2016年12月05日

FEMDOM 花時計(終話)


終話


 奴隷部屋はあの子にとって泣き部屋でした。責められて泣くことよりも、放置されて孤独で泣くことの方が多いと思う。
 一本鞭かな? 睾丸を蹴ってみる? 針だって面白い・・とワクワクしながら連れ込んで、だけど一瞬後に考えが変わってしまう。
 トイレから奴隷部屋へ。だけど思い直してリードを引いて、お昼前の日当たりのいいリビングに連れ出して、そう言えばずっと日陰で可哀想。サッシ越しの陽を浴びさせながら、私はソファに脚をM字に開いて上げて、アソコを舐めさせていたんです。

 ただし乳首には、あの分銅付きのギザギザクリップで挟んでやって。四つん這いで夢中になって舐めるほど錘が揺れて、顔をしかめて舐めてます。
「痛みは奴隷の快楽よ、わかった?」
「はい、女王様」
「痛みで射精できるようになれば奴隷暮らしは天国だわ」
「はい、女王様」
「亀頭をこする射精はないと思いなさいね。そんなガイコツチンポ、触る気もしませんから」
「はい、女王様」
「仕事もせずに犬みたいに飼われてるだけで食べていけるなんて感謝でしょ。どっかのSMクラブにでも貸し出してSMショーで稼がせてもいいけれど・・
ふふふ、それはないわね、おまえは私だけのもの、そう決めたの」
「はい! ご奉仕します!」
「もっとお舐め」

 私だけのものと言われたことが嬉しかったのか、瞼を濡らして懸命に舐める奴隷です。
 乳首につけたクリップは、乳首を潰しきるまでギシピシ軋んでいたけれど、もう音はしませんでした。
 浅いアクメがずっと続くペロペロ奉仕。一時間か、それくらいした頃に、泣きべそが呻きだし、はっきり涙を垂らしたのです。
「乳首痛いの?」
「はぃ、千切れそうです」
「いいわ、許してあげる」
 それで両方ともを無造作に開いてやったら、それだけで・・。
「むうう、痛いぃぃーっ! えーんえーん、えぇーん!」
 子供みたいに、えぇーんと泣く。
 後ろを向かせ、ソファから身を乗り出して抱きながら。
「許すから、後ろ手でアソコを触ってごらんなさい」
「はぃ、嬉しい・・」

 羽交い締め抱きをして、ぺったんこに潰れた乳首を爪先で弾いてやります。
 奴隷の手が後ろに回され、腿の内側を撫でながら奥へ来て、指先が濡れるクレバスに触れるんです。
「わかる? 濡れてるアソコよ」
「はぃ」
「幸せ?」
「はい女王様、幸せです」
「じゃあ・・ふふふ、乳首をどうして欲しいかな?」
「はい、ツネりあげて可愛がってくださいませ」
「こうやって?」
 グリッとコネたわ。
「うわぁぁーっ!」
 激痛に全身が硬直します。
「痛いね、可哀想ね、イケるんなら、いいわよ、飛ばしてごらん。ピュピュッて飛ばしていいからね」
 指先に力を集め、爪を立てるようにしてグリグリとコネてみる。
「ぁくく・・痛いぃ・・でも女王様、気持ちよくなれるまで頑張りますから、ウンチもいただきますから・・ありがとうございます・・ぅぅぅ・・えーんえぇーん、痛いぃぃーっ!」
「あははは! 言ってることが支離滅裂・・あははは!」

 だけど・・。

「はぁぁん・・気持ちいい・・出そうですぅ・・」
 声が泣きよがりに変わっていく。
「いいの? こんなにされて?」
「はい気持ちいいです・・だって・・だって・・」
「だって何よ?」
「女王様が大好きで、女神様で・・どんことでもいたしますからぁ・・嬉しいです・・あ!」
「イクの?」
「はい出ますぅ、ゾクゾクしますぅ」

 それで私は、鋭い爪先を乳首にまともに食い込ませて渾身の力で潰してやったわ。ヌルヌルした血濡れが指先を滑らせて、だから爪を立てたんです。
「ぐわぁーっ! ひっ!」
 脇越しにのぞいていたペニスが、ドクドクとした脈動の後、さらに一回りほど太くなり、水鉄砲みたいな射精をした。一メートルほども飛ばし散らす、可愛い男のアクメです。

「おまえ・・」
「はぃ・・ぁぁ気持ちぃん・・夢みたいぃ・・」
「好きなんだね私のことが? 真心なんだね?」
「はい。捨てないで。ご主人様ができても、どうか僕を捨てないでください。僕、死にます」

 涙が出そうになりました・・。

 奴隷部屋に連れていき、鞭打ち台に据え付けて、お尻のプラグを外してやって、太いペニスのついた責め道具を私の腰につけ、犯し抜いてやったのです。
「おおう! 狂います、狂っちゃうーっ!」
「鞭も好きになるんだよ!」
「はぁい!」
「針もね!」
「はぁい! 女王様のおためなら、笑顔のためならどんなことでも。ああ気持ちいい・・嬉しいぃ!」

 この子はマゾなのだろうかと、お尻の火傷絵を見ながら思ったわ。
 最初はきっと若い性欲で私の下着に興味を持っただけだった。汚れたパンティを鼻先で見つめてて、もしかしたら・・。
 深く突き刺したまま動きを止めて私は言った。
「おまえ、私の汚れた下着を見ていて、どう思った? 隠さず言ってごらん」
「はぃ。べっとりと糊みたいな汚れがついてて、これは女王様のお体から出てくるもので・・素敵な女性の紀代美様もどうしようもない女の体をお持ちなのだと感じてしまい」
「嫌だわ、恥ずかしい」
「はい、ごめんなさい。でも、それを舐めてみて・・」
「舐めたの? 汚れを?」
「はい。ごめんなさい」
「変態。サイテー」
「はい変態です・・でも、そしたらなんだか嬉しくなって・・」
「嬉しくなった?」
「はい。ウンチもするしおしっこもするだろうし・・だけど普段はすごく素敵で・・そんな生きた女性と一緒にいられることが嬉しくなって。僕はずっと独りぽっちだったから・・ママなんて汚くて、アバズレで・・」
「それで私が好きになったの?」
「はい、惚れました、この方こそ女神様だと思ったら、お捧げしたいと考えて」
「私のために?」
「はい。可哀想に離婚されてお子様まで奪われて、僕がずっと守ってあげたいって考えて。息子になってあげられると思って。だけど・・」

「だけど? まだあるの?」
「はい。下着のことで傷つけてしまって、それでご調教されるうちに、心から反省して、厳しくて女らしい女王様の紀代美様がますます好きになっていき」

「ふっ・・ふふふ、何よそれ・・バッカみたい」
 腰を退き、突きあげて突きあげて・・。
 おおぅぅ!・・と獣の咆吼。

 そんな・・射精しながら失神してノビてしまった・・。
 館脇さんに抱かれていて、心のアクメに打ち震えて気を失った私のように・・。

 私はまだ子供が産める。でも・・求める精液は誰のもの?

「神様に委せよう」・・そう言った彼の言葉が女体の奥で聞こえていました。


「はい、いくつ! 数えなさいって言ったでしょう!」
「はいぃ! 百七十・・わかりません・・えーんえーん・・えぇーん、愛してます女王様ぁ! もっとください、鞭を・・頑張りますからぁ! 一緒に生きていきたいんですぅ! 見捨てられたら死にますぅ!」

 一本鞭の血腫れで体中がボロボロです。だけど、そこまで言われて動かない女心はありません。

 鞭が・・力の抜けた手からすとんと落ちたわ。
 花時計の、血の色に咲く鬼薔薇が・・すがすがしい紅色の女薔薇に変化していた・・。
      

FEMDOM 花時計(十九話)


十九話


 館脇さんとの出会いとなった雨の夜。ゲリラ豪雨なんて言われるけれど、その夜も空の底が抜けたような雨でした。
 奴隷の体に火傷絵を描いてから数日、泣きべそにはやさしく接していたのです。お尻のおメメはすっかりもう肌色のテンテンに変わってて、乳首の周りもそうひどくはありません。けれど亀頭に描いた・・と言うより、煙草の火種で抉るように描いたおメメは惨たらしく抉れ、ひどいことをしてしまったという自責の念も少しはあった。
 こうしてお店にいるときだったり、館脇さんのお部屋にいるときの普段の自分からは想像できない、まるで悪夢の中の魔女のような私。その私を受け止めてくれる奴隷に対して、私は口では言えない何かを感じ出している。

 あの子はペット? それともオモチャ? 我が子への躾け?

 わけのわからない激情だけが湧き上がり、可愛くて可愛くてたまらないのです。

 九時になって携帯からメールしてみて、たったいま戻ったと聞かされた私は、嵐でお客のないお店なんて閉めてしまい、タクシーで向かったのですが、タクシーに乗るまでにすでにびしょびしょ。降りてからのわずかな距離でまたびしょびしょ。パンプスの中までずぶ濡れで玄関に立ちました。お化粧なんて流れてしまってひどいものです。
 そんな私を彼はバスタオルにくるんで抱いてくれ、雨の中を訪ねてくれた女王様に対するように、溶けるようなキスをくれる。
 とにかくまずシャワーして、彼のお部屋に置いてある下着に着替え、それにエプロンだけを着てキッチンに立ったのです。彼は夕食がまだでした。お店のお料理を温め直す程度のものでも、そうやって新妻みたいに振る舞うことが嬉しくてならないの。

 だって・・裸にエプロンなんて三十七の熟女がすることじゃない。
 わかっていても、それはきっと、少しなりと体に若さの残るうちに可愛いところを見せておきたい女心。いいえ年の離れた彼だから小娘に戻った私を楽しめていたのかも知れませんが。

 後ろから気配を消すように近づいた彼に抱かれます。
「ぁ、ほらぁ危ないからぁ、包丁持ってるからぁ・・ねえ」
「いつもありがとう、好きだよ紀代美」
「うん・・うふふ・・ぁ・・」
 穿き替えたばかりの真っ赤なパンティ越しに、生地を滑る手の感触がお尻全体にひろがって、あはんて声の出てしまいそうな快感が鳥肌を立てていき、私はお尻を締めて抗って気持ちを逸らすようにするのですが、それでも耳元にキスされて・・。
「ぁぁん・・はぁぁぁ・・」
 パンティの後ろから温かい手が忍び込み、私は流しに手をついて脚を開いてお尻を上げるの。
 指先はアナルをかすかになぞるように、閉じたラビアをそろりと撫でて、花谷の上からクリトリスを揉むように、そして花を分けて濡れを絡め、くちゅくちゅと膣口を揉むみたいにしてくれる。

「ああん・・いやぁぁん・・」

 私は・・自分で意識できるほど幼くなって、お尻を振って甘えています。そしたら彼ね、濡れた指先を私に見せて・・。
「ほうら、もうこんなだ、ヌラヌラしてる・・ふふふ」
「嫌ぁぁ・・恥ずかしい」
 ペロリと舐めてしまうんです。
「ねえ嫌だってばぁ、そんなの舐めちゃダメ。好きよ、大好き」
 そのとき彼はパジャマの姿。私は無我夢中で振り向いて、パジャマのズボンをブリーフごと下げてしまい、鼻先に垂れる穏やかな彼を、性感に据わった淫婦の眸で見つめ、頬ずりをしてキスをして、ほおばって・・喉の奥までングングしてる。
「紀代美は可愛い」
 素敵だわ。なんてやさしい言葉なの。彼のためなら何でもしてあげたいし、何をされてもいいと思う。

 私はまだ子供が産める。産んでみせる自信はある。
 生殖の本能が騒ぎ出し、泣きべそのときとは質の違う興奮が子宮の奥で逆巻いているようで・・。

 私は立たされ、一度ぎゅっと抱き締められて、腕の中でくるりと回され、また流しに手をついて、後ろから・・。
 パンティが腿の途中で引っかかり、脚が開かず、しょうがなくてお尻を突き出し、彼のモノが膣口に・・。
「あっ! あぁぁーっ!」
 貫かれた一瞬、アクメに昇るセックスです。
 突かれ、突かれ、私はお尻のお肉をたわたわ揺らし、ブラの上から乳房を揉まれ、母乳の準備をしろと言われるような愛撫に、目の前が白くなってく。
「ねえ・・ねえ赤ちゃんが・・できちゃうから・・ねえ」
「神様に委せよう。愛してる」
「はい・・はい! あっ! ああーっ!」

 熱い射精を私の子宮は吸い取るように確かに飲んだわ。

 私は奴隷を飼っている。それを承知の上で、何も言わず許してくれる。
 大きな器の中にいて、その人の子供を私は望んでいるのです。
 引き裂かれた息子のことを、これでやっと忘れられる。妊娠できることへの歓喜で、もの凄いアクメがやってきた。

 ご飯を済ませ、その片づけもしないまま、ベッドで抱かれていたのでした。
「そうか、焼き印までを」
「ひどい女だと思うけど、あの子の前では狂ってしまうの。可愛くて可愛くて、だから泣かせてやりたくなって」
「うん」
「そんな女でもいいの? あの子を捨てられない私なのよ?」
「それが器さ。紀代美のサイズだよ。紀代美は大きい。尊敬する。可愛がってやりなさい。やがて紀代美は・・ふふふ」

 その意味を私は理解してました。
 悲しいことですが、十九歳の年の差は、遠からず別れを連れてくるものです。
 その先ずっと泣きべそと生きていく。彼の子供を育てながら奴隷を飼って生きていく。それはどんな暮らしだろうと考えてしまうのです。

 深夜遅く・・というか、明け方早くに戻った私。
 奴隷部屋をのぞくと、泣きべそは、つながれたままの悲しい姿で眠っていました。
「お帰りなさいませ女王様。今日はお泊まりかと思いました」
「そうね。でも雨が小降りになったから」
「はい、お戻りいただけて嬉しいです」
「おちんちん、見せてごらん」
 立たせた奴隷の前に椅子で座り、包んだガーゼを取ってみます。
「あーあ、おメメが二つ・・穴が空いたみたいに抉れてるね。パンダというよりガイコツだわ。おまえには生涯、愛に満ちたセックスなんてないんです。こんなモノ、あってもなくてもいいような変態マゾのチンポなの。そのうち切ろうか・・あははは!」

 泣きべそは笑ったわ・・一生ものの刻印に悲しげに笑ったの。

 薬をつけてガーゼを替えて、パンティを穿かせてしまい。
「そこに寝なさい。お留守番のご褒美です。彼の味がするかもだけど、それも綺麗に舐めてちょうだい。中ダシされる気持ちいいセックスだったのよ」
「はい、嬉しいです。ああ女王様ぁ・・嬉しいです」
 悲しそうに・・それでも笑うあの子の姿に胸が熱くなってくる。彼への熱とは違う。だけどこちらも灼熱で、傷の治りがもどかしいほどイジメてやりたくてたまらない。

 けれどもう甘やかしたりはしませんよ。ご飯を食べさせ、体だけ拭いてやって、そのままお部屋で寝かせます。
 私に対して徹底して飢えさせておく。地獄の苦しみの後にだけ少しの快楽を与えてやる。そう決めていたんです。

 一週間また一週間、それでもさらに一週間。亀頭を深く抉った煙草の火傷は重傷で一月ほどしてようやくガーゼが取れました。乳首の飾りは綺麗になって、亀頭の周りのお線香のテンテンも綺麗になって。なのにまだ煙草の抉れは薄皮
が張った程度で赤くなってる。
 その週末、ずっと寂しかった泣きべそに、久々の調教を与えようと思っていました。

 真っ先に伸びた髪を断ち物バサミでザンバラに切ってしまう。

 首輪、手枷足枷、ウエストベルト、それに新しく加えたアナルプラグ付きの股ベルトを装着し、だけどまだ貞操帯はしてやれず、興奮した奴隷はビンビンに勃起させていて・・。
「お尻気持ちいいでしょ?」
「はい、感じて感じてたまりません」
「ふふふ、気持ちの悪いペニスね、ほんとガイコツ・・ふふふ、イキたいね?」
「・・はい」
 立たせた奴隷の顔を見ながら、乳首をそっとコネてやり、ペニスには触れずに睾丸だけを揉んやる。
 女王様、イキそうですと甘い声。
「もう? ダーメ、ずっとずっと射精禁止・・うふふ!」
「はぃ、辛いです・・ぅぅぅ」
 泣いちゃった・・たまらない・・ゾクゾクしちゃってたまらない。

 リードを引いて這わせて歩かせ、トイレに連れ込み・・便器の前に仰向けに寝かせます。
 口を開けさせた人間便器におしっこだけを飲ませておいて、便器に座ってウンチして、汚れたアナルのまま顔にまたがる。
「臭い? 吐きそう? あははは! ちゃんと舐めなさい! 拷問するよ!」
「はい、女王様」
 アナルへの舌舐めだけで私はもうアクメの手前。異常なほど性欲が昂進していたんです。

 そしてそれは奴隷の肉体もそうらしく、女王の臭い肛門を掃除しながら、ラビアの濡れを鼻の頭に感じ・・ペニスの先から精液を漏らしていた。
「あら漏れた・・あははは、男ってしょうがない生き物ね。漏らしていいとも言ってないのに。お仕置きだな・・あははは!」

 残酷がとめられない・・どうしようもないんです。   

FEMDOM 花時計(十八話)


十八話


 その夜は奴隷を奴隷部屋に寝かせておいて、私一人の寝室でした。明かりを消した闇の中で、疲れているのに眠くない。日に日に奴隷らしくなってくるあの子の姿が次から次に浮かんで消えて、ますます目が冴えてくる。

 プランがあるの。奴隷には飢えさせておく。おなかが空いて、気持ちいい射精だって許されず、体も心も飢餓のどん底に置いておく。
 放置する。ぎりぎりの食料と水だけを置いて半月は家を空けたい。寂しくて寂しくておかしくなる限界まで追いつめてみたいのね。
 首輪も手枷も足枷も鍵付きで、もちろん貞操帯もさせたまま。オナニーさえも自由にならない苦悶の中に堕としてやりたい。

 完全支配・・ただ私だけにすがって生きる哀れな子。精液を出すことを許したときに、泣いて泣いて感謝する可愛い子。そんな姿を妄想して、だからますます眠れない。

 翌日は、ほとんど徹夜だったからお昼まで寝ていたわ。
 起き出して、たっぷりエサをやり、お風呂で洗ってやって。そこまではやさしく接した私ですけど。
 拘束具フル着用で、鞭打ち台に鎖でつなぐ。そしてお店にあって使ってなかった電気で冷える大きなクーラーボックスを持ち込んで、準備よし・・と。
 一リットルの牛乳パック十五本、ドリンク剤十五本、二リットルのお水が三本・・中を見せられた泣きべそは、すでにもううなだれてしまっています。
「考えて飲みなさいね、半月ほどで戻ってくるから」
「・・嫌ぁ・・」
「泣くな! 彼のところで楽しんできますから。ふふふ、毎日めくるめくセ ックスよ。毎日射精されてイキまくってくるからね。おまえになんて与えないこの女体を捧げてくるの」
「ぅ・・女王様ぁ・・」
「あー寂しい寂しい・・あははは! じゃあね、さよなら変態。明かりは消しておくからね。陽が沈めば暗黒よ。あははは!」

 彼との半月の同棲です。こうしてべったり一緒だと、どんな人でも嫌なところの見えてくるものですが、彼は違った。裏表のない人で、とにかくやさしく、何かちょっとしてあげれば感謝の言葉がついてくる。奥様の躾けがよかった。
 嬉しくて嬉しくて、おしゃぶりぐらいは当然だと思えるようになっている。彼は、私の中に少しだけあるM性までも引き出してくれたよう・・だってお部屋で私は全裸にエプロン。なのに女王様の扱いで接してくれる人なんです。

 一週間が過ぎていき、彼の家からお店に向かう暮らしが普通のことになってしまい、それからまた一週間。怖いほどの幸せの中で暮らした私は、「紙キレ」と彼が言ったそのことを真剣に考えるようになっていた。
 私のマンションにはお金はかからない。泣きべそのための牢獄でいいのですから。

 最後に、そっと抱かれてキスされて・・あたたかい気持ちで彼の家を出たのです。そしてそのとたん、ほとんど忘れていた泣きべそのことで頭がいっぱい。 ひどい女だと思いましたよ。二人の男を手玉に取ってる気さえする。

 お部屋に入る気配で泣くかと思えば、そうではなくて、外からの星明かり以外にない薄暗がりで、泣きべそは倒れてしまっていたんです。
 薄明かりの下に可哀想な裸の奴隷がうずくまり・・。
「生きてる?」
「はぃ、お帰りなさいませ女王様」
 もぞもぞと動き出す奴隷です。
 消えそうな声、落ちくぼんだ目、すっかり痩せた体。クーラーボックスは空っぽで、バケツのトイレに汚物だけが増えていた。
「私がいてくれる幸せを思い知った?」
「はぃ」
「私を悲しませないと誓えるかしら?」
「はい女王様、お誓いします」
 素直ですが目に光がありません。憔悴しきっているようです。

「うん、いい子ね、辛かったね」
 抱いてやります。肩まわりが細くなった感じがした。
「離さないわよ、ずっと一緒、約束だからね」
「はい」
「ご飯買って来たから食べなさい」
「ぅ・・ぅぅむ・・ぅぅぅ・・」
 嗚咽、震え。大きな声ではないけれど、心から絞り出すような号泣でした。
 真っ先にご飯を食べさせて、ドリンク剤を与えてやって、お風呂で綺麗にしてやって、だけどまた奴隷部屋。
 疲れ果て、おなかもふくれて安心したらしくって、泣きべそはそのまま動かなくなっていた。

 その翌日は平日でしたが、最初からお店を休みにしてました。半月の放置で奴隷がどう変わったのかを見たかった。
 朝まだ早いうちに覗いてみると、泣きべそは起きていて、部屋着ではなく赤いランジェリーと玄関にあったサンダルをつっかけて姿を見せた私に何かを感じたらしく、歩み寄って見下ろす私の足下にすり寄ってきて、足先にキスします。
「少しは楽になった? よく寝た?」
「はい女王様、ぐっすり眠りました。少し元気になったみたいです」
「うん、ならいいわ、いらっしゃい」

 鎖のリードを引いて這わせて歩かせ、そのままトイレに連れ込みます。便器の前に正座をして待つ奴隷。私はウンチ。匂いをたっぷり吸わせてやって、座ったまま流してしまい、それから立ってお尻を向けます。
「拭いてないわよ、奴隷ならどうするの?」
「はい女王様!」
 汚いお尻に鼻先を埋もれさせ、懸命に舐めてます。
「すましていても汚いものを出しちゃうの、それも私、憧れるのは勝手ですけど、女なんて男が思うほど綺麗な生き物じゃないものよ。狡いし残酷」
「はい、女王様」
「嫌いになった? 腹が立ってしかたがない? 吐き気がしたでしょ? 殴ってやりたい?」
「いいえ、お慕いします女王様」
「私のこと愛してるって言ったわね? いまでもそう? ウンチのついたケツ穴を舐めさせる女でも? 口先だけなら何でも言えるわよ?」
「口先ではありません女王様、愛しています心から」
「そうなんだ・・ふぅぅ」
 ため息をつきながら顔を見ます。まっすぐな視線で見つめる眸を、私はただ見つめます。
「もっとも、いまさら後戻りはできないけどね。もっともっと後戻りのできない体にしてやるわ」

 鞭? いいえ、痩せ細った体が元に戻るまで違う時間を与えようと考えた。
 鞭打ち台にこちらを向かせて据え付けて、身動ぎできないように縄を使ってさらに縛り、お線香を用意した。
「乳首がおメメになるように、乳輪に沿って焼き絵を描きましょうね。それから亀頭よ、おちんちんの先っちょにパンダがいるみたいに、そこにもマンガを描いてあげる」
 貞操帯を外してやると、私の下着姿を見せられながらのわずかな刺激に、若いペニスは勃起します。

 だけどそんなものは無視して、お線香に火をつける・・。
「乳首からね、いくわよ」
 肉の焦げる煙・・激痛のもがき・・悲鳴・・泣き声・・それらをまるで意に介さず、乳輪に沿って丸い黒焦げを描いていく。熱さにお尻をすぼめるとペニスがさらに勃ち上がり、乳首を焼かれている間にも白いものの混ざった汁を垂らすんです。

 このとき私は無感情だった気がするわ。ゾクゾクする悪寒のような性感だけがアソコを濡らし、だけど心が動かなかった。

「さあ乳首はいいわ。可愛いおメメになったじゃない」
 泣きべそは濡れた目で左右の乳首を交互に見て唇を噛んでます。生涯消えない証・・無言でうなだれ、人生を諦めているのでしょう。

「次はペニスよ、拷問になるからね」
 亀頭を消毒薬で拭きあげて、笠の周りをぐるりと飾り、それから亀頭の真ん中にパンダの目を描いていく。数十カ所は焼かないと絵にならない拷問です。
「気持ちいいならイッてもいいから」
「はい女王様ぁ・・ああそんなぁ・・」
「嫌って言うんじゃないわね?」
「はい、女王様」
「うん、いい子。いくわよ、覚悟なさい」
 亀頭の笠の周りから、横を焼いて尿道のところまで。亀頭の真ん中のパンダの目はそれからです。
「最後のおメメは両方とも煙草で焼くから・・ふふふ」
 背筋に冷たいものが走りますが、それは快楽にも増してアソコを濡らすものでした。

 お線香の先を亀頭の笠に寄せていく・・。

「ひっ、ひっ・・ぅぅぅ」
「まだやってないでしょ・・それとも嬉し泣き? 動かないで」
「はい女王・・ぅが! あああーっ!」
 一点を深く焼き、また火をつけて狙いを定め・・。
 もがき暴れる奴隷の体を楽しみながら、黒焦げのテンテンを描いていくの。 残酷ね・・ひどい女・・だけど私は泣きべそを愛してしまった。

「おまえがね、他の女にここを使うなんて許せないの。しゃぶらせることもしたくない。いいこと、私だけの男になるのよ、おまえの幸せはそれしかないの。わかったわね!」
 しゃくり上げて泣いていて声にならない。ただ懸命にうなずくだけの奴隷です。

 そうして図柄のあらかたをお線香で描き上げて、最後に二つのおメメです。このために買った煙草に火をつけて、しっかり火種を育ててから、亀頭の左右に目を焼くの。
「ひぃぃ・・きぃぃ・・」
 息が笛のように啼いている。
「まだやってないって。これで最後よ耐えなさい」

「ぎゃぅ!」

 そして奴隷は・・私の額を狙ったように熱い精液をぶっかけた。

 トロミを指先に絡め取り、見せつけてやったのです。
「これは何? 女王様のおでこにべったりって、どういうことよ? ふふふ、ひどい奴隷ね」
 そしてその指を私は舐めて、奴隷の美味しい精液を飲み下していたんです。
 泣きべそが目を丸くしています。
「美味しいわ、愛そのものの精液ね・・うふふ」

 私は乳房をこぼれさせ、可愛い我が子に乳首を与えてやりました。

FEMDOM 花時計(十七話)


十七話


 結婚という愛の通念に従って生きたつもりで、気がつけば独りになってしまっていた。実の子さえも奪われていた。そのことへの疎外感というのか、人生への落胆を埋めるものを、私はじつは渇望していたようですね。
 じゃなければ、これほど貪欲に、狡猾に、あるいは残酷に男を求めたりはしなかっただろうと思うのです。
 館脇さんとは、ごくあたりまえの男女の仲で、そこにはやはり愛の危うさが潜んでいる。ダメになればまた独り。だからせめて泣きべそぐらいは檻の中に囲っておきたい。そんな想いが、私の中のあたりまえの女心を狂わせていたんだと思うのです。

 真っ白な可愛いお尻にサインペンで描いた大きなおメメ。お線香の火種で深く焼いた黒焦げの点を、二ミリぐらいの間隔でびっしり並べていく絵のために、二時間以上の拷問を与えてしまった私です。
 死んでしまいたいほどの罪悪感と、けれども、たまらない安堵の想いを胸に、完成した火傷絵を見つめてた。
「さあできた。一生消えないおメメだわ。人生を捧げてね、奴隷クン」
 腰に手をやってお尻を張らせて眺め、たまらないくなった私は、開かせたお尻の下から手を差し込んで、丸まった睾丸を手荒く揉んでやり、指先を唾でヌメらせてアナルに突き刺して嬲っていたわ。
「ぁぁん、はぁぁ女王様ぁ」
「気持ちいいの?」
「はい、いいですぅ・・はぁぁ感じますぅ」
 甘いよがり。突き出したお尻がくねくねしなり、だけどそこには消えない奴隷の証があって、あらためてマンガチックなおメメを見ていて、ああ何てことをしてしまったのと胸が痛くなるんです。

 なのにまた言う。
「そのうち、おちんちんにも絵を描こうね。乳首の周りにも。ふふふ・・変態奴隷・・おまえにはもう男の幸せなんてないんだから」

 それから一週間ほどが過ぎた夜のこと。その日はお店のエアコンが壊れてしまい、夜まだ早いうちにお店を閉めた。お料理もたくさん余ってて、タッパに詰めて彼のお部屋に向かったわ。
「エアコン大変だったね」
「そうなのよ、水漏れタラタラ。こんな時間ですもの、頼んだところで明日じゃないと修理できない。買い換えになっちゃうかもだし」
 お部屋では黄色い下着にエプロンです。持ち込んだお料理をお皿に盛りつけて出すのですが、セクシーに振る舞っても、彼の冷蔵庫にはビール一本ありません。お茶を淹れて食べるツマミ料理。だけどだから不思議なすがすがしさがあるんです。スレていない空気を感じる。
「さ、食べて」
「うむ、ありがとう、いただきます」
「うん・・うふふ」
 私に対してもMの心で接しているのか、堂々とした男らしさの中に、感謝する真心が透けて見える。それで私、なにげなく、その言葉を向けてみた。

「私のこと奥さんにしてくれる気ある?」

 いえいえ、そんなことは、ただ言ってみただけでした。イエスなんて求めてなかった。
 なのにやっぱり、ちょっと笑う彼の目色を気にしている。答えを聞くのが怖いんです。そこまで考えてるわけないだろう、あはは!」・・なんてね。

 彼はちょっと微笑んで眉を上げて私を見つめた。
「それがいるなら用意するけど」
「それって?」
「紙キレ」
 私、涙がじわりと湧いてきました。
「や、ヤだぁ、冗談よ! うふふ!」
「とっくにそのつもりでいるんだが」
「うん・・」

 それから、お風呂、ベッドでも・・穏やかなセックスの中で私は可愛い女になれていました。三十七歳の私ですが、彼の前では十九も年下の娘になれる。
 取り返しのつかなくなった若い時間。娘時代の花時計が刻んだ可愛い時間が蘇っていたのです。


 そしてそのことが、十六歳年下の奴隷の前での、揺るがない女王の姿を生んでいた。

 深夜になって家に戻り、お部屋を覗くと、首輪、手枷足枷、ウエストを絞る鍵付きベルト、それに針の傷のよくなったペニスには貞操帯。そんな姿で鎖でつないだ変態奴隷が弱い目を向けている。
 お尻のおメメも、焦げた皮がなくなって、少し赤いテンテンに変わってる。
 もちろん陰毛も処理してあります。髪の毛だって、少し伸びたところで、またざんばらに切り落としてしまったの。ペニスの傷のせいで、あれ以来ずっと禁欲・・だからね、下着姿の私を見るだけで熱いオス息を吐いている。
 明日は休み。あれからまた揃えたものも配送されていたんです。

 家に戻ってすぐ、つなぐ鎖を外してやって、けれども手枷のフックをウエストベルトの腰にかけて後ろ手にしてしまう。お店の余り物をステンのボウルに入れてやり、生ゴミみたいなエサをつくって食べさせる。
 でもその前に、ひざまずく奴隷の前に下着姿の素足で立って命じます。
「足をお舐め」
「はい、女王様」
 片方ずつ足の甲にキスをして、足指の間から足の裏まで、一日靴を履いていた汚い足を舐めさせます。
「上を向いて寝なさい」
 腰の後ろ手でお尻が浮いてしまう仰向けのポーズにさせ、顔にお尻をかぶせてしまって、汗臭くてすっぱいアソコ・・汚れたアナルも舐めさせます。
 ゾゾゾっと、加虐の性感が私を震わせ、気分がいい。

「うん、丁寧に舐めてくれたね、いいわ、お食べ」
「はい女王様!」
 手の使えない奴隷は、犬・・猿かしら・・動物そのものの食べ方でガツガツ食べて、ボウルまでを綺麗に舐める。
「とっても美味しいごちそうでした、ありがとうございます女王様、僕は女王様のお慈悲で生かされてる奴隷です」
 いい言葉を言えるようになったと微笑んで見下ろします。
「よろしい。お尻の火傷もよくなって、可愛い奴隷になってきたけど、もっともっと頑張らないとね」
「はい、女王様!」
 下着姿で抱いてやり、ブラだけを外して乳房を頬に感じさせ・・。
「可愛いよ、泣きべそ」
「はい。うふふ、嬉しいです」

 それからお風呂で私を丁寧に洗わせて、冷水をぶっかけて洗ってやって。貞操帯だけ許してやって、支柱に向いてX字になるよう鞭打ち台に固定する。
 お尻のおメメが可愛いわ・・うふふ!

 女王の私は全裸です。興奮しきった奴隷男は、すでにもうビンビン勃起。
 頬を撫で、頭を撫で、後ろから抱いてやって、乳首をいじり、ペニスを握ってやったり睾丸を揉んでやったり、意地悪します。
「ふふふ、わなわなしてるね、気持ちいいんだ?」
「はぃ女王様ぁ・・はぁぁ感じますぅ」
「イキたいね? 溜まりに溜まって辛いでしょ? だけどダメよ、射精なんてよほどじゃないと許しませんから」
 全裸の私を寄せてやり、耳たぶを噛みながら熱い息をかけてやる・・ペニスがビクンビクン首を振ってて可哀想。

 犯してやりたい。めちゃめちゃにしてやりたい。

 鞭打ち台の支柱を前に傾けていくと、腰が折れてお尻を突き出すようになる。足はもちろん開かせてあり・・。
「今夜はほら、いろいろ新しいオモチャがあるから、いい声を聴かせてね。最初は・・ほうら痛そうでしょう」
 ギザギザのあるワニ口クリップ。ハート形の重い分銅がついている。バネが強くて開こうとするとギシギシと軋むんです。
「これを乳首に・・可哀想ね・・ほうら痛い」
「あっ! むぐぐぅ! ああ痛いぃぃーっ!」
「あははは! それはそうよ、痛いはず。こっちもぶら下げてやる」
「あぐぐぅ! 痛いぃー、ああ痛いぃぃーっ!」
「じっとしてないと、揺らすともっと痛いわよ。くくくっ」

 よほどの激痛なのでしょう、可愛く泣いてしまってる。

 それから私はペニスバンドをつけるのですが、それがちょっと変わってて、奴隷に突き刺す太いものの反対側が折れ曲がって柔らかなディルドになってて、私の中にも入るのです。
 腰につけるだけで私だって感じてしまう。アソコはグショグショ。
「さあ、気持ちよくしてあげるけど、お尻でイケるようにならないと奴隷に快楽なんてないんだからね」
「はい女王様・・ああ痛い、乳首が痛いぃ・・」
「痛い? 気持ちいいでしょう?」
 全裸でペニスバンドの姿で、乗馬鞭を手に取って、大きく開いた内腿をピシピシ嬲る・・・。
「少し罰かな・・痛いなんて言ったから」
 ピシーッ!
「ぐわぁ!」
 ピシーッ!
「ぎゃぅぅ!」
「痛いの? 気持ちいいの?」
「はぁい・・ぅぅぅ、気持ちいいですぅ」
「じゃあ、もっと?」
「ぅぅぅ・・ぅうう!」
「どっち!」
「はいぃ、もっとくださいぃ・・あぅぅう!」
「泣くな! 情けないわね!」
 ピシーッ!ピシーッ!
 お尻の下・・内腿だけを打ち据えます。痛みに体が暴れてしまい、乳首の分銅がぶらんぶらん暴れてる。

「あうう乳首がぁ! むぐぐぅ!」
「痛いの?」
「いいえ・・気持ちいい・・あううう!」
「あははは! 気持ちいい気持ちいいって号泣してれば世話ないわ、あははは!」
 皮膚の薄い内腿に幾筋もの青い腫れ。そして私は太いディルドの先端にねちょねちょのローションを塗りつけて、奴隷のアナルを狙うのです。
「気持ちいいわよ、精液垂らしていいから、よがりなさい」
 黒いゴムの大きな亀頭を、すぼまった処女のアナルに押し当てて、ゆっくり腰を使っていく。
「ああーっ、裂けるぅ! 裂けてしまいますぅ!」
「あらそ? いいのよ裂けても。どうせ拡張するんですから。あははは! 女を犯す男の気持ちがわかる気がする。犯すって気分がいいわ・・あははは!」

 ヌメリ・・ヌメリ・・。
 先端を突き刺しては少し退き、突き刺しては少し退き、アナルが緩んで入っていく。黒いゴムに少しだけ血がついてる。
「ほうら、ほうら入る。もう少しよ、お尻の力を抜きなさい」
「はぁぁ・・・ああ・・ああ痛いぃぃーっ!」
「また言ったね! 許さないから!」
 それで私は一気にグイと腰を入れ、ズブリです。
「ああーっ! うわああーっ!」

 ああ感じる・・腰を使うと膣のディルドも一緒になって蠢いて・・。
 ああ感じる・・おかしくなりそう・・なんて素敵な快楽なの・・。

 私は奴隷の腰を抱いて乳房を背中にくっつけて、乳首のクリップを外してやって、だけど潰れた乳首をツネってコネて・・。
「うああーっ! 乳首がぁぁー!」
「こっちは? ふふふ」
 処女のアナルをズボズボと突いてやる。一度入ってしまえば動きはすぐにセックスモード。
「あはぁ・・うっくぅくぅ・・はぁんはぁぁん・・ぅぅうう!」
 泣きわめいてよがっています。乳首をコネた指先に血がついて赤くなってる。

「わぁぁ女王様女王様、出ます、出ますぅ! あ! あっ!」

 突き刺しながら睾丸を揉んでやる。奴隷にとってはそれしかない至福の射精が来たようです。
「イクの? 気持ちいいのね?」
「はいぃ! ああイクぅ、出ますぅぅ! んあ!」

 ブルル、プルプル、わなわな・・泣きべそが震えます。

 ああ可愛い・・可愛くてたまらない。胸に火の玉みたいな何かがこみ上げた瞬間、私にもすさまじいアクメが来たんです。
「おまえが泣くのは私のためなの、私を悦ばせるためなのよ。わかった? ねえわかった!」
「はい女王様ぁ、ああ女王様ぁぁ!」
「あぁダメ,イクわイクぅ・・狂っちゃう・・ひぃぃーっ!」

 そのとき・・奴隷のお尻のマンガのおメメが、確かに笑ったような気がしたの。

 気が遠くなっていく・・。

FEMDOM 花時計(十六話)


十六話


 お部屋の明かりはスモールランプ。私はここのところ部屋着にしているかぶりのミニ、下はノーパン。そんな姿でソファに横に寝て寝そべって、首輪だけをさせた女の下着姿の男奴隷を床にはべらせ、内腿の奥に顔を挟みつけるようにして、チロチロとアソコを舐めさせている。
 傍目にはまったく異常で変態的な光景なのでしょうが、そんな異常が日常になろうとしていると感じるわ。

 私はもう考えないことにした。逃げるチャンスは与えたつもり。
 これからは、ひたすら私の性癖を満たすために飼っているマゾ奴隷。それでいいと思っています。
 音を消してしまったテレビが、わけのわからない番組をやってる。見る気もしない。時折視線を流すだけで意味のないことであっても、映像のチラつきが、ランジェリー男子の裸身を艶めかしく見せてくれ、それもまたセックスの視覚のエフェクトなんだと可笑しくなるの。
「もういいわ、アソコ見つめて楽しんでなさい」
 柔らかな内腿に顔を挟んだままアソコから鼻先を退いて、泣きべそは、女の股ぐらを枕に私をじっと見つめているのです。

 濡れるアソコに熱い息を感じながら、館脇さんのことを考えていた。彼は分別ある五十八歳の紳士。その人がかつてマゾだった。奥様が女王様。だけど彼の体には傷らしきものは残っていない。
 いったいいつ頃までSMがあったのか? それはどんな調教だったのか? 彼は心のMだと言い、奥様は心のSだと言う。だけど、それ以上を話してくれない。彼の奥底に大切にしまわれた愛の記憶なのだと思うのです。
 そしてその館脇さんを、私はごく普通の男性として愛している。
 愛と言うと重くなってしまうけど、愛と言うしかない。
 六十歳手前の穏やかな勃起をほおばって、射精を受けたときの悦びが口の中に残っている。もちろんラビアを分けて押し入ってくる感触も。
 私のから一切のサディズムを排除したあたりまえの女としての官能世界。それは性欲の半分かしら・・残りの半分は泣きべそに向けている。

 離婚から時間を経て、鬼薔薇は生まれたけれど、トゲのない花の私も生きていて、そのどちらもが満たされる私らしい解放の中にいる。どうやら素直な私は貪欲な牝だったようですね。
「ずっと乾いてた」
「え?」
「オナニーさえしなかった」
 内腿に耳ごと挟みつけていたから聞こえない。腿を少しゆるめてやったわ。
「寂しいアソコだったのよ・・ふふふ」
 ラビアにチュッとキスが触れ、お尻を抱かれた私です。
「貞操帯、しばらくしなくていいもんね、どうせ痛くて触れないでしょ」
 そしたら泣きべそ、お尻を抱く手に力を込めて、腰を引き寄せ、尖らせた舌先でアナルをチロチロ舐めだした。

 私をいたわる心を感じる。

 この子もいつか館脇さんのようになるのでしょうか。心にMを刻みつけ、これからの人生、女に接していく。そんなやさしい男になるのでしょうね。
 だけど私は館脇さんに対して、やさしいから好きなわけじゃない。
 男らしい強さを感じる。だから女になれている。
 私は勝手な女です。わがままな女だと思うなぁ・・。

「ねえ泣きべそ」
「はい、女王様?」
「彼ができたのよ。やさしくて素敵な人よ」
「はい。ご結婚されるのですか?」
「ふふふ、まさか。私もですけど彼だってそういう世界はもういいはずよ。二度とそこには行きたくない」
 泣きべそは、私が意図したことと違うことを考えてる。自分の存在が邪魔になるのではと思ったのでしょう。
 でも、私にしたって、そうは言ってみたものの、彼の気持ちはどうなのだろうと思ってしまう。拒否する理由が、もしも泣きべその存在になってしまえば、そのとき私はどうするだろうと・・。

「そういうことではないのよ。彼はいつだって私の中に来てくれる。熱い勃起を受け入れる女の幸せは彼で満たされちゃってるから」
「はい」
「だからね、恐ろしいことを考えたりするのよ。奴隷には快楽なんて与えない。つながれて監禁されて、射精なんてほとんどさせない奴隷暮らし。寂しくて悲しくて、泣いて泣いて生きていく」
「はい」
「毎日鞭で打たれ、針もですし火傷もだし、お尻の穴まで調教されて、漏らすみたいな射精しか許されない暮らし。心を込めて私を舐めてもセックスなど許されない。そんな人生さぞ辛いんでしょうね。勃起しても意味のない奴隷の日々よ」
「・・」
 女の性器を目の前に腿で顔を挟まれて、わずかに体が震えている気がします。泣いてるのかな・・。
「一本鞭も欲しいわね。アナルプラグとか・・苦しませるものたくさん欲しいわ。ふふふ・・体中に消えない傷が増えていって、そんな変態なんて、まともな女は愛さない。だから生涯、おまえは奴隷」
「はぃ」
 消えそうな声がします。

「さっそくはじめましょうか」
「はい・・ぅっ・・」
 やっぱり泣いてる・・どうしようもない子なんだもん。
「だけど可愛い・・ふふふ」

 このときまでは、そこまでするつもりはなかったんです。怖がらせてやりたかっただけ。それで奴隷部屋に連れていき、また手枷足枷で鞭打ち台に拘束し、傷のない綺麗なお尻を向けさせて。

 怯えて震えるヌードを見ていてムラムラと残酷が湧き立ってきたんです。私が私でなくなっていく錯覚にとらわれて・・それをいけないことだなんて思わなくなっていた。
 この子は息子。もう誰にも渡したくない・・母性の暴走が独占欲へと変化している。もうダメよ、どうしようもないのですから。

 手枷と足枷を固定し、ウエストベルトの左右の金具を支柱のフックにかけてしまうと、お尻を逃がすことができなくなる。鞭傷の消えた白いお尻が可愛くて、そっとそっと撫でてやり、何度もキスをしてやった。
「可愛いヒップね、若くて硬くてすべすべしてる。これからね、ペニスバンドでも揃えたら、このお尻を見下ろしながらアナルを犯すことになるでしょう。だから可愛いお尻でいてほしいの」
「はい、女王様」
「諦めなさい、おまえはもうダメ。たまらないの。他の女を愛するおまえを想像するとたまらないのよ。私だけの奴隷になりなさい」

 そして私は、サインペンでお尻の左右にマンガみたいなおメメを描いた。縦長の楕円の中に丸い眸があるような・・。
 これから何をしようとするのか、考えるだけで胸が冷えたわ。この子にはもう普通の人生がなくなってしまう。サインペンで描いたおメメにゾクゾクしたし、お線香を持つ手が震えた。
「お尻におメメの絵柄を描きましょうね。可愛いお尻になってくれたら、もっと可愛がってあげられるから」
 お線香に火をつけて、ふぅぅと吹くと、火種が真っ赤に燃え立ちます。火種で点描のように絵を描いていくんです。

「諦めなさい」

 また同じことを言っている。それも抑揚のない声で・・。

「最後に訊くわ。痛いことされるの好き?」

2016年12月04日

FEMDOM 花時計(十五話)


十五話


 根本を縛り不気味な姿にした男の性器を目の前に、便器椅子をひいて座った私は、大サイズの安全ピンを開いて伸ばし、逞しいペニスを握ったのです。
 あぅぅあぅぅと可哀想に泣きもがき、私の性欲は最高潮に達していました。
「これからもおしゃぶりして欲しいでしょ? 裸の女王様に抱かれて寝たいよね? 射精だっていっぱいさせて欲しいでしょうし。だったら静かにしてなさい」
 幸せな時間を想像したのでしょう、嗚咽が小さくなっていく。逆反りの苦しい姿勢で首だけ上げて、涙目で針を持つ私の手先を見ています。
「亀頭は大きいから太い針にしましょうね。それにしても凄いおちんちんね、怒り狂ってるみたいだわ」

 亀頭のすぐ下の茎を握り、尿道の右側の裏亀頭のミゾに針先を突き立てて、表亀頭へ向かって刺し込んでいくのです。
 残酷だわ。背筋に寒気が走るような、なんて素敵な悲鳴なの。地獄でもがく亡者のような、得体の知れない魔物のような絶叫です。
 針先が鈍くて入っていかない。力まかせ。右に左にヒネリながら、ガタガタ震える男の裸に恐ろしい苦痛を想像しながら・・。
 そしてパンティの中の鬼薔薇をべちゃべちょに濡らしながら、突き刺していくんです。
 一本が貫通し、それでも次に左側の裏亀頭に針を立て・・。
「痛くて歯を食いしばるとウンチのお汁がたくさん出てきて美味しいわよ。ふふふ、もう吐いたりしないもんね?」
「あぃぃ! あぃぃ!」
 はいはいとうなずきますますが、それでも力を抜きません。
「いらぃぃーっ! いたぃぃぃーっ!」
 紙を噛んでお汁を吸い取ってしまったからか、紙が萎んで少しは言葉になってます。
「もう少しよ・・ほうらほうら・・あー痛い・・ふふふ!」

 亀頭の左右に残酷な針が貫通した・・。

 さらに太いピンを伸ばして針をつくった私は、亀頭の下の肉茎を横に貫くことを考えた。なんて女よ。なんて素敵なサディストなの。
 もうね、怪獣をイジメてる? 男の腰が暴れて吠えまくり、おちんちんの
先っちょから精液を垂らしてしまってもがいている。

 ああダメ、心がイキそう。アクメが心にやってくる・・。

「タマタマちゃんには細いのにしてあげる。片方二本ずつにしましょうか」
「むやぁぁーっ! お許しくらさいお許しくらさいぃぃー! えーんえーん! ええーん!」
 ぱんぱんに張りつめる睾丸に針を一度は突きつけて、子供みたいにぐずり泣きする顔を見たわ。
「可愛い奴隷になるって約束できる? 生涯忠誠を誓うって言える?」
「はぁい! はぁい! お誓ぁぃしまう!」
「ほんと? 逃げてもいいのよ、私なんて嫌いでしょ?」
「いいえぇ! いいえぇ! 大好きぃぃ! お慕いぃしわすぅ!」

「うん、わかった、じゃあ睾丸は許してあげる」

 私はこのとき、はっきりと自覚して妙なことを考えていたんです。
 私だって生理はあるの。まだ子供の産める体なの。睾丸が壊れてしまって虫が消えてしまったら・・それは館脇さんの可愛い虫でもいいけれど、性欲が母性を掻き立ててしまったようで・・休んでいた卵巣がフル稼働で卵を生産しはじめてる。

 可哀想なペニスと睾丸の根縛りを解いてやり、だけど針は抜かないまま、手足と首の拘束を外してやります。
「鞭打ち台の支柱を握ってお尻出しなさい。拘束しないから嫌ならいつでも逃げられるからね」
 乗馬鞭を握ります。叩きつけるフルパワー。一打一打が痣になる拷問鞭の乱れ打ち。泣きべそはお尻を振ってもがき悶え、何度もしゃがんでしまいますが、すぐまた立って、痣だらけのお尻を向けるのです。
「痛いね」
「はい・・でも・・ありがとぉうごわいまぅぅ・・逃げわりしわせんからぁ」

 ああ可愛い! 可愛いの!
 私に愛される男の子でいてちょうだい。

 鞭を握ったまま後ろから抱いてやりました。奴隷の声が悦びの泣き声に変化して、私は癒されていくのです。

 針を抜いてやりました。乳首よりもペニスが血だらけ。鮮血を噴いてます。
 口のテープを剥がしてやったら、それまでに充分濡れたトイレットペーパーが溶けはじめていたようで、泣きべそはそれも食べてしまうんです。
 乳首とペニスに薬をつけてガーゼで覆い、胸にはブラを、下にはパンティを穿かせてやって、脂汗でベタベタの体を拭いてやり、歯磨きさせて口を洗い。 それから私は着ていた下着を脱ぎ去って素っ裸で抱いてやる。

「よく頑張ったね、よしよし、椅子に座ってあげるから好きなだけ舐めなさい。甘くイカせてちょうだいね」
「はい、女王様・・ぅぅぅ」
「もういい・・もういいの、泣かないで。さあ舐めて」
 私はね・・またあのもがくようなアクメを想像したのですけど、それはなぜか穏やかで深い絶頂だったんです。

 すべてが済んで深夜です。泣きべそは疲れ切っていましたが、私はちっとも眠くない。それで明かりをつけないリビングのソファに座り、膝枕をさせて泣きべその頭を撫でていた。
 私は全裸で毛布をかぶっていたんです。
 泣きべそは私の乳首を吸って泣いていて、そのうち眠ってしまったの。

「むぅぅ・・お捧げします・・うふふ・・」

 寝言でした。寝言を言って笑ってる。傷が疼くのかと思ったけれど、この子は私を愛してくれてる。心から愛してくれてると感じたわ。

 そして次の日曜日、私はそのままソファで眠っていたけれど、泣きべそはいつの間にか奴隷部屋に戻っていました。
 部屋着だけ着た私がのぞくと、あの子はもう起きていて、血だらけだった台座の上が綺麗にされていたんです。あの子はね、すっと足下にやってきて平伏して、体をこれでもかと小さくたたんで言うのです。
「おはようございます女王様、一生心からお仕えいたします。心からお慕いいたいます。可愛がっていただけて心から感謝いたします。ありがとうございます女王様」

 感動したわ。女冥利に尽きるでしょう。
「はい、受け取ったわよ、いい言葉ね」
「はい女王様!」
「じゃ、朝の鞭です、腿を打ちますから耐えなさい」
「はい!」
 どこも拘束していない。首輪さえしていない。泣きべそは台に上がって、脚を開いて青いパンティにくるまれたお尻を向けます。

 乗馬鞭で一打ずつ、左右の腿を厳しく打ってやりました。
 声を出さずに痛みに体をくねらせて・・「ありがとうございます女王様」なんて言う。泣きべそもまた奴隷心のリセットができていたようですね。
 首輪だけを与えて南京錠で封印しながら・・。
「痛む?」
「はい少し。でももう出血はありません。おちんちんが紫色になってます。乳首も少し痛みますが」
「うん、素直でいいわ、愛してるよ奴隷クン」
「はい! わぁぁ嬉しいです、うふふ!」

 それから・・ほとんどお昼時になってしまった朝食です。そのとき私が人間の食事の支度をテーブル上にはじめたことで、流しを向いた次の一瞬、泣きべそは部屋着の下からお尻の底に舌を入れてアナルを舐めてくれるんです。
「ぁぁ・・ダメよ、感じちゃう・・」
 私は腰を張ってお尻を突き出し、打ち震える感覚を楽しんでいた。

 テーブルに簡単なセットができて、私が座り・・。
「お座りなさい。今日から昇格させてあげるから」
 そのときのあの子の、ちょっと潤んだような目の色が忘れられない・・胸が熱くなってくる。

 この子は息子・・私は母なんだから、手放すなんてあり得ないと思ってる。       

FEMDOM 花時計(十四話)


十四話


 クリトリスを吸われたときの感触が女体に分散する性欲をその一点に吸い出してしまったように、泣きべそを奴隷部屋に引き立てて鞭打ち台に固定するというかなりの時間を経てもなお、アソコのゾクゾクが消えていこうとしないのでした。
 急になぜ・・異常なほど性欲が昂進している。リセットを終えた私が、サナギの殻を破っていよいよ羽を伸ばしはじめた気がします。
 鞭打ち台を後ろへ傾け、支柱に首輪、アームに手枷、台のフックに足枷と、それぞれの金具をつないでしまうと、泣きべそは、仰向けに支柱に背をのせて腰を突き出し、逆反りするカタチになる。貞操帯をさせない性器が突き出す下腹に強調されて、加虐の想いに火がつくの。

 さて、どうしよう・・。

 せっかく鞭痕の消えた体に、また鞭ではつまらないし、鞭打ち台に据えられて、泣きべそはどうせ鞭だと思っている。それを残酷に裏切ってやりたかった。
 台の横に立った私は、男の子の怯える目をのぞきながら睾丸をやさしく揉んでやり、ペニスの裏を爪先で掃くようになぞってやった。若い棒は女を欲しがってビンビン反応していたわ。

「どうしようかなぁ・・鞭でもいいけど。ふふふ」
 泣きべそは声をなくして見上げています。いまのいままで女神だったのだから、ひどいことはしないだろう。そんな気持ちもあるでしょうし、だったらそれも裏切って女王の意志を思い知らせてやりたかった。
「ちょっと待っててね、いろいろ支度してくるから」
「はい、女王様」
「怖いわね私って。いま恐ろしいことを考えてる」
「・・」
 泣きべそったら、生唾を飲むように、怖くて怖くて声さえないの。
 あははは! 楽しい!

 そして私は、部屋着ですっぴんだったおばさんから、赤い下着で女を飾り、お化粧までしてあげて、勃起を誘うスタイルで奴隷部屋に戻ったわけよ。もちろんいろいろ手に持って。そのとき時刻は十一時になろうとした。
「今日はもう遅いから、音が通らないマンションでも騒がれると迷惑でしょ。だからほら・・お口開けて」
 トイレットペーパーを拳大に丸めたものを口に押し込み、ガムテープで顎ごと口を封じてしまう。
「ね、これでもう騒げない。女王様って言ってごらん」
「ぅぐぅ・・じょむぅおぅさわぁ」
「ほらね、何言ってるかわからない。いまねウンチしてきたの。お尻を拭いたウンコ紙を丸めてね、それを綺麗な紙に包んであげた。唾で濡らさないようにしてないと、だんだん美味しくなってくるわよ」

 怯えています・・目が竦み、泣き濡れるように輝いてる。

 それから私は、消毒薬を含ませたコットンで可愛い乳首を拭いてやり、怖いものを目先に突きつけた。
「わぁぅぅ! あわぅぅ!」
 カッと目が見開かれ、イヤイヤと首を振る。
「ほうら怖いね、安全ピンよ。それもこんな大きく太い針」
 ピンの口を閉じたとき長さが七センチほどもある大きなもの。お店の飾り付けで使おうと思い、大小さまざまピンのセットを買ってあった物でした。
 手にしたのはサイズそれぞれ十本ずつ入ったセットの中の大サイズ。針なんて毛糸針ほどもある太いもので、先が鋭くないんです。
 だから痛い・・くくく。
「注射針とかないでしょう。マチ針じゃ折れると怖いし。ごめんね、これしかないのよ、激痛針しか・・うふふ・・あははは!」
「あわぅ! いらぁぁーっ! いらぁぁーっ!」
 イヤだイヤだと首を振ります。体が揺れて、勃起するペニスがメトロノームみたいに左右に振れてる。

「これが大、中がこれ、小さくてもこのサイズ。ふふふ、どれがいいかなぁ」
「ぁむぅ・・むぅぅ・・」
 もう泣いてしまってる。
「イヤイヤしないのよ、いい子なんでしょ。大じゃ乳首が壊れちゃうかもだから中にしようか」
 中サイズのものでも五センチほど。口を開いて伸ばしてしまうと、長くて太い針になる。
 針を手に、一方の手で睾丸を揉み上げながら顔を見ると、泣きべそが涙を垂らして見つめている。
「お口の紙、濡らしちゃだめよ、たっぷりウンチがついてるから、痛くても噛んじゃだめ。噛んで絞るとお汁が出るわよ。さあ可愛がってあげますからね」
「ぅぅぅ・・わぅぅぅ!」
「あーあ泣いちゃった・・ふふふ、いくわよ!」

 左の乳首をつまみ上げ、コネて勃たせて伸ばしてやって、横から針先を突きつけます。ゾゾーっとパンティの奥底が波立つ感じがしたわ。膣全体が蠢いて性欲液を絞り出してる気がするの。
 私はきっと冷えた真顔で泣きべその顔を見据え、針を持つ手に力を入れた。

「んんーっ! むぐぐ! んんんーっ!」

 涙ダラダラ。顔を真っ赤に、くしゃくしゃに歪めていて、全身の筋肉が強ばって鞭打ち台がギシギシ軋む。
「わぁぁ痛い、痛いよね。針が太くて入らないからゆっくりいこうか。こうやってヒネリながら刺していくの」
「ぅわぁぁーっ! いわぃぃーっ!」
「痛い? うんうん痛い痛い・・あははは!」
 先が鈍くて入っていかない。肉の拒絶がこれほどとは思わなかった。残酷にぐりぐり回し、ネジ込んでいくんです。
 可哀想にイヤーっイヤーって叫んでる。泣いて泣いて、自由にならない体を暴れさせているんです。

「ああ可愛い。癒されるなぁ。泣きべその悲鳴が好きよ。もう少しだからね」
「ぎゃう!」
 乳首の反対側の皮膚が尖ってきはじめ、プツッと音がするように針先が飛び出した。一気に突き込み、針を曲げて口を閉ざしてしまうのです。
「ほうらできた、左はできたよー。次は右ね」

「わぅううう! おるるしくらはぁい! いらぁぁーっ! いらぁぁーっ!」
「ダーメ、許さない」
 そして右の乳首にも横から針を突きつけて・・。

「ぎゃむ! むぐぐ! いわいぃぃーいわぃぃーっ!」
 痛い痛いと涙をまき散らしてかぶりを振るわ。
 ああ濡れる、ラビアがだらしなく開いてしまってヨダレを垂らしている感じでしょうか。ゾクゾクしてたまらない。

 そして反対側の皮膚まで先が貫きかけて、一気に刺し込んでやったとき、いい声がするんです。
「むぎゃぁーっ!」
 紙で口を塞がれたくぐもった声だから、それほど響きはしないのですけど、断末魔の悲鳴なのでしょう。口に針先を引っかけて閉ざしてしまうと、左右の乳首に安全ピンのピアスができる。

「ほらできた、可愛い可愛い・・あははは!」
 涙の中で溺れるような目を見下ろし、頭を撫でてやりながら・・。
「おまえが好きなの、可愛いのよ。わかるわね?」
 こくりと少しうなずきます。たまらないわ。

 それから私は開かせた脚の前に回り込み、そしたらそのとき、勃起したペニスの先から白さの混じったお汁が垂れてて・・。
「何よこれ? 叫んで泣いても気持ちいいんだ?」
 指先に濡れをすくって見せてやり、泣きべそのおなかに塗りつけてやったのです。
 細くて柔らかい手芸用の紐を使い、睾丸とペニスをひとまとめに根を縛り、ぐるぐる巻きに絞り上げてやりました。睾丸は丸くなって張りつめて、ペニスは血管が破裂しそうなぐらい勃起する。

 でも・・紫色の亀頭を見ていて、そこまでは可哀想かなと思ったときに。

「うげ・・うげぇ・・」
「あははは! ウンチの味がしはじめた? 噛むからお汁が出てくるの。ねっちょり拭き取って包んであげたからね、臭くて吐きそうなんでしょう。失礼な奴隷だわ!」
 で、やめようと思ったことを決断する。消毒薬で亀頭も茎も睾丸も拭き上げてやったのでした。

「むやぁぁーっ! むやぁぁーっ! おるるしくらさわぁーい!」
「お許しくださいって? どうしようかなぁ・・女王様の素敵なウンチのお汁を吐こうとした奴隷だからねぇ」

 手の甲で睾丸をぽんと叩いてやって、大サイズの安全ピンを開いてやったわ。

2016年12月03日

FEMDOM 花時計(十三話)


十三話


 それからの一週間、心の凪いだ日々が続いていました。館脇さんとの出会いが、幸せではなかった結婚生活の残滓のようなものを洗い流してくれたのです。
 彼はお店に来てはくれません。それでいいと思っています。
 帰りがけにタクシーで向かい、少しでも顔を見る、それだけで充分だった。彼も私も大人ですから時間を貪るようなことはしたくない。お酒を一切やらない彼が飲み屋に来ないのは自然なことですし、他のお客さんの目もあって、むしろ気が楽なんです。

 泣きべそに対しても、私の側に妙なゆとりが生まれていて、考える時間を与えていたんです。私が家にいるときは拘束は一切なし。私のパンティやスカートなんかを、着せ替え人形で遊ぶように着させて笑っていたわ。
 お尻の鞭傷が綺麗になるまで。姉への憎しみを泣きべそに叩きつけていた感覚をリセットしたかったのだと思います。自然体の私のまま、性癖としての調教がしたかった。ただそれだけ。だからね、泣きべそにもそのつもりでいて欲しい。
 目を盗んでパンティで遊んだ非礼なんて、もうどうでもよかったの。はじめからたいしたことではなかったし、あの子にもリセットするチャンスをあげたくて。

 互いに明日がお休みの金曜日の夜、館脇さんとのいい関係を少しだけ前に進め、土日は泣きべそと一緒と決めていた。お尻の傷もよくなって、リセットして向き合える条件が整っていたんです。
 館脇さんとは男と女・・それは泣きべそ相手でも同じことで、私にとってはやっぱり男と女なんですね。
 息の詰まる奴隷部屋から連れ出して、そのときは拘束具をさせたまま、リビングのソファのところで向き合っていた。手枷で後ろ手にさせた泣きべそは正座をしていて、その腿に私は素足を載せていた。透明なペニスカバーに可哀想な欲望が閉じこめられているのを、なぜか新鮮な想いで見ていたわ。

「私に仕えることは悦びなんでしょうけれど、おまえを悦ばせるために私がいるんじゃないからね。見定めると怖い女よ。私を喜ばせるためにおまえはいるの。気分次第でしたいことをする。それが私」
「はい、女王様」
「女王様か・・それでもそう呼ぶのかな。お尻も治って、せっかくリセットできたのに。それにしても、ちょっと疲れちゃった。今日はダメ、少し寝たい」
 それで私、気まぐれにもほどがあり、泣きべその拘束をすべて外してやったのでした。貞操帯まですべてです。
「シャワーしといで」
「はい」
「済んだらお部屋にいらっしゃい。私の寝室」

 私が先にベッドにいて、素っ裸の泣きべそがやってきました。
 毛布をめくってやって、視線で居場所を教えます。私の横へ。
 緊張した様子で隣りに寝た泣きべそを、押し倒して抱いてやる。そのとき私までが全裸だったことに、あの子はグピって喉を鳴らした。ほんと可愛い。
「抱き枕ね・・ふふん、少し寝ましょ」
 後ろを向かせて抱いてやり、種馬みたいにおっ勃てるペニスを握ってやったわ。亀頭を揉むようにして握ってやったの。
「ぅふ・・ぁは・・」
 感じ入る泣きべそのお尻が蠢き、それがおなかにあたって心地よかった。

「おまえの好きにはしてあげない。だけどそれは悪いことばかりじゃないのよ。こうして抱いて寝てもらえるときもある」
「はい、嬉しいです」
「少し寝なさい、女王と一緒のベッドなんて滅多にないことだわ。ずっとつながれてて疲れてるでしょ」
 喋っているうち私は寝てしまったの。なんだかね、徹夜のあくる日みたいに沈むように眠っていけた。

 ベタ凪のようなこの時間は、水面だけが静かでも、すぐ下では流れが逆巻き、紀代美という女の組成を組み替える作業をしていた気がするの。私には残酷で満たされるところが確かにあって、でもそれと、館脇さんに対するものとは違うのです。いらなくなった過去のことも組成から排除しなければなりません。

 サナギか・・うふふ、そうねサナギよ。
 面白くないイモ虫の暮らしから、羽を持って飛べる私へ。静かな殻の内側ではもの凄い変化があって、それに疲れていたのでしょう。体の疲れではないこの怠さは、心の分子を組み替える作業の反動なんだと思います。

 私もうじき三十七よ。女盛りなのでしょうが、それからこそ花時計はくるくる回る。若いという曖昧を、円熟の先にある輪郭のある心へと変えていかなければならないの。
 夢を見たわ。あの花時計の鬼薔薇が、いよいよ勢いを増して猖獗しだす。触手をのばし、根付く土を探しあてて新しい株をつくり、そうやってどんどんはびこっていくのです。

 その鬼薔薇の群生は、館脇さんと泣きべその二人の男を取り込んで、血の色に咲く花を愛液に濡らしているんです。

「・・ぅぅん」
「お目覚めですか?」
「何時なの?」
「はい、もうすぐ七時になります」
「七時? え? 七時って・・」
「夜の七時です」
「ふ・・あははは! 何てこった、あははは!」
 お昼過ぎに横になって六時間以上も眠ってしまった。泣きべそが眠れたのかどうなのか。もしかしたら、すっぴんの寝顔をずっと見られていたのかも知れません。
 距離は怖いわ・・キスの距離だと衰えがごまかせない。

「おまえ、寝乱れる私を見てたでしょう?」
「はい。少しは寝ましたが」
「シワだらけのババアだと思ったな?」
「いいえ、そんな・・まさか」
「どう思った?」
「素敵だなぁって・・可愛いなぁって・・」
「可愛い? あははは! ほんと可愛いこと言うよね、あははは、たまらない、この私が可愛い? あははは!」

 ナヨナヨでも男の泣きべそを組み伏せて、女体ごと浴びせていって、唇をひったくり、体中にキスをして・・そして怒り狂う若いペニスを口にしてやったのです。
「ああ、そんなぁ・・嬉しいですぅ・・」
 張り詰める亀頭を舐め回し、ほおばって、ングング×十回ほどでイッてしまう。卵の白身のような実体のある塊が私の中にぶちまけられて、それを私は口移しで飲ませてやった。若い若い匂いの強い精液を。そしたら泣きべそ、感激の極みらしくてポロポロ泣いているんです。

 起き出して、寝室を出て、それからは母と子のような時間が続いた。柔和な夜・・そんな表現がぴったりだったことでしょう。
 夕食を済ませ、部屋着だけを着た私は、脚を開いてソファに沈み、拘束具を許したままの泣きべそにアソコを舐めさせていたのです。
 波形の穏やかな快感がずっと私を濡らしていたわ。

 そしたら、ある一瞬・・クリトリスを吸われてビクリとしたとき、何かが弾けたように心の所在が変化した。
「どうせ今夜は眠れないわ。リセットしたおまえを今度こそ奴隷にしようかしら」
「はいっ女王様!」
 ゾクゾク腰が痺れるような不思議な震えに襲われて、それでソファを離れたのです。
     

FEMDOM 花時計(十二話)


十二話

 マゾヒズムって何? サディズムって何? 激情に衝かれるまま残酷になれてしまう私って異常なのかしら?
 そういう世界を考えたこともなかった私が、いきなり男を飼うなんてことをした。これほどの暴挙はないと思うのですが、と言って、そんなことをあの人に訊くなんて、きっと愚問にしかならないのでしょうね。
 わかっていても・・それは彼が性癖を告白してくれたから、私も言いやすくなったということなのでしょうが、自分の中だけでは処理しきれない想いがあった。

「じつは私ね」
「うん?」
「突然・・ほんとに突然、降って湧いたようにSM的なことを知る機会がありまして」
「うん?」
「二十歳の男の子なんですが、きっと可愛いと思っていながら、信じられないくらいひどいことをしてしまう。そんな自分が怖くなりますし、その子の私への想いにしても冗談ではないだけに怖いというのか」
「なるほど。で、奴隷クンは何て?」
「捧げる・・慕う・・そんなふうに言うから」
 なぜかこのとき、愛してるという言葉をはしょってしまった私です。館脇さんが遠くへ行ってしまう気がしたから。きっとそうだわ。これほどの男性はそうはいない。水商売の中で男を見抜く目はできていた。

 そしたら彼ね、リビングの棚に置かれた大きな額をちらりと見て、微笑む奥様・・彼にとっての女王様に笑うんです。
 いいなぁ。いい感じ。ものすごくやさしい空気が漂っているんです。他の女の前で隠さない、むしろ誇れる。それこそ愛だって思います。
「まあ互いに探り合っていくしかないものですよ」
「そうですね」
「人のことはともかくも、僕の場合は」
「はい?」
「喜びでした」
「喜び?」
「そうです、喜びなんですよ。マゾというと、見返りを求めない愛だとか、自己犠牲・・人によっては宗教的なものを思うかも知れないが、そんなややこしいことじゃないんです。心をそっくり預けておきたいような、ただまっすぐ女王様だけを見つめていて何者も入り込む余地のない、神にかけてそうだと思える真実というのでしょうか。生きる軸。うむ・・こういうことはうまく言えないし、リクツにしようとすることが間違ってる。SMの成分分析など、してみたって意味のないことだから」
「そうね、それはそう」
「僕の場合は女王様は女神様。一心に見つめるだけの存在で、それが僕の喜びだったし、すべてだった」
「素敵な言葉。でも・・」
「うん? でも?」
「奴隷を飼ってる女はお嫌?」

 私のことを素直に見つめて、眉を上げてちょっと笑い、それから彼がどう言うか・・私は少し怖くなる。

「いいえ、とんでもない。いまがあって明日につながり、明日が連なって歴史になる」
「いまがなければ明日はない?」
「そうではなくて、明日のためにいまをつくっていきたいなと思うだけ。もしもパラシュートが開かないことを思ったら、愛は決して進まないものですから」
 パラシュート・・それは逃げ?
「うん、そうですね・・いま少し、ちゃっかり女になってましたわ」
 私は今日、あのとき彼が言ったその意味を確かめようとしていたのかも知れません。『行為では違うが、心はMでいたいと思う』・・いまの私にとっては、とても及ばない高みにある言葉。

 ソファに深く座る彼の逞しい太腿に、なぜか目がいって動かせません。ドキドキ・・心臓が高鳴っているんです。
 甘えたい。大きなこの人に甘えてみたい。私は寄り添うように体を傾け、腰に手を回して抱きつきながら、頬を腿に載せたのでした。強い筋肉の動きまでが伝わるような山男の体です。
 ズボンの前に頬を擦りつけ、萎えた彼の感触を感じたとき、私は彼のおなかに向き直ってはっきり性欲を表現し、ズボンを開けて彼を外へ連れ出して、大きな亀頭をほおばっていたんです。


 ああ凄い、狂っちゃう。
 いつから私は淫乱になってしまったの?
 写真になった彼にとっての女王様に笑われながら、ソファの前のカーペットのフロアで、アクメに悶えていたんです。急上昇した性のカーブが下り坂になって、乱れた息が静まってきた頃でした。
 彼が・・横倒れの私の後ろから、お尻越しに濡れたアソコを舐めてくれた。
 ひどく大切なものを扱うような・・それはまさにご奉仕でした。お尻の穴までまわった濡れをそっと舐め取ってくれるんです。

「ぁああーっ!」
 棒と穴の関係とは次元の違うピークが来たわ。意識が甘く消えていった。

 それから・・互いの歳も考えない恋人ごっこのような時が過ぎ、その夜もちろん泊まった私は、逞しい体に抱かれていながら涙が止まらなくなっていた。
 女が独りで生きてきたこと。意識なんてしてなくて、お店もやって普通に過ごした時間なのに、じつは壊れる寸前まで私を追いつめていたんだと思い知らされていたのよね。
「辛かったね・・うんうん・・」
 少女みたいに背中をぽんぽんされて抱かれていながら、恥ずかしいほど泣いてしまった。

 翌日、彼のクルマで富士山麓のカーブを走り、渋滞にハマってしまって遅くなった私は、マンションのそばまで来てもらい、そこで別れた。
 お弁当。ウナギにした。特上を作ってもらった。あの子に食べさせてやりたくてたまらないのよ。

「寂しかったね、頑張ったね」
「はい、お母様・・ぅぅぅ・・」
「ふふふ、また泣く・・可愛いのよ、泣きべそのこと」
 抱いて抱いて、抱き締めてやりました。
 あの子ったら手づかみでお弁当をがつがつ食べて、拘束をすべて外してお風呂に連れ込み・・。
「おいで、一緒に入ろ。ご褒美よ」
「はい」
 ところが、泣きべそ・・あまり嬉しそうにしていない。
 いい人ができて、だからやさしくしてくれて・・捨てられる。
 と、そう思ったに違いないんです。わかりやすい子なんだもん。

 バスタブで抱かれながら悲しそうな目をするわ。

「嬉しそうじゃないわね?」
 上目がちに泣きそうな目をしてる・・あははは!
「もうお母様はやめましょう、あの女のことは忘れることにする」
「はぃ」
 消えそうな声なんです。
「女王様に戻します。躾ていくわよ、本気だからね!」
「はぃ」
「おい泣きべそ! おしっこ!」
「ぁ?」
「ふふふ・・あははは! そこへ寝なさい、おしっこしたいの!」

「はい女王様・・ぅぅぅ・・」
 ほっとしたような泣き声。
「あー、可愛い、たまらない子ね」

 にわか女王の鎧のようなものが脱げていた。泣きべそだって泣きべそなりの「きっぱり男」なんだと思い、私だけがちゃっかり迷っていたわけですね。
 この数日でお尻の傷はかなりよくなって、元気な勃起が戻ってきている。シャワーの下で後ろから抱いてやり、爆発しそうなペニスをしごいてやったわ。
「ぁぁん女王様ぁ・・ぁぁん・・」
「そんなにいい?」
「ああ出ます・・ああダメぇ、出ちゃいます」
「ふふふ・・いいわよイキなさい。もうね、堅苦しく何かを決めるのはやめたのよ。気分次第。おまえは黙って委ねていなさい」
 こくりとうなずく泣きべそ。そして・・。

「もうダメですぅ・・うっ、うーっ!」
 脇越しに見ていたペニスが亀頭をさらにふくらませた瞬間、若く白い迸りが飛び散りました。

2016年12月02日

FEMDOM 花時計(十一話)


十一話


 そして彼のためにメロンを切ってあげ・・。
「ねえ、お名前は?」
「あー!」
 大きな声で・・。
「な、何? びっくりした」
「ごめんごめん、あははは、そう言えば言ってなかった? あははは! これだもんねー、アソコに触っておきながら! わっはっはっ!」
 明るい。サラサラした人。
 女はこういう不意打ちを仕掛けられるとのめり込んでしまうもの。

「館脇高志です。志は高く持て、の高志、五十八です」
 五十八? うそよ、いってて五十、見方によっては四十代で充分通る若さです。
「若い頃スポーツを?」
「若い頃? いえいえ、いまでも現役ですよ。最近はちょっと行けてないけど山なんです。大学でワンゲルでした」
 山男・・どうりでパワフルだと思ったわ。だけどそれなら、そんな人がどうしてマゾ?

「私は紀代美、森山紀代美」

 彼の目がきらりと光って子供っぽく眉が上がる。心が若いと感じます。
「ひとつ訊いていいかしら?」
「どぞ?」
「もしもよ・・」
「ええ?」
「もしもですけど、私が奴隷を躾るとしたら・・男の子を」
「うむ?」
「それってどういうことかしら? 監禁して虐待するみたいな感じだとしたら?」
 そしたら彼、また眉を上げて微笑んで、深くひとつ息をして、ほんと静かに言うのです。
「それはまあ一概には言えませんね。SMにもさまざまあって、単なるオモチャとして躾るのか、男として躾るのか。ブームだからS女ぶって遊んでるだけってコトもあるし、あるいは違う意味で女王様自身が自分を見つめるためなのか」

 女王自身が自分を見つめる? ドキリとしました。そうかも知れない。

「しかし、監禁してまでとなれば、その女王様は奴隷に対して本気ですよね。何かを期待して飼っているって感じになる」
「何かを期待して?」
「妻がそうでした。じつは僕、山で仲間を失って・・滑落事故です。それでおかしくなっていた僕を叩き直してくれたんですが。彼女のマンションに半ば監禁でしたよ。大学に通う以外は密室に暮らしてた。二年ほどかな」
「そんなに? 二年も?」
「ふふふ、懐かしい話です。食事からトイレ、射精までも管理され・・あるいはずっと放置され、耐えたご褒美が鞭であり。ふふふ、そんな生活でしたかね」

 私は泣きべそに何かを期待しているの?
 私は、あの子に本気なの? どういう意味の本気かしら?


 その日は結局、いつもよりも遅くなった私です。戻ったときには夜中の二時に近かった。
 奴隷部屋には、ズタズタの泣きべそを寝かせるために布団を与えていたのですが、あの子はぐったりしています。傷だらけのお尻に薬をつけてガーゼで覆い、マチの深いベージュのパンティを穿かせていた。
 ミルクを満たしたボウルも空っぽだったし、おなかぺこぺこのはずでした。タッパに詰めた手料理をそのまま置いて手づかみで食べさせます。
「美味しいでしょ。今日は暇で、お店で出すもの余っちゃった。私の手料理よ、感謝なさいね」
「はい、お母様、美味しいです、ありがとうございます」
 素直というより、ほんとに目が弱いんです。心が壊れかけている。一見して明らかでした。
「・・食べたらお尻を見せなさい」

 部屋着に着替えてから覗くと、大きなタッパにあれだけ詰めたものが空っぽになっている。少し胸を撫でたわね。だって食欲があれば力は残っているということで・・。

 お尻の傷はますますひどく、青痣がひろがってまわりが黄色くなっていて、背中にも腿にも残酷な責め痕が浮き立っていたんです。薬をつけてパンティを穿かせてしまう。
「軽々しいことを言うからよ」
「はい」
「それから、今度の土日も放置だわ。傷を治すのにちょうどいいでしょ。ふふふ、デートなの、凄い人と出会えたわ。おまえなんかにサセないけれど、私はきっと抱かれちゃう。そっちで満足しちゃうから、おまえなんて、もはや飼い殺しのサイテー奴隷よ、わかった?」
「はい」
「捧げるって、そういうことでしょ。人生を賭けるってことなんじゃないの。 だからおまえは軽々しいって言うのよ」
「はい、お母様」
 弱い目に涙が溜まって、うなだれてる。
 素直ですけど意味が違う。まるで人生を見切ったような・・小僧のくせして
生意気な。でも・・。

 可愛い。

「便器椅子! 汚れたアソコを綺麗になさい!」
「はい、お母様、頑張ります僕」

 何でなの。少しは逆らってよ。怒り出してよ。
 そうすれば放り出すことだってできるでしょうし、それはつまり解放なのよ。
 アパートを借りるぐらいのものならあげるし、それに、あの人が彼になったら邪魔なのよ。おまえの悟りきったような姿がムカムカするの。
 貞操帯はさせたまま、今夜は鞭は持たずに舐めさせて。でも手にはマチ針を持っていた。

 ああ感じる、たまらない、イキそうよ。
 だからムカつく。どうしてこんなにいいのかしら。アソコが歓喜して生き物のように蠢いているのがわかるのです。

 泣きべその乳首の先にプツっと赤い点がある。触れただけのお線香の火傷。
 それでも私は、きっとまだ痛いはずの乳首をツネリ上げて引き伸ばし、乳首の根をマチ針で貫いてやったのよ。
「ぁうう・・ぅぅん・・」
「ふふふ、感じてるみたいな声ね。次は反対!」
 それでまた貫いて・・ああひどい、可哀想。
 でも行動は相反し、針を刺した無惨な乳首の両方を足指の爪先で踏みつぶしているのです。
「ああーっ!」
 痛みに腰が暴れて貞操帯を振り回し、アソコを舐める舌がべろんべろん這い回り、透明な貞操帯が破裂しそうにペニスが大きくなりたがる。

「ふふん、マゾよね、こんなことされてイイの? つくづくサイテー。ぁぁ・・はぁぁ・・もっとよもっと、クリトリス吸いなさい!」
「はわぁい、おかわぁ様ぁ」
「はぁぁ・・ああダメ・・ダメ・・イクぅーっ!」
 どうしてでしょう、怒濤のようなアクメです。体ががたがた震えてしまって、頭が真っ白・・好きで好きで一緒になった夫でも、これほどの快楽はくれなかった。

 ぐったりした意識が戻ったとき、泣きべそは、それでもまだアナルを舐めているんです。余韻のようなアクメがずっと続く。
 便器椅子から解放してやり、正座をさせて目を見つめ、それに血の流れる乳首も見つめ・・。

「もう一度訊くわ。 捧げるの? 私を慕うの? たまらないほど大好きなの?」
「はい、お母様!」
「もう、何よそれ、わかってないじゃん! あームカつく・・」
 私から逃げてほしい。逃げ出してほしい。
 そう思いながらも、私は部屋着を脱ぐのももどかしく、全裸になって泣きべ
そを抱いていた。
「頑張ってるよね・・うん・・はい乳首吸って」
「はいぃ!」
 チュパチュパと赤ちゃんみたいに・・だけど・・。

 奴隷として躾けてる?
 男として躾けてる?
 それとも私自身を躾てる?
 館脇さんとの出会いが、それまでなかった根元的な問いを私の中にひろげていたわ。教育方針なんて、そんなものはなかったはず。だけどいま私は考えるようになっていた。

「ねえ泣きべそ」
「はい、お母様?」
「可愛いみたい。口惜しいけれど、泣きべそのこと可愛いみたい。イジメたくてたまらない」
「はい、お母様・・頑張りますから・・ありがとうございます・・大好きです・・ぅぅぅ」
 嬉しそうに泣いてくれる。
「もう・・どうしようもない子。あー、ムカつく・・」
 それで頬をパシパシ本気で叩いてやって、もっと泣かせ、なのにまた抱き締めてる。


 そして土曜日。

 午後になって家を出た私は待ち合わせの場所・・それはつまり彼の住む駅ですが、その改札に彼を見つける。スラックスとジャケットのカジュアルな姿です。なぜかすっきりした顔立ちで、男らしいショートヘヤーにシャンプーの匂いがする。
 恋人のように並んで歩き、彼のマンション。2LDKのお部屋で古い建物、その五階。
 きっと奥様とここで・・ぴーんとした空気が漂っているんです。
「二十歳の頃からずっとここです。賃貸ですが越す気にならない」
「それはつまり女王様との・・?」
「はい、もともとアイツが住んでたマンションなので」
 それほど広くないリビングに、大きな写真の額があり、にこやかに微笑む若い女性・・普通の姿でそれほど美人ではないけれど、目の澄んだりりしい人です。それにしてもお部屋が綺麗だわ。乱れがまるでありません。

 硬めのソファに浅く座り、ちょっと短かったかなと後悔するミニスカートで膝を逃がして彼の目を気にしている。

 コーヒーが用意され、ここへの途中で買ってきたシュークリーム。立ち振る舞いのすがすがしい彼でした。山で鍛えたお尻が大きく腿が張って、だけど贅肉なんてありません。
 そして彼、ロングソファの隣りに座る。微妙な隙間を空けてくれ、だからよけいにドキドキしていた。

「お部屋に女の人を入れたことは?」
「ありません、はじめてです」
「・・ごめんなさい」
「は? いいえ、なんもなんも・・はははは! あなたならウチの奴も笑ってますよ。ちゃっかり女なんて連れ込もうものならバケて出くさる女です、あははは! ウチの奴って貞子ですから」
「え? お名前が?」
「あはは! 嘘ぴょん! わはははっ!」

 どんどん惹かれていく。もう準備はできてるわ。アソコが濡れはじめているんです。泣きべそに向かって解放された私の性が、今度こそセックスを求めている・・。  

FEMDOM 花時計(十話)


十話


 この方はお初さんです。私は一度見た顔はなんとなくでも覚えている。
 ひどい雨。可哀想なほどスーツがびしょ濡れ。カウンターを出た私は乾いたタオルを手渡します。
「これはどうも。はぁぁ参った、お店まだやってます?」
「ええ、今日はもうダメかと思って終わろうとしてたところですけど」
「そうですか、すみません、少し休ませてくれますかね」
「もちろんですわ、どうぞ。大変でしたね、びしょ濡れ」
「まったくです、電車が止まってしまって」
「え?」
「この雨でどこぞの駅が冠水したとか。知りませんでした?」
「はい、いまはじめて」
「うん。隣りの駅まで動いてくれてよかったですよ」
「隣り? そこにお住まい?」
「ここからだと、ちょっとあるけど歩けない距離じゃない。ま、それでいつ動くかわからない電車を降りて、どっかで一杯と思ったけれど、このへん全部閉まってましてね、駅前あたりにはファーストフードしかありませんし。ここの明かりが見えたんです。ほとんどもう閉まってますよ」

 カウンターにお座りになった彼。そばで見ると五十代。なのに精悍な印象で、明らかに若い頃はスポーツを・・引き締まった体型です。
「梅酒あります?」
「は? 梅酒ですか?」
「梅酒です。ははは、僕は酒がだめなので、唯一飲めるのが梅酒なんです。カミさんが梅酒は体にいいからって上手に作ってくれたんですよ」
「まあまあ、それはごちそうさま」
「いやいや、僕はこれからいただきますので」
「えっえっ?」
「じつは飯まだなんですよ、何かできますかね?」
「あ、はい・・うふふ、面白い方。お話がお上手だわ。奥様の梅酒の方が美味しいと思いますけど。それで梅酒はどうやって?」
「ロックで」
「はいはい、ご飯はお魚それともお肉? 焼きおにぎりとお茶漬けぐらいしかできませんが。それとも焼きそばとか? 白いご飯でよろしければありますけれど?」
「目玉焼きは?」
「は? うふふ、はいはいできますよ」
「きざみ海苔は?」
「それもありますけど・・」

 話術が巧み。次の言葉が聞きたくなる。
 そしたら彼、手をぽんとやっておっしゃいます。
「じゃ卵二個で目玉焼き。丼にご飯をよそって、きざみ海苔をのせるでしょ。醤油をちらちら。上に目玉焼きをかぶせて完成。これぞ特製、貧乏丼! あははは! 学生の頃から好きだったヤツですよ」
 面白い。言葉がよどみなくハッキリ言う。
「うふっ・・貧乏丼か。ほほほ! 奥様にも創します?」
「もちろん! 以前はね・・」
「以前は?」
「逝きました。ガンでした」
「・・すみません」
「いえいえ、なんもなんも! あははは!」
 そして彼はお店を見渡し・・。
「それとおかずに何か。煮物とか。ああ、ここカラオケないんですね?」
「お好きなの?」
「とんでもない。ダクレの歌なんぞ聴きたいもんですか、へったくそな音痴ッチ。はははっ」
「ダクレ?」
「ああ、飲んだくれのダクレです。まっぴらごめんのお許しください女王様だ」
「飲む人はお嫌いみたいね?」
「虫酸がすっぱい、口すっぱい。吐き気がしますよ」
「ま・・ふふふ」

「あ、いけね、ここは飲み屋さんか・・あははは! もとい!」
「え?」
「いまの話、嵐がうるさく聞こえなかった。耳だけ閉店してました。あははは!」
 変な人・・頭がキレる・・カンペキ変人。
 でもだから、私はちょっと惹かれていた。

 そして、彼の言う貧乏丼ができあがり、まあ見事にがつがつとたいらげて。それがまた若者の食べ方なんですね。
「しかし、お店としてはお金にならない客ですね」
「いいえ、かまいませんわ、そんなこと。お酒は売るもの、飲むものではありませんから」
「うむ、まったくです。でもママぐらい素敵だと飲まされるでしょ、色目使っていやらしく?」
「ふふふ・・さらりとお上手ね、新手の口説きなのかしら?」
「こりゃ心外、女なんてまっぴらですよ。人生は長くない。愛や恋やはさらに一瞬、ひたすら忍耐、男女関係ってね」
「奥様のことが忘れられない?」

 そしたら彼、ちょっとうつむいて笑うんです。
「はい」
「やっぱり・・」

 そして・・そのときになって私、あることに気づいたんです。
 カウンターです。氷の入った梅酒のグラスに露がつき、それと食べたものの周辺ぐるりと水一滴濡れてはいない。そういう目で見ていると布巾できっちり拭いている。
 性格の綺麗な人・・繊細で鋭くて・・だけど危うい感じがする。

「私は生別ですけど死別だと辛いわね、いいことしか覚えていない」
「ですね。ましてそれが女王様なら」
「女王様って?」 
 このとき私は、客商売にあるまじき目の色で探っていたと思うんです。
「僕は若い頃マゾでした。でもそれは性癖ではなく単にもたれていたいだけの甘えであって、彼女はそんな僕を叩き直してくれたんです。十歳上の女性でした。僕が二十歳、彼女が三十。そんな関係だったんです」
「そうですの・・それでいまはマゾじゃない?」
「行為では違います。それはもういい。でも心だけはMでいたいと思ってますよ。ただし、きっぱりとした女に対してだけ。そこらのちゃっかり女に対してはドSでしょうね、あははは!」

「ふーん・・きっぱり女とちゃっかり女か。わかる気がします。じゃあ女王様は、きっぱり女で厳しかった?」
「逃げ場を一切つくらない人でした。逃げ場だらけの僕でしたから、それは厳しくて、大切なことをたくさん教わり、命がけで惚れたんです」
「お子さまは?」
「いえ、どういうわけかできませんでしたね」
 彼ったら目を細め、奥様を想うような目の色で・・。

「私は? きっぱり? それともちゃっかり?」
 そしたら彼、ちょっと顎を引く素振りを見せて、カウンターに手をついて、中を覗いて足先まで見るような・・面白い眸をして言うんです。
「どうでしょう、確かめるテはありますが」
 穏やかに笑う彼。
「どうやって?」
「包丁持って出てください」
「包丁?」
「いいから包丁。試してみたいんでしょ?」
 私はちょっと挑戦されてる気がしたわ。女としての私に男としての彼が挑んでる。まっすぐ逃げない澄んだ目です。
 それで私、包丁を手にカウンターを出たんです。
 お店で私はそれなりのミニ、白いブラウス。仕事柄、ピンクの花柄ブラがあえて透けるブラウスを着る。

「包丁をカウンターに置いて、そこに立って。僕を見て」
「え? ええ・・」
「僕の心が届けばよし。もしも侮辱されたと思うのでしたら、包丁で僕をお好きなように」
「馬鹿なことを」
「いいからいいから。本気ですよ僕は。悪気があって挑んだりはしませんからね」
 見透かされていると感じました。

 そして目と目が合って、どちらも逃げずに視線が合って、彼の手がそっと下から忍び寄り、スカートの前を上げて入ってきます。
 だけどそのときも彼の目は微笑みをたたえて私の目を見つめたまま逃げようとはしなかった。
 パンティと、それからストッキングの上から、デルタにそっと触れられて、指先が忍び込み、私はなぜか少し脚を開いて受け入れて、かすかにアソコをこすられる。その間も目と目は合ったまま・・。
 
 かすかですが・・ほんのかすかなゾクゾクが全身に伝播して、だけど彼の手がすっと退いていき、私に触れた指先を彼は自分の口許に寄せていって、その指先にキスをする。ずっと私を見つめたままの行為です。

「失礼なことをしました。でも嬉しかった、素敵な人ですママは。嬉しかった。幸せです」
 私は混乱してしまい声も出せない。こんなヤツってはじめてだわ。
「さあ包丁を。どうぞ気の済むようにしてください」
「おちんちんを切るって言っても?」
「はい、約束ですから」
「ふふふ・・うふふっ! 私はきっぱり女かしら?」
「ええ見事に」
「あなたもきっぱり男よね」
「当然です、それが妻の教えですから」

 凄い・・この人に妻の教えと言わせてしまう、その妻はどんな人だったんだろう。泣きべそにとっての私に、私はとても自信が持てない。
 私はちょっと笑ってしまった。
「せっかく持った包丁ですから」
「はい?」
「メロンでも切ってあげますわ。サービスです」
「じゃあ僕はメロメロになりますか? あははは!」

 彼の腕が開かれて、私がすっと流れて寄り添って。
 そっと抱かれ、そしてそっと唇を奪われた・・。

「お休みは?」
「土日と旗日」
「うん。次の土曜、会えませんか。惚れました」

 胸が痛いぐらいの言葉です。
 抱かれるわ・・この人が好きになる。
 予感ではなく、きっぱりとした性の予兆がありました。
 

FEMDOM 花時計


九話


 黒い鉄パイプで組んだ鞭打ち台は、分厚い木製の底板がついていて、人が乗ることで体重がかかって安定するものです。首輪や手枷足枷の金具と対になっていて、ざまざまな姿勢で奴隷を拘束できる。中心に太い支柱があって柱を抱くようなカタチになる。
 十字のアームに手枷を固定。両足を開かせて底板の金具に固定。首輪も支柱につないでしまえば身動きできない。
 少し変形したX字・・そして、上半身を少し前に傾けてお尻を突き出させるポーズにさせる。
 貞操帯もパンティも剥ぎ取ったお尻は妙に色白で、すでにもう怯えていて、尻肉がふるふる震えているのです。

 私の胸の奥で心臓が変な動きになっている。取り返しがつかなくなることへの決断。その緊張なのかも知れませんし、自分でも説明のつかない性欲の暴走なのかも知れません。

 まさに処刑を待つ奴隷の姿。泣きべその綺麗な後ろ姿を見ていて、私はまた、あのことを思い出していたんです。
 私は小学生、もちろん性毛なんてない頃です。
「おまえは子供だからわからないかも知れないけれど、女はこうされると気持ちいいものなのよ。ストレスが癒されて気分がよくなる。わかったわね!」
 床に寝かした子供の顔に姉はまたがり、白いお尻の底を押しつけて、息が できなくてじたばたするまで舐めさせられたものでした。泣いたって許してくれず、いつもお線香を手に脅すんです。
 「ほらほらアソコの中に舌入れて! 逆らうと乳首焼くわよ!」
 お尻なんて臭かったし、すっぱいアソコをどれだけ舐めさせられたことでしょう。
 そんな女のアソコからコイツは出てきた。虫も殺さない顔をしてオギャオギャ泣いて、あの女の乳首を吸った。

「・・ムカつく」

 バラ鞭を一度は握り、震えるお尻を見た私は、乗馬鞭に持ち替えた。
 パシパシとお尻の左右を嬲ってやって・・。
「捧げるって何をよ? おまえを虐待する私を慕う? 愛してるって、そのおっ勃つものを私のアソコに入れたいってことかしら?」
 私は全裸となっています。部屋着さえいらない気がした。異常なほどの欲情が燃えているのがわかります。
「お、お母様・・」
「もういい喋るな! 黙ってなさい!」

 パシンパシン。その度お尻がきゅっきゅと蠢いて、ぁふぁふと感じ入った声がする。パシンパシン・・パシンパシン・・そうやって赤くなってくお尻を見ながら、鞭なんてものをはじめて握って私だってどうしようもなく濡れてくる。内腿にお汁が伝う感じがする。
 「ふんっ、いいわ。だったら捧げてもらいますわよ、後悔しても遅いから」

 パシーッ! 
 「あうぅっ!」

 力任せの叩き打ち。お尻の肉がブルルっと痙攣し、腰がくねくね揺れるんです。女みたいな男のセクシー。あー、ゾクゾクする。鳥肌が立ってきて、アナルまでがひくひく蠢く気がしたわ。子宮がもがくことで淫液を搾り出してる感じがする。
 台に上がって後ろから裸身を添え、背中に乳房を感じさせて、手を回して泣きべその乳首をいじる。
「ぁぁん・・ぅふ・・」
「感じるのね」
「はい」
「ふん変態」
 それからうなじをぺろりと舐めて、耳たぶを噛んでみた。
 ゾゾゾっと泣きべそがよがり震えをするんです。手を降ろしてまさぐると、ペニスはギンギン。それがまたムカつくの。

 台から降りた私は、乗馬鞭をヒュンって振って、お尻に狙いを定めます。
「誰が快楽なんてやるもんか。よくも私に精液ぶっかけてくれたわよ。あの女の血を継いでる精液を。いくわよ!」
 パシーッ!パシーッ! 連打します。
 右も左もめった打ち。手首をきかせて叩きつけていくのです。
 左尻、右尻・・腿、背中・・また腿、お尻・・痛がってよじれる若い男の体。私はこのとき頭から血の引いていくような恐ろしい心の冷えを感じていました。
ブレーキが壊れてしまった。私はもう自分を止められそうにない。

「ほらもっとお尻を振って! いやらしくよがるんです!」
「はいぃ!」
 パシーッ!
「ぎゃう! ぅむむ・・痛いですぅ」
「そんなことわかってる! 黙ってろ!」
 パシーッ!パシーッ!
「ぐわぁぁー! ぐわぁぁーっ!」
 鉄の鞭打ち台がギシギシ軋み、綺麗だった泣きべそのヌードに惨たらしい腫れがいくつもいくつも。
 なのに私は、乗馬鞭を台にひっかけ、木製のスパンキングラケットを手に取った。打面に尖った鋲が植えられていて、きっと恐ろしいことになる。

「今度はこれね、本気でもがいてもらうわよ」
 ぺしぺし・・パァァン!
「あぎゃ! むむむ!」
 自由にならない体が暴れている。くくく、いい眺め。

 パァァン!パァァン!
「痛いぃぃーっ! 痛いぃぃーっ!」
 パァァン!パァァン!
「ぐわああーっ! ぐわああーっ!」
「ふふふ、すごい声・・可哀想ね」
 パァァン!パァァン!
「うわああーっ! もうイヤぁーっ! もうイヤぁーっ!」

「もうイヤ? あらそう・・捧げるってその程度・・」
 私はおかしくなっています。怒りなのか欲望なのか、残酷さがますます度合いを増してくる。
 パァァン!パァァン!パァァン!パァァン!パァァン!
 紫色に変色したお尻の皮がとうとう破れ、右からも左からも真っ赤な血が流れ出してくるのです。
 号泣してます。絞り出すように泣き散らし、体には脂汗が浮き出して、全身ガタガタ痙攣してる。
「お許しくださぁぁい! 助けてぇーっ!」
「まだ言うか! この変態!」

 それで私はお線香に火をつけた。手が震えます。自分が何をしているかもわからなくなっている。
 オレンジ色に焼ける細い火種を、皮の破れた血の中に・・。
「ひっ!」
 お尻がきゅってすぼまります。
「ふん、血はダメね、消えちゃうもん」
 濡れた先を折って、また火をつけて前にまわり・・。
「乳首がいいか・・ツンツンて焼いてあげるわ」
「ああイヤぁーっ! ごめんなさいぃ! 二度と失礼なことはしませんからぁーっ!」
 死に物狂いで顔を振ってイヤイヤしてます。涙が飛んで、後から後から涙が湧いてきてるんです。
「ダーメ・・同じようなことを何度も聞いたわ。もうダメよ、許せなくなっちゃった」
 私はにやりと笑いながら、お線香を持たない爪先で乳首をつまみ、コネてやり、怯える眸を楽しんで、それから乳輪ごとつまみ上げて乳首を尖らせ・・。

「ほうら熱いわよ、痕が一生残っちゃう。ふふふ・・」
「ぅぅぅ、お母様・・お母様ぁ!」
「うんうん、可愛い泣き顔だわ。ほうら焼ける・・ほうら・・」
「ひっ・・ひっ」
 喉の奥が啼いてるみたい。
 乳首の先に火種をツンと押しつける。
「うっ! うむむ!」
「反対側も焼きましょうね」
 ふーっと先を吹くと火種が赤く燃え立ちます。
「ほうら熱いよぉ、すごぉく熱い・・気持ちいいねぇ・・」
「ああっ! 熱っつ!」
 泣きべそは、私の豹変ぶりが信じられないような面持ちで、小さく焦げた乳首の左右を見下ろして絶句してます。

「これでわかった? 恐ろしい女なの私って。次はどこを焼こうかな・・肛門? そうね肛門を焼きましょう」
「あああーっ!」
「イヤなんでしょ? もうイヤもうイヤって言ったもんね?」
「ぅぅぅ・・」
 泣く目が弱い・・そんな感じ。

 ハンドルを少し回すと上半身が前に折れ、さらにお尻を突き出すようになる。お尻は血だらけ・・背中にも腿にも青タンが無数にできている。そんな泣きべそのお尻を奥を、私はしゃがんで見上げてて、きゅーって奥へめり込んでく肛門めがけて、お線香の先を寄せていく。
 股間に恐怖で縮こまったシワシワの睾丸があったのよ。
「タマがいいか? 肛門やめてタマにしようか? 亀頭がいいかな?」
「はい、お母様」
 消え入るような声でした。
「え? いいの? 亀頭でいいのね?」
「はい」

「ふふふ・・もう諦めたか・・ふふふ、やっぱり肛門・・」

 ヒクヒクしている穴菊の少し奥、睾丸との間のペニスの元根に、ツンではなく消えるまで押しつけてやったのです。
「きぃぃーっ!」
 鞭打ち台がガタガタ揺れる全身の硬直でした。
「あははは! 何よその声! あははは!」
「針もいるわね。それに一本鞭とか。物入りでたまらないわ。ふふふ・・あははは! いいわ、今日のところは許しますけど、以後心して喋りなさい!」
「はい、お母様」
「あははは! あー楽しい」

 泣きべその無惨な体をそっと撫で、お尻を撫でたら手が真っ赤。ゾクゾクする。うまく言えませんが、心のアクメのような心地いい陶酔感があったのです。
 後ろから素っ裸で抱いてやります。
「もっともっと調教するけど、ついておいでね。いい子になさい」
 たまらない。一瞬にして母性が騒ぎ、可愛くて可愛くて、私の方が狂ってしまったみたいです。

 何かが振り切れた。崖を飛んでしまった・・。
 次の日の私は、思考回路が停電していた。一夜明けた奴隷の体は無惨その
もの。眸が死んでしまってて、ぼーっと私を見てました。
 お店で仕込みを終えて、さあこれからというときに雨・・突然の嵐です。
今日は降るとは予報で知っていたけど、こうなるとは思わなかった。
 お客さんゼロ。九時ぐらいまでに入らなければ、その日はおしまい。そんなものなんですね。そして十時になった頃、風雨は一向に変化なく、そっくり余ったお料理のいくつかをタッパに詰めて、泣きべその餌を作っていたんです。

 と・・ドアが開いて、中年の紳士が転がり込んで来たのです。

2016年11月28日

FEMDOM 花時計(八話)


八話


 鍵付きの首輪それに手枷、足枷、やっぱり鍵付きで快楽を奪う貞操帯をつけさせて、私の赤いパンティを穿いた姿で、買ってきたお弁当の中身をぶちまけたボウルに顔を突っ込んで貪り喰う泣き顔を見ていると、たまらない気持ちがしてしまう。

「美味しいわね?」
「はい! 美味しいです! うふふっ!」

 笑った。あーダメ、可愛い・・と思った瞬間、母性が騒ぎ出して残酷への思いをつぶしてしまうのです。ボウルに山盛りだった残飯のような餌をぺろりとたいらげ、振り向いた泣きべそ。
 そのとき、とりあえず部屋着に着替えていた私は、リビングのソファに座り、奴隷を呼び寄せて目の前に正座をさせたのです。
「寂しかったね」
「はい」
「悲しくて、それに怖かったでしょ?」
「はい・・ぅ・・」
「泣いてもダメよ。オナニーだって、ずっと射精してないもんね」
「ぅっぅっ」
 弱い目にまた涙が浮かんだとき、たまらない性衝動が湧き立ってきたのです。

「舐め椅子を」
「はい?」
「持ってらっしゃい! バラ鞭も!」
「はい!」

 リビングという常識の中の風景にそれを置く。鞭なんて異世界のものが割り込んでくる。私には奴隷がいて変態的な日々があるんだと、いまさらながら思い知らされ、離婚から鬱積していた性欲がどれほどドロドロしたものだったか、私はまるで違う自分を見たようでした。
 テレビをつけたら、どうでもいいドラマをやっていて、それが偶然、刑事がスナックを訪ねてママと話し込む、そんなシーンだったのです。安物の推理ドラマ。そのママは離婚していて、傍目には吹っ切れたようでもじつは過去を引きずって・・そして夫殺しの犯人だった。
 とまあ、ありきたりの筋書きなんですが、このときは妙に自分に重なった。
 私という女の現実にです。

 似たようなスナックのママの私が、穏やかでやさしく見えるその私が、若い性奴隷を飼っている。ふふふ、実感のないふわふわとした不思議な想い。

 奴隷を寝かせて便器椅子を顔にかぶせ、両手の手枷を椅子の脚につないでしまうと、すでにもうペニスカバーの中で苦しそうに膨張しだす赤黒い肉棒を解放してやる。
 そうした愛撫ではない刺激でも飢えたペニスは直立し、けれどシャワー以前のそんなものには触れる気にもなりません。

 部屋着の裾を上げて、またいで座る。ひろがるスカートで表情はうかがえませんが、生唾もので見ているはず。
「私のアソコ、素敵?」
「はい、お母様!」
「あらそ。うん、いいわ、甘やかすには早いけどご褒美です。お風呂の前だからラビアもクリトリスも綺麗にね。あふれてくる美味しいものも綺麗に舐めて。それからお尻の穴もよ!」
「はい。ぅぅぅ・・嬉しい・・」
 嬉しい? 嬉しくて泣けるのかしら?
 こんな屈辱、よくも泣いて喜べるものだわ。

「ぁ・・ぅふ・・ぁぁン」

 女体が溶けそう。クレバスをくまなく舐めて、クリトリスを舌でつつき、ラビアを吸いのばすようにして、熱い舌がベロベロと蠢いて、私は服の上から乳房を揉んで、わなわな震えていたのです。
 ぺちゃぺちゃ・・クチュクチュ・・ひろげたスカートの中に得体の知れない熱源があり、湯気を上げるような熱がこもってお尻までが熱くなってくるようで・・。

「あぁーぁー・・はぁぁ・・いいわぁ泣きべそ、ああ感じる、おかしくなりそう・・あぁん、いいわ!」

 細く開けた喘ぎ目の中で、泣きべそのペニスが上下に脈打って腕立て伏せをしているようで、そばに置いたバラ鞭をつかみ、私はアクメから気を逸らすようにペニスと睾丸をバサバサ打った。泣きべその薄い胸に素足を上げて、指先をカギ曲げして乳首をツネり、そうしながらバサバサ打ったわ。
 だけど椅子の下の舐め舌はよけいにベロベロ回転しだし、鞭のリズムを崩してしまう。
 ああ来る・・もの凄いものがやってくる・・。
「はぁぁーっ! 泣きべそ、お尻もよ!」
 アソコから舌を遠ざけないと・・そうでないと失禁してしまいそう。

 だけど、どういうわけかアナルもすごく感じるの。感情が乱れてる。狂った母性? まさか愛情? よくわからない女心が高調しているのでしょう。
 そして、ちょっと強い鞭を振るって、そうしたら・・。
「ぁう! ううーっ、お母様ぁ、出ますぅーっ!」
 ピュピューッって、胸に載せた私の足の足首のところまで熱湯みたいな精液が弾けます。
「ああ気持ちぃーっ! お捧げします、お母様ぁ! お慕いしますぅ! 愛してますぅーっ!」


 そのときだった。私はすとんと醒めてしまった。

 捧げるって、いったい何を? 

 慕っているの私のこと? どうしてかしら?

 愛してるって、おまえは私の恋人なの? 

 愛なんて信じたばかりに私は子供だって取り上げられた身の上です。
 今夜はご褒美・・この後だって、いろいろ考えてあげてたのに、それもこれも吹き飛んでしまったわ。
 天空から深海へ落ちたように、説明できない落胆と怒りがこみ上げてきたのです。

「おまえね・・私の足に汚いものをぶちまけておいて捧げるですって。慕うだの、言うにことかいて愛してる? 軽々しくも、よく言えたものだわよ! 何様なのよ、この奴隷!」
も、申し訳ございません」
「うるさいわ! おまえはよけいなことを言ったのよ! 汚れたパンティひっくり返して、この私を侮辱して、その償いのはずじゃなかったの! 許さない。二度と無駄口きかないように調教するわ! 拷問です!」

 声を荒らげ喋っていながら、私は何を言ってるの・・何で怒るの・・わけのわからない激情に衝き動かされてしまってました。

 怯える泣きべその耳をひっつかんで引き立てて、とうとう鞭打ち台を使うときが来た。
 それだけじゃないわ、なぜかお線香までを用意した。仏壇のお線香です。
  

2016年11月27日

FEMDOM 花時計(七話)


七話


 ズタズタにしてやりたい衝動を私の中にある何かがおしとどめていたのでした。それが何か、どんな感情なのか・・私はそれを迷いと受け取り、振り切れるまでは進まないと決めていた。

 翌日は水曜日です。昨日あれからお風呂に入れて、もちろん貞操帯をさせ、新しく置いた鞭打ち台につないでしまって今朝まで放置していた奴隷に、生理二日目でたぷたぷの赤いタンポンを白くなるまでしゃぶらせて、ボールに入れたミルクとドリンク剤を一本置いて、家を出た。
 街へ出て買い物もありましたし、そのまま店に出るつもり。昨日からだとほとんど二十四時間の放置になります。

 早めにお店に出た私はお料理の仕込みをしていたのですが、いまごろあの子、悲しがっているだろうなと考えると、これからはじまる深夜までのストレスが軽くなる気がします。なんだか口惜しくもあるのですけど、あの子に癒されてるのかも知れませんね。
 そしてお店を開けて、なじみの顔がカウンターに出そろうと、ある人が、まじまじと顔を見て言うのです。
「ここのところママ、何かいいね」
「何かって? いいって、どういう意味?」
「うん、自然体って感じでさ、穏やかで雰囲気いいよ。さては彼氏でもできたかな? あははは!」

 ドキリとしました・・ほんの数日でそんなに変わっていたのかしら? 嬉しいような、でも逆にムカつくような、よくわからない感情なんです。あんな変態に心を動かされたなんて、私は自分が許せない。
「でママ、今度の土日なんだけど俺たちゴルフなんだけど、よかったらママもどう? 温泉に泊まるプランだけど?」
「うん、考えとくね、ありがと」

 その会話がヒントになりました。その日の夜はタンポンを吸わせたぐらいで、これといったことはせず、その翌日も、また次の日も、ミルクとドリンク剤だけで餌は与えず、乳首をいじる程度の刺激をやって放置していたのです。
 日に日に視線が弱くなっていく。寂しいのと、きっと不安もあるのだと思うのです。

 そして明日から土日という金曜日の夜のこと・・。
「明日からのお休み、ゴルフですから。お客さんのお誘いだからしょうがないのよ。ふふふ、私を狙ってるからエッチぐらいされるかも。明日は早く出て日曜日の夜まで戻りませんから、おとなしくしてるのよ」
「はい、お母様」
 土日はかまってもらえるし、ご飯もくれると思っていたのでしょうね。がっくり肩を落としています。それにミルクだけの三日の絶食。それがさらに二日も続く・・。

 そしてその朝、牛乳パック二本とドリンク剤を二本置いてやり、悲しそうな顔を覗き込んでやったのです。
「奴隷のために明かりなんてもったいないから消してくね。ミルク考えて飲みなさいよ、なくなっても後がないから。じゃあね変態、お客さんに抱かれてくるわ。あははは!」
 ゴルフではありません。独りで温泉でも行ってみようと思っただけ。
 ちょっと可哀想だったかな・・陽が落ちれば真っ暗だし、ミルクもいつもより量が少ない。五日間の断食ですもの・・ふふふ。
 考えてるとムラムラしてきて、どういうわけか欲情してくるんです。
 指先が忍びます・・ああ凄い、感じる、すごい濡れだわ・・。

 でも、どうして?

 イジメてやりたい・・めちゃめちゃにしてやりたい・・花時計に植えられた鬼薔薇は、血を吸って育つ花のように真っ赤に咲いているようです。
 だけど温泉なんてどれぐらいぶりだろう。私のあの子を・・引き裂かれた私の息子が大きな岩風呂でおぼれかけたことを思い出してしまうのです。
 寂しい。私は独り。涙にもならない空虚が私をつつんでいたんです。
 翌日は旅館を出てから久々の伊豆を満喫し、夕方の新幹線に乗りました。

 八時前に家に着いた。玄関ドアの前に立ち、いまのいままで考えていた坊やのこと・・楽しかった親子の時間がすーっと消えて、奴隷の姿を思い浮かべてワクワクしてる。おかしな感情だなって思いましたね。
 玄関を開けて明かりをつけて、もちろん明かりはガラスの壁を通して章俊に
・・章俊か・・奴隷としての名がいるわ。なぜだか急に、そんなことを考えたんです。
 私の気配に、お部屋の奥から・・・。
「お母様ぁ! お母様ぁぁーっ! ぁううう・・・あうぅぅーっ!」
 絞り出すような泣き声が響きます。

 廊下の明かりがガラス越しにしみこんで、すぐまた部屋の明かりをつけてやる。便の異臭と、酸っぱいような男の匂いに満ちてます。
 私の顔を見るなり、あの子は床に平伏して号泣してます。
「お母様ぁ、お帰りなさい・・ぅっ、あぅぅぅ・・寂しかった・・おなか空きましたぁ・・」
 激情が衝き上げてたまりません。しゃがみ込んで両肩に手をやって、涙でぐしゃぐしゃの眸を覗く。

 首輪からのリードは鞭打ち台につながれたまま、少しだって動いていない。 ミルクもドリンク剤ももちろん空っぽ。
「おとなくしてたんだ?」
「はい! はいぃ! お言いつけは守りますぅ!」
「うん、いい子よ、頑張ったんだね」
「はいぃ・・うわああーっ!」
 はじめて・・はじめて抱いてやりました。心なしか背中のあたりが細くなった気がします。
 すがりつく抱擁を引き剥がし、目を見つめて言うのです。
「償うってそういうことよ。私の心を壊したんだから、何をされてもただじっと耐えること。すまなさだけを考えて、許されるまで耐えること」
「はい、お母様ぁ! ほんとにごめんなさいぃ! うわぁぁーっ!」
 しゃがむ私の脚にすがるように泣く子です。

 ん? 泣く子? 泣きべそ・・泣きべそがいいか?

「おい、泣きべそ。あははは、おまえは今日から泣きべそね、おまえの名前よ、な・き・べ・そ! あははは!」
 私は上だけ脱いでブラも外し、乳房を泣きべそに寄せてやる。
「はい、おっぱい吸って、ご褒美よ」
「はい・・嬉しいですぅ」
 妙に笑ったような泣きべその頭を抱いて乳首を吸わせる。女はそれを与えると、たまらない感情が逆巻いてくるものです。
 首輪も手枷足枷も、貞操帯も取ってやり、臭いバケツを片づけながらシャワーするよう言いつけます。

「お弁当二つも買って来たから、早く行ってらっしゃい!」
 素っ裸で飛んでく泣きべその白いお尻を見ていると、ほんともう子供です。

 可愛い・・私は泣きべそのこと可愛いって思ってる。

 ああ口惜しい・・ああ腹が立つ!
 もうね、支離滅裂。
 だけど今夜はご褒美かな? お尻を叩く木製のラケットを一度は握り、また吊してしまいます。
  

2016年11月26日

FEMDOM 花時計(六話)


六話


 章俊にお母様と呼ばれたことで、記憶の闇に滲んでぼやけたイジメの輪郭が浮き立って、同時にまた、我が子ならば絶対的な所有物・・どう扱おうがかまわない玩弄物のようにも思えてきた。
 ネットで揃えた虐待のための道具を見ているうちに、あの女への復讐の念がじぶじぶ染み出し、限度を超えることへの抵抗というのか、良心のとがめが消えていきつつあったのです。
 奴隷の分際で私が好きですって・・上等じゃない、その気持ちがどこまで心の叫びなのか試してやろうと考えた。

 ネットで揃えたといっても、そうたいしたものじゃなく、一つは買ってくるには重い物。もう一つは、あのときはそこまでしようとは考えず、だから買わせなかった物。それと縄。それだけのものでした。
 午前中指定の荷物がお昼過ぎに届けられ、それだけでも八つ当たりしたいような気分になれる。それはきっとS的な、異常なほどの興奮だったかも知れません。
 しおれかけてた花時計の花が、植え替えられて、新しい時間が進んだとき、開いた花はそれまでの私では考えられない鬼薔薇のようなものだったのです。

 いくつかのボール箱に梱包された鉄パイプを奴隷に組み立てさせると、形がさまざまに変化する鞭打ち台が完成します。その台のフックに、先に揃えた乗馬鞭とバラ鞭を引っかけて、今日新たに加わった木製のスパンキングラケットを引っかける。こちらは重みがあって木が厚く、打ち面に鋭い鉄の鋲が植えてある。強く打てばお尻の皮が破れてしまう。
 最後に、巻いた麻縄を引っかけておけば、拷問台が完成するということです。

「ふふふ、できたみたいね」
「はい、お母様」
「たっぷり泣くことになるから覚悟なさい。それからね、奴隷のおまえに嬉しいお知らせよ」
「はい?」
「亀頭をこする気持ちのいい射精は・・そうね、たぶんもうないと思いなさい。溜まりに溜まって漏らすだけ。責められて感じ入って漏らすだけ。ふふふ、いいわね!」
「・・・」
「返事は! どんなことをしても償うんでしょ!」
「は、はい、お母様」
「鞭打ち台をようく見て、できるだけそうされないよう努力なさい」
「はい、お母様! 頑張りますから」
 もう涙ぐんでる。苦しめ変態。あの女の血を持つオス奴隷め。

 そして私は、奴隷からすれば裏腹に思えるでしょうが、貞操帯を外してやって、便器椅子の下に寝かせると、バラ鞭を手に、全裸に一枚だけ着た部屋着姿で椅子をまたぎ、女王のアソコを見せつけてやったのです。
「ようく見なさい。奴隷には決して使わせない女王の性器よ。私の中でイクなんて、おまえには生涯ないことなの」
「はい、お母様・・素敵です」
 貞操帯から解放された若いペニスがムクムクと反応しだし、亀頭を赤黒く染めて張りつめさせ、血管の浮き立った立派な怒張へと変化した。
「ふんっ、大きくしちゃって。感じるのね?」
「はい、お母様、たまりません」
「私のアソコ、大好きよね?」
「はい、お母様!」
「あらそ。ま、漏らすのはかまわないから、他の刺激でイケるようにならないと快楽がなくなってしまうわよ」
 薄い胸にちょこんとある二つの乳首をいじってやります。ちょっと爪を立てて、でもひどく痛くないようコネてやる。

「ぁぁん、気持ちいい・・お母様ぁ、ありがとうございますぅ」
「感じる?」
「はい、はいぃ!」
 怒り狂うペニスがビクンビクン頭を振ってる。
「あらあら爆発しそうね・・あははは! はい、おしまい。お尻の穴だけ舐めなさい!」
「はい、お母様! ありがとうございます!」
 それで私、両足をあの子の胸に上げて足指で乳首をいじりながら、黒革のバラ鞭でペニスと睾丸をバサバサ打った。痛みのない鞭の刺激は奴隷にとっては愛撫でしょうか。奴隷は脚をM字に立てて、腰を突き揺すってよがっています。

 傷のない若くて綺麗な体です。ズタズタにされていく様を妄想すると、お尻の穴から全身に性の伝播がはじまります。ブシュブシュといやらしい音をさせて濡れてくる感じがする。
 私は一度トイレに行って巻紙を手に巻き取って、それから思い立って脱衣場にまわり、パイプのカーテンレールにかけてあったピンチ付きのスカートハンガーを持ち出した。スカートハンガーのピンチは大きくて、ギザギザがあるくせにそれほどバネは強くなく、だから面白いと思ったの。

 奴隷部屋に戻ってすぐ、ふたたびアナルを舐めさせて、ハンガーの二つのピンチで小さな乳首を挟みます。
「あ! ぁぁん! お母ぁ様ぁ!」
「そうそう、いい声ね。痛い?」
「いいえ、痛くはないくて・・感じますぅ」
「ふんっ、気持ちいいなら、ちゃんと舐めて」
 そして、そのときすでにグショグショだった花濡れをトイレットペーパーで拭きあげて、奴隷の口に捨ててやる。
「食べなさい。もうじき生理だから、そういうものも美味しく食べなくちゃならないし」

 冷たく笑いながら、バラ鞭で男性器を嬲り、ハンガーを引き上げて乳首を伸ばし、そして一気に、乳首をむしるように乳首から引き剥がしてやるのです。
「ぐえっ!」
 もがきます。
「あら痛かった? あははは!」
 そしてまた乳首を挟み、舐めさせて、ビクビク揺れるペニスを少し強く鞭打って・・。
「ぁぁん、ああん、感じますぅ!」
「もっと可愛く! パンティが好きなんでしょ! 女の子みたいにもっと可愛く悶えなさい!」
「はぁい・・ぁふぅぅん・・」
「そうそう。くくくっド変態・・あははは!」

 それでまたブチッと音がするぐらい乳首のハンガーを引き抜いて・・そしたらそのとき・・。
「ひぃぃーっ! あっあっ・・はぁぁ~ん」
 ペニスの先から白いものがとろりと垂れて・・私の体の奥からも、あの嫌な感触が・・性的な刺激のせいか生理が早く来たみたい。
「ほうら出ちゃった。よかったわね射精できて。気持ちいいねぇ。私もね、血が来ちゃったみたいなの。くくくっ」
 激しい膣濡れが重い血をさらりと流したようで、それはすぐに花口まで垂れてきた。
「さあ、お口を開けましょうね、赤いジュースよ」
「はぁい、お母様ぁ、いただきますぅ」
 垂れる感触・・そして喉を鳴らして奴隷が飲み込む気配がする。
「美味しい?」
「はぁい・・ぅぅぅ」
 泣いてます。惨めなのか、それとも嬉しいのか。

 アナル舐めのモゾとした快楽と、満たされる征服欲とで、頭がぼーっとしてしまい・・鉄パイプの鞭打ち台をぼんやり見ていた。
 可愛いのです。たまらなく可愛くて、だからたまらなく切り刻んでやりたいの!

2016年11月25日

FEMDOM 花時計(五話)


五話

 トイレにしたバケツを綺麗にして戻ったあの子に正座をさせます。そのとき私は座卓に腰掛けていたんです。裸より恥ずかしいスタイルであの子はお行儀良く膝頭を寄せて正座をしていた。
「ひとつ訊かせて」
「はい?」
「私のこと、どう思ってるの? おばさんなのよ、おまえの」
「いえ、そんなふうには思ってません」
「はっきりして。女として見てるでしょ?」
「はい!」
「いつから?」
「母があんなことになってしまって・・そのときからずっと」
「ここに来てからってことよね?」
「はい、紀代美様は素敵です」
「素敵ね・・それで整理ダンスをまさぐったりしてたんだ。女のパンティ穿いてみたりアソコの匂いを嗅いでみたり」
「はい、申し訳ありませんでした」
 目の前で真っ赤になってうつむいているんです。私の赤いパンティ穿いて。

「それで?」
「はい?」
「それでオナニーしてたんだ? 私のことを想いながら?」
「・・はい」
「気持ちよかった?」
「・・はい」
「いっぱい出した?」
「・・・」
「どうなのよ!」
「はい、いっぱい出しました」
「変態ね」
「・・はい」
「いいわ、そこに寝なさい。憧れの私を見せてあげる。ずっと耐えたご褒美よ」
 章俊を床に寝かせ、買ってから使ってなかったパイプの椅子を顔にかぶせてしまいます。

 その椅子には座面に大きな穴が開いていて、洋式便器に座るようなカタチになる。あの子の顔に椅子をかぶせて置いて、両手の手枷を椅子の左右の脚に金具でつなぐ。私は、椅子の下から床に伸びる若い男の裸を見下ろすようになるんです。

 ブラを取りパンティも脱いでしまう。そんな私を変態男が椅子の穴越しに下から見ている。
 椅子をまたいでそっと座り、お風呂もまだの汚れたアソコを鼻先に見せつけてやるのです。透明な貞操帯の中で萎縮していたペニスが、勃起を許さないカ
バーに張り付くみたいにムクムクしだし、ビクンビクン脈動している・・。
「私のアソコはどう?」
「はい・・ああ女王様ぁ、女王様ぁ・・」
「お風呂もまだの汚いアソコよ。お尻の穴だけ舐めなさい。さっきウンチしたから臭いわよ、それでもちゃんと舐められる?」
「はい女王様、嬉しいです、ありがとうございます」
「アソコはダメよ、ちょっとでも触れたら拷問だからね!」
「はいぃ!」

 そしたら変態め、首だけ上げて、舌先をこれでもかと伸ばしきって、お尻の穴を舐めるんです。
 ゾクゾクするわ。なんてことなの。めくるめく快感です。
 心地よさが全身にひろがって、鳥肌が這い回り、乳首までが勃ってしまって息が熱くなってくる・・。
「はぁぁ・・ぅぅん・・感じるわ、もっと舐めて、もっと・・」
「はい、嬉しい・・ぅぅぅ・・嬉しいです・・」
 よほど感激したらしく泣いて泣いて舐めてます。貞操帯につつまれたペニスそれに睾丸までが蠢くよう・・そんなあの子を細目で見ながら、私は追いつめられていったのでした。
 お尻の穴がヒクヒクと痙攣する感触・・舌先がぺろぺろと舐め上げる感触が体の震えとなって椅子を揺らす。

「私はね、こうやってあの女に虐められてきたんだわ。おまえのママに。まだ小学生の私だった。アソコもアナルも舐めさせられて、嫌々オナニーだってさせられて、恥ずかしくも脚を開いた私の姿を、あの女はほくそ笑んで見ていたの。口惜しかったし悲しかったし、だけど私が告げ口すると母が辛い立場になる。そう思って言えなかった。外で裸にされたことも外でオナニーさせられたことだって・・浣腸されてウンチしちゃって泣いたことまでも・・いろいろあるのよ」
「はい。知りませんでした、ごめんなさい」
「そしてその女の子供を引き取って、まさかパンティの匂いを嗅がれようとは思わなかった。ふふふ、親子揃ってひどいわよ、サイテーね」
「はい女王様、償います、母の分まで償いますから」
「それ本心?」
「はい女王様、心から償います」

 可愛いことを言う。
「あの女のことは、いまさら償ってもらってもね・・だけどおまえのしたことは許せない気がするの。パンティの汚れなのよ。屈辱だわ。これほどの屈辱はないものね」
「はい」
「もっともっと残酷になるかもよ。それでもいい? 私好みの男に調教されたい?」
「はい女王様」

 懸命に舐めています。母親のことを知らされてか、体をじたばたさせて首だけ上げて懸命に舐めています。
「あぁぁ感じる・・震えてきちゃう・・ねえ変態、私っていい女? 奴隷になりたいって思うほど、いい女?」
「はい、素敵です女王様」
 それで私は一度椅子を離れてね、ティッシュを握ってふたたび座った。
 すごい濡れ・・しおれかけてた女の花が、新しい時間の中で蘇ってくれたよう。
 紙で濡れを・・いいえ一日の汚れも一緒に拭き取って、奴隷の口に入れてやります。
「食べちゃいなさい、おなか空いているんでしょ。ふふふ・・あははは!」

 用を足したペーパーをトイレに捨てて、それを男が食べてる感じ。
 そしてそのとき、ふとあることを思ったわ。

「私のこと、お母様って呼びなさい。あのサイテー女の息子のままでいいなら女王様でもいいけれど」
「はい、お母様・・お母様です、お母様ぁ!」
 奪ってやった。憎たらしいあの女から最愛の息子を奪ってやった。
 ざまあみろ! 草場の陰で泣きもがけ、サイテー女め!
「毎日、戻ったらすぐお尻を舐めて。わかったわね?」
「はい、お母様!」

 きゃはははは!
 声には出しませんが、このとき心の中で恐ろしい女の声が聞こえたわ。
 この子のこと生涯の奴隷にしてやる。おまえの子供を壊してやるって思えたの。

「はぁぁ・・もういい、餌の時間よ」
 リードを引いて、手枷も足枷も貞操帯もさせたまま、ぐいぐいと首輪を引いて歩かせた。ダイニングのテーブル脇で、尻を上げさせた犬みたいなスタイルで、ご飯とおかずと味噌汁をまぜこぜにしたゲロみたいなものを食べさせて。
 ふふふ・・でもまだ道具が足りない。責めるための道具が足りないって考えていたんです。
 そのときの私は全裸に薄い部屋着を一枚着ていて、お皿を洗うのに流し台に立っていた。
「おまえの食器も洗ってるのよ、感謝するなら下から顔突っ込んでお尻の穴を舐めてなさい!」
「はい、お母様!」
 手枷はあっても手は自由に使えます。奴隷は私の腰に両手をやって、突き出したお尻の奥底に鼻先を突っ込んで舐めてます。
 ブゥゥって、おならもしてやった。
「ぅぷ、ぅむむ・・」
「臭い? あははは、あはははっ!」
 頑張れば、こうしてご褒美。ダメなら放置か拷問か・・そして禁欲がずっと続く。そういうリズムを作っていこうと考えました。

 まるでビデオを見るような、そっくり同じ日々が三日過ぎ、その日は祝日でお店は休み。ネットで揃えた責め道具の配送に指定した日が来たわ。

FEMDOM 花時計(四話)


四話


 それで私は、置いてあったお店の売り上げ何日か分・・二十万ほどを握らせて、ある種のものを揃えてくるよう命じたのです。最後にあの子を試してみたの。それだけあれば、とりあえずの家出ぐらいはできるでしょうし、それでも戻ってくるものかを試したかった。
 あの子が出ていき、すぐ電話を取った私は・・。
「悪いけどいますぐ、大至急でお願いできるかしら?」
 便利屋さんを呼びました。衣装部屋とあの子の部屋を入れ替えてしまうためにです。ちゃんとしたお部屋にはドアがあって中が見えない。これ以上おかしなことをされたらたまりませんから。衣装部屋なら間仕切りを開け放ってしまうこともできるんです。
 男の人が三人でやってきて・・と言っても、あの子の部屋にはたいした物は置いてなく、衣装部屋の中身を移しただけだったのですが、あっという間に模様替えをしてくれた。

 お昼を過ぎて、一時・・二時・・三時前に章俊が戻ってきたんです。それで私は確信したわ、あの子は私のことが好きなんですよ。十七も違う私でも女として見てるんだと確信できた。

「ちゃんと揃えたんでしょうね?」
「はい、買ってきました」
 大きな袋を二つと薄いボール箱に入ったそのものまでを揃えて来たわ。
「こっちいらっしゃい、今日からここがおまえの部屋よ」
 章俊がぽかんとしてます。衣装部屋がすっかり空になっていて、そこには物がほとんどなくて空き部屋にされていたものだから。
「買ってきたものを並べなさい」
「はい」

 南京錠付きの革の首輪、鎖のリード、黒革でできた手枷足枷とそれ用の南京錠、ウエストベルトと南京錠、透明な硬質ゴムで作られた貞操帯とそれ用の南京錠、そして乗馬鞭、それからバラ鞭・・そして最後にボール箱からパイプの椅子が取り出され、とりあえずはそれだけです。後は追ってネットででも揃えていけばよかったでしょう。

 バイト先に電話をさせて辞めさせて、すべての準備ができたのでした。

「ここにおまえの着るものはありませんから。全部処分しましたからね。覚悟して脱ぎなさい。それも処分しますから」
「は、はい・・」
 Gパンとシャツとジャケット、パンツまでを取り上げて、素っ裸の章俊に土下座をさせます。

 このときでした。花時計の周りでしおれかけてた女の花が、新しい花にとって代わって、新しい私の時間を刻みはじめていたのです。平伏す白い男の体にしゃがみ込み、顔を上げさせ、言ってやる。
「おい変態!」
 頬をパァンと叩いてやったわ。
「はい!」
「私のことは何て呼ぶの!」
「はい女王様です・・女王様の紀代美様です」
 またパァンと叩いてやる。顔をしかめて、でもすぐに目を開ける変態に、最初の命令を言い渡してやったのです。
「これから二日は餌抜きよ! ずっとつないでおくからね!」
「はい女王様!」

 そして私は大きな断ち物バサミで、あの子の髪をザクザク切ってやったんです。それは醜いざんばら髪。章俊は、怯え切って泣いてるみたい。それがまたムラムラさせるの・・私の中からやさしさが消えていました。

 首輪をして南京錠で封印し、腰に幅広のベルトを巻いて封印し、手枷をつけた両手を腰の後ろで封印し、足枷を巻いて封印し、左右の足首をチェーンでつなぐ。もちろん首輪にも鎖のリードをつけてやり、そして最後に・・。
 立たせた変態の萎えたアソコ・・若い性器・・睾丸とペニスの根をリングで少し締めあげて、透明なシリコンゴムでできたペニスカバーを装着して根のリングとつないでしまい、南京錠で封印します。
「ふふふ、変態らしい姿になったわね」
「・・はい」
 すでに涙目。
「射精なんて一切禁止よ、許すまでイカせてあげない」
 そして私は変態が望んだ私の赤いパンティだけを穿かせてやったわ。Tバック。硬い貞操帯のもっこりが際立って、丸まる睾丸がはみ出してしまってる。

 それから・・がらんとした空間にひとつだけある、あの子の部屋から持ち込んだパイプ製の座卓の脚の丸い穴に首輪のリードを通して、それも南京錠で封印する。
「しばらくそうして反省なさい!」
「はい女王様、心から反省します」
 キッチンにあるプラのボールにミルクを満たし、トイレ代わりの小さなバケツをそばに置き・・だけど揃えたばかりの特殊な椅子や、まして鞭なんかは使わずに、模様ガラスの扉を閉じてしまった。

 お部屋の明かりは消したまま、それでも廊下の明かりだけで充分明るく、その中を私は、変態の存在などまるで無視するように扇情的な下着だけの姿で普通に動いていたんです。廊下に面して全面ガラス・・私の姿はもちろん透けているでしょう。
 そうやって食事も与えず、次の日曜、私が起きるまで放置して、ボールにミルクだけをなみなみと満たし、部屋を覗いた。

 奴隷は座卓につないであって、でもその程度のものなら引きずって動けるのですが、それは少しも動いてなかった。両手を腰の後ろにつながれた辛い姿勢で、じっと耐えていたようです。
 私は口をききません。空っぽだったミルクのボールを交換して、おしっこだけしたバケツのトイレを綺麗にし、そそくさと部屋を出る。そのときの私はパンティだけ。カタチのいい乳房もそっくり見せてやり、奴隷は遠慮がちな視線ながら、くまなく私を見ています。

 さらに夕刻まで放置して・・ミルクとトイレ、同じ世話だけしてやって翌朝まで放置です。そのときもパンティだけのヌードを見せつけてやりました。

 その翌日は月曜日。土日休んだお店のために私は早くに家を出て買い物をし、それらをお店に置いてから一度戻り、お昼過ぎになってパンティ姿でお部屋を覗く。
 長い長い放置です、おなかもぺこぺこ・・それでも座卓は動いていない。
 ミルクと、やっぱりおしっこだけのトイレを片づけ、そ知らぬ顔で家を出てしまうのでした。戻るのは深夜です。どれほど苦しく寂しい時間か・・あの子を想うだけでゾクゾクしちゃう。


 その夜はムシャクシャしてました。ほんと嫌な客が多すぎます。ブラウスに透ける胸をあからさまに見られたり、タイトミニの蠢くヒップを舐めるように見られたり、なにげなくお尻を触るクズもいる。飲めば許されると思ってるバカばかり。
 戻ったときには深夜の一時になっていた。私は着ているものだけとっとと脱いで、黒いブラパン姿で部屋を覗いた。
 ぷーんと嫌な臭気がこもっています。バケツを覗いて笑ってやったわ。
「あらあら臭い臭い。蓋がないとダメね、吐きそうよ」
「はい、我慢できませんでした・・お帰りなさい女王様、お仕事お疲れさまでした」
 軽い座卓は相変わらずぴくりとも動いていない。

「動けるでしょうに。そんな軽い物、どうにだってなるはずよ」
「はい」
「でも動いてないね。ずっと耐えていたんだもんね」
「はい女王様」
「私を想って?」
「はい! 償います、どんなことをしても・・ごめんなさい紀代美様」

「ふぅぅ・・ったく、どうしようもない変態なんだから」

 それで私は首輪のリードを座卓から解放し、両手も手枷はしたまま自由にしてやり、ウンチの始末を命じたのです。
「お尻もちゃんと拭いてらっしゃい。頑張ったご褒美あげるから」
「はい女王様!」

 そしてあの子が戻ったとき・・買っただけで使ってなかったあの椅子を部屋の真ん中に置いたのでした。

2016年11月24日

FEMDOM 花時計(三話)


三話


 翌日も、その翌日も、着替えているとき模様ガラスの向こうに章俊の影があります。汚れた下着だって同じように洗濯機に入れてある。
 毎夜、同じような姿で体も揉ませ、やんわりと言葉で責めて・・。
 だけど私はイジメはやめようと思い直していたんです。下着ぐらい若い子の当然の興味だし、こんな私に興味を持ってくれることが嬉しく思えて、可愛いなって感じてた。

 なのに、その次の日です・・整理ダンスのパンティの引き出しに信じられないものを見た。
 夜の仕事をしていると、知らず知らず、女でいないといけないなんて思うようになり下着もエロチックなものが増えてくる。そのカラフルなパンティが並ぶ中、花柄の一枚のたたみ方がはっきり違って、そのそばの黄色い布の上に黒い毛が・・私の毛ではありません。私は赤みが強くて細いのです。

 黒くて太い陰毛でした・・。

 あの子まさか、パンティ穿いたりしてるのかしら?
 それでもなければ、この部屋でオナニーを?

 脇の下の毛かも知れないけれど、それにしたって、ちょっと信じられない思いがした。
 そしたら急にムラムラとしたものが湧いてきて、腹が立ってきたんです。あの子の毛をティッシュにくるんで、捨てずにおいて、いよいよ私はおかしくなっていったのね。

 その翌日は土曜日でお店は休み。だけどあの子はバイトで出かける。いつもなら私は昼過ぎまで寝ています。そんな朝、寝室の外の気配をうかがっていた私は、あの子が起き出して洗面に向かう様子に、そっとベッドを抜け出して音がしないようにドアを開け、後を追ってみたんです。

 脱衣場への角のところで、そっと覗く。
 それで私、愕然としてしまう。
 夕べ穿いてた青い花柄のパンティが洗濯機に入れてあり、章俊がやっぱりそれを手に取って・・それもよ、パンティの裏底をひっくり返して鼻先に近づけて、汚れたところの匂いを嗅いでる。

 ムッとするやら恥ずかしいやら・・頭に血がのぼってしまいます。

「あなた何してるの!」
「あ・・」
「もうサイテー! ひどいわよ!」
 それで私、パンティをひったくると、あの子のパジャマの胸ぐらをつかんで衣装部屋に連れて行き、ティッシュにくるんだ陰毛を突きつけてやったのです。
「これは何! 章俊、あなたね! 私の下着穿いたりしてる! ほんともうサイテーよ! 見損なったわ!」
 あの子は蒼白。私は感情が逆巻いて計算外の涙になった。なんだかもう情けなくてなりません。
「下着の汚れを嗅ぐなんてサイテーの行為だわ! ド変態! いつからそんな変態になったのよ! 許さない・・絶対に許さないから!」

 あの子ったら、涙も何も、顔色をなくしてただ震えていましたね。

 最悪のムードの中・・章俊にはバイトがあって出かけていきます。フリーターには決まった休みはないようで、土日だって無関係。それで私は、思案のあげく、あの子の帰ってくる時刻に家にいないよう、プチ家出をしたのです。
 十一時頃になり、少し飲んで帰った私。玄関を静かに入って、その気配ですまなそうに出迎えるあの子を無視してすれ違い、衣装部屋ではなく寝室で着替え、それからお風呂にしようとした。

 寝室を出ると、Gパン姿のあの子がリビングのソファにうなだれて座っている。
 私はその背に歩み寄り、言ってやったわ。
「私はここで脱げないわけ! 自分の家なのに下着だって置いとけないんだ! 洗濯物を入れとくこともできないのよね! この変態! 悲しいわ、イヤんなっちゃう! よくも私を侮辱してくれたわね!」
 女って感情を学習する生き物で、激高すると涙が出てくる。

「ごめんなさい・・ごめんなさい、二度ともうしませんから」
「あたり前でしょ! サイテー男!」
 章俊は泣いてしまって、私の足下に土下座をします。
「あなたね、女の下着に興味あるの? まさか盗んだりしてないでしょうね?
 スカートの中を盗撮するとか?」
「してません、そんなこと」
「ほんとに!」
「はい! ごめんなさい・・ぁぅぅ・・」
「泣いたって話にならない! 私がどれほど傷ついたか、ちょっとは考えなさい! ねえ章俊、ほんとのこと聞かせて。私のパンティ穿いたりしてる?」
「・・ぅぅ・・それは・・」
「どうなのよ! はっきりしないと許さないから! 正直におっしゃい!」

「はい」
「穿いてるの?」
「はい、綺麗なものばかりで、いいなぁって思って・・」
「馬鹿ぁ! ああサイテー! ド変態もいいとこだわ! 女装がシュミ? へええ、どうしようもない男だね!」
 そして私は、計算しつくした言葉を足していきます。
「そうよね! あの女の息子だもんね! あのサイテーの母親の! ママのパンティ穿かせてもらっていたんでしょう! 親子揃って人格欠落!」
「ぅぅぅ・・うわぁぁーっ! ごめんなさい、ごめんなさいぃ!」
 泣き崩れてしまいます。くだらない女でも母親を軽蔑されれば子供は辛い。ましてそれが自分のせいだと痛感すれば、なおのことたまらない。

 そして私は、いかにもハッとしたように言うんです。
「ごめん・・言い過ぎちゃった。ごめんね章俊」
 そう言って頭を撫でてやったのです。だけどそれが泣き声に火をつけて。
 心のやさしいあの子は、よけいに自分がしてしまったことの罪深さを思い知る・・と、計算しつくしたことでした。

「ごめんなさい、心から謝ります」
「ダメね、もう一緒には暮らせない」
「嫌ぁ、行くところがないから。ごめんなさい・・どんなことでもしますから。お願いですから・・ぅぅぅ・・償いますから」
「償う? どうやって? 私の心をズタズタにして、どうやって償うの」
「どんなことでも・・心を入れ替えて・・ごめんなさい」

 ああダメ・・女の足下で竦む子を見ていると、メラメラと残酷の心が揺らぎだす。

「お仕置きするけど、それでもいい?」
「はい!」
「ちょっとぐらいじゃ許さないから。イジメてやるわ。それでもいいのね!」
「はい、どんなことでも。紀代美さん、やさくしてくださったのに、傷つけてしまいました、心から償いますから」
「ほんとね! 私が許せるまで償ってくれるのね!」
「はいぃ!」

 ふふふ・・許さないわよ、男なんてみんな同じ。サイテーだわ。
 私があの女にされたこと、子供のあなたに返してあげる。

 私は恐ろしく冷えた目で見下ろしていたのですが、一方で、そう言えばこの子、ここで暮らしだしてから私のことをおばさんと呼んだことがない。紀代美さんと言ってくれる。そんな想いも重なってはいたのです。

 とっても可愛い子ですから・・。

FEMDOM 花時計(二話)


二話


 三つあるちゃんとしたお部屋はみんな壁があってドアなのですが、衣装部屋にしている物置きだけは、廊下に面して全面模様ガラスの間仕切りで、その片側をスライドして入ります。お部屋には窓がなく、それでなければ息が詰まる。
マンションに章俊がやって来てから、私はお部屋の奥の衣装を吊すラックの影で着替えるようにしてたのです。模様ガラスの壁際では肌色のシルエットが透けてしまう。

 だけど今夜、私はちょっとドキドキしながら、透ける壁のすぐ内側で、目の覚める黄色の下着だけの姿になって、ブラジャーまでを取ってしまい、部屋着に着替えた。
 その部屋着も、タオル地のTシャツの長いようなピンクのもの。章俊が来てからは着なかったものにした。かなりなミニで乳首のポチだって尖ってしまう。 廊下を歩くあの子の気配がしたんです・・。

 衣装部屋のすぐ前が浴室で、洗濯機もそこにある。部屋着に着替えた私は、いつもなら次の日まで衣装部屋に置いておく脱いだものを、洗濯機に突っ込んでおきました。翌日あの子が出て行ってからお洗濯しているからね。でも今日は、寝る前にシャワーした後、パンティも入れておくつもりです。

 懲らしめるといっても慌てることはありません。そのうちきっと仕掛けた罠にひっかかる。それからのことですから。

 部屋着に着替えた私は、リビングに出て行って、そしたらあの子が薄いコーヒーを淹れて待って来てくれた。やさしいところのある子です。
 でも、いつもと違うくだけた姿の私を一目見て、あの子ったら目がキョドキョド・・私は髪を上げてうなじも露わ・・座ってしまえば太腿も覗いてしまう。 なんだかドギマギして落ち着かない様子です。

「コーヒーありがと、食べよっか」
「はい」
 テーブルの向こうとこちらに分かれて座り、いつものようになにげなく話している。だけど今夜は、あの子の視線がタオル地の胸のところへチラチラと。
 それで私、ついうっかりということで、ケーキを食べた後の小さなフォークを落としてしまった。
「あら・・疲れてるみたい・・ふふふ」
 あの子、もちろんテーブルの下に体を折って拾ってくれる。そうするといまにも見えそうなミニスカートなのですから。
 今夜この子、オナニーなんてするのかしら・・想像すると可笑しくて。
 だけどもちろん、そんなことはおくびにも出しません。

「アキちゃん、ほんといないの?」
「へ? 何が?」
「彼女よ。あなたもう二十歳なんだから、素敵な女の子ぐらいいるでしょう?」
「いませんよ、そんなもん」
「そうなの? でも付き合ったことはあるんでしょ?」
「それはまあ、ないことはないけれど・・」
 恥ずかしそうにうつむく子です。もしやこの子、童貞かしら?

 それまで考えてもいなかったエッチなことが次から次に浮かんでくるの。
 もう恥ずかしくて居場所がないって感じの男の子に可笑しくなってたまりません。お酒の仕事をしているとお客さんはクズばかり。色目は使うわ図々しいわ・・私目当ての男ばかりに囲まれて、だから若い章俊が初々しくていいんです。

「そう言えばアキちゃん、ほんとお酒飲まないね」
「好きじゃないから。ほら、おふくろがあんなだったもんだからイヤなんです。だらしない親だったから」
「ふーん・・あそ」
 この子、外での付き合いで飲むことはありますが、家の中でビールひとつ飲むところを見たことがない。
「あー疲れた・・腰痛いし。そろそろ寝よっか」
 そしたら章俊・・。
「揉んであげましょうか?」
「え?」
 引っかかった引っかかった・・素知らぬ顔で、でもまっすぐ見つめてやると目が逃げる。整理ダンスの下着をいじっていることで後ろめたさがあるのでしょうね。

「嬉しいけど、でも・・アキちゃん甥っ子だけど血のつながりはないんだし」
「そ、それはまあ・・」
 意味するところを妄想してか、赤くなったり青くなったり。
 私だって最後のところで迷う気持ちはありました。襲われることはないでしょうが、ほんとにイジメていいものか、最後のところで気が退けていたからです。

 それでそのときはシャワーに立って、汚れたパンティを洗濯機に突っ込んで、と、いつもならしないことをして、しかも忘れたフリで放置した。
 明日あの子はずっと早く起きていて、シャワーだってするでしょうし、それよりもしも、あの子が私を気にしていれば洗濯機の音がしないことに気づくはず。ふふふ・・そう思うとまたイジメの心がムズムズしだしてたまりません。

 揉ませてみようか・・脱衣場でパンティだけを穿き込んで部屋着を着て、お水を飲むフリでキッチンに回ってみた。オープンキッチンだからリビングが見渡せます。あの子はソファで私が買ってる雑誌を見てる。月刊の女性誌ですが、
そう言えばそれもちょっと気になります。ランジェリーの特集もありますし。
 章俊は男にしてはやさしすぎると思うのですよ。弱々しくて、普通の男の子なら気づかないと思うようなところまで・・たとえばトイレの汚れとか冷蔵庫の中なんか、あの子が来てからむしろ綺麗になったくらい。

 そんなことを考えて、なぜか迷いが消えていた。

「じゃあアキちゃん、腰だけでいいから、ちょっと揉んでくれるかな、ごめんね」
「あ、いいえ・・はい」
 ロングソファに寝そべって、目を閉じて・・あの子の気配を感じています。部屋着は短く、まして今夜は真っ赤なパンティを穿いてやった。腰を押せばお尻が蠢き、部屋着の裾も上がってしまってぎりぎりまでが見えてるはず。
「あー気持ちいい・・ずっと立ってると腰にくるのよ」
「ですよね」
「うん。もう少し下までお願い、お尻の上ぐらいまで」
「は、はい」
 あの子の息づかいが逆に静まったのを感じます。息を詰めているんです。  生唾ものなのかしら?

「アキちゃんとは十六違うのか・・ん、十七だね、私はもうすぐ三十七だし」
「そうですね」
「ほら、血のつながらない私だから、ほんとはちょっとドキドキしてるの、そうなってもおかしくないし」
「そんなこと・・」
「アキちゃんて女は知ってる?」
「ぁ、いえ、それはその・・」
「私なんてオバちゃん? 女だなんて思わない? オナペットにもならないかな?」
 矢継ぎ早に言葉で追いつめてやりました。このとき章俊はGパンです。もしもパジャマみたいなソフトなものなら、大きくしてしまうかも・・私は笑いを噛むのに懸命でした。

 それからベッドに横になり、闇の中で想像したわ。あの子いまごろ絶対ハァハァしてると思う。

 次の日の朝、無意識のうちに早く目の覚めた私は、寝室の外の気配に集中していて、あの子が起き出してくる気配を待っていたんです。あの子は九時には起きて来て、まず真っ先に顔を洗うために洗面台に立つでしょう。そこはつまり脱衣場で洗濯機が横にある。

 ドアが開いて廊下を行く気配がします。
 私はちょっとほくそ笑み、それからまた目を閉じた。

2016年11月23日

FEMDOM 花時計(一話)


一話


 整理ダンスに嫌なものを感じます。下着の引き出しなのですが、ごくわずか、しまったときとは違うズレのようなものを感じるの。整理ダンスは五畳のお部屋に置いてあり、そこを衣装部屋にあてていた。ドレッサーもそこに置き、ひとつ部屋で着替えからお化粧までがすむように考えていたんです。

 私のところは3LDKなのですが、マンションの造りのせいで五畳のサービスルームがついていた。窓がなくて陽があたらず、部屋とは言えないものですが実質は一部屋分。だから4LDKなんですね。
 寝室にもクローゼットはありますが、六畳ほどのスペースに大きなベッドを置きたかったのと、衣装を置くなら陽射しがないほうが服が傷まず、行ったり来たりも面倒だから一部屋にまとめていたのです。
 サービスルームとは、つまり納戸。物置きなのですが、クローゼットが小さくてほとんど物が入らない。それで整理ダンスを別に置いた。

 寝室とその衣装部屋のほか、広いLDK、八畳の洋間が二つ。片方は私がくつろぐスペースで、もう片方をあの子に与えていたんです。

 私は佐山紀代美、三十六歳。私には血のつながらない姉がいて、その姉の子が章俊、いま二十歳。私の母が佐山の父と再婚で、小学生だった私は母の連れ子。そのときすでに姉の史恵は高校生。姉の実母が失踪し、私の母が後に座ったカタチになる。

 やがて私も姉も結婚で一度は家を出たけれど、姉が先に離婚して、女手ひとつで章俊を育てていた。そしてそのうち私も離婚。もう十歳になる息子を夫の家に奪われて、その代償にこのマンションを与えてくれたというわけです。

 つまり、私も姉も佐山という旧姓に戻っていて、章俊だってもちろんそうで、あの子が家族だと言うなら家族でしょうし・・。

 いまから一年ほど前のこと、その姉が急逝。そのときすでに佐山の父も私の母も去っていて、十九歳の章俊一人が残ってしまった。あの子は、高校を出ても不景気で就職できず、フリーターで暮らしてた。そんな子にあの家の相続税は払えない。私は姉との諍いが面倒で相続を放棄していた。
 古い家だったから実質は土地だけのものだったけど、とにかく処分してしまい、だけどそうなると章俊には行くところがなくなって、それで見かねた私が引き取るようになったんです。

 姉は嫌い、憎悪を感じる。
 姉にすれば、私の母が自分の母親を追いつめたと思ってる。そうじゃないって、たぶんわかっていながら、いい気持ちではいられない。
 それよりもっと決定的だったのは、姉はモテないタイプであり、私の母は美人だったから、突然やってきた妹が比べるまでもなく可愛い娘だったこと。
 高校生の姉ですから小学生の私なんてイジメ放題。それも、女の子にとってもっとも残酷な、性的な虐待です。

 だから姉は大嫌い。

 けれど・・その子供の章俊は、どういうわけか姉よりも私に懐いてくれていた。姉はズボラでがさつな性格、酒好きのどうしようもない女です。私はきっちりしている方で、あの子は私のそんなところが気に入っていたんだと思うけど。

 姉の死でしばらくぶりに会ったあの子は、すっかり大人になっていて、マンションに呼び寄せたときだって、私はちょっと緊張していた。お風呂上がりに裸でうろつくわけにもいかず、それでなくてもあの子の視線を感じていたから。
 いえいえ、といってそれはイヤラシイ目ではなく、遠慮がちにちらりと見ては恥ずかしそうにしていたり・・まあ同居への遠慮もあったのでしょうけれど、でもやっぱり男の視線なんですね。

 寝室や私の部屋に乱れを感じたことはありません。さすがにそこは入ってはいけないと思ってる。だけど衣装部屋は、衣装の他にも細々としたものが置いてある物置きであることと、それよりきっと化粧品や洋服の・・女の匂いに惹かれてるんだと思うのです。
 夫と別れて独りになって、母がやっていたスナックを引き継いだ私ですから、夜の女の匂いがする。それは明らかに家庭に入る女たちの体臭ではなく、だから余計に若い男の子をおかしくしちゃう。

 それにしても、パンティやブラの詰まった引き出しをまさぐるなんて、非礼だし悲しいこと・・と、そう思ったときに、母をてごめにした佐山の父もそうですし、私を捨てた夫、それに会いに来てもくれない息子のことまでひとまとめに、男に対して腹が立ち、まして憎い姉の子供ですからね、そんなこんながごっちゃになってムカムカしてきたんです。

 章俊は、あのブスには少しも似ずに、目の綺麗な男の子。気が弱くて小心者。背丈だって百六十二の私よりは大きいけれど百七十はないはずよ。恋人なんて気配もなし。だから可愛がってあげようと思っていただけに、反動というのか、落胆が大きかったのだと思う。

 いいえ、説明のつかないもっとグダグダした感情でした。

 ちょっとは懲らしめてやろうと考えた。そしたらなんだか胸が躍って、どんどんイジワルになれていく・・ふふふ。

 お店が休みの土日を除いて、私は夕刻前に出て深夜に戻る生活です。あの子はコンビニとお蕎麦屋さんでバイトして、シフトがあってバラつくことはあるのですが、だいたいお昼前に出かけて九時には戻っているようです。
 私は昼前頃まで寝てますからね、平日はほとんどすれ違う感じです。

 どうしてやろう・・イジメてあげるわ。

 それで私・・まずはイヤというほど女の私を感じさせ、悶々とさせてやろうと考えた。言い逃れできない、それも男として最低の行為・・その証拠を押さえなければならないし。

 そしてその日、雨がひどくてお客さんがパッタリで、いつもより早くお店を閉めた私は、帰りがけにコンビニでケーキを買って戻ったの。
「ただいま」
「はい、お帰りなさい」
「参ったわ、雨で散々。お客はないし濡れちゃうし。はいこれ、一緒に食べよ」
「うん!」
 丸い目で女の子みたいに笑うんだもん・・ふふふ、可愛い。

 私は計画したことを実行していったのです。