2016年11月23日

FEMDOM 花時計(一話)


一話


 整理ダンスに嫌なものを感じます。下着の引き出しなのですが、ごくわずか、しまったときとは違うズレのようなものを感じるの。整理ダンスは五畳のお部屋に置いてあり、そこを衣装部屋にあてていた。ドレッサーもそこに置き、ひとつ部屋で着替えからお化粧までがすむように考えていたんです。

 私のところは3LDKなのですが、マンションの造りのせいで五畳のサービスルームがついていた。窓がなくて陽があたらず、部屋とは言えないものですが実質は一部屋分。だから4LDKなんですね。
 寝室にもクローゼットはありますが、六畳ほどのスペースに大きなベッドを置きたかったのと、衣装を置くなら陽射しがないほうが服が傷まず、行ったり来たりも面倒だから一部屋にまとめていたのです。
 サービスルームとは、つまり納戸。物置きなのですが、クローゼットが小さくてほとんど物が入らない。それで整理ダンスを別に置いた。

 寝室とその衣装部屋のほか、広いLDK、八畳の洋間が二つ。片方は私がくつろぐスペースで、もう片方をあの子に与えていたんです。

 私は佐山紀代美、三十六歳。私には血のつながらない姉がいて、その姉の子が章俊、いま二十歳。私の母が佐山の父と再婚で、小学生だった私は母の連れ子。そのときすでに姉の史恵は高校生。姉の実母が失踪し、私の母が後に座ったカタチになる。

 やがて私も姉も結婚で一度は家を出たけれど、姉が先に離婚して、女手ひとつで章俊を育てていた。そしてそのうち私も離婚。もう十歳になる息子を夫の家に奪われて、その代償にこのマンションを与えてくれたというわけです。

 つまり、私も姉も佐山という旧姓に戻っていて、章俊だってもちろんそうで、あの子が家族だと言うなら家族でしょうし・・。

 いまから一年ほど前のこと、その姉が急逝。そのときすでに佐山の父も私の母も去っていて、十九歳の章俊一人が残ってしまった。あの子は、高校を出ても不景気で就職できず、フリーターで暮らしてた。そんな子にあの家の相続税は払えない。私は姉との諍いが面倒で相続を放棄していた。
 古い家だったから実質は土地だけのものだったけど、とにかく処分してしまい、だけどそうなると章俊には行くところがなくなって、それで見かねた私が引き取るようになったんです。

 姉は嫌い、憎悪を感じる。
 姉にすれば、私の母が自分の母親を追いつめたと思ってる。そうじゃないって、たぶんわかっていながら、いい気持ちではいられない。
 それよりもっと決定的だったのは、姉はモテないタイプであり、私の母は美人だったから、突然やってきた妹が比べるまでもなく可愛い娘だったこと。
 高校生の姉ですから小学生の私なんてイジメ放題。それも、女の子にとってもっとも残酷な、性的な虐待です。

 だから姉は大嫌い。

 けれど・・その子供の章俊は、どういうわけか姉よりも私に懐いてくれていた。姉はズボラでがさつな性格、酒好きのどうしようもない女です。私はきっちりしている方で、あの子は私のそんなところが気に入っていたんだと思うけど。

 姉の死でしばらくぶりに会ったあの子は、すっかり大人になっていて、マンションに呼び寄せたときだって、私はちょっと緊張していた。お風呂上がりに裸でうろつくわけにもいかず、それでなくてもあの子の視線を感じていたから。
 いえいえ、といってそれはイヤラシイ目ではなく、遠慮がちにちらりと見ては恥ずかしそうにしていたり・・まあ同居への遠慮もあったのでしょうけれど、でもやっぱり男の視線なんですね。

 寝室や私の部屋に乱れを感じたことはありません。さすがにそこは入ってはいけないと思ってる。だけど衣装部屋は、衣装の他にも細々としたものが置いてある物置きであることと、それよりきっと化粧品や洋服の・・女の匂いに惹かれてるんだと思うのです。
 夫と別れて独りになって、母がやっていたスナックを引き継いだ私ですから、夜の女の匂いがする。それは明らかに家庭に入る女たちの体臭ではなく、だから余計に若い男の子をおかしくしちゃう。

 それにしても、パンティやブラの詰まった引き出しをまさぐるなんて、非礼だし悲しいこと・・と、そう思ったときに、母をてごめにした佐山の父もそうですし、私を捨てた夫、それに会いに来てもくれない息子のことまでひとまとめに、男に対して腹が立ち、まして憎い姉の子供ですからね、そんなこんながごっちゃになってムカムカしてきたんです。

 章俊は、あのブスには少しも似ずに、目の綺麗な男の子。気が弱くて小心者。背丈だって百六十二の私よりは大きいけれど百七十はないはずよ。恋人なんて気配もなし。だから可愛がってあげようと思っていただけに、反動というのか、落胆が大きかったのだと思う。

 いいえ、説明のつかないもっとグダグダした感情でした。

 ちょっとは懲らしめてやろうと考えた。そしたらなんだか胸が躍って、どんどんイジワルになれていく・・ふふふ。

 お店が休みの土日を除いて、私は夕刻前に出て深夜に戻る生活です。あの子はコンビニとお蕎麦屋さんでバイトして、シフトがあってバラつくことはあるのですが、だいたいお昼前に出かけて九時には戻っているようです。
 私は昼前頃まで寝てますからね、平日はほとんどすれ違う感じです。

 どうしてやろう・・イジメてあげるわ。

 それで私・・まずはイヤというほど女の私を感じさせ、悶々とさせてやろうと考えた。言い逃れできない、それも男として最低の行為・・その証拠を押さえなければならないし。

 そしてその日、雨がひどくてお客さんがパッタリで、いつもより早くお店を閉めた私は、帰りがけにコンビニでケーキを買って戻ったの。
「ただいま」
「はい、お帰りなさい」
「参ったわ、雨で散々。お客はないし濡れちゃうし。はいこれ、一緒に食べよ」
「うん!」
 丸い目で女の子みたいに笑うんだもん・・ふふふ、可愛い。

 私は計画したことを実行していったのです。

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