2016年11月22日

FEMDOM 花時計(序章)


序章

 花時計の色とりどりの花たちに自分を重ねて見ていました。
 いつのまに老けたことを想うようになったのか・・・ちょっと可笑しくもあるのですけど。

 花時計を彩るお花たちは可哀想。音もなく回る時計の動きは確実に花たちを老いさせて、引き抜かれて捨てられて、若い花たちがとって代わって世の中を彩っていくんです。
 あの頃ここで涙をこらえた思い出が・・それは恋人ができたときも、その恋人が主人になって、息子ができて、そして離婚・・まさか息子にまで見放されてしまうなんて思ってもみなかった。
 そんな人生の節目節目に、なぜか私はここに立って花時計を見つめている。

 私には血のつながらない姉がいた。歳が八つ離れてる。
 姉の母が逃げてしまって、そのまま離婚、私の母が姉の父と再婚した。私は母の連れ子であって、だから姉とは他人です。
 そのころ私は小学生で姉は高校。私の母は美しく、だから私も子供なりに可愛くて、モテないタイプの姉に妬まれ、ひどいことをされていた・・。
 そもそもの元凶が、その父の浮気なんです。スナックをやっていた私の母にいれあげて強引に迫ったの。だけど姉にしてみれば、だからほんとの母親が逃げたんだと思ってる。

 イジメられたわ・・それも性的な虐待です。外で遊んでいてわざとドブに落とされて裸にされたり・・未熟なアソコをいじられたり・・姉の奴隷にされた私は意味もわからず、姉のアソコを舐めさせられたし、浣腸されてウンチしちゃって嘲笑された・・。

 やがて姉も私も嫁いで行って、姉が先に離婚した。あのがさつな性格では妻にも主婦にもなれないでしょうが、ところがね、その子はちゃんと姉について家を出た。母子家庭だったんです。
 それから私までが捨てられて・・私は美人だったから、お相手が名家のご子息で・・いま十歳になる息子をどっちにつければ幸せなのかは見えていた。
 だとしても、半ば強引に奪われたとき、夫の家族に対する憎しみが生まれたわ。

 あのときも、ここに立って花時計をぼんやり見ていた。
 時間だけがいやおうなく動いてるって思ったの。


 そして一年前のことでした。その姉が乳ガンで急逝し、息子一人が残ってしまった。あの子は二十歳よ。もう大人と言えばそうでしょうが、父なんてとっくになくて、私の母もすでにない。あの子は天涯孤独になってしまった。

 姉は嫌い。だけどあの子は、小さいときからなぜか私に懐いてくれた。不細工な姉の子なのに可愛いタイプの男の子。章俊と言うのですが、高校を出ても就職に失敗しフリーターを続けてた。
 それでも二十歳ですものね、これからというときに姉が亡くなり、安定した収入のないあの子では・・それは離婚していた私だってそうですけれど、家の相続税が払えない。

 処分して・・つまりは行くところがなくなって、見かねた私が引き取るような形になった。私の住まいは3LDKの新築だったマンションです。我が子と引き替えるように姉が用意してくれたプレゼント。老いた母からスナックも受け継いで、あの子と暮らすぐらいのものには困らなかった私です。

 けれど・・同居しはじめてすぐ、私はあの子に男としての視線を感じた。私のことを女として見ているようです。私は三十六歳ですが、もともと若く見えたでしょうし、夜の仕事で着飾ることも知っていた。
 甥っ子でも血のつながりはありません。性欲盛りのあの子にすれば気になってあたりまえ。男女の仲になったとしても近親相姦にはならないからです。

 でもそれはイヤラシイ目ではなくて、憧れるような、慕うような、甥っ子の素直な視線・・悪い気はしませんでした。
 いい感じで、母と子のように暮らしていけると思っていたけど、あることがあってから、私はあの子の特殊な性癖に気がつきましたし、そのとき急に、姉に虐待されていた憎しみがこみ上げて来たのです。

 あの子には一部屋お部屋を与えてあって、私は夕刻から夜中まで家にはいない。

 整理ダンスにきっちりしまったランジェリーが、どうも微妙に乱れてる。
 私は自分の洗濯物をあの子に洗わせたりたたませたりはしていませんし、きっちりしまう方なんですね。

 あの子しかいませんからね・・ふふふ。

 私を捨てた夫はもちろん、心を残す息子ですらが会いにも来ない。
 私の母を陵辱した義理の父・・姉の父です。それにいままたあの子への不穏。

 男なんてサイテーだわ!

 男というものへの怒りと落胆、それに姉への煮え立つ憎悪がごっちゃになってしまっていました。