2016年11月14日

螺旋の舌(終話)

終 話


 いま七十歳の父も二十五年前には四十五歳。男盛りだったでしょうし、外に女の人の一人くらいはいたっていい。いまにして思えばそうだとしても父に妙な素振りは見られなかった。小娘だった私が見抜けなかっただけかもしれませんが、母とだって仲が良く、私にだけ可愛さあまって厳しすぎ。
 あのとき私は、実の娘の血まみれの性器を呆けたように舐める父に、軽蔑どころかたまらない可愛さを覚えたもの。『なあんだ、こんな人だったのか・・変態チックな性癖に苦しんできたんだわ』・・こんなことは誰にも言えない。父を守ってあげなくちゃ。
 波濤となって押し寄せる快楽に錯乱する意識の中で、私は性器を晒して父の愛撫を受け入れて、この人の娘でよかったと思ったもの。
 忘れられない性の衝撃が、頑なだったその頃の私の心を溶かしていた。

 そんなことがあってから、そう言えば一度だけ、私は父に全裸を見られたことがある。ママが体調を崩したとき静養をかねて行った家族旅行。ママは温泉を楽しんで部屋で休んでいたんです。夜でした。小さな旅館。いくつかある家族風呂が空いて父が先に入っていた。そのときの私は十八だったか・・高校を出た頃だったから。父はお風呂に入ると鼻歌を歌う癖があり、湯屋の外まで聞こえていました。
「父さんでしょ? 一人なの?」
「もちろん一人さ、貸し切りだ」
 湯屋の板戸を開けて私が入り、脱衣に立って脱いでいると声がした。
「流美、おまえ・・」
「一緒にいいでしょ、親子じゃない」
「それはまあ・・かまわんが・・」
 父は照れている。十五だった私じゃない。乳房も膨らみ女のヌードになっている。私は父に見て欲しかった。三年前、あなたに性器を舐められた娘です、こんなに女になりました・・って。

 ファザコンとは違う気がする・・でもファザコン?

 おかしなことを考えながらガラスの引き戸を開けて入っていった。狭い湯殿。父はそっぽを向いて困っている。笑っちゃうほど可愛い父・・いいえ、大切な男性だったのです。
「父さん見て、これが私よ、父さんに育てられた娘です」
 岩風呂の外に全裸で立った私。陰毛さえも隠していない。父はしばらく振り向こうともせず、でもそのうち、ちょっと怒ったような面色で振り向いてくれたっけ。
 恥ずかしかった。濡れはじめる予感がした。
「どうしたんだ急に?」
「いいから考えないで。女に育った私を見て欲しかったの。どう私? 女らしくなったでしょ?」
 わざとらしい咳払いで・・。
「まあ・・うむ」
「綺麗?」
「ああ綺麗だ、これからもっと綺麗になるし・・うん・・これからもっと色っぽくなっていく」
「抱きたいくらい?」
「馬鹿言え・・」
「ねえ応えて。抱きたいぐらいの娘かしら?」

 父は黙ってうなずき、その目に見る間に涙があふれてきていた。私は愛されていると実感できた。
 それで私は父のそばでお湯に沈み、後ろからそっと父を抱いたわ。心の中で『あのときみたいに舐めていいのよ』って思いながら。
 もちろん父との性的な接点はあのとき一度。普段の父は相変わらず口うるさくて、娘に好かれるタイプの親父殿ではありません。
「流そうか背中?」
「そうだな・・一度くらいこんなことがあってもいいだろう」
「一度くらいって?」
「恋のために育つ娘・・愛のための全裸。もはや俺のものではないのでね」
 さすが国語の先生だわ。
 父は私のすぐ前で向こう向きに立ち上がり、岩風呂を出ていった。
「父さんだって若いよ、いい体してると思うけど」
 それも、そのとき感じた私の実感。たるんだところのないスリムな父です。
「馬鹿かおまえは・・父親をからかうな」
 そして私がお湯を出て、父の背後にしゃがみ込む。ほんとに細い・・小さくて硬そうなお尻・・あのとき私はむしゃぶりつきたくなる衝動を抑えていたっけ。後ろから手を回してペニスを握ってあげたかった。ここから出た実弾がママを孕ませ私ができた。そう考えると父の性器はいとおしい。

 飲精パーティなんて猟奇的だわ。精子を生きたまま飲み込んで消化する。躍り食いのようなもの。
 だいたい熟女ばかりが若い子を奴隷扱い。それもまた変態チック。
 けれども理解できますね。女の中にある母性のすべてが向いたとき、女はどんなことだってできるもの。精液を美味しいなんて思いませんが、男性しかつくれない生命の根源を受け取ったと考え直すと・・それもまたセックスの原点みたいな気もするし。性器を可愛がるって究極の愛情表現だと思うんです。
 パーティが終わったのは深夜近く。それでも男の子たちはクルマで来ていて帰れます。残ったのは女ばかり。そしてそうなるととたんに虚しくなってくる。
 そうだよ。女ばかりの世界なんて寂しすぎ。私は男が好きでセックスだって大好きで・・それだから女を楽しんで生きていける。思い知らされた気分になったし、独り身の自分が悲しくなった。

 おかしなことになっていったのはそれからでした。広い和室に布団を並べて女四人が横になる。そこには性の嵐の余韻が残り、最初から妙なムードだったんです。そんな中で富代さんが言い出した。
「そう言えば、ねえ朋子」
「はいよ?」
「まんまよ、まんま。おかしな人たちっているものだわ。ホームページの掲示板に書き込みがあってさ、生理中の女性募集ってことなのよ」
 朋子は私の顔をちらりと見た。
 香子さんが言う。
「血を舐めるってことか」
「そうなんじゃない。でもなければ女を縛って血を垂らすアソコを楽しむとか? どっちにしたってマジ変態、あははは!」
 それでそのとき朋子さんが言うのです。
「やっぱりね、そういう連中、いまでもいるんだろうなって思ってた。だけどそれってわかる気がする・・」

 私たちは朋子さんを見つめます。彼女の二十五年前の体験は富代さんも香子さんも知っている。だからこういう集まりができたのだから。
 朋子は言った。
「やってることは一緒よ。男の体液か女の体液かの違いだけ。せつないまでに女している性器が可愛くてたまらない。あたしたちはそんな男がたまらない」
 そして唐突と香子さんが言うのです。
「いつも思うけど・・男がいなくなった女ばかりの空間でエッチがあればカンペキだって思うわけ」
 そっちに話を持っていかないで。それでなくてもドキドキしている私です。
「じゃあ・・うふふ、それいいかも」 なんて言いながら、富代さんがねちょっとした眸で私を見たわ。
「こういうのはどう? 新人歓迎会・・あははは!」
 このとき、朋子、私、富代、香子の寝並びでした。隣の富代さんが私の布団に入ってきて、それを追いかけるように香子さんが面白がってかぶさってくる。二人に浴衣を脱がされた私・・下は最初から素っ裸。組み伏せられた私は赤ちゃんのおしっこポーズにされてしまう。

 朋子までがほくそ笑み、朋子ったら私のアソコに顔を寄せてまじまじ見つめて言うんだもん。
「醜いわ・・あたしたちにもあるけれど、血と愛液と精液にまみれることになる女の花・・こうしてお花を開いてあげて・・」
 ラビアがつままれ開かれます。
「あぁン・・嫌ぁン・・」
 ハッとした。私はあのときと同じ声を出していて、同じ気分になれている。
 あのとき確か・・父は三人目に舐めてくれた人でした。

「ねえ嫌ぁン、私バージンだから」
「うんうん、やさしくしてあげようね、泣かない泣かない・・怖がらなくていいんだよ。ほうら、こうして可愛いクリトリスを舐めてあげよう・・いい子だいい子だ・・」
 このまま犯されるかもしれないと思っていたし、そうなったとき父だけは受け入れるわけにはいかなかった。そう思って泣いてみたのでしたが、父は誰よりやさしくアソコを可愛がってくれたのです。
 電撃のような気持ちよさ。ああダメ、おしっこ漏れちゃう・・イクという感覚を知った瞬間だったんです。最初の人と次の人は怖いだけ。だけど三人目が父だと知って、私は安心して酔えていた。
「あぁン、イッちゃう・・ねえダメ・・ねえねえ・・あぁーっ!」
 朋子に舐められ、ついさっきまでとめどなく垂らし続けた愛液が、ふたたびあふれてラビアを濡らす。
 はじめて知るレズ・・それは衝撃的な快楽でした。二人に押さえつけられていた体がふっと楽になったと思ったとたん、女三人に嬲られる。

 目眩がしました。瞼に星が舞うほどのピーク。
 ブィィーン・・と、なんだか妙な音がしたと思ったら、太いものがズブリ・・富代が持ち込んだバイブでした。そのときの絶叫は私自身が信じられないものだった。私は淫獣と化していた・・。
 私一人がのたうち、もがき・・狂うほどのアクメに最高の歓びを感じていた。
 意識が遠のき、雲に浮くよう・・気を失っていたようです。
 女たちのよがり声が輪郭を結んで聞こえてきます。フェイドインして声が聞こえた。朋子、富代、香子・・三匹の牝が絡み合って狂っている。

 なんて光景・・なんて幸せそうな淫獣たち。
 思えば渇いていた私の心が愛液に濡れた気分です。

「・・応募する、それに」
「応募する?」
「生理のとき・・応募する・・」

 帰りのクルマの中でした。運転は朋子、私は助手席。
「舐めさせてあげたいもん」
 ふと思ったことでした。その人たちの中に父がいるような気がしたからです。いまなら全頭マスクなんてしなくていい。娘として父親に経血を捧げたい。
 うまく言えませんが、そんな気持ちになれていた。

 朋子の静かな声が聞こえてきます。
「だったら言うけど、二十五年前にあの光景を見たとき、ひどく濡らした記憶があるの。胃から経血が検出されたって・・それって、どう考えたって、あの椅子三つに女たちが裸で縛られ、男たちに血を舐められたとしか思えない。そんなシュミもあるんだと思ったときに、拒絶できない何かを感じた。もちろんあたしだって男を知って精液を口に受けたことがある。それとどこが違うのって思ったわけよ」
「・・うん」
「ゆうべ富代に聞いたとき、一度くらい知っておいてもいいかなって思ってしまった。精液は涸れないけれど経血は涸れてしまう。だったらその前に男たちに奉仕させて・・ふふふ、おばさんくさい発想だけど・・」
 運転しながら苦笑する朋子が、まるであのときの私のような小娘に見えた気がする。朋子はまさに閉経年齢。いまはまだあるようですけど。

「飲精パーティ、ときとして経血パーティなんてどう?」
 私はなにげにそう言った。昨日のシーンで女が生理なら同じことになりはしないか。ところが朋子は否定した。
「相手がどんな人たちなのかわからない。普通なら相手にしない爺さんもいるかもしれない。恥辱に震えて泣くかもしれない。そこには緊張もあれば恐怖もあって、だから快楽が深くなる」
「・・そうか・・うん、そうかも」

 またしても、あのシーン。
 極彩色の空間で全裸にされた私は、身も竦む恐怖を感じながら、明らかに濡れてくる不思議な陶酔を感じていた。
 性器もアナルも隠せないポーズにされて、私は諦め、やがてくる性の嵐を期待した。こうなったらおしまいよ。いよいよ女にされるのね。バージンだった私は覚悟を決めて、そしたらその瞬間、体が熱を持って、いきなり牝の吐息になれている。
 パンツ姿の男たちを薬で朦朧とする意識の中で見ていながら、そんなことだけいまだ覚えているほど覚醒して考えられた。
「ふっふっふ、いやらしい・・いやらしい・・いやらしいアソコだね」
「嫌ぁン嫌ぁン、あたしバージンなんだから」

 などと可愛く泣いておきながら、心の中では・・。

『何よ、パンツをテントにしやがって! 早くどうにかしなさいよ! 濡れちゃってしょうがないでしょ! 気持ちよくシテ!』

「ふっふっふ、女ってそうかも・・猟奇のそばにあるセックスのほうが好きみたい」 可笑しくなって笑いが止まらない。朋子ったら、一緒になって笑いながらハンドルを握っていた・・。

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