におしゃぶりしてあげる。流美は最後で二十秒、たっぷりペニスをほおばるの。ただしルールがあって、これは飲精パーティなのよ」
 朋子の眸も女たちの眸も、とろんと溶けて据わっていた。
「・・飲精・・え・・」
「順番にしゃぶってあげて、そのうち男の子が射精する。女はそれを口で受けて飲んであげるのがルール。まずは三人とも一度目の射精を終えるまでローテションしてしゃぶってあげて、その間にもし一人の精液を受けることができればご褒美があり、二人三人ならもっと嬉しいご褒美がある・・さあいくわよみんな」

 朋子が最初に純一の勃起をほおばった。硬くなる男の尻を撫でさすり、睾丸を揉み上げながら、亀頭に舌を絡め、勃起の裏を舐め上げて、ぱくりとほおばり、口の中で舌を回して愛撫する。
「あぁン! いい・・ぁぁン! 感じますお姉様ぁ!」
 十秒して、朋子が隣の達也へ、香子が純一へ。また十秒して横へずれ、全裸の男た三人ちの前に下着姿の女三人が膝で立ってすり寄ってペニスをしゃぶる。
 十秒刺激、少し途切れて、また刺激。男たちの裸身に見る間に感じ汗が滲みだし、呻くような、あえぐような、甘い声のハーモニー。
 流美は今度こそ生唾を飲み下し、唇を舐め回し、二十五年前の記憶の中へと耽溺した。
 さらに十秒・・富代がずれた純一の勃起は、茎ごとビクンビクン脈動していていまにも果ててしまいそう。

 流美は、突きつけられる赤黒い亀頭を凝視して、溶けそうで苦しげな純一の表情を見つめて微笑んで、もう一度唇を舐め回してペニスを含む。
 流美だけが二十秒。この時間差が隣の男に刺激を失うロスを生み、その分男は長く耐えて女の愛撫を楽しめるというわけだ。
「ぁぁん出そうです・・気持ちいい・・嬉しい・・お姉様ぁ・・」
「うふふ・・可愛い・・可愛いわぁ・・」
「ぁふ・・ぅくく・・」
 そうやって、流美が三人を可愛がって一巡すると少し休む。性感が退いていくのを見定めて二巡目。男たちは男のくせに女のよがり声を上げだした。
 続けて四人、その四番目が二十秒では、そこで射精する確率が上がる。
 二巡目を終えて男たちは体中が玉の汗。尻を締め、ゆるめ、腰を揺すり、ペニス、睾丸、乳首、そして尻を撫でる甘美な刺激に耐えている。

 三巡目・・純一に二十秒、ずれて達也へいったとき、亀頭をしゃぶり、螺旋を描くように舌を絡ませながら喉へと突き刺し、そうしながら左手でゆるんで垂れた睾丸を揉み上げて、右手で乳首を交互につまむ・・達也の限界・・。
「出ます、ねえ出ちゃう・・ぁ、ぁむむ・・あう! うぅっ!」
 おびただしい樹液が流美の口腔へ噴射した。
 流美は笑った。可笑しいのと、愛撫を受け取って果ててくれた若者が可愛いのと・・流美はにやりと微笑んで口の中の男性臭を楽しむように樹液を転がし、
ほかの女たちの横目も気にせず、目を閉じて嚥下した。
 喉が動き、ごくりと音が漏れてくる。
 ペニスを抜く。抜いても若い勃起は萎えていかない。流美はべろべろ唇を舐め回し、味わうように、その眸はどこか遠くへイッていた。

 あのときもこうだった・・二十五年前・・私は心がイッていたと思い出す。

「タッくんだったね」
「はい達也です」
「いっぱい出しちゃって・・ふふふ・・飲んであげたよ」
「はい・・嬉しいです・・お姉様ぁ嬉しいぃ・・」
 男の子の涙声・・流美はハッとして達也を見上げた。瞼からあふれるほど涙をためてしまっている。
 ああ可愛い・・なんて可愛い男の子・・。
 達也の尻を撫でながら横へとずれる。達也は一度の射精で一人だけ抜けて休み。
 次は秀幸だったのだが、飲精する間ロスタイムができていた。秀幸はよがっただけでスルー。四巡目に入ってすぐ、二人残った純一が限界だったし、その隣の秀幸は朋子、香子に次く富代の口の中で限界を迎えていた。

 流美だけが二人のフィニッシュを受け取って、富代が一人の樹液を飲み干した。
 全裸の秀幸が両手を広げ、富代は全裸の男に導かれて板の間に崩れ、ブラを外されて交互に乳首を吸われ、交互に乳房を揉まれ、しかし飲精が一人ではパンティの上からの刺激だけ。
「ぁ・・ぅく・・秀ちゃん感じる・・ああ感じる・・」
「お姉様ぁ、ご褒美ですよ、飲んでいただきありがとう」
「あン! はぅ! 秀ちゃん秀ちゃん、あぁン感じるぅ・・」
 富代はアイマスクを毟り取り、秀幸の唇をせがんでむしゃぶりついた。

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