2016年11月16日

三人姉妹(四話)


四 話


「お姉ちゃん、あたしってヘン?」

 森林に抱かれるような小屋を出て坂を下りながら、希代美は妖しく濡れる眸で早苗に言った。血のつながらない妹だったが、希代美は子供の頃から早苗に懐き、実の姉の亜希子よりむしろ早苗にいろんなことを話してきていた。早苗のほうが聞いてくれるし話しやすい。
「どういうこと?」
「あたし濡れてる・・わかるの・・いますごく濡れてるの」
 妹の気持ちはわからないでもなかった。早苗自身が微妙に揺れる女心を感じていた。全裸にされた亜希子は驚くほど弱く、じつは寂しい女だった・・怖がって涙をためる姉を見ていて、自分と同種の女だったとほっとする気持ちもあって、だからこそ可愛く思える。
 希代美は言った。
「可愛いのよ、あの人が。あたしとあの人、似てるでしょ。二つ違いの双子のようだとずっと言われて、何かにつけて比べられているようで・・何をしても勝てないし・・。でもね、そんなあの人を見てて可哀想でならなかった。いつかきっと辛くなるって思ってたし、そのときあたしは内心ほくそ笑んでいるんだろうなと思ってさ」
「ザマミロって?」
「そうそう、ザマミロって。なのに不思議なんだな・・彼のことにしたって、あの人が想ってるのは知ってたでしょ。だから口説かれたとき、あたしのほうから積極的になれていた。奪ってやるとまでは思わなかったけど、勝ったって・・あたしは勝ったって思ったとたん、あの人が可哀想になってきた」

 複雑な想いが揺れていると早苗は感じた。二十五にもなって多感期というのもおかしな話だろうが、希代美にはピュアなところがあり、どちらへ転ぶかわからない少女の危うさを秘めている。幼さという怖さがあるということだ。
「怖いの助けてって泣いてたわ。素っ裸で一晩闇の中で震えてる。あの人はお化けが怖いの。その正体、なんだかわかる?」
「性的な不安よね」
 早苗にだってそういうところはある。求める性と奪われる性では天国と地獄。にもかかわらず女は奪われる性に憧れて、だからこそイザとなると恐ろしい。
 希代美は言う。
「不安というか渇望よ。あの人の場合は渇望、面倒な自分を押し倒してくれる人を待っている」
「だけどそれ・・女ならたいがいそうだわ、私にだってないとは言えない」
 そんな早苗の言葉に、希代美はちょっと唇を噛んで慈愛を感じさせるエロスを発散しながら言うのだった。
「共振できるの。あんなふうにされたら私だって泣いちゃうから。あの人には可哀想が必要なのよ」
「可哀想が必要?」
「もしあたしなら、なり振りかまわず可愛くなれる・・あの人にもそうなって欲しいんだ」
「可愛くしてあげたい?」
「だって、そういう人だもん、ほんとはあたしと同じ女・・意地悪だしエッチだし、そんな自分に自己嫌悪・・あーあ、あたし何言ってるのかしらね、わかんなくなってきた・・」

 希代美の頬が上気している。この子は激しく興奮していると早苗は思った。
「好きなんだね亜希子のこと?」
「あたりまえじゃない。てか嫌いになれるわけがない。お姉ちゃんのことだってそうだよ。あたしあのとき十歳だった。急に増えたもう一人のお姉ちゃん。裸になると同じ女だし・・」
「ふふふ、あたりまえだよ女だもん」
「そうだけど、でも・・あたしあのとき、この人ってどんなだろうと実の姉と比べて見ていた」
 斜陽にキラキラ瞬くような希代美の眸。早苗は見つめられて目がそらせない。「それで? どう思ったの?」
「さあ・・よく覚えてない・・覚えてないけど、ふふふ・・嬉しかった」
「嬉しかった?」
「だからわからない・・何がどう嬉しかったのかもわからないんだ。お姉ちゃんはやさしかった。だけどその分、あの人が辛くあたるようになっていた」

 早苗はハッとした。私だけが外からの子。微妙な負い目があってやさしくしていた気がする。その分亜希子は実の姉として厳しく妹に接してきた・・亜希子をそんな女にしてしまったのは私かもしれないと考えた。

 しかし希代美の本意を聞けたのはよかった。こんなことになってしまい、どうなることかと思っていた。
 希代美が言った。
「任せてね、お姉ちゃんのこと。今度のことをきっかけに変われるよう、こてんぱんにやってやる」
「希代美・・まさか奴隷にするつもりじゃないでしょうね?」
 希代美は目を丸くして笑う。
「それならそれでいいじゃない。可愛い女にしてやりたい。弱さを隠すから辛くなるの。お姉ちゃんは強いからわからないでしょうけど、弱い女の過剰なガードはみっともないし、下手に壊れると人生が狂ってしまう」
「それを希代美が壊してあげる?」
「そう、あたしが壊してやりたいの」
 姉を想っての仕打ちなら、そうひどいことにはならないだろう。
 しかし早苗はちょっと哀しい。
「だけど希代美」
「うん?」
「私のこと強いと思う? 強い女だって思ってた?」

 希代美はすっと寄り添って腕を絡めた。
「目標だったの。子供の頃から二人のお姉ちゃんが目標だった」
「亜希子のことも?」
「もちろんよ、あたしにとっては二人いるお姉ちゃん。一人は強張り、一人はソフト。両方見て育ってきたから・・」
 希代美に腕を絡められて歩いていると、いつの間にか家の裏手に着いていた。ガタつく板戸を開けて中に入り、早苗が明かりをつけようとしたときだった。 希代美が抱きすがって眸を見つめた。
「ねえ・・あたしダメ・・濡れてる・・すごいことになってるみたい・・」
 早苗は声を返せなかった。性をせがむ女の眸・・目が据わって息が熱く、性の対象として見つめられる。普段ならごまかせても、亜希子のことで共犯だという思いもあって、非日常に興奮する妹の気持ちもよくわかる。

 山の夜は太陽が稜線に沈むと、さーっと闇が配られる。希代美が姉の両肩に手を置いて、据わった眼差しで、姉を壁際へと押しやって追い詰めたとき、ちょうど窓に黒い影が横切るように、森の夜が忍び込む。
 早苗は一瞬体を固くしたのだったが、妹の性愛を拒む気にはなれなかった。 抱き合って触れるキス・・きつく抱き合い、舌が絡む深いキス・・。
 そしてそうしながら、妹の手がジーンズの前を開け、パンティの中へと滑り込んでくる。冷えた指先がデルタの毛を分け、静かな性裂へと落ち込んだ。
 早苗は少し腿をゆるめ、希代美の女心を受け取った。

「ほら熱い・・ああお姉ちゃん・・あたしにもシテ・・ねえシテ・・」
 希代美は自らのジーンズの前を開け、そうしながら早苗の足下にしゃがみ込んで、姉のジーンズを下ろしにかかる。
 ピンクのパンティと一緒に力任せに引き下ろし、つま先から抜き取ると、姉の毛むらの奥底へと顔を埋めた。
「匂う・・」
「ヤだ・・臭いでしょ」
「ううん、いいの・・女の匂い・・あたしと同じ牝の匂い・・」
 足下に膝をつき、姉の花園に鼻先を突っ込みながら、希代美の両手が早苗のTシャツに滑り込み、ブラを下から跳ね上げてBサイズの乳房をつつみ、揉みしだき、すでに充分尖っていた二つの乳首を愛撫する。
 希代美の舌先が濡れはじめた姉のラビアを舐め上げて、クリトリスをつつくように刺激した。

 声を噛んだ。体が震えた。
「感じる・・ねえ希代美・・はぁぁ感じる・・」
「うん・・あたしも・・お姉ちゃん好きよ・・ねえシテ・・あたしにもシテ・・」
 絡み合ったまま二人は古びた畳に崩れ落ち、今度は姉が妹を脱がせていく。
 妹と言っても希代美のほうが背が高く、シルエットでも女の肉が豊かだった。
 全裸にした妹のあられもない姿に、早苗は、いつの間にこんなになったのかと、あの頃の妹を思い出す。
 Mの字に割り開かれた牝の根源は、あさましいまでに濡れていて、ラビアが閉じていられずに、鮮やかなピンクの内臓までが見えそうだった。
 そんな妹の両膝を手につかんでさらに開かせ、早苗は顔を埋めていく。
「いやらしい・・ヌラヌラしてる・・」
「だって・・ああ見ないで・・だってあたし・・ひぃぃ・・」
 金属的な希代美の女声は、早苗が知る妹の声ではなかった。
 尖らせた舌先は苦もなく妹の花底へと飲み込まれ、その一瞬、希代美は弾かれたように裸身を起こし、そのときCサイズの乳房が揺れて、乳首がしこり勃っていた。
 希代美は姉の腕を取ると引き上げて、私も私もとせがむ眼差し。早苗は裸身をずらしていって、妹の性花を舐めてやりながら、妹の顔にまたがって、濡れそぼる早苗自身を妹の口許へと押しつけた。

 尖らせた妹の舌先が下から一気に貫いた。
 尖らせた姉の舌先が上から一気に貫いた。

 白い肉の塊が絡み合い、互いにわなわな震え、腰が反り返って手がもがき、抑えきれない愛の声を放射しながら貪り合った。
 上質の酒に酔ったような陶酔の中で希代美が言った。
「虐めてやるんだから・・うんと虐めてやるんだから・・あの人は屈服する・・屈服するしか許されない・・お尻が青くなるまで打ってやる・・おしっこぐらいは飲ませてやりたい・・プライドなんて壊してやる・・そんなことになったら・・きっと可愛い・・ねえ、ねえ・・イク・・」
 極限の興奮はむしろ静かなアクメを連れてきたようで、希代美の裸身は激しく痙攣しながらも声は弱く、そのまま崩れて動かなくなっていく。
 早苗には意識はあった。妹の言葉も理解はできたが、早苗もまた酔うように崩れていく。

 闇の中で抱き合っていた。深夜だった。
 早苗も希代美も、はじめて知った女同士の愛に震えて眠れなかった。
 横寝になって妹は姉の乳房に顔を埋め、姉は妹の背を撫でている。
「いいよね、こういうの・・」と希代美は言って、しこりの解けた姉のやわらかな乳首を含み、そして言った。
「こういうの、ずっとずっと・・ときどきでいいから」
「そうね、いいと思う・・そのときは亜希子も入れて姉妹三人・・」
「もちろんよ・・三人姉妹なんだもん・・それぞれ結婚するでしょうけど、ときどきこうして抱き合って眠りたい。いまごろ、あの人・・ふふふ、怖いでしょうね」
「きっとね・・真っ暗なんだし・・」
「素っ裸で・・それも縛られて動けない・・くくくっ、いい気味だわ」
「お薬よね」
「毒薬かも知れないけれど・・女って一度そうなると奈落の底かも・・救われるならどんなことをしてもいいと思えてくる・・それが牝の本性なんだわ・・奪われて、のたうちまわり・・だけどそうするうちに素直になれて、なり振りかまわず果てていける・・」
「・・そうかもしれない・・恐ろしいことだけど女はそうかもしれないね・・」

 姉の手が妹のデルタの底へと忍び込み、妹は嬉々として腿を割って受け入れる。その妹の手が伸びてきたとき、姉は躊躇なく性を開いて受け入れた。
 早苗が言った。
「涙も涸れて震えてる・・霊感なんて、もしほんとにあるのなら囲まれてしまってる・・森の魔物に・・」
 希代美が言った。
「怖くて怖くて拒絶するけど拒めない・・その濡れを知ってほしい・・あの人は素敵な淫乱・・マゾだもん」
「マゾ・・そうなの?」
「SM小説が隠してあった。古い本なんだけどしまってある。辛い自分が苦しくて、こっそり隠れて読んでるんだわ・・」

 それは知らなかった。
 早苗はそれで合点がいった。姉の願望を知り抜いて、だから妹はその世界へ連れていこうとしていると・・。

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