2016年11月24日

FEMDOM 花時計(三話)


三話


 翌日も、その翌日も、着替えているとき模様ガラスの向こうに章俊の影があります。汚れた下着だって同じように洗濯機に入れてある。
 毎夜、同じような姿で体も揉ませ、やんわりと言葉で責めて・・。
 だけど私はイジメはやめようと思い直していたんです。下着ぐらい若い子の当然の興味だし、こんな私に興味を持ってくれることが嬉しく思えて、可愛いなって感じてた。

 なのに、その次の日です・・整理ダンスのパンティの引き出しに信じられないものを見た。
 夜の仕事をしていると、知らず知らず、女でいないといけないなんて思うようになり下着もエロチックなものが増えてくる。そのカラフルなパンティが並ぶ中、花柄の一枚のたたみ方がはっきり違って、そのそばの黄色い布の上に黒い毛が・・私の毛ではありません。私は赤みが強くて細いのです。

 黒くて太い陰毛でした・・。

 あの子まさか、パンティ穿いたりしてるのかしら?
 それでもなければ、この部屋でオナニーを?

 脇の下の毛かも知れないけれど、それにしたって、ちょっと信じられない思いがした。
 そしたら急にムラムラとしたものが湧いてきて、腹が立ってきたんです。あの子の毛をティッシュにくるんで、捨てずにおいて、いよいよ私はおかしくなっていったのね。

 その翌日は土曜日でお店は休み。だけどあの子はバイトで出かける。いつもなら私は昼過ぎまで寝ています。そんな朝、寝室の外の気配をうかがっていた私は、あの子が起き出して洗面に向かう様子に、そっとベッドを抜け出して音がしないようにドアを開け、後を追ってみたんです。

 脱衣場への角のところで、そっと覗く。
 それで私、愕然としてしまう。
 夕べ穿いてた青い花柄のパンティが洗濯機に入れてあり、章俊がやっぱりそれを手に取って・・それもよ、パンティの裏底をひっくり返して鼻先に近づけて、汚れたところの匂いを嗅いでる。

 ムッとするやら恥ずかしいやら・・頭に血がのぼってしまいます。

「あなた何してるの!」
「あ・・」
「もうサイテー! ひどいわよ!」
 それで私、パンティをひったくると、あの子のパジャマの胸ぐらをつかんで衣装部屋に連れて行き、ティッシュにくるんだ陰毛を突きつけてやったのです。
「これは何! 章俊、あなたね! 私の下着穿いたりしてる! ほんともうサイテーよ! 見損なったわ!」
 あの子は蒼白。私は感情が逆巻いて計算外の涙になった。なんだかもう情けなくてなりません。
「下着の汚れを嗅ぐなんてサイテーの行為だわ! ド変態! いつからそんな変態になったのよ! 許さない・・絶対に許さないから!」

 あの子ったら、涙も何も、顔色をなくしてただ震えていましたね。

 最悪のムードの中・・章俊にはバイトがあって出かけていきます。フリーターには決まった休みはないようで、土日だって無関係。それで私は、思案のあげく、あの子の帰ってくる時刻に家にいないよう、プチ家出をしたのです。
 十一時頃になり、少し飲んで帰った私。玄関を静かに入って、その気配ですまなそうに出迎えるあの子を無視してすれ違い、衣装部屋ではなく寝室で着替え、それからお風呂にしようとした。

 寝室を出ると、Gパン姿のあの子がリビングのソファにうなだれて座っている。
 私はその背に歩み寄り、言ってやったわ。
「私はここで脱げないわけ! 自分の家なのに下着だって置いとけないんだ! 洗濯物を入れとくこともできないのよね! この変態! 悲しいわ、イヤんなっちゃう! よくも私を侮辱してくれたわね!」
 女って感情を学習する生き物で、激高すると涙が出てくる。

「ごめんなさい・・ごめんなさい、二度ともうしませんから」
「あたり前でしょ! サイテー男!」
 章俊は泣いてしまって、私の足下に土下座をします。
「あなたね、女の下着に興味あるの? まさか盗んだりしてないでしょうね?
 スカートの中を盗撮するとか?」
「してません、そんなこと」
「ほんとに!」
「はい! ごめんなさい・・ぁぅぅ・・」
「泣いたって話にならない! 私がどれほど傷ついたか、ちょっとは考えなさい! ねえ章俊、ほんとのこと聞かせて。私のパンティ穿いたりしてる?」
「・・ぅぅ・・それは・・」
「どうなのよ! はっきりしないと許さないから! 正直におっしゃい!」

「はい」
「穿いてるの?」
「はい、綺麗なものばかりで、いいなぁって思って・・」
「馬鹿ぁ! ああサイテー! ド変態もいいとこだわ! 女装がシュミ? へええ、どうしようもない男だね!」
 そして私は、計算しつくした言葉を足していきます。
「そうよね! あの女の息子だもんね! あのサイテーの母親の! ママのパンティ穿かせてもらっていたんでしょう! 親子揃って人格欠落!」
「ぅぅぅ・・うわぁぁーっ! ごめんなさい、ごめんなさいぃ!」
 泣き崩れてしまいます。くだらない女でも母親を軽蔑されれば子供は辛い。ましてそれが自分のせいだと痛感すれば、なおのことたまらない。

 そして私は、いかにもハッとしたように言うんです。
「ごめん・・言い過ぎちゃった。ごめんね章俊」
 そう言って頭を撫でてやったのです。だけどそれが泣き声に火をつけて。
 心のやさしいあの子は、よけいに自分がしてしまったことの罪深さを思い知る・・と、計算しつくしたことでした。

「ごめんなさい、心から謝ります」
「ダメね、もう一緒には暮らせない」
「嫌ぁ、行くところがないから。ごめんなさい・・どんなことでもしますから。お願いですから・・ぅぅぅ・・償いますから」
「償う? どうやって? 私の心をズタズタにして、どうやって償うの」
「どんなことでも・・心を入れ替えて・・ごめんなさい」

 ああダメ・・女の足下で竦む子を見ていると、メラメラと残酷の心が揺らぎだす。

「お仕置きするけど、それでもいい?」
「はい!」
「ちょっとぐらいじゃ許さないから。イジメてやるわ。それでもいいのね!」
「はい、どんなことでも。紀代美さん、やさくしてくださったのに、傷つけてしまいました、心から償いますから」
「ほんとね! 私が許せるまで償ってくれるのね!」
「はいぃ!」

 ふふふ・・許さないわよ、男なんてみんな同じ。サイテーだわ。
 私があの女にされたこと、子供のあなたに返してあげる。

 私は恐ろしく冷えた目で見下ろしていたのですが、一方で、そう言えばこの子、ここで暮らしだしてから私のことをおばさんと呼んだことがない。紀代美さんと言ってくれる。そんな想いも重なってはいたのです。

 とっても可愛い子ですから・・。

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