2016年11月11日

かすみ網(下)

 麻縄です。しっかりとした芯のある強さが肌に食い込んで、酔う
ように、のぼせるように・・頭がぼーっとしてくるの。

 乳縄に白い房が張り詰めて肌に血の道が浮いてくる。内側から押
されるみたいに乳首が飛び出し、胸骨の開かない苦しさに浅い息を
繰り返し・・手が背中に締め上げられて。縄はおなかへ。
 腿まで縛られ、立たされたまま身動きできなくされていく。

 毛を失い、縄がけされない白いデルタに、隠せないクレバスが剥
き出しになっていて、露出の羞恥に耐えたご褒美をいただくの。
 ピンク色した可愛いローターをクリトリスにあてがわれて差し込
まれ、スイッチが・・だけど弱。ブルルンと震えだし、ゾクゾクす
る快感が体中にひろがって・・。
 逃げたくても腿は縛られ閉じたまま。手も使えず、ただクネクネ
と裸身を歪めて耐えるのです。

「ふっふっふ、ゾクゾクしてる。鳥肌でブツブツだ。感じる感じる。
ふっふっふ」
「ぅ・・ぅくぅ・・むぅぅン・・」
 くぐもった喘ぎ。額に汗が浮いてきて・・。
 椅子にお座りのご主人様に、立たせM女のクネクネ踊りをお楽し
みいただくの。ああ辛い。感じるけれどイケない振動。
「ぁむむ、ンっンっ・・くぅぅ・・」
「どうした? いいんだろう?」
「はい、あぁン感じるぅ、・感じますぅ・・」
「しばらくそうしてクネってろ。もっと尻を振って。ふっふっふ!」

 蜜が・・愛液がダラダラに流れ出し、閉じた内腿がヌラヌラ滑る
感じがする。すごくいい。でも辛い・・辛いです、ご主人様。

 ピンチ。ステンレスで少しバネのきつい洗濯バサミ。キリキリと
軋んで開かれて、いやらしいほど飛び出した乳首を挟まれます。
「あンむぅぅ!」
「うんうん痛い痛い。すぐによくなる、痛みを愉しみなさい」
 ほんとに痛い。顔をしかめてみるけれど、体は痛みと快楽の二重
奏を覚えてしまって、ますます濡れがひどくなる。
 後ろから抱かれ、両手で乳房をつかまれて房ごと振られ・・そう
すると乳首のピンチが暴れて揺れる。

「あぅ! むむむ、痛いぃ、ああーっ、ご主人様ぁ!」
「うんうん可哀想に可哀想に・・」
 うなじに口づけされたとき、ゾゾゾーッと震える快楽が・・お尻
をそっと撫でられて、撫でられながら肩を噛むように唇が這うので
す。
「ぁわわ・・ぁはっふン・・ぁわわ・・」
「ハフハフ言ってる・・ふっふっふ、可愛い可愛い、圭子は可愛い
女だね」
「ほ、ほんと・・ほんとに? 私は可愛い?」
「うんうん可愛いよ、いい子だいい子だ」
「はい・・嬉しい・・ご主人様・・」

 カスミ網。細い糸をつかんだばかりに放すことができなくなって、
女はジタバタするだけで・・。
 放したくない・・羽ばたくけれど飛びたくない。もっと欲しいの。
虐めて欲しいと思えるの・・。

 快楽に膝が崩れては立て直し、白い女体を桜色に紅潮させて私は
もがく。喘ぎ、悶え、もがき・・飛び出した乳房をブルンブルンた
わませて乳首のピンチを振り回し、お尻をすぼめ、すぐまたゆるめ
て、またすぼめ・・火のような息を吐いてよがってる。
「ぅぅぅ、辛いですぅ、ぅぅぅ・・」
「ふふふ、泣いちゃった。イキたいのか?」
「はい! ぁぁご主人様、イキたい。辛いのぅ・・」
「よしよし・・でも、まだまだイカセない・・ふっふっふ」
 そして鞭を・・乗馬鞭です。
 ご主人様の責めはおやさしく、だけど逢瀬の度に一度だけ意識が
白くなる痛みをくれる。
「イキたいなら鞭の味も覚えないと」
「はい」
「お尻を出して」
「はい!」

 ビッシーッ! ビッシーッ!

 ぎゃっと悲鳴を叫ぶぐらいの激痛が、お尻の左右に一度ずつ。
 一撃でお尻のお肉が痙攣しだしプルプル震えているんです。だけ
どそれだけ。露出の羞恥に震えて耐えて、お仕置きではない躾鞭を
いただいただけなのです。
 痛いのは嫌いよ。でもね、ご主人様の鞭の痛みは違うのです。

 股間のローターが蜜糸を引いて外されて、乳首のピンチも外して
くださり、後ろからしっかり抱かれ、乳房を揉まれ、痛い乳首を捏
ねられて・・。
「あぁン、ああン、ご主人様ぁ! 欲しい! 欲しい! めちゃめ
ちゃにしてぇ!」
「うむ、よくやったぞ、一生懸命ついてきている」
「はい、お慕いします、ご主人様」

 お手が、おなかから滑り降り、毛のないクレバスを分けられて、
ヌラヌラになり湯気を上げて熱を持ったラビアをなぞられ・・。
「ああンああン! いいーっ! 感じるぅーっ!」
 グチュグチュと掻き回されて、腿を縛られ開かない腿の奥でヌッ
チャヌッチャと貪欲な音までさせて・・。


 どんどん奴隷になっていきます。私はM女ではないはずでしたが、
すべてはカスミ網・・もがけばもがくほどサディズムが欲しくなる。

 こざかしく考えず追従する安住。カタチの違う情愛がクセになり、
もっともっとと調教を求めてしまう。

 腿を縛る縄だけ解かれ、脚を開いたそのときに、お部屋の空気の
冷たさを思い知り・・それだけ腿の間は灼熱なので。
 これでもかとお尻を差し出して、ご主人様の素敵なお体を性唇に
いただくの。
 ヌルリ・・ズブリ。
 シュボシュボと愛液を噴き出すようなアクメ音をさせてまで、私
はよがり叫んでいるのです。

 瞼の裏に虹が見える。目眩がする。総身わなわな震えてしまう。
 マゾ牝のあられもない声をまき散らして果てていく。

 ああ凄い、なんて凄い。溶けていく。体よりも牝の心が溶けてい
く。白い女体が黄色い悲鳴を搾り出し、牝尻を振り立てて・・これ
よりない高みのアクメへ向かってく・・。

 気が遠くなったとき・・。

 手を縛られて、目眩でお部屋がぐるぐるしていて・・それでもね、
私は堂々と後ろに倒れることができるんですよ。ご主人様が抱き留
めてくださるから・・目を閉じて後ろに倒れていけるのです。

 倒れないよう、転ばないよう、妙にリキんだレディのセックスで
はありません。プライドさえも些細なこと。信じて委ね、そしてき
っと抱き留めていただけて、その中で臨死のアクメを味わえる。

 羽ばたきます。逃れらないカスミ網を懸命に
 握り締め、私はパタパタ羽ばたきます。

 カスミ網は、女のそばに探せばあるわよ。
 ただひとつ、それはね・・望んで飛んで
 つかんでみないと得られない。愛を求める能動が
 連れてくる。望んでマゾになればいい。
 それからの女の日々を受け身でいられる幸せのため・・。

かすみ網(上)

 私は私をマゾヒストだなんて思っていません。
 ただちょっとMっ気があるというのとマゾは違う。
 辛いだけの居場所にいるほど私のM性は強くない。
 
 そんな私がどんどん躾られていくのです。
 あの方のおそばが、なぜかとても心地よく、わずか
 だった私の中のM性が、ちょうど苗が育つように
 若葉をひろげて育っていってる。

 小鳥は足場を蹴らなければ飛び立てない。
 あの方の抱擁は心地よく、やさしく、けれども
 飛び立つ足場のないカスミ網。捕らえられた私は、
 パタパタと性のよがりに羽ばたいて、もがくように
 網を握って飛び立てない。
 そんな私をあの方はそっと抱いて守ってくれる。
 不思議な幸せ。
 ノーマルラブでは得られない幸せが網となり、
 小鳥の私は飛ぶに飛べず、ただ可愛い女となって
 虚しい羽ばたきに身悶えてる。

 ああ・・どんどん深みにはまっていくわ。
 切ないまでの被虐の酔いを覚えてしまった女の
 性器がトロトロ蜜をしたたらせ、
 ピィピィ可愛く啼いている・・。


 私は愛を判断するほど強くはなかった。考えたって悩んだって、
どうせ追従するしかないのです。好きだから追従する。そのときに
ウジウジ考えたくない私。女って、何を言ってみても最後には男性
の人生を膣に受け入れ、その答えのように誕生する子供と一緒に境
遇に順応して生きていく。
 それがポジに向いてる間は幸せで、一旦ネガに向きだすと不幸に
さえも順応しなければならなくなる。
 私は未婚ですけれど周りを見てればわかること。身近なところで
たとえば姉がそうなので・・薔薇色の笑顔が散ったとき、トゲしか
心に残っていない。
 それがね、ハッキリ不幸になるならいいんです。離婚してリセッ
トすることだってできるでしょう。和音の中に微妙な不協和音が混
じってる。不幸ではないけれど女の幸せを誇れない。そしてきっと
私なら、そのときになっても愛を判断できないでしょう。

 だから・・考えなくていい愛に憧れた。どなたかのおっしゃるこ
とを一心に聞いて受け取って、ただ追従することの幸せを夢に見て
いたんです。
 女たちは、どのみち追従することになる人生に半端な意思を織り
込むもので、そこに不協和音が生まれてくるの。だから私は考えな
いセックスに身を委ねた。幸せなのかと迷うより、不幸ではない確
信に胸を張って生きていたい。男なんて先着順よ。そのときどき周
囲にいる男たちと交差して女は生きる。いまこのときを異端の主に
仕えることも人生の色だと思うのです。

 栗原圭子、三十歳。
 オフィスに少し長居しすぎた女かも・・(笑)

 あの方とは・・ご主人様とは父親ほども歳が違い、
 落ち着いた穏やかさ、柔和な責め・・カスミ網の
 抱擁に捕らえられた、私は啼き鳥。
 ご主人様はおっしゃいます。
 「おまえにオンナを愉しませるため、僕はいる」


 逢瀬です。リゾートホテル。お部屋のフロアに私は裸で正座をし、
椅子にお座りのご主人様に見つめられているのです。やさしい微笑
みに心が凪いで、私もまた微笑んで・・ソフトなお声を聞いてます。
 ご主人様とのこの半年、ご主人様は一度たりと声を大きくされま
せん。懸命に聞いていないと聞き漏らしてしまうほど、おやさしい
声なのです。

 お手がすっと伸びてきて、乳先にツンとある尖った乳首をつまま
れます。コリコリと捏ねられて、力が込められ、ツネられて。
「ぅ・・ぅン・・」
「ふふふ、少し痛いね、いい子だいい子だ。ふふふ・・さて、どん
な恥辱が映るかな。恥ずかしい姿だろうね」
「はい・・うふふ」
「うんうん笑った、圭子は可愛い、それでいいんだ」

 ああこのムード。カスミ網の正体だわ。心から安堵して羽ばたい
てはみるけれど、それは飛び立つほど強くなく・・小鳥はむしろ喜
んでパタパタしている・・そんな感じ。

 ご主人様のお手にすっぽりおさまるビデオカメラが、ホテルの大
きなテレビにつながれます。今日お会いして、ここに来るまでの間
のご調教。露出のシーンが収められているんです。
 アソコが溶け出すような羞恥が蘇り、どんな私が映っているのか、
女体がカーッと熱くなる。ついさっき、私は公園のあるサービスエ
リアで偶然出会った男性にカメラを手渡し、お願いしました。
「あ、あの・・」
「はい? 何か?」
「これで私を撮ってください」

 今日の私は白いワンピ。すごくミニで、ワンピの下は全裸です。
 陰毛を許されず、毛翳りが透けることはありませんが、目を凝ら
せば薄い生地がビーナスラインを素通しにし・・ヒールを履いて、
腿もお尻も強調されて、胸を張って乳房を誇り、乳首の突起を目立
たせて歩いていました。
 その日、ご主人様とお会いしてホテルに着くまでの間、私は見ず
知らずの男性にビデオカメラをお渡しして撮っていただき、そのお
礼を差し上げる。それが逢瀬の序章なのです。

 三十代の素敵な男性。傍目には恋人同士に見えたでしょうが、思
ってもみないM女との遭遇に緊張した彼。そんな人に男としての性
欲を感じてしまって、私はドキドキ苦しいほど・・。
 彼は私の後ろを歩き、レンズで狙っているんです。
 大画面テレビに、歩いているだけでもきわどい私の後ろ姿が映っ
ています。逆光なら素っ裸が透けてしまう。今日は、足下の小石を
拾ってポイと投げる可愛いシーンからはじまりました。

「石かな?」
「はい」
「うんうん、可愛い女の仕草だね」

 画面の私が、どこかで見たような女のようで・・とても正視でき
ません。脚をかなり開いた私は、体を折って小石を拾っているので
すが、そのときに脚を曲げることを許されない。ワンピの丈は股下
わずかな長さしかなく、お尻そっくり、毛のないアソコも恥ずかし
いお尻の穴も、何もかもが映ってる。

「いやらしい女だ、糞門まで晒し・・ふふふ」
「あぁ嫌ぁン・・」
「クレバスは閉じてるが、ラビアがハミ出ていやらしい」

 そうやって公園中を歩き回り、前から後ろから、毛さえなくして
隠しようのない性器を撮られていくのです。
 息が・・よがるように乱れてしまい、けれども懸命に取り繕って、
その方には明るい笑顔を振りまいて。
 乳首なんてツンツンに尖って勃って、恥ずかしさに感じ入って、
性唇の合わせ目に蜜が滲み、ゾクゾク震えてくるんです。

 木陰に入ったシーンの中で私は樹に手をついて、脚をぱっくり開
いて立ってお尻を突き出し・・そんなM女の性器めがけてレンズが
迫り・・もちろん彼もしゃがんで見ている。
 ああ濡れる・・膣奥からトロリとあふれ出る熱汁の感覚をラビア
に感じ、私はもう欲しくて欲しくてたまらない。
「ふふふ、濡れてきましたね、ヌラヌラしてる」
「嫌ぁぁ、おっしゃらないで・・」
 そんな声まで録音されて・・白い腿をプルプルさせて見られてい
るのよ。熟した牝の性欲の湧くところ・・アソコ。

「撮っていただきありがとうございます。お礼を差し上げたいので
すが」
「お礼とは?」
「撮ってください。あの、指先が映るように撮りながら・・」
「クチュクチュすればいいのかな?」
「はい。ぁぁン、触ってぇ・・可愛がってぇ・・」

「ふふふ、ほうら指が伸びてきた、男らしい太い指だね」
「はい・・ハァァハァァ・・ご主人様ぁ・・ハァァ!」
「ふふふ、感じて感じてたまらない、息が荒い、淫乱女だ・・」

 大写しになるM女の性器の横の方から、その方の指先が映像に侵
入し、淫らスジの全体に滲んでしまった濡れをなぞり・・。

「あ! ぁぁン、ぅぅン!」
「感じるのかな?」
「ああイキそう、ああダメぇ、立ってられない・・」
「可愛いお尻がひくひくしてる。こうされて嬉しいんだね?」
「はい、嬉しい、ありがとう」
「うんうん、可愛い人だ。綺麗なアソコだよ」
 クチュ・・ヌチャ・・かすかな音まで録られていました。

「マゾ花はつねに濡れて嬲りを求める」
「はい」
「この人も言ってるだろう、可愛い女だと」
「はい」
「よろしい、よくやった。恥ずかしかったね、頑張ったんだもんね。
いい子だ、圭子はいい子だ」
「はい! ぁぁご主人様ぁ!」

 体が燃えて・・アソコはもう洪水で・・。
 むしゃぶりつく全裸の私を、ご主人様はそっと抱いてくださるの。
 泣きたくなる羞恥なのに、ご主人様に誉めてもらえたその一瞬、
アクメのような快楽が湧き上がってくるのです。

 暴発する欲情を抱き留められて、唇も奪われて・・いいえすべて
をお捧げし、それから私は縛れていく・・。