2016年12月24日

自虐~ふたつの心を持つ女(終話)


終話


 全裸の男たちに刺さるような視線を向けられ、私も玲子も錯乱して
しまったように興奮し、視姦されているだけで気が遠くなりそうなア
クメの波が襲ってきます。

 だからといって何かが起きるわけでなく、単にイカレた女が二人、
まったく勝手に濡らしているだけ。異常な性的興奮は私からも玲子か
らも冷静な思考を奪っていて、気がつけば、白髪のお方のお部屋に入
り込んでいたのです。誘われたのかどうかも覚えていない。はじめて
出会う第三者の目撃者。それは男性。

 女には計算がつきまとい、こうしたときでも相手は老人、抜き差し
ならない男女へは発展しない・・確信にも似た思いがあって、だから
安心してついてこられたのかもしれません。
 都倉さん。でも六十二歳? お歳を聞いてヒヤリとしました。
 お顔はともかくお風呂で見た体はどう見ても七十代。だから安心で
きたのに・・ノーマルならどうなのかはわかりませんが、SとMなら
男女関係の成立しそうなお歳です。お店のお客さんにもそのぐらいの
人は多くいて、まだまだ男性の力を失ってはいないから。

「大病を患いましてね、肝臓です」
 病気が生気を奪っていた・・いまだに通院なさっているとか。
 このとき私も玲子も全裸に浴衣一枚だけ。都倉さんは下着と浴衣。
知らない人が見たら父親に連れられる娘二人のようなもの。

「自虐・・なるほど」

 私と玲子の出会いからすべてをお話しし、幻想のご主人様と王様に
支配される女ですと打ち明けた。そういう話を聞いてくれると思うだ
けで私たちの自虐は深まっていくと考えた。
 二人のブログのこともお話ししたわ。どこかできっと目撃者でいて
くれる。顔を知る男性に正体を明かしていく恐怖・・いいえ興奮が、
私たちをさらに性の高みへ追い立てる。

「妄想のご主人様は絶対なんです。私とともに生きてくださって、死
ぬときともに眠ってくださる」
 玲子も横にいてちょっとうなずく。
「では、その妄想の主たちは、こうは言いませんか? 都倉という男
の声を聞きなさい・・私の声だと思いなさい・・と?」
 息が突如乱れだす。私も玲子も凍るような息を吐く。
 都倉さんはわずかに首を傾げておっしゃいます。
「狡いがしかし・・可愛い二人だ」
 おかしなことにはならないはず・・歳の差を見越してついてきた。
見透かされてしまっています。

「そして・・」

 何をおっしゃるのだろう・・私も玲子も全身に悪寒のような震えが
はしる。
「二人とも強い」
 私と玲子は互いに顔を見つめ合い、互いに放心するように・・ある
思いを抱きます。わかってくださる人がいた。嬉しくてならないの。
 そしてそのとき、私の中のご主人様がとんでもないことを言い出し
た。俺から去れ!
 玲子の中の王様がとんでもないことを言い出します。俺から去れ!
 私たちは同じ心を共有する性奴隷。玲子の顔色を見ていれば読み取
れます。

 自虐は、性への責任を自ら負う虐待。他人を巻き込まず私は私を罰
してきていた。玲子もそう。自分本位な自己愛ですから。

 私も玲子も、なぜか涙があふれ出し、私は男の方の右手を、玲子は
男の方の左手を・・しっかり握って、しなだれ崩れて両手の中へと抱
かれていった。

2016年12月23日

自虐~ふたつの心を持つ女(十七話)


十七話


 吐き気のする便臭にまみれた性・・SMではないつもりでいたと
しても、玲子の体から出た尿までも飲まされた衝撃は、私に奴隷を
自覚させるに充分でした。
 痛く恥ずかしく、なのに調教に耐えていただくご褒美の歓びに、
そのときのことを想うだけで心が濡れてくるのです。
 あのとき玲子は男性だった・・それがゴムのペニスであったとし
ても、私の意思に反してまったく勝手に突き上げる男性器の感触は、
玲子を女王様ではないご主人様に変えていた。

 女の体に備わっていないもの・・ペニスを求める本能がそうさせ
るのか、結局レズだった関係が一気に男女の主従へと変化した。
 お店で私は股縄のさらに奥底にディルドを突き刺し、心の中では
イキ続けて動き回る。
 そしてそれと同じことを私が主となって君臨する奴隷玲子にも強
制した。アナルと膣の二穴責め。革のパンティに内向きに突起する
悪魔をくわえさせておくのです。
 今夜は玲子のお部屋。仕事から戻っても私が許すまでは二穴の悪
魔は去っていかない。私に平伏し、哀願し、お尻に血の浮くほどの
鞭を受けてようやく許していただける。

 トイレで拭かなかったアナルを舐めさせ、玲子がしたのと同じよ
うにおしっこだって飲ませてやる。
 恥辱に泣いて玲子はすがる。捨てないで。どんなことでもします
から。私そのままの女心で玲子も同じことを言うんです。
 女は可愛い・・なんて可愛い玲子でしょう。
 そう思うと、女を生きる私自身が可愛くなってたまりません。

 そうです、私たちは可愛い女。

 女の自信と言えばそうなのでしょうが、そんな関係が続くうち、
ついに私たちは可愛い姿をどなたかに見て欲しいと思うようになっ
ていた。実体があり、それでいてイメージとして君臨する仮想のご
主人様が欲しいのです。
 予定を合わせて温泉へ出かけます。混浴の露天風呂。私も玲子も
はじめての経験で、しかも私たちには陰毛がありませんし、二人と
もお尻に鞭の痕がある。
 タオルを持つことが禁止され、若い人から老人まで男ばかりの岩
風呂で衆人環視の中、凍るような恐怖と、壊れたように濡れる性器
に戸惑いながら歩くのです。

「どなたかのお指図ですかな?」

 ついに・・白髪の男性から声がかかり、揃って『はい』とお応え
します。女二人のどちらもが性奴隷。男たちは皆S様。私たちにと
っては身の毛もよだつ儀式のような入浴です。
 お風呂を出るとき岩を這って上がり、お風呂を囲うすべやかな岩
に座った私たち。視線を浴びて裸身が羞恥にぶるぶる震え、私たち
の前へと男たちが流れてくる・・。

「見られて来いと?」
「はい」
「隠すなと?」
「はい」
「なのに脚を閉じている?」

 嘘です、そんな声は聞こえません。私と玲子の背後にいるご主人様
と王様のお声・・私たちは岩に脚を上げてMの字に裸身を据えて、毛
のない剥き出しの愛欲をお見せする。

 ああイク・・イッてしまう。
 私は女・・玲子も女・・可愛い女よ。

 白髪の方がおっしゃいました。
「二人ともいい子だね、可愛い人です」
 クラクラするお褒めの言葉。私たちは衆人環視で女同士抱き合って
しまいます。 

2016年12月22日

自虐~ふたつの心を持つ女(十六話)


十六話


 今日行くから。虐め抜いてあげるわよ。

 その日の夕方、お店を覗いた玲子に言われ、私はときめく想いで
お店を出ました。玲子は一度自宅へ戻り、お店を閉める七時過ぎに
なってから私の部屋へと訪ねてきます。
 私の部屋では私が奴隷、玲子の部屋では玲子が奴隷。暗黙の決ま
りとして、お部屋に帰り着いた私は即座にシャワーを済ませておい
て、薄くお化粧も整えて、素っ裸に赤い股縄を締め込んでドキドキ
しながら待っている。
 夕食は玲子が買って来てくれる。恥辱に満ちた食べ方で獣となっ
ていただくときのことを思うと、性器がヨダレを垂らして濡れてく
る。

 八時少し前になってドアがノックされ、私は全裸で平伏しお迎え
します。玲子は目の覚める黄色のランジェリー。裸の私を足下に正
座させ、買って来てくれたお寿司を手でつまんで食べさせてくれる
んですが、そのとき私の乳首には痛い痛い洗濯バサミが・・。
 飼われている性奴隷の気分が嬉しくて、濡れてしまってたまりま
せん。
 そして食事が済んだとき、下着姿の玲子に背後から抱き締められ
て、洗濯バサミがようやく許され、でも、これでもかと乳首をツネ
リあげられる。
「くぅぅ! ひぃぃ!」
 脚をバタバタさせてもがく奴隷。
「痛いよね・・うん、でもこれからなんだから」

 玲子は大きめのショルダーバッグを持ち込んで、その中に乗馬鞭
と・・ああそんな・・恐ろしく太いディルドのついたペニスバンド。
 玲子は腰にペニスを着けて、股縄さえ脱がされた私に四つん這い
を命じておいて、乗馬鞭での性器打ち。空を向くほどアナルを晒し、
その下でドロドロに濡れる花びらをまともに打たれる。
 ベシーッっという湿った音。私は、いくら何でも自宅で叫ぶわけ
にもいかず、ぎゃと声を殺すだけ。幾度も打たれ、とっくに泣いて
しまってる。

 鞭がやみ、恐ろしいご褒美が待っている。ゴムの勃起は萎えませ
ん。どれほど私が叫んでも玲子の意思で抜かれることなく、きっと
私はよくてよくて失禁してしまうでしょう。
 仁王立ちの玲子の前にひざまづき、勃起するゴムをベロベロ舐め
てよく濡らし、お尻を向けて四つん這い。
「ひっ・・あ!」
「いくわよ、覚悟なさい」

 太いわ・・裂けてしまうと思ったけれど、ヌラヌラの牝穴にズブ
ズブめり込み、入ってきます。
 ああ男だわ・・夢に見たご主人様・・そのとき私は玲子ではない
得体の知れない男性に確かに犯されていたんです。
 だけど玲子は動いてくれない。乳房を振って無我夢中でお尻を打
ち付け、裸身をよがらせていないと背中に鞭が飛んでくる。
 後ろから馬乗りになって両手を回し、乳房を揉まれ、痛い乳首に
爪を立ててツネられて・・それでも馬のロデオのように、下になっ
た私は腰を使ってゴムを求める。

 なんて凄いの・・狂ってしまう。

 イキ声を上げても玲子は許してくれません。悪魔的な快楽です。
子宮に届く突き上げにおなかの中が痛くなり、それでも勃起は萎え
てくれない。
「きぃぃーっ!」
 ガラスをこするような金属的な悲鳴・・やっぱり失禁・・そした
らそのとき、アナルに冷たい違和感が。浣腸でした。イチジクを続
けて三つ入れられて、それが地獄のはじまりでした。
 お尻を締めるとアソコも締まり、なおさらよくて叫んでしまう。

 そんな奴隷のあさましい姿を、テーブルに置いたビデオカメラが
狙っています。
「もうダメ、お願いですから・・出ちゃう」
 バケツでもなく私は浴室へと追い立てられて、浣腸の結末までを
ビデオに撮られ・・醜態のきわみに震えていると、いつのまにかペ
ニスバンドを外した全裸の玲子が私の顔をまたいで立って、タララ
とコントロールされた排尿が降り注ぎ・・。
「口を開けて飲みなさい! 奴隷なんでしょ!」
「はい!」

 ああ玲子、ひどいよ・・ひどいよ・・だけどこのとき私は玲子の
本気を感じます。すがっていたいと心からそう思った。

「泊まってくね」
「うん。大好き」

 ベッドではSでもMでもなくなって、互いのぬくもりに満たされ
て眠っていく・・自虐の果てに授かった玲子という人・・私も玲子
もすがるように抱き合って、そして・・眠っていくのです。

2016年12月21日

自虐~ふたつの心を持つ女(十五話)


十五話


 愛してくれる相手に対してどんな言葉を使ってみても、私にとっ
て私以上に愛せる人はこの世にいない。
 私は愛に傷つく私自身を見たくない。壊れてしまうし生きていけ
ない。
 そうした自分可愛さがきわまって、だから人を愛せず苦しんでい
たんだわ。無償の愛・・自己犠牲なんて、さももっともらしく美化
するけれど、それだって、いま私は誰かを傷つけているわけじゃな
いと、その事実に安心していたいだけ。

 自虐は究極の自己防衛であり、弱い私に罰を与えて許してくれる
神のような存在を求めているだけ。偶像のご主人様。そんな主が玲
子に乗り移って私を罰してくれている・・。
 玲子の部屋に行くときは、私が玲子の王様の声を聞いて罰してあ
げている・・。

 丸椅子に最後の一衝き、お尻を打ち付けたまま動けなくなってし
まった全裸の私を、玲子は後ろからそっと抱いて、椅子から抜くよ
うに立たせてくれた。椅子の座面も、フローリングの床にまで失禁
が飛び散っていて、なのに私はアクメの海を泳いでいる。
 ハッとしました。いつのまにか玲子も全裸。熱いほどのぬくもり
が私の全身をくるんでいた。

「愛してるのよ夕子のこと」

 耳許に疼くようなそんな言葉に、私はまたゾクゾク震え、泣いて
しまってすがりついていくんです。
「可哀想ね、誰も愛せず苦しむ夕子が可哀想・・」
「ああダメ・・やさしくしないで・・ああイクぅ・・」

 愛しています玲子様・・。
 心の中で叫びながら、でも、これは愛だと悟った瞬間、めちゃめ
ちゃに虐められたくなってくる。玲子に乗り移った私のご主人様に
すべてを捧げていたくなる。

 これは自虐よ・・身を捧げるという自虐・・きっと愛だわ。

 ぐるぐる回る目眩のような思考の中で、私はついに玲子の愛に屈
してしまっていたのです。愛に屈した女は相手に対して私が向ける
以上の愛を求めてしまうもの。女のエゴ。
「愛してるの玲子」
「うん」
「ねえ、愛してるのよ玲子、それでもいいの?」
 玲子は私の乳首を両方ツネって、呻く私を笑って見ている。
「同じことを考えてるのね。私の王様は私にとって都合のいい存在
だった。苦しみもがけば必ず許してくださったし、心が浄化された
もの。だけど夕子を愛そうと思った瞬間、必ず許されるって確証を
失った。どれほど尽くしても届くかどうかがわからない」

 想いはそのまま。玲子は私を映す鏡だと思ったわ。

「さあ綺麗になさい。愛液の泡立つディルドも失禁で汚した椅子も
床も、這いつくばって舐めるんです。動画にして私のブログに晒し
てしまう。私のブログで夕子が晒され、夕子のブログで私が晒され、
そうやって深めていきたいから」
 嬉しくて私はうなずき、自分が汚した愛の汚物を舐めにかかった。
動画モードのスマホを向けてほくそ笑む玲子が恐ろしく、私はまた
奴隷に徹して震えていられる。

「共通のご主人様がほしいわね」

 冗談だとは思うのですが、玲子のそんな言葉に、私は汚物を舐め
取りながら、いまにもイキそうな錯覚を覚えたわ。
 玲子も私も求めるものは男性なのです。熱い血で膨張するものを
膣やアナルや口にいただき、無我夢中で・・そう無我夢中で女を生
きる人になりたい。
 そのときはじめて自虐は完成すると思えるようになっていた・・。

2016年12月19日

自虐~ふたつの心を持つ女(十四話)


十四話


 そして、そんな玲子の失禁を私はクリトリスを舐めながらまとも
に顔に浴びてしまう・・どれほどかが口に入り、飲んでしまった。
 そのことが、ほとんど決定的な玲子への服従となったのです。

 心待ちにした三日。その日は激しい雨で早々とお店を閉めて部屋
へと戻った。今日逢える。玲子が部屋に来てくれる。胸は高鳴り、
お店で股縄パンティを穿いているだけで果て続けた甘美な時間。
「いま駅よ、雨がひどいからお願いね」
 下着と部屋着、お洗濯の準備をして私は待った。素っ裸に苦しい
麻縄のパンティ。乳首なんてツンツンに尖っています。

 ブログ。あれから二日。玲子も私も、糞をためたバケツの中まで
互いに恥辱を見せ合って、互いに全裸で平伏し合って、再会を心待
ちにしていたの。逢おうとすればいつだって行けるし来られるので
すけどね。週に二度と二人で決めた。逢えない日の切望を思い知っ
ていたいから。
 電話からしばらくしてドアがノックされたとき、私はそれだけで
イキそうになっていた。イクとはアクメよ。女は他虐を言い訳にし
たがるもので、求められるからしょうがなくて体を開き、ピストン
されるから狂ったように果てていき、しかたがなくて醜態を晒すも
の・・すましていても、じつは乱れたがっていることを隠しておき
たい。

 私と玲子の性はきわめて都合の悪いもので、自分自身の欲望を隠
さず晒して、よがり、悶える。それこそが究極の自虐だと考えるよ
うになっている。
 ドアを開けてあげると玲子は濡れねずみ。その場で全裸。下着ま
でがべっしょり濡れてしまってる。私は股縄だけの全裸で平伏し、
脱いでくれた玲子様に一夜の奴隷を誓うのです。
「上を向いて寝なさい、生理なのよ」
「はい!」
 パンティと一緒にナプキンから解放される。私の顔をまたぐ玲子
の性器が血に濡れていたんです。そしてそれが、まるで赤い薔薇が
近づくように顔にかぶさってくるんです。

 もうダメ、イッてしまう・・同性の性器が垂らす鉄臭い赤いもの
を、私は顔中を赤くして舐め取って・・飲みこんだ。
「もっと吸いなさい!」
「はう!」
 はいと応えますが、熱いラビアが口に押しつけられて言葉になら
ない。トロリとした赤い愛液を吸い取って、私は狂った愛にクラク
ラしている。

 それから玲子はシャワー。私だけが顔を赤くしたまま顔を洗うこ
とさえ許されない。私の新しい下着と、私はタンポンですから、そ
れも差し上げ、部屋着を着せてあげて、やっと夕食。
 心を込めたパスタ。お店の余り物ではないフルーツと生クリーム
のサラダ。食卓に向き合って、私だけが全裸のまま、玲子に食べさ
せてもらっている。フォークに丸まるトマトベースのパスタ。受け
取る私の顔は、トマトより赤い血に濡れて・・。

「逢えて嬉しい?」
「はい、お逢いしたくて・・私の玲子様」
「うん、私もよ」
 おだやかに微笑む玲子に私は心が溶かされていくようでした。
 そしたら玲子が、テーブルセットの椅子を横に向けて、こっちへ
来い。玲子の足下に四つん這いでお尻を向けた。
「辛い食事にしましょうね・・ふふふ」
 何だろうと思った一瞬、アナルに焼けるような痛みが走る。
 ピシーッと乾いた小さな音。私はこれほどの激痛を知りません。

 前に吹っ飛び、お尻を押さえてのたうち回る。ゴムでした。輪ゴ
ムの鞭。引き延ばした細い輪ゴムがアナルを狙い、痛みが去ってふ
たたびお尻を晒すと、次には閉じたラビアを狙われます。
 ピシーッ!
「ぁきゃ! うむむ、痛い、うむむ!」
 涙がじわり。玲子は声を上げて笑い、足下で見上げる私を見下ろ
します。
「はいご褒美」
 そう言ってパスタの丸まるフォークを口許へ。私は馬鹿みたいに
口を開けて美味しくいただき、次には両方の乳房を突き出すように
玲子に委ねる。細いゴムが引き延ばされて乳首を狙う。

 金属的な悲鳴を上げて、でも片方では許されず、もう片方の乳首
も捧げる。乳首のちぎれそうな痛み。なのに私のアソコは股縄の吸
水を超えた愛液で腿にまで粘液が伝っている。
 打たれては食べ、打たれて涙ぐみ、ふたたび食べる。
 私の部屋には鞭のような責め具はない。
「いいわ、痛かったね。ご褒美をあげながら食べさせてあげるから」
 デスクの丸椅子。太いディルドが勃ったままの椅子を持ち寄られ、
股縄を許されて、錯乱するように濡れる膣へ突き立てます。

「はぅ! ンふ・・ああイク・・」
「まだまだよ! お尻を上げてドスンて突き刺す!」
「はい・・あ・・あぁーっ!」
 テーブルに並べたパスタ・・食器の輪郭・・玲子の笑顔の輪郭ま
でが目眩のようにクラクラ回っているんです。
「はい食べて」
 フォークにたっぷり丸まるパスタを口に入れられ、味どころでは
なくなって、アクメの中で食事をする。

 なのにだんだんお尻の動きが速くなってく・・どうしたことか、
もっともっとと自ら求めているんです。ゴム鞭で幾度も打たれたク
リトリスも、アナルまでがヒリヒリし、乳首だって赤くなって。
 でもだから、ディルドの衝き上げに狂いそう。

「玲子、愛してる」

 玲子が自分を名指しに、そう言った。
 ハッとしたし、そうか・・そうなんだと理解した。
 玲子は私に自分を重ね、私のことを玲子だと思っている。
「自虐よね?」
 私は訊いた。
「もちろんそうよ。夕子を夕子だと思った瞬間、私はマゾでしか生
きられない。グズグズ面倒な私が嫌い。だから徹底的に虐めてやる
のよ。ほらもっと速く! ズボズボ虐めてやりなさい!」

 丸椅子に失禁をまき散らし、それでもパスタを突きつけられて食
べている。いま最高潮の私自身に、私ははじめて愛を覚えた。
 私は私を愛している・・いまさらながら自分本位な私に気づく。

自虐~ふたつの心を持つ女(十三話)


十三話


 私の奴隷となることを誓った玲子に対して、私も玲子の奴隷にな
ると誓い、それからは凄惨なセックスへと発展していったのです。

 自虐。それはやはり徹底した自虐。女二人の密室にS様はいない。
私たちはMなのかと言えば、それも互いに何かが違うと思っている。
女はぬくもりがないと寂しすぎる。肌のぬくもりもそうですが、相
手の心のぬくもりを感じていたい。
 玲子は私に捧げ、私は玲子に捧げる。互いに『捧げる』という非
常識きわまりない愛に生きようとしたのかも知れません。
 捧げるという自虐。どんなことをされようが玲子にだけは服従す
る。

 あの子の部屋には私にないものがいくつかあった。バラ鞭もその
ひとつ。細くて重い九尾の黒革の鞭ですが、玲子は自分で自分を鞭
打っていたようで、革に肌脂が染みこんでツヤツヤと光っていた。
 玲子も全裸、私も全裸。仁王立ちになった私の腿を抱かせ、縛っ
たりせず、玲子は膝をついてお尻を上げて、私の腿にすがって見上
げています。
「濡れちゃってひどいことになってるわ、綺麗に舐めて!」
「はい女王様」
 女王様? つくづく不思議な言葉だと思うのですが、玲子はそう
しないと変態的な性に耽溺できないようですね。
 私のお尻をしっかり抱いて、毛のないデルタに顔を突っ込み、こ
れでもかと舌を回して舐めている。感じます。椅子に勃てたディル
ドより熱い舌に震えてしまう。

 九尾の鞭は革が長く、私は立ったまま、そんな玲子のお尻の谷底
を狙うと、まともに性器を打つ鞭になる。
 このとき私は自分でも信じられないほどのサディズムに衝き動か
されて、無造作に、フルスイングで鞭を振るった。
 お尻に潜り込むベシーッという湿った音。玲子もヌラヌラに濡ら
していて、鞭先が開きかけたラビアと、感じて飛び出すクリトリス
の頭を直撃した。
「おおぉーっ! あっあっ!」
「痛い!?」
「いいえ、ああ感じます、イキそう」
「もっと!?」
「はい、もっとほしい、もっとぉ!」

 痛くないはずがない。玲子はヒットと同時にお尻を閉ざし、腰を
ゆすってお尻を振るくせに、直後にまた前にも増してお尻を開き、
アナルが空に向くほど性器を晒す。
 ベシーッ!
「あン! んっんーっ!」
 今度こそ泣いてしまって、なのに私の股間にめり込むように顔を
突っ込み、真下から舐めてくれる。
 私は長い髪の毛をつかんで、私のアソコから玲子を剥がし、その
まま膝で立たせておいて、綺麗な乳房も、真っ白なおなか、背中も
お尻もメッタ打ち。愛液を吸い脂汗を吸った鞭はどんどん重くなっ
て、打音が恐ろしいほど響きます。
 ベシィーッ!
「きゃぅーっ!」
 横振りのフルスイングが両方の乳首を跳ねるように打ったらしく、
玲子は両手で胸を抱いてフロアに倒れ、足をじたばたさせてもがい
ている。

「いいこと玲子、こっちでは服従なさい。私の部屋では玲子が女王
よ。きっとだからね、私だって捧げたい」
「自虐よね? きっと自虐・・どうされてもいいって自虐・・」
 泣き濡れる目でそう言って、そしたら玲子、何を思ったのか立ち
上がって、クローゼットからもっと怖い鞭を出す。乗馬鞭。それを
私に握らせて、自分はフロアに仰向けに寝てしまって膝を抱え、あ
さましくヌラめく性器を剥き出しにするんです。
「クリトリスを打ってください。そうされるのが夢でした。ああ怖
い・・怖いけどでも、打たれてみたい。自分では怖すぎてできなか
ったの」
 よくわからない夢なんですが、玲子は膝を抱える両手の指先でク
リトリスの皮を剥いてピンクの芽を剥き出しにする。

「あ、あ、あ・・」
 鞭先でペシペシ打って狙いすまし、手首を返して打ってやる。
 ベシッ! 重く湿った音。
「ぎゃう! あっあっ! ぐわぁぁーっ!」
 膝を抱えた手が離れ、裸身を一直線にのばした玲子。お尻を締め
込み、腿肉を力ませて、両手に握り拳をつくって白い歯を剥き出し
に震えている。

 女は可愛い・・なんて素敵な生き物でしょう。

 私の中にだってきっとある女心を向けられて、それからは鞭なん
て捨ててしまい、痛い痛いクリトリスを舐めてあげて、獣のような
玲子のアクメを目撃したわ・・お部屋の中で失禁してまで果ててい
く・・。

2016年12月16日

自虐~ふたつの心を持つ女(十二話)


十二話


 お部屋に帰り着いたのは二時間ほどしてからでした。玲子はこの
ままおいでとお部屋に誘ってくれたのでしたが、一度戻って出直し
て来ると言って、少しの間でも独りになって私のご主人様とお話し
したかった。でも帰る道々、私はアクメの余韻にグダグダになって
いて、お部屋に戻っても体の疼きがとめられない。
 錯乱する意識の中で女王様と叫んでしまったことだけは、まるで
一条の鞭打ちのように、そこのところだけくっきりした記憶となっ
て残っている。

 とにかくシャワー。体中から性の臭気を発散しているようでたま
りません。爪先から髪まで洗って、最後に体に冷水を浴びて出てき
たわ。プールで遊んだ後のように気怠くて、ぼーっとしている。
 それでも日課としているディルドの責めからは逃れられず、丸椅
子に勃起する感情のないペニスを舐めて、またがって、狙いすませ
て貫いていったのでした。
 それだけではイッてしまう。もちろん乳首にもゴム吊りの調教を
施して、痛みに呻きながらパソコンを立ち上げます。起動するまで
がもどかしい。もしちょっとでも腰を動かせば失禁してしまいそう
なぐらい、ほんと極限まで性感が高ぶっている。

 飛びつくように玲子のブログへ行ってみる。私にとって彼女はい
ったい何者なのか。まともな判断がつかなくなってしまっている。
 だけどパスワードを入れてブログが開くと、胸が締め付けられる
思いがしたわ。新しい動画があがっています。
 手に持ったビデオカメラで玲子自身の体をくまなく映しているん
です。
「夕子さん、心よりありがとう。どうか私を見てください」
 顔が映って声が入って、カメラは下へ流れていく。綺麗な乳房、
尖ってしまった二つの乳首・・そしてそのとき。
「可哀想なおっぱい・・可哀想な乳首・・乳房を責められるのが好
きなんです」

 レンズが流れて陰毛のないデルタへ降りて、玲子は脚を開いてカ
メラを真下に持っていく。閉じたラビアは肉厚で外陰唇からはみだ
して、すでに濡れて光っています。
 さらに腰を落としてがに股になると、つつましやかなアナルまで
がくっきり映る。
「醜いでしょう・・いやらしいでしょう・・でもこれも私なの。夕
子さんが好きです。王様の隣りにいてほしい女王様になりつつあり
ます」

 それで一瞬ブラックアウト。アングルが変わるんですね。そした
ら玲子は四つん這いになっていて、ついさっき私がしたのと同じポ
ーズ。アナルが空に向くほどお尻を上げて、飾り毛の一切ない淫ら
な性器が大映し・・麗子の手がお尻に回ってこれでもかと性器を咲
かせ、ピンクの内臓までが映っている。
「女王様と呼ばせてください。夕子さんに壊して欲しい。王様もぬ
くもりのある責めを許してくれているんです。寂しいの。狂ってし
まいそうなぐらい孤独です。鞭もあります。縄もバイブも」

 やっぱりそう・・私そのもの。分身のような玲子。
 私は涙を流して映像を見ていたわ。あの子に何があったのか。ど
んな過去がそうさせるのか。それともトラウマなどとは無関係に、
どうしようもないマゾなのか。
 ハッとしました。動画のアップは早朝です。それをアップしてお
いて、ついさっき私の女王様になってくれた。

「行っていいでしょ? いますぐ出る」
「はい!」
 ご主人様の意思ではない。私が決めて、私は動いた。
 いても立ってもいられません。パソコンを消して乳首の責めをは
ずしてやって、ディルドを抜き去り、今度は真っ赤な股縄パンティ
を穿き込んで、ブラだけはしてあげて、明日そのままお店に出ても
いいように身支度を整えて、お部屋を飛び出していたんです。
 私のほうからお店までは五分ほど。さらにその先十分ほどで玲子
のマンション。場所は聞いて知っていたし、訊くも何も、駅そばの
よく行くドラッグストアの向かいです。

 気づけば小走りになっている。ほとんどもう錯乱している。
 こんな近くにもう一人の私がいた。そう思うと、この町に似たよ
うな女たちがたくさんいると思えてきたわ。
 エントランスに飛び込んで、そのときちょうど最上階で停まって
いたエレベーターがもどかしく、飛び乗って、702号。
 ノックすると待ってましたとドアが開けられ、玲子は素っ裸で平
伏していたんです。
「見たわ動画」
「はい」
「約束なさい」
「はい?」
 靴を蹴って脱ぐようにお部屋に上がった私は、全裸の玲子を白い
壁際に追い詰めて、陰毛のないデルタの底に指を突っ込み、無造作
に貫きながら言ってやった。

「捨てないでね」
「はい!」
「ほんと! 心から言えるのね!」
「はい!」
 玲子の熱い膣を掻き回してやりながら、むしゃぶりついて唇を求
めた私。玲子の綺麗な裸身がわなわな震えて、すがりついてくるん
です。
 可愛いわ。もう一人の私は、なんて可愛い女なの。
「毎日お店に来なさい!」
「はい!」
「毎日どっちかのお部屋で眠ること!」
「はい! 嬉しい、誓います女王様」

 私も玲子も泣いてしまって抱き合っていたんです。私のご主人様
と玲子の王様が消えてしまった瞬間でした。

自虐~ふたつの心を持つ女(十一話)


十一話


 ですけど、このとき私の中にあった気持ちは、ご主人様とは無関
係に・・玲子に肩を並べたい・・そんなことだったように思うんで
す。カフェのママとお客さん。ただそんな関係なのに玲子は自分を
告白し、ブログの中の淫らな素性を見せてくれた。追従して私がブ
ログをはじめている。
 いつだってそうでした。誰かが何かを持ちかけて、それに対して
私は態度を決めてきた。『だってそれはあなたが言うから』 そん
な都合のいい言い訳ができるんだから。

 ホールに立ってジーンズを脱ぎながら、とても目を見られずに私
は言った。
「見て。ついさっきもシャッターを閉ざしたお店の中で、こんな姿
でいたんです」
 玲子はうなずくでもなくただ黙って、目撃し記憶に植え付けよう
とするかのように見つめています。

 ジーンズを脱げば股縄パンティの中でももっとも苦しい麻縄が陰
毛さえない奴隷の性器に食い込んでいて、上を脱げばノーブラなん
だし、お乳が弾むようにこぼれます。
 ああ燃える・・頬よりも喉の奥が燃えていて火を噴くような息が
口から流れて出てくるわ。
 生唾が湧いてきて飲もうとするとゴキュっとあさましい音がする。
乳首が勃ってかちんかちんよ。お乳の肌にまで鳥肌がひろがって産
毛が逆立ち、お店の照明で金色に光っている。

「笑って玲子・・私はこんな女です。さっきまではこうしてね・・」
 厨房に置いた青いプラの洗濯バサミを、尖ってしまった乳首に寄
せて挟み付けて責めてやる。
「んっ! んんーン・・痛ぁい」
 息が激しく乱れだし、股縄の食い込む性器の底から淫水が噴き上
げてきそうな気さえする。
 そんな姿で私は店内を歩き回り、テーブルを拭いたりして、すま
したカフェのママの正体を晒していきます。

「嬉しいね夕子」
「はい」
「可愛いわよ」
「はい、ありがとうございます」
「ご主人様はなんておっしゃってるの?」
「はい、玲子様に笑っていただけ。もっともっと笑っていただけと」
「ふふふ、うん、淫らな姿ね・・ふっふっふ、淫乱だわ」
「ああ、はい!」
「感じるんだ?」
「はい感じます、ゾクゾクして・・ああイキそう」
「だーめ! そうおっしゃるのよね、ご主人様は?」
「はい・・あぅぅはぅぅ、感じる・・もうダメ・・」

 フローリングの床に崩れてしまった。

『どうした! 四つん這いだ! 縄を許す、お見せしろ!』
「嫌ぁぁん、嫌ぁぁん、ご主人様ぁ」
『夕子!』
「はい・・はい!」

 私は這って玲子にお尻を向けておき、腰のところで縛った麻縄を
解いてしまう。縄はべちょべちょ。ふっと圧力がなくなって、ラビ
アが開いて愛液があふれ出してくるんです。
「まあいやらしい・・洪水よね」
「はい」
「イキたいもんね? ご褒美に貫かれてイキたいもんね?」
「はい、イキたい・・ああイキたい」

『玲子や、可愛がってやりなさい』
「はい、王様」

『夕子、責めてもらいなさい』
「はい、ご主人様」

 歩み寄る玲子の気配に、私はさらに腰を反らせてお尻を上げたわ。
 玲子の両手が私のお尻の左右にのって・・いきなり舌先がヒクつ
くアナルを舐め上げます。
「はぁぁーっ!」
 一瞬にして達したアクメ・・私はつんのめって前へと吹っ飛び、
身を丸めてガタガタ震えて達していく。
 ほんの一瞬気もそぞろとなったとき、次には温かい女の体がかぶ
さってきたんです。
 全裸の玲子が抱いてくれ、洗濯バサミをしたままだった乳首を許
してくれて、だけど乳首に歯を当てて噛むんです。

 激痛でした。
「うぃぃーっ!」
「ふふふ、痛い痛い・・でも気持ちいい」
「はい、はい気持ちいい、気持ちいい・・はい!」
 玲子の指先・・指を二本まとめた指先が毛のないクレバスを這っ
たかと思うと、ズブリと根元まで突き立った。

 ご主人様の意思のまま、玲子に嬲られるという素敵な自虐を知っ
た私。それはレズではありません。私のご主人様への忠誠なのです。

 でもだけど・・ああ凄い、これほどのアクメを知らなかった。恐
怖にも似たアクメに目を見開くと、微笑む玲子の顔が四つにも五つ
にも多重していて、ぐるぐる回る。
 私は激しく痙攣している。フロアにお尻を打ち付けて全身ブルブ
ル痙攣していると自覚しながら、私はとうとうその言葉を発してま
う・・。

「玲子玲子、イク・・玲子、好きよ玲子・・ああ女王様ぁーっ!」

 それは私のご主人様への裏切りでした・・。

自虐~ふたつの心を持つ女(十話)


十話


 自虐はどうして?
 そういうことを私は玲子に訊くのはやめようと考えました。
 私は玲子の王様の奴隷じゃない。玲子だって私のご主人様の奴隷
じゃない。うまく言えませんが、抱き締めてあげるのはよくても
玲子にそうされたくない。誰かに感化されてしまったら純粋な自虐
ではなくなってしまうでしょうし、結局誰かに操られる私になって
しまいそう。

 そうやって私は突然湧き上がる玲子への激情をごまかそうとして
います。相手が女性でも愛してしまえば別れが怖い。女同士、いつ
彼ができて、それまで孤独を舐め合った同性がいらなくなるかもし
れないのだから。

 玲子とのスタンスが難しい。ネットの中の玲子を目撃する。鑑賞
すると言えばいいのか、それだけだったらむしろ玲子を肌身に感じ
ていけると思うんです。
 そのへん玲子はどう思っているのでしょう。互いに探り合ういま
の段階では、愛欲を解き放つ彼女を尊敬できても信頼しきってつき
あえない。そうは思っていながら、こうして一緒にいるとどんどん
のめり込んでいってしまう。

「夕子さん、私ね」
「うん?」
「夕子さんのご主人様には平伏さない。私にとっていとおしい王様
だけ。だけどよ、それが王様のご意思であるなら夕子さんには委ね
られるの」

 同じことを考えてる。私は言ったわ。

「隠すなとおっしゃるの、私のご主人様が。目撃されて、見ていた
だける人のために苦しむ姿が、俺は見ていて好ましいと」
「わかる。私もそうだし。王様がおっしゃるのは、共有ではない、
おまえ自身の吐露なんだ。吐き出す姿を笑っていただけ・・と」
 玲子もまた自虐を考え抜いている。答えはそれぞれ違っても考え
抜いた上での姿なら、それは私と同質のもの。

 玲子が言います。
「マンションなのね。七階に住んでるの」
「ウチもそうよ、三階ですけど」
「戻るとまず全裸。玄関先で裸にされて私は平伏し、王様に忠誠を
誓うんです。お部屋の中で着衣は一切許されない」
「・・うん」
「おトイレはバルコニーに置いたバケツ。雨の時だけお部屋の中を
許してくださる」
「・・うん」
「パソコンに向かうときは椅子に王様が勃起していて、突き刺され
て喘ぎながらブログを書いたりしてるんです」
「・・うん」
「デスクにプラの定規があって、それを鞭代わりに乳首を打たれて
泣いたりしている。洗濯バサミで責められたりも・・」
「・・うん」
「お買い物に出るときなんてノーパンならいいほうで、股縄をした
り、ディルドの付いたパンティを穿かされる。ちょっとでもイヤイ
ヤすると浣腸されて放り出され、青ざめながら歩いてる」
「・・うん」

「でもね」
「うん?」
「厳しくされればされるほど、月に一度アクメを許されたとき、天
にも昇るキモチよさで果てていける。日々服従、日々泣いて、だか
ら毎日幸せで・・」

 抱き締めてあげたくなる。玲子のそんな姿は私そのもの。心が震
えてくるのです。
 私は言った。
「嬉しいよね」
「嬉しい」
「私は死が分かつ別れでも嫌。ご主人様は私と重なるように生きて
おられて、私が死ぬとき一緒に眠っていただける」
「わかる。私もそうだし」
「お店で私はパンティは許されない。陰毛のないアソコに股縄を食
い込ませ、バレるんじゃないかって怖くてならないんだけど、素知
らぬ顔をしながらも半分イッてすごしてる」
「・・うん」
「デスクではディルドと乳首責めが義務なのよ。トイレだってお部
屋に置いたバケツだし日に一度しか処理することを許されない」
「・・うん」
「いちばん辛いのは、私のご主人様はアクメを許してくださらない。
悶々として、いつも濡らして・・どれだけ泣いても丸椅子で腰を浮
き沈みさせることは許されない」
「辛いね。厳しいご主人様だわ」

『すべてを脱いでお見せしろ』
「・・え」
『さあ早く!』

 恐れていた声がついに聞こえた。唇までがあうあうと震え出す私
です。

2016年12月15日

自虐~ふたつの心を持つ女(九話)


九話


 翌日お店は休みです。日頃早くに起きていて休みの日ぐらい寝てい
たい。夕べはちっとも眠れなかった。玲子のことです、嬉しくなって
責めをエスカレートさせている。火を見るより明らかだった。
 九時頃になって起き抜けた私は、寝ている間にも濡らしてしまうア
ソコを洗い、それしか許されていないバケツのトイレに吐きそうな匂
いを出して蓋をして・・そしたらちょうどそのときメールが来ました。

 今日は半日。でも戻ってもお店はお休みなんですね。
 ありがとうございますママ。夕べは泣いてしまって眠れなかった。

 可愛いことを書いている。いまさらですが信じてみようとこのとき
思った。それで返信。

 お休みですけど、いろいろあるからシャッターの中にいます。
 お昼一緒にどうかしら。何かつくれると思うわよ。
 シャッター半分開けておくね。

 仕事に入っているんでしょう、それへの返信はありません。
 なんとなく気怠い体でデスクを見つめ、どうしようと考えます。
 シャッターの裏側に玲子と二人。はぁぁ・・ため息が漏れてくる。

 パソコンには向かわない。それでなくても股縄パンティ。朝から
丸椅子に責められていては、逢ったとたん、玲子を抱き締めてしま
いそう。
 抱き締める? そうなることは明らかでした。
 性的気分を振り払うように、お洗濯と掃除を済ませ、今日は辛い
麻縄パンティを食い込ませてお部屋を出たわ。下はジーンズ、厚手
のトレーナーを着込んだ私はブラだってつけていない。

 お店に入ってシャッターを閉ざしてしまい、そうすると照明だけ
の夜のムードになってしまう。
『脱げ』
「・・そんな、ダメです、ご主人様」
『脱げと言った!』
「はい、ああ、はい!」
 キツく食い込む股縄が、お部屋からお店に来る間にすっかり濡れ
てしまっている。下も上も脱ぎ去って、だけど店内は見慣れた景色。
そこらの席にお客さんがいるようで・・衆人環視・・晒し者にされ
てるようで、全身に鳥肌が立って膝が震える。

 股縄だけの全裸です。厨房に洗ったタオルが干してあり、動き回
って引っかけても落ちないように洗濯バサミ。
 ああ嫌・・お願いします、ご主人様・・だけど許していただけま
せん。両方の乳首を挟み付け、痛みと性感にガタガタ震えながら、
テーブルと椅子をどけてフロアにモップをかけていく。店内の壁際
にガラスエリアがあり、鏡となって変態女を映している。

「玲子・・早く来て玲子・・ああ感じる・・」

 いまでも信じられない想いです。自虐が引き合わせた玲子。私は
彼女の姿に私を重ねて、すでにもうどっちがどっちがわからなくな
っている。これが怖いの。相手が男性でも好きになったら崩れてい
く。信じ切って・・のめり込んで・・私はそうやって壊れていく。

 お店は満席。その中で私はマゾ・・猥褻物陳列カフェ。
 ダメよ馬鹿! こんなことをしてちゃダメ!
 ハッと正気に戻った私は、乳首の責めを許してあげて服を着込ん
だ。でもそのままカウンターの席に座り、呆然とするしかなかった。
 いつのまにか私のM性は大輪の花を咲かせていたんだわ・・実感
したし、そう思うと玲子に逢いたくなってたまりません。

 ふと気づくとお昼を過ぎてしまってた。夕べが眠れず、カウンタ
ーにつっぷしてうつらうつら。少し開けたシャッターがノックされ
た。そのとき時刻はお昼の一時を過ぎていた。
 シャッターを開けてあげると外は晴天。光の中に白いジーンズス
タイルの玲子がいた。お化粧も薄くして、いつもの仕事帰りとは
ムードが違う。
「はいケーキ、一緒に食べようと思って」
「うん、ありがと。入って」
 こくりとうなずく玲子の顔がキラキラしている。可愛い人です。
それが玲子のほんとの姿。信じた人の前だから素直になれる。玲子
もほんと女性なんです。

 カウンターに座らせて紅茶をつくりながら・・。
「サンドイッチならすぐできるよ」
「はい、ありがとうママ・・夕子さん、ありがとうございます」
「何よ、その言い方・・さては王様に何か言われたな?」
「はい、夕子さんに従えと。どんなことでも・・」
 やっぱりね・・私もご主人様に似たようなことを言われたわ。
「王様は、さらけ出せる相手に出会えたことを感謝しろとおっしゃ
いました。生涯出会えず苦しむ女ばかりだぞって」
「・・うん、そうよね。それはそう思うわよ私だって」
 サンドイッチをつくりながらでしたけど、カウンター越しの玲子
がとてつもなく可愛く思え、はにかむような笑顔に、私の中にもあ
って解放できない女の色香を感じたわ。

「ごめんね」
「え? どうして?」
「ブログに顔まで出してくれた。私のほうは最初は違った。そこま
では怖かった。信じ切れていなかった。ごめんなさい謝ります」
 そしたら玲子。じっと見つめる二つの目に涙が湧き上がってくる
のです。私だって玲子の姿が涙に揺らいだ。

 できあがった二人分のサンドイッチとありあわせのサラダを置い
てカウンターに並んで座った。
 私がそっとあの子の腿に手を置くと、玲子はハッとしたように隣
りの私に向き直り、もうね、弾けるような笑顔を向けて抱きすがっ
てくるんだもん。
 ほんの一瞬、唇が触れ合うだけのキスをした。孤独の闇がすーっ
と流れて消えていく・・。

自虐~ふたつの心を持つ女(八話)


八話


 言ってからしまったと思うことのよくある私。安易に感情を移入し
て、後になって冷静になってみるとちょっと怖い。
 私は玲子の、彼女は私の、私生活を一切知らない。互いにお部屋を
訪ね合う仲になればわかることも、いまは信じるしかありません。
動画にされていた自虐の姿も顔まではわからず彼女でないかも知れな
い。悪い方へと考え出すと臆病な私は何もできなくなっていく。
 同じ街に暮らす彼女。もしも裏表のある人だったらどうしよう。

 いいえ、それよりむしろ彼女にのめり込んでいきそうで怖かった。
彼女は王様と言うし私はご主人様と言う。レズではないだろうと思う
のですが、それだって変態的な性に耽溺すればSMチックな愛へと発
展するかも知れない。自虐の歓びは内なる自分の声に服従すること。
 無条件に信じていられる誰かなんて自分の中にしかないものです。

『裏切ってはいけないよ。裏切られて泣く方がおまえらしい』

 そんなご主人様の声がなければ踏み出せなかったと思うのです。
 ブログぐらい私だって若い頃に日記のブログをやっていた。でも
動画をどうアップすればいいのか? そこまでしなくても画像だけで
いいと思ったし、とにかくブログづくりをはじめます。独りきりの
お部屋にいて、もちろんディルドに貫かれる甘美に耐えて・・乳首を
責める痛みに酔って・・。
 いろいろ考え、姿見をフローリングの床に立てて、乳房から下あた
りを狙って写真を撮りながら・・。

 彼女のブログは『私はSよ、私はMよ』
 タイトルをどうしよう。『私自身の調教日記』・・ダサくない?

 でももうたまりません。突き立つディルドと痛すぎる乳首に感じて
しまってクラクラしちゃう。タイトルなんて何でもいいや。丸椅子の
座面が愛液でヌラヌラしている。

『クラクラしてるヌラヌラしてる』・・なんて、いいかも?

 今日のところは写真を数枚あげておき、短いリード文を書いておし
まい。プライベートモードにセットして、乳首の責めとイキそうでイ
ケないディルドの夢から逃れます。

 おまえが死ぬとき俺も逝く。
 そうまで言われて、私は私に逆らえない。
 それがトップの二行です。

 シャワーを浴びて、それでも疼く裸身を、ふたたびディルドが責め
立てます。パソコンに向かうときの逃れられない調教ですから。
 彼女のブログへ行ってみるとパスワードを要求される。スマホのメ
アドは教えてあって、パスワードが送られてきています。もちろんこ
ちらのパスワードも送ってあった。

 ブログを開いて、トップに写真が一枚あって・・全裸の玲子が平伏
して顔まで消さずに載っている。
 よくやるよ・・私が悪女ならどうするつもり?
 それに・・私と一緒で陰毛が処理されてる!
 Cカップほどの乳房が綺麗・・。

 どうかよろしくお願いします。
 孤独の殻にヒビがはしった想いです。

 同じ女として涙が出ます。揺らぐ玲子を見つめていて、ふと記事の
下を見る。そこにはなかったコメントボタンがつけられている。私の
ブログにはつけてなかった。慌てて私は自分のブログにボタンをつけ
て、同じように土下座をする私を撮ってアップした。
 怖い。顔を出してしまったわ。私もデルタに毛がありません。
 ああ私は奈落の底へと転がり落ちる!

 目撃者が現れた気分だわ。
 こちらこそです。嬉しくて嬉しくて。

 リアルで見せ合う・・リアルで責め合う・・そうなるのは時間の問
題だと思っていました。だって、ご主人様がそうせよとおっしゃるか
ら・・イキたくてもイケないままベッドで悶々としています。

2016年12月14日

自虐~ふたつの心を持つ女(七話)


七話


 お店のカウンターに赤い薔薇を活けておく。花瓶ではなく大きなグラ
スに数本ですけど。そしてその中に一輪だけ白い薔薇。玲子を心待ちに
する気持ちが生まれていた。毎日来る人じゃない。それまでは週に二度
ほど。でも、あんなブログを私に見せて、それでも来てくれるのだろう
か。それから二日、ちょっと不安。
 三日目に彼女が来てくれて、私は嬉しくてならなかった。

 自虐は独りこっそりと。だからこその自虐だし、私にとっては唯一信
じられる私の姿。他人を引き込んでしまったら崩れてしまうと思うので
すが・・。
「拝見しました」
「うん・・私ってそうなの」
 夕方を過ぎた時刻はお客が絶える。夜まで開けていると夜の顔ぶれが
集まるのでしょうが、私は夜の顔を見せたくなかった。それでももし誘
ってくれる人が現れたらと、それが怖かったのかも知れません。
 意気地なしだわ・・情けない。寂しいし惨めだし、でもだからお部屋
に戻ってそんな私に罰をやれる。

 私は薔薇の中から彼女のために活けてあった白い薔薇を抜き取って、
セロハンで一輪だけの花束をつくります。
「私に?」
「お見えになったら差し上げようと思って」
「ねえママ、何で白? 赤があるのにどうして?」
「さあ、何ででしょうね」
 白い薔薇には純潔そして尊敬という意味がある。
「尊敬するから」
 そしたら彼女、えっと言うような面色で見つめてくれたわ。

 偽らざる私の気持ち。ポーズのない女心の奥底までをあんなふうに
動画にできる勇気というのか潔さというのか、とても私にはできそう
にありません。
「動画も見た?」
「ふふふ、ええ。ドキドキしちゃって・・でも羨ましくて」
「ありがとう。他人を巻き込んじゃいけないのよ。リアルだと自虐で
はなくなっちゃう。ネットはいいの。人知れず誰かが勝手に見ていく
だけだもん。動画なんて一度きりよ。エスカレートしていくのはわか
ってるし、そうなるともう狂ってしまいそうだから」
 そうなんです、動画はそれしかなかったし画像さえもありません。
せつせつと綴った玲子という牝の姿に、私は感動していたんです。

「わかる」
「ほんと?」
「わかる」

「うん・・それで白い薔薇?」
「あなたの動きに私の声が重なった」
「どういうこと?」
「オナニーしちゃった。揺さぶられて、うーん、感動して・・獣みた
いに果ててしまった」
「ママ好きよ」
「私も。似たような想いがあるからね」
 このときほど胸が高鳴った記憶がなかった。自虐を見せ合うなんて
これっぽっちも思ってなかった。あの映像の中に、私は私の叫びを聞
いたのでしょう。

 今日の私はエスカレートしてました。股縄パンティ、ロングフレア。
それはよくあることですけれど、少し小さなゴムの勃起を膣に突き刺
して過ごしていた。
 崩れそうです。感じるなんてものじゃない。体から湯気が立ってい
そうで、気づかれたらどうしようって・・でもだから燃えていた。

 リアルの王様はいらないと玲子は言います。内なる声を彼女は王様
と表現する。私だってリアルなご主人様は求めない。
「どうしたって裸になれない」
「そうね」
「最後のところで甘えてしまう」
「だと思う」
「ママもブログやってみたら?」
「どうかしら・・結局ポーズになるような気もするし」

「ありがとう、これ・・嬉しい」
 そう言って玲子は白い薔薇の花にキスをした。瞼を閉ざしたときの
長い睫毛が心なしか濡れていたような気がします。
「いまね」
「ええ?」
「ママのラビアにキスしたの・・尊敬を込めてキスしたの・・渇いて
るなら濡らしてあげたい」

 抱き締めてあげたくなった。衝き上げる激情と膣の責めが、このと
き私の背を押した。
「じゃあ、プライベートモードになさいよ」
「どして?」
「私もそうする。玲子だけに私を晒す」
 そしたらあの子、今度こそ涙を浮かべてうなずいた・・。 

自虐~ふたつの心を持つ女(六話)


六話


 でも・・自虐にもマンネリはあるもので、マンネリは激しい自己嫌悪
を連れてくる。カフェという人前で、その店のママがじつは股縄パンティ
に苦しんでいる。お部屋に戻ってディルドを突き立て、トイレさえも
お部屋に置いたバケツですませる。ふと冷静になったとき、私はなんて
変態だろうと死にたい思いがするほどで。

 カフェをはじめて、日々の時計は遅くてもカレンダーは次々めくれて、
気がつけば一年が経っていた。つまり自虐的な性に溺れてそろそろ一年。
その間の私にはアクメが一切許されてはいなかった。

 その人は私と同年代の女性です。お店に来はじめたのは二月ほど前。
最初は二人席に陣取って、何度来てもカウンターには座らない。そんな
彼女がそのうちやっとカウンターに来てくれた。なんとなくですが、私
だって知らないお店に通い出すとしたら、そんなカンジなんだろうと思
ったわ。知らない人は怖いから。
 彼女は玲子、私よりひとつ下の三十二歳。私のように結婚を怖がった
人でした。何度も通って私のことを探っていた。話し相手がほしいと
いう気持ちもよくわかる。そんな玲子が突然言ったの。

「自虐癖があるのよ・・恥ずかしいけどそうなの・・」

 深いところは隠しておきたい。だけどそのうち、こんなことを聞いて
くれる人がいるものかしらと試してみたくなる。タイミングが合ったと
いうのか、私もそんなことを考え出していたからね。

「私なんて叩き直されないとダメみたい。狂ってるって思うんだけど、
解放されるところが他にない。ウジウジしてる自分が嫌・・」

 彼女は保育士。私鉄でいくつか行った街にある保育園に勤めている。
それもまたわかる気がした。子供たちに囲まれていて、可愛いと思う
反面、私には子供はやってこないと寂しくなる。同じ女ですものね、
私もじつはそんなようなことを考えたりするんです。

「ママなら聞いてくれるかなって・・自虐の中にしか、ほんとの私は
いないのよ。わからないならいいのよ、わかってくれなんて言わない
から。淫乱、変態、あと何だろ・・マゾ? 汚れた欲望が湧き上がっ
て抑えられない。自己嫌悪に陥って、それさえも自虐癖を満たす歓び
に変わってきている」

 救いがたい孤独・・私そのままの愛への渇望・・私そのままの自虐
への歓喜。似たような人がいた! 嬉しかったのは私のほうです。

「ブログやってるんだ」
「え?」
「見てほしい・・どれだけ私が牝なのかを知ってほしいの」

 生唾が湧いてきます。牝という言葉に、この一年あったことのすべ
てが蘇ってアソコを疼かせ、それは泣きたくなるほどで・・。
 その日の私は、お部屋に戻っていつものように日課の責め。股縄パ
ンティはベトベトになっていて、太い勃起が苦もなく貫く。
「あぁぁ・・狂いそう・・」
 乳首にもいつもの責めを与えてやって、全身わなわな震えながらパ
ソコンに向かいます。

『私はSよ、私はMよ』

 タイトルを検索するとホワイトベースの綺麗なブログが現れた。
 1ページに記事がひとつ。ふとサイドバーのアーカイブを見てみる
と開設は三年前だわ。最初の頃は書いていて、中飛びするようになり、
半年ほど前から集中して書かれてある。
 とにかくトップページの記事を読む。テキストだけで画像はない。

 今日の玲子
 ステキなお店を見つけたの。カフェです。
 見つけたのはずっと前なんだけど今日はじめてママと話した。
 ママといっても私よりちょっと上で不思議な人だわ。
 だって、私の自虐を黙って聞いてくれたもん。

 胸が苦しい。真下から体に突き立つディルド、それに乳首の責めが
心地いい酔いを連れてきた。

 ここで私を公開してきた。だけどリアルでは誰も知らない。
 今日はじめて私は私を告白できたわ。自虐マゾ。
 私の中にいる王様の声を聞いて、奴隷の私はもがくのみ。
 嬉しいよママ。ときどき話していいですか?

 ブログの存在を私に告げて書いている。私へのメッセージ。
 だけどブログにはコメントするボタンがありません。こういうこと
を女が書くと興味本位に書き込んでくるチャラ男は多いでしょう。
 本意をわからず言われたくないと考えるのはあたりまえ。
 メールフォームもついていない。一方通行だったのね。

 そして次のページへ進んだとき、私は慄然としましたし、そしたら
そのとたん、私のご主人様がおっしゃいました。
『尻を浮かせ、尻を沈めろ、さあイケ!』
 ああそんな・・はじめてのご褒美です。

 玲子・・私と同じように丸い椅子にディルドを勃てて、お尻を浮き
沈みさせて・・羨むほどの声を上げて責められている。
 動画がアップされていたんです。
 モニタ全面に真っ白な腰から下を映していて、お尻がキューっとす
ぼまって、肉がゆるんで・・クチュクチュいやらしい音までが・・。

 ああ私がここにもいた!

「おおう、ご主人様ぁ! あっあっ! おおぉーっ!」

 あられもない声を上げて、めくるめく快楽の底へと、私はきりもみと
なって落ちていく・・意識が遠のく・・。 

2016年12月13日

自虐~ふたつの心を持つ女(五話)


五話


 思ったことの半分も言えない。弱くて臆病。そんな女はどこにでも
いるものです。ですけど私はそれをネガに考えたことがない。黙って
いることが言葉になる。そこのところをわかってほしいと願うだけ。
 そしてそんな私にとって、一応のキャリアも積んで安定した職場を
去ってカフェをやる。そう決めてそれが言えたことだけでも崖を飛ん
だようなものだったのです。
 
 自虐なんてSMチックなオナニーじゃない。そう言われることで
しょうが、それも違う。
 私の中に棲み着いたご主人様の好みの奴隷となれるよう、永遠の家
畜として飼われていく。もし私が他の誰かとSMをしたとして、それ
だって内なるご主人様に命じられてのことですからね。
 エスカレートしていく調教がいつか破滅をもたらしたとしても私の
中のご主人様にそむかなったことを誇りとして生きていける。

 恥辱としか言えない汚らしい排泄をバケツの底にじっと見つめ、刺激
するだけ刺激されてアクメの許されない苦悶にのたうち、翌朝にはまた
縄パンティを食い込ませてお店に出る。
 助けて。悲鳴を搾り出すように哀願しますが、他人ではないご主人様
は決して許してくださらない。大切なのはそこなのです。リアルで出会
う男性ならば他人であり、一途に尽くす私にいつかきっと夢を与えて
くれるでしょう。だけどご主人様は私自身でもありますからね、どれほ
ど泣いても、もっともっとと高みを要求され続ける。

 男性がやさしくなって別れのときが近づいてくるなんて図式が嫌です。
 別れは永遠にあり得ない。だからやさしくしてくれない。その中にし
か安住が見いだせない。体温のある強いペニスに満たされる人並みの
女の生き方が怖いんです。

 そして翌朝。いつものようにシャワーに立った私にご主人様は陰毛を
なくせと命じられる。濃く茂る女の飾りを失って、それこそケダモノの
性を剥き出しにされた淫裂を鏡に映し、その日は真っ赤な縄で性器を
締め上げ、ガードルもストッキングも許されず、ソフトフレアのロング
スカートを穿いて出た。まともな下着はハーフカップの赤いブラだけ。

『いずれは透けるドレスに替えなさい』

 そんな・・お願いですからそれだけは・・お店にいる間中、蔑まれる
視線を感じて・・好奇の視線に晒されて・・そんなことになったら愛液
は縄の給水では飽き足らず、腿に流れ、スカートを素通しにしてしまう
でしょう。
 ロングスカートだったとしても、その日一日、体に震えがくるほど
感じていました。ふらふらでお部屋に帰り着き、すぐさま日課の調教が
待っている。

 丸椅子に私を求めて勃起したままのゴムの魔物。がに股になって貫い
て、その瞬間ガタガタ震えた私は、淫らな震えを抑えようと、乳首を責
める洗濯バサミを挟み付け、モニタの左右のフックから乳首を吊る輪ゴ
ムの数を倍に増やした。
「ああ痛い、ご主人様、ちぎれます」
『ふっふっふ、よくてよくてならないくせに』
「はい・・ああイキたい、ご主人様ぁ・・」

 可哀想なほど乳首はつぶれ、ゴムの強さに乳房が引き延ばされて円錐
に尖って見える。もしもいまお尻を鞭打ってくだされば甘い悲鳴を上げ
るものを・・。

2016年12月11日

自虐~ふたつの心を持つ女(四話)


四話


 狂っていると自分でも感じます。けれどそれをしないと一日縄で刺激
された濡れる性器が満足しない。
 お店をやっていると当然のこととしてその日の売り上げを帳簿につけ
るわけですが、いまごろ帳簿でもなくパソコンに向かって打ち込んで
いく。飲食店用の経理ソフトを使っていて、売り上げと仕入れを打ち
込むと利益を勝手に算出してくれるんです。

 お部屋に戻った私にご主人様は脱げとおっしゃる。マンションの玄関
先で素っ裸。そのときようやく股縄が許されますが、二重になった麻縄
が搾れるほどべっちょりしている。
 いやらしすぎる濃い陰毛。縄につぶされた毛を手ぐしで梳いてやって
ふんわりさせて、さっそくデスクにつくのですが、そのときちょっと
お酒を用意。ちびりと含み、グラスを置いて、それから木の丸椅子を
見つめます。

 座面の丸い木の椅子に赤いゴムのペニスが上を向いて勃っている。
蒸しタオルで拭くぐらいで、その椅子は常に私を欲しがって勃起させて
いるんです。縄を脱いでも私はヌラヌラ。ローションなんていりません。
がに股にお尻を開き、丸い先端を閉じた性器にあてがって、腰を回して
ラビアを開き、ヌムリヌムリと突き刺していく。
「はぁ! あーっ!」
 おなかの力を抜いて根元まで突き立てて椅子に座る。でもそれだけ。
腰を浮き沈みさせる素敵な性戯はやってきません。アクメが禁じられて
いるからです。
 背筋に寒気のような性感がざわめいて、腰が痺れるような快楽がある
にもかかわらず、それ以上は許されない。苦しさをごまかすためにお酒
をまたちょっと口にする。

 Cサイズの乳房にまで鳥肌が立っていて、乳首なんて乳輪をすぼめて
カチカチに尖っている。ご主人様は、そんないやらしい淫婦の乳首を
許されません。
 デスクの天板はツルツルの白い化粧板で、デスクトップパソコンの
モニタの左右の下あたりに吸盤がつけてあり、その左右の吸盤には小さ
なフックがついていて、輪ゴムをつないだ吊りゴムがつけてある。
 ブリキでできた洗濯バサミ。カチカチにとんがる乳首をつぶしていき
ます。
「痛ぃ・・ぁぁ痛い・・」
 可哀想な左右の乳首。キリキリとバネが軋んで乳首がぺしゃんこに
つぶれていく。モニタの下の左右にある吊りゴムを伸ばして乳首の洗濯
バサミに引っかけると、乳首が伸ばされ、乳房全体が三角錐に吊られま
す。

 痛みにお尻を締めると突き立ったゴムの男性が恐ろしい感覚を呼び起
こす。もしもちょっとでも腰を動かせばイッてしまう。震える吐息に
くらくらしながら、お店の伝票を一枚ずつひろげては打ち込んでいく。
 お店が暇だった日ならともかく今日はちょっと忙しかった。その分、
動き回ってアソコは刺激されていましたし、責めが苦しくてたまらない。
 いまにもイキそう!

 妄想します。こんな私は見られている。粗野なケダモノたちでなく、
知的な男性に囲まれて喘ぎながら事務をする。嘲笑されて、その屈辱に
濡らしながら、私は見つめられているのです。
 私だって女よ。リアルなご主人様に鞭打たれてよがる奴隷を思い描く。
 でも、そこへいけるまでのプロセスが嫌。この人はどんな人なんだろ
う? 怖すぎない? 悪い人じゃないかしら? 一生おそばにおいて
くれるお方かな? それは結局男女の探り合いでしかないもので。

 伝票整理が終わるまでは許されない快楽と苦痛がないまぜになった
嬉しいひととき。仕事が済んで乳首の責めがようやく許され、ディルド
を抜いて解放されるときがきて、それでも私にはつきまとう主がいる。
 たとえばトイレ。お部屋の中に蓋のあるプラのバケツが置いてあり、
日々そこでトイレ。一日分をまとめて処理してバケツを洗う。
 臭い・・汚い・・ああ私は獣なんだと思い知る。
 最後にやっとお風呂が許され、汗も愛液も、アナルの臭気もそこで
消える。そのころにはぐったりしていて眠るのですが、夢の中までご
主人様は追いかけてくるんです。

 お店をやろうと思ったことも、あるいは、もしかして・・という切望
の末なのか。信じていける男性に出会えないか。そんな想いがあったの
かも知れませんが、一年やって、そんなお方は皆無です。

自虐~ふたつの心を持つ女(三話)


三話


 私自身への虐待をマゾヒズムだとは思っていない。究極の自己愛
なんです。そうとしか言えません。
 私の中で煮えたぎる人一倍の愛への激情が恐ろしい。それが相手に
向いたとき、私の存在は災いそのものとなるでしょうし、内向きに
なったとしたら徹底した自己否定で私という女が許せなくなる。

 マゾヒズムでいいのなら人並みのM女となってリアルな性へと
溺れていけるのでしょうが、私の願望はその程度のものではない。
 快楽など与えられない可哀想な女。どれほど叫んでも応じてくれる
人のいない絶望的な孤独。そのぐらいの悲劇に身を置いて、他人には
一切危害を加えなく、私独り、ひっそり生きて死んでいく・・。

 妄想には限りはなく、リアルなご主人様との接点には限度がある。
もしもお相手が妻子持ちなら、独占される女でいたくて、いずれきっと
奪ってやろうと思うでしょうし、それはつまり男女の行き先そのもの。
 限りない妄想の中で、限りなく残酷な幻のご主人様に、限りなく
嗜虐的な私自身が、限りなく恐ろしい責めを受けていく。

 男性に本気になれば、その人の中へと私はしなだれ崩れていくで
しょう。それでもし捨てられたりしたら・・いいえ、死によって
分かたれる別離さえ嫌。
 私の中の主は私とともに朽ちていき、墓石の下でも永遠に主と奴隷。
 恋愛に臆病すぎる私を、私はあの頃からずっと嫌悪してきたんです。
パンティにはじめて血がついて、毛も生えて胸もふくらみ、どんどん
女になっていく。恐ろしくてたまらなかった。自分を可愛がる以上に
お相手に突っ込んでいき、それでもしも破綻したら・・私は私という
女を生かしておくことができそうにもありません。

 可哀想なほど濡らしていながら・・愛してほしくて狂いそうになり
ながら、やさしい抱擁など一切ない、めくるめく快楽など一切ない、
女の幸せなど一切ない・・そんな世界でのたうちもがき生きていく。
 現実にはあり得ない奴隷の世界ですから現実の主では満たされない。

 妄想が妄想を生んで、感情を整理できないまま、婚期という女の
定めにさらされた。これほどの淫欲をなかったことにして、素知らぬ
顔でウエディングドレスなんて着られない。
 もやもやしたものはいつかきっと抑えきれずに爆発する。そう思う
と自己嫌悪に陥って、結局オナニーするしかない・・自虐への想いが
周期的に私を襲い、進学で独り暮らしをはじめたころ、とうとうそれ
を実行してしまったの。

 あのころ私は十八・・いえ十九だったかな。

 一人旅で混浴のある温泉に出かけ、若い男性ばかりがたくさんいた
露天風呂へ独りで入った。恥ずかしくて、恐ろしくて、なのに
見られているというだけでイキそうになっていた。
 私の中に生まれた妄想のご主人様は、これまで出会ってきた男たちの
本音だけを寄せ集めたようなお方なのです。
 私の中の主の声はずっと前から聞こえていた気がします。
 耳を塞いで逃げてきたし、逃れようと人並みの恋もした。だけど
そんなものはウソっぱち。結婚なんてウソっぱち。三十三になった
いま、私はようやくご主人様と向き合えるようになっていた。

 お店で一日縄パンティに苦しんで、ふらふらになってお部屋に戻った
とき、私を待っているのは日課としてる私への拷問なのです・・。

2016年12月09日

自虐~ふたつの心を持つ女


二話


 美人というほどじゃない。でも男の標的になるカラダをしている。
 百六十六センチの肢体はのびやかで、三十三歳でもCカップの
 乳房は垂れない。陰毛がいやらしいほど濃い。ウエストがくびれ、
 そこから扇情的な白いお尻につながっている、エッチなカラダ。

 男に抱かれたのは高校のころでした。大学それから会社に入って、
 その間、何人かの男たちが勃つものを私に入れて果てている。
 だけど何かが違うと、ずっとそう思ってきた。私だって女です。
 恋もしたいし、抱いてくれれば可愛い声を発して達していける。
 二度プロポーズされたっけ。心が動かないといえば嘘になる。
 女体が精液を選んでいることは明らかだった。求めていると
 いうよりも選んでいる。狡猾なまでの駆け引きもしてきたし。

 そうやって人並みの女をやってて、それでも私は踏み切れない。
 二度目の求婚は三十歳になるときでした。ここでケリをつけないと
 そろそろもう次が危うい。わかっていてもどうしても踏み出せない。
 最後の彼と別れてから、セフレみたいな付き合いもあったけど、
 愛しすぎないよう、最初からブレーキに片足がのっていた。

 寂しくなるとオナニーしたよ。鏡にまともにアソコを映し、
 せつないまでに濡れる性器にいとおしさを感じたわ。
 そんなときです、はじめて主様の声を聞いた。私の中に男性が
 棲んでいて、その方は容赦せずに私に言うのよ。
『おまえらしくすることだ。おまえを隠すな』
 おまえを隠すな・・そうなれたらどれほどいいか。そのとき
 私は私の奥底で不満をためる淫婦の私を解き放ってしまったの。

 結婚なんて、もういい。私の穴から子が這い出すことはない。
 諦めではなく、きっとそうだろうと思ったし、自分を偽って
 生きることにも疲れていた。どうしようもない私に罰を与えて
 浄化していく。いいえ、淫らを隠さず生きていたい。
 カフェをやろうと決めたんだ。性別ではなく人の姿を見ていたい。

 露出もちょっとは考えましたが、私がまずしたことは、普通の
 パンティを残らず捨てて、麻縄の下着に替えたこと。二重にした
 硬い縄をウエストに巻き、そこからデルタを割って縄を降ろし、
 淫らな谷に食い込ませて、お尻を左右に分断して腰で縛る。
 苦しくなっても簡単に脱げないよう、縄パンティの上から
 きついガードルを穿き込んで、ふわりとしたフレアスカート。
 ミニではないから、そこは気にしなくていいのですが、そんな
 下着でお店に立って、たまらない苦痛と、たまらない濡れを
 感じて震えた。縄がくっちょり搾れるほど淫水を吸っている。

 どんなに感じたってオナニー禁止。お店が終わってシャッターを
 閉ざしてしまうとスカートだってシャツだって脱いでしまう。
 ついいましがた友人たちが座っていたテーブルの片付けを、
 縄パンティだけの全裸でします。一日穿いてた縄がアソコを
 刺激し続けて、乳房には鳥肌が立っていて乳首なんてカチカチで。

 もしもどこかにやさしくされたら、その瞬間イッてしまいそうに
 なっている。イキたい・・めちゃめちゃに狂いたい。なのに・・。

『もっと焦らせ。もがけ!』
「はい、ご主人様・・ああ辛い・・イキたい」

 誰もいなくなったお店の中で、私はへたり込んで泣いている・・。

2016年12月08日

自虐~ふたつの心を持つ女


一話


 その日の私は揺れていた。私は夕子、三十三歳。
 世間で言う、結婚しない女です。
 結婚をしないというより結婚を選ばなかった女と言えばいいのかしら。
 小さなカフェをはじめて一年になる。それまではOLでしたが、
 いつの日からか私に棲みついたご主人様の声に衝き動かされて、
 自由な性世界に身をおきたくなっていた。

 自虐こそ究極の愛だと思う。そのときそのときで衝き動かされる
 私の感情にしたがって、私は私に君臨する。
 女の私に棲みついたのは男です。弱い私では決して逆らえない
 孤高の男性。男のやさしさを恐怖で表現するような、身震いするほど
 素敵なお方。よく言う女の本音とは次元の違う私の人格のもう一方。

 SMではありません。そんなもの、所詮は男と女で、終わって
 しまえば苦痛の得られない孤独に泣かなければならなくなる。
 カラダの老いた女の行き先に待つものは、誰一人振り向いては
 くれない虚空のような命の残滓。絶望的な孤独。やがて消えゆく私。

 その日の私は揺れていた。私に多重して存在する主の声を聞いた日。

「しないことを減らせ」

 しないことを減らせ・・女にはしないことがたくさんあります。
 したくてしたくてウズウズしながら、意味のない力に引き戻されて
 しないこと。いいえ、できないこと。

 こんなところにいてもダメ。オフィスを去ろうと思った瞬間・・。