2016年11月16日

妻の性 シーン14


伊藤ゆり子


 家でロングフレアのスカートを穿きはじめたのはいつ頃
のことだったでしょう。夫の実家に住んでいて義父も義母
も古いタイプで息が詰まる。夫はやさしい人ですが、いま
だに親の言いなりなんです。

 結婚したら派手なスタイルは慎みなさいなんて、いまど
き冗談じゃありません。貞操観念を常に持てということで
す。出かけようとしても短すぎるミニはダメ。ブラの透ける
ようなブラウスなんてとんでもないし、義母なんて洗う下
着にまで目を光らせているんです。
 それで一考。家にいるとき逆にロングフレアを穿くように
したのです。下にミニを隠して家を出られる。
 女はつつましくするものよ。私の中の倫理に従い新婚生
活をはじめてしまい失敗した。断固として実家暮らしを拒
むべきでした。
 もう主人には期待しない。今度こそ運命の人を探したい。
貪欲に私の方から男を探す。そう思い立ってロングフレア。
じつはこのとき、こっそりブログをはじめていたんです。

 エッセイぽく、私という女の本音を書いていく。共感して
くれる男性がきっといる。そう信じて書き続け、あるときか
ら行動を開始した。

「ユリです。これから渋谷よ。◯◯◯に一時からの一時間
はいますから。赤いレザーのミニスカート。ノーパンです。
男の本気を感じさせてくれるなら、あなたの指を拒みませ
ん。ただしラブレターを用意してください。本名と住所も忘
れずに」

 そしてドレッサーに映る赤いミニのヒップあたりをスマホ
で撮ってアップしておく。
 ◯◯◯は、そのつど公園だったりカフェだったり場所を
指定するんです。

 いつか誰かが気づいてくれる。騎士のように現れて私を
さらっていってくれるはず。そんなことを夢に見て、月に二
度ほどあっちこっちへ出かけたわ。
 半年が過ぎていた。その日もまた代々木公園。いつもの
赤いレザーミニ。ベンチに座ると脚を組んでいないとデル
タが見えそうなほど短いもの。ロングフレアの下に穿き込
んで、駅のトイレで上だけ脱いでコインロッカーに放り込ん
でしまうのです。

 公園をそぞろ歩き、ベンチに座って待つのですが、日向
ぼっこが気持よくてうとうとしちゃう。妻たるものは最後に
眠って最初に起きる。冗談じゃありません。古いんだよー。
「ユリさんですよね」
 ふいに背後から声。背後へ抜けると公園通りにつながっ
て渋谷に出られる。
 精悍な感じの男性です。歳はちょっと上かな。三十代の
半ばって感じの人。ジーンズ姿の普段着です。

 ドキドキしてます。怖いぐらいに震えてしまい怖いぐらい
にアソコが疼いてくるのです。約束通りノーパンですから
思わず腿に力が入って閉ざしてしまう。
「書いてきてくださった?」
 黙って封書を手渡してくれるのです。
「赤裸々で素直な女文字が並んでいますが即刻ブログを
閉じなさい。あなたには僕がいる」

 はぁぁ…クラクラする男文字。

 ブログの活字を女文字と表現する感性に打ちのめされ
ていましたね。
 名前と住所、携帯番号。それを裏付けるように免許まで
を見せていただき。
「向こうへ」
 公園の奥まった木陰にあるベンチに移動。並んで座り、
スカートに伸びてくる心地いい欲望を確かめながら、私は
目を閉じました。
 クチュクチュとすぐにエッチな声がした。女の下唇が喜ん
で、とろとろに濡れてます。

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