2016年11月16日

三人姉妹(終話)


終 話


 傲慢なところのある姉がじつはMっぽく、うじうじタイプだと思っていた妹がSっぽかった。女の性(さが)の不可解というのか、ひた隠しにしているものを解放すると見定めたときの女は怖いと早苗は思った。

 その希代美は、早苗と性を貪り合ったことで朝になっても興奮が冷めやらない。子供の頃から三姉妹の中で内向きに封じてきたものが出口を見つけて噴き上げている。若く未熟な母性の暴走だと早苗は感じた。可愛いから虐めてみたい。女にはそういうところがあるものだし、ひとたび残酷が発動すれば、ハッと気づいて母性が押しとどめるまで突っ走る。
 おとなしい妹のどこにそれほどの激情が潜んでいたのか・・一線を超えて肌を合わせた妹は、弾むようで見ていて楽しい。

 しかしまた早苗は、そうした妹への思いとは別に、姉の亜希子の本性を見てみたいと考えるようになっていた。日頃の理性的な姉の姿から、SM小説を読みふける姉を想像できない。それでオナニーぐらいはしたのだろうか? 姉の中にも潜む激しい性を知っておきたいし、この際、妹の暴走に付き合ってみるのも面白いと、わくわくする想いも感じていた。
 妹のS、姉のM・・そんな中で私自身はどうなるのかという好奇心も捨てられない。
「どうするのよソレ?」
「餌よ餌。ボウルごと土間に置いてやってお尻を上げさせて食べさせる・・ふふふ、想像したら濡れてきちゃう」
 亜希子の朝食。トーストとベーコンエッグ、レタスのサラダ、それにインスタントのトマトスープ。二人と同じ食事だったが、希代美はそれらを白いプラのボウルにぶちまけて、ハンバーグを練るように手を突っ込んで混ぜてしまう。まさに犬の餌だった。
「ちょっと可哀想ね」
「可哀想なもんですか、マゾらしい朝食だわよ。こういうときってハンパはダメよ、どん底まで堕としてやらないと・・うぷぷ・・あははは!」

 緑の森は朝露にすがすがしく輝いていた。
 たくさんの餌の入ったボウルを持って小屋に入ると、全裸の亜希子は、太い立ち柱を背抱きにさせられ、古びたムシロの上に座ったまま、がっくりと首を折って生気がなかった。夕べは一睡もしてない。漆黒の闇の底で震えて過ごした一夜だった。
 小屋に入ってすぐ希代美はそばに置いたトイレのバケツを覗き込む。
「あら、おしっこだけ? ウンチはしなかったんだ? あははは、なんとまあおしっこ臭いこと・・あははは!」
 ゆらり・・長い髪を垂らして顔を上げる亜希子。希代美はそんな姉の前にしゃがみ込み、顔に垂れる髪を掻き上げてやって、すっかり弱くなった姉の眸を覗き込む。
「少しはこたえた? 闇の中で反省した?」
 亜希子はこくりと首を折り、見る間に涙があふれてくる。
 第三者を決め込む早苗。しかしゾクゾクする不思議な興奮を感じていた。虐待される全裸の女の悲壮感がたまらなくエロチック・・。
「お返事は! あたしが言ったことに応えなさい! 少しはこたえた!」
 と厳しく希代美は言って、姉の頬を強く叩いた。ぴーんと小屋の空気が震えるような音がする。
「・・はい、ごめんね希代美、早苗もごめん、許してちょうだい」

「ごめんね希代美? 許してちょうだい? たいそうな口きくじゃんか! 言葉に気をつけな!」
 亜希子の眸が恐怖に竦み、全身に鳥肌が騒ぎだす。
 希代美は、綺麗な乳房の先でツンツンに尖っている姉の乳首を両手につまむと、爪を立て、乳房が伸びきるほどに引き上げて、乳首で吊って姉を立たせた。亜希子は痛みに呻き、涙をこぼして立ち上がる。
 それでもグリグリ乳首をひねりつぶし、髪を振り乱して泣く姉の顔を覗き込む。
「痛いよね、痛い痛い。これからはちゃんとなさい! 姉だなんて思わないで!あたしやお姉ちゃんの言うことに即座に応える。いいわね!」
「はい、ごめんなさい、気をつけます」
「お許しください希代美様でしょ! タメ口きいてんじゃねえよ!」
「はい! お許しください希代美様、早苗様・・ぅぅぅ・・うぅぅーっ!」
「泣くな、うるさい!」
「はい希代美様!」
 唇を固く結んで幾度も幾度もうなずく亜希子。希代美は振り向き、早苗にちょっと目配せすると、やさしくなって、乳首から手を放す。

 そしてその手で亜希子の髪を撫でつけてやり、肩や腕を撫でてやり、白い乳房を今度は揉んで、白い腹をそっと撫で、指先がデルタの毛むらへと降りていく。
「脚を開きな」
「はい希代美様」
 毛を撫でた指先が、亜希子の奥底へと差し込まれる。
「ぁ・・ン・・」
「感じる?」
「・・はい」
「ほうらやっぱり・・濡らしてる・・ふふふ」
「・・はい・・ぁぁ・・ン・・」
「素直になさい。そうすれば可愛がってあげるから」
「・・はい・・ああ感じる・・いい」
「いい?」
「はい希代美様、すごくいい・・」
「夕べ怖かったね・・悲しくて寂しくて・・」
「はい・・怖くてあたし・・ぅぅぅ・・」
 亜希子は静かに泣いていた。クレバスをまさぐる手の動きを喜ぶように、亜希子は腰を入れて性器を希代美へ差し出した。
 クチュリ・・クチュリ・・いやらしい濡れ音がしはじめて、白かった亜希子の頬に紅がさし、吐息が熱くなってくる。
「このままイキたい? イカせてほしい?」
「はい希代美様・・いいの・・ああ感じる・・溶けそうなの・・」

「でもダメよ・・ご飯持ってきてあげたけど、その前に鞭の味を教えてあげる・・ふふふ・・だけど可哀想なんかじゃない・・マゾだもんね、お姉ちゃんて・・」


「なるほど、そうやってエスカレートしていった。それはSMのようなものだったということですな?」
「はい」 と早苗。
「それで亜希子さん、あなたは裸のまま二人に連れ出されて山へと入った。いわゆる調教・・全裸露出というわけですか?」
「はい」 と亜希子。
「それでたまたま、あの崖のあるところを通りががかり、早苗さんと希代美さんとの二人で、崖っぷちまで亜希子さんを引き立てようとし、そのとき足下の地面が崩れて早苗さんと希代美さんが崖下へと転落した?」
「はい」 と亜希子。
「崖の上に取り残された亜希子さんは、崖下を覗き込み、十メートルほども高さがあったことと、二人がまるで動かないことから、これは大変だと近所の民家に駆け込んだ。もちろんあなたは全裸だった」
「そうです、これは事故であり・・その・・あくまでもSMで・・」
「うむ、SMの延長にあったことで殺意はない。あくまでも事故だった?」
「それはそうです、事故でした。姉が突き落としたとかではなくて、私たちの立った崖が崩れたんです」
 と転落した早苗本人が言い、希代美も黙ってうなずいた。
「なるほどですね。そういうことなら事件とは言えませんな。あのへんは数日前の豪雨で崩れたばかり。地盤が緩んでいたんでしょう。高さはあっても崩れた土がふわふわだったからクッションとなって二人は奇跡的に無傷。亜希子さんの通報も早かったから事なきを得たということで・・しかしですね」
「はい、やりすぎでした、反省します」
 と力なく早苗が言って、希代美がまたうなずいた。

 その日の昼前のことだった。森の中から突如として全裸の女が現れて、家のそばの民家に飛び込み、警察へ通報された。家の鍵は早苗が持っていて崖の下。亜希子は家に入れず、裸のまま隣家へ飛び込んだということだ。
 姉妹二人が崖下に転落したと言う。警察とレスキューが出動したももの、崖下に落ちた二人は念のため病院で一夜を過ごすも、まったく無傷。全裸で現れた亜希子の体にも傷らしきものはない。
 鞭打ちを言い出した妹を止めようとして早苗が山での露出を言い出したというわけだった。
 知らせを聞いた父も母も駆けつけて、三人は厳重注意だけで解放された。

「希代美、おまえはしばらく俺と残れ。二人はママと帰るがいい」

 宗太郎が言い出したことだった。帰りの車中、運転は早苗、亜希子と母親の希美子は後席に並んで座っていた。
「・・だけど父さん、どうするつもりなんだろ?」
 と、運転しながら早苗は言って、ルームミラーの中の母を見る。
 後席では亜希子が母親の横顔をうかがった。
 希美子は娘二人の視線を感じながらも、なぜかちょっと微笑んで、窓の外を流れていく見事な緑に見入っている。
「・・躾けるおつもりなんでしょう」
「躾ける?」 と、後席の亜希子が問うた。
「お父さんは凄いお方よ。かつての私もそうだったけど・・」
「どういうこと?」 と、早苗はルームミラーをうかがった。

 希美子は言う。
「女手ひとつになった私は絶望していた。この先どうしようって、もう真っ白。そんなときお父さんに導いていただいた。お父さんは素晴らしいS様よ」

 早苗は息を詰めた。宗太郎は実の父。そんなこととは知らなかった。

 そしてそのとき、希美子の実の娘である亜希子が言った。
「やっぱりね、そうだと思った。だからあたし小説とか読んでみようと思ったの。ご主人様に導かれる女って、どんなだろうと思ったもん」
 希美子は笑う。
「あら知ってた? ふふふ」
「偶然ね・・着替えをチラと見たときに・・高校の頃だった」
 と亜希子が言い、母の希美子はそっと娘の膝に手をやった。
「乳首でしょ?」
「そうピアス・・」
 早苗にとっては、ハンドルを握りながら、そんな声がどこかかなたから聞こえてくるようだった。母は義母という想いがあって、三姉妹の中で私だけが距離を置いていたことを思い知らされる。

 希美子は言う。
「白状しちゃうね。そうなのよ、クリトリスにもピアスがあるわ。私はお父さんに調教されて・・でもだから安心して生きてこれたの。だからね二人とも、希代美のことはお父さんに任せましょう。今度のことを知って、お父さんは希代美が危ういと感じたんだわ。あの子はどうしようもないマゾだもん。どうしようもない自分に腹が立ってしかたがないけど、どうしていいかもわからない。その攻撃を亜希ちゃんに向けただけ。自分を見定められず寂しくて不安定。いきなり崩れたからエスカレートしてしまう。激しいだけのSは、Mへの憧れの裏返し・・」
 それに対して早苗が言った。
「だけど彼が・・好きな人がいるんだよ?」
 そのとき亜希子が言うのだった。
「あの子、言わなかったんだ? 私が壊したようなものなのよ・・じつを言うと、あの二人、とっくに冷えてしまってる。結果的に邪魔してやったようなもの・・希代美をあんなふうにしたのは私。なのにあの子、私に女の姿を教えてくれた・・可愛い妹・・」


 ピシーッ!
「きゃぅぅーっ!」

 亜希子がつながれた小屋の中の太い立ち柱に、全裸の希代美が、柱を抱かされ縛られていた。
「よくこうしてママを泣かせた。何に迷う? 何が怖い? 何が苦しく何が口惜しい? つまらない自分を吐き出してしまえ。痛みを信じろ。嘘のない自分の声だけを信じて生きろ」
「はい、ご主人様・・あたしずっと、もがいてて・・」
「もういい考えるな。体をもがかせ心を静めるのが鞭というもの・・」
 穏やかな父の声に、娘は圧倒される安堵を感じた。

 ピシーッ!
「きゃぅぅーっ! あぁンあぁン、ご主人様ーっ!」
「ママもそうやってエロチックに尻を振ったさ・・」

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