2017年01月04日

一幕 両替商 若妻お郁(その四)


その四


 ほんでまた十日後よ。
 まだ十七で男を知らないお豆ちゃんが、天下の大江戸変態の地
位向上のためと称し、よろず性感按摩の女揉み師の先駆けになり
てえと、ややこしいことを言い出したその日、お郁さんが訪ねて
来やがった。

「先だってのお礼かたがた、お約束の性感按摩の初回療養におう
かがいたしましたので、アハンして。ンふ」
 しなしなと色っぽい眸だったねー。
 そんでまあ地下よ。ぱっしょんれっどの腰巻き脱いで、白く熟
れた女の体を南蛮渡りの、ダブルなべっどーに投げ出して、しか
し妙に物静かな空気でよ。悲哀のこもった色っぽい顔してら。
 何かあったと思ったね。噛み締めるものがあるって面色だった
ぜ。

「ウチの人には外に女がいるのです。それもそこらじゅうに。茶
羅銭(ちゃらせん)一味に献上するはずの金からちょろまかした
金子で、スケこましていたものと思われ・・」
 そんとき俺はお郁さんの上にのっかって柔尻を揉みながら、お
しとやかな良家の婦人が何たる言いようと笑っていたさ。
「ったく、ふてえ野郎だ」
「ええそうなのです、ああ見えても、太くて硬くて気持ちヨシ」

 ぉえ?

「力もないくせに身代を継がされて勇み足が過ぎたのでしょう。
心から悔いているようで泣いて謝ってくれるのですが、スケベ癖
だけはどうにもならない。それでも私に対しては悪いと思うのか、
厠(かわや)の後の臭っせー尻まで懸命に舐めてくれ・・おかげ
で紙が大助かり。ふふふ、そんなあの人が可愛くて」

 なるほどねー、ご亭主に惚れてるのよ。女心だなぁと思って聞
いてはいたが、寂しそうな笑顔だったぜ。カミさんとしての自信
をなくしてしまってらーな。
「そうかいそうかい、まあまあ、いい感じでやってくんだな、そ
れっきゃあるめえ」
「まったくでござりまする。これ以上女房の私が暴れたらお義母
さまが参ってしまう。義母はそれはそれはいい人ですが、そろそ
ろもうボロクソ婆ぁでございまして」

 言葉がよ、お上品とお下劣を行ったり来たり。すべて作家がヘ
ボだから。

 俺は言ったぜ。
「さて、そろそろ性戯たいむということなんだが、じつは、かく
かくまるまるで、お豆坊がよ」
「あらまー、お豆ちゃんが性戯の味方に?」
 そばにいて「ンふ」と可愛く笑う、みにすか小袖。
 素っ裸のお郁さんを南蛮渡りの、どくたー椅子に座らせて、両
足それぞれチョウチョウ結び。

「なにやら嫌ぁぁな予感がいたしまするが、これいかに?」

 すると、お豆ちゃんが椅子の横の丸い取っ手をくーるくると回
すわけだ。両足が歯車比の力学で左右に開いていくんだな。
「きゃぁそんなぁーっ! 嫌ぁぁ! 嫌ぁぁん!」
 とか言って顔を覆いながらも、自ら開いてぱっくりお股。よく
濡れた黒毛肉貝、観音様がお姿を露わにされて、合掌しちゃうぜ
まったくよ。

 ところがだ、ふんっ。みにすか小袖がいきなり南蛮渡りの、極
太ばいぶぅを持ち出しやがった。やっぱり小娘、なんもわかっち
ゃいねえようーだぜ。
「そうじゃねえ、こうするのよ」
 濡れ貝に鼻先を近づけてクンクンクン。あー、匂う。
「嫌ぁん、そんなところを嗅ではダメダメ、私は臭い女です」
「とんでもねえや、甘ぁぁい女の匂いだぜ」

 それで俺はホッペをスリスリ濡れる貝にほおずりし、薄皮にく
るまれたおサネちゃん(栗とリス)に、ちゅっちゅのちゅー!
「ああン、そんな、おやさしい。気持ちいいです、逝ってまうぅ」
「いい女だぜ、お郁よ」
「あらぁ呼び捨て嬉しやランランラン。ほんとに? ほんとに私
はいい女?」
「こうして舐めてやりたくなるほどいい女さ、胸を張って生きて
くがいいぜ。溜まったときにゃここへ来い」

 閉じ合わさった花びらを舌先で掻き分けて、肉の穴をほじるよ
うに舐めてやる。ンふンふンふと甘ぁい吐息が漏れ出して、わな
わな震えて達してく、若き人妻。涙がつーっと伝っていたね。

「お豆坊、よろず按摩ってぇのはな、心を揉んでほぐしてやるこ
と。嬉しくて濡らし、喜びに舞い上がる。それでこそ女は幸せな
のさ」
「いよっ、逝かせ屋アハン!」
「おおぅ!」

 SE(効果音) 鼓の音 ポンポンポンポン、ポォーン!

 柳生新陰流、免許紛失。性戯の味方、伊香瀬安範。
 逝かせ屋アハンの第一幕、これにて終了。
 いずれ次回、さらなる変態、徐々にまじめに書いてイク?

一幕 両替商 若妻お郁(その三)


その三


 ワルの親玉、勘定奉行、茶羅銭貯男(ちゃらせんためお)とそ
の手下どもは懲らしめた。しかしなすべきことはまだあった。
 可哀想なお郁のバカ亭主を絞め上げてやらねばならぬ。千両に
つき百両のニセ金を混ぜたってぇことは、その分の本物小判が消
えたってぇことになる。行く先はもちろん茶羅銭だろうが全部が
全部じゃあるめいよ。お郁の亭主がちょろまかした分がきっとあ
らぁな。悪事で稼いだものは吐き出させて灸をすえる。
 でなきゃぁ身をもって亭主に尽くしたお郁が浮かばれねえや。

 だがしかし、ここに一つの問題がある。あんとき大川の橋のた
もとへ、カラコロカラコロカラコロカラコロカラコロカラコロと
女下駄を鳴らしてよ・・ええい、ちょっと待て。

 だあぁ、もうーっ! だらだら書くなっ、ヘボ作家!
 なんだと岡崎潤? ・・知らねえな。

 で何だっけ? あ、そうそう、あんときのお婆はきっとお郁の
姑に違いねえ。嫁の身投げを聞いてすっ飛んできやがった。そん
なお婆のいる家へ踏み込んで抜刀するのはいかがなものか。おど
ろ木ももの木、心臓マヒでぽっくりよ。
 そこでオイラは女房のお郁に知恵を授けた。亭主を長屋に連れ
て来い。俺んちの地下ってぇのは早ぇえ話が、えすえむるーむよ。
 お郁さんもお豆ちゃんも、それいいかもってメチャ興奮。お豆
ちゃんたら、もともとSっぽいおなごゆえ、腕が鳴るなり乗馬鞭。
 んで、のこのこやってきやがった。こんときはまだ、あの茶羅
銭が成敗されたなどとは思っちゃいねえ。虎の威を借るちんちく
りんのクセしやがって、態度のデカいことったらありゃしねえ。

「あー、もし。浅草の両替商、銀行屋(ぎんゆきや)にございま
すが、御用とか?」
「おう、入れや」
「はいはい、されどちと忙しい身ゆえ手短にお願いいたしやす」
 穴の開いた障子戸がガタピシなかなか動かねえ。入った亭主は
中を見渡し、ふふんと鼻で笑いやがった。そんとき中には、俺と、
みにすか小袖のお豆ちゃん。お豆ちゃんは素知らぬ顔をしていた
が、嘘のつけないお郁さんは、亭主の後ろでいまにも吹き出しそ
うだった。

「あのな、ちと地下を見てもらいてえのさ」
「地下でございますか? そのようなところがこのボロクソ長屋
に・・あ、いやいや、古いものを大切になされるお宅にござりま
しょうやら?」
「ちぇっ。いいから見てくれ。じつはな、ここはもともと忍び屋
敷だったんだがよ。地下を片付けてたら千両箱が出てきやがった」
「ええー! あーあーあー、そうでございますか、はーはーはー、
そういうことなら銀行屋は目がルンルン。おどろ木ももの木さん
しょの粉でウナギが美味い? うははは」
「何言ってやんでい、落語タレてんじゃねぇや」
 コロッと態度が変わりやがる。

 押入れ下のドンデン返しから、お豆ちゃんが先に降り、亭主に
お郁、最後に俺だ。俺は刀を手にしていた。
「おい銀行屋、てめえの悪だくみで女房が身投げしたんだぜ、わ
かってんだろうな! 茶羅銭一味はゆんべ俺が斬り捨てた。性戯
の味方、伊香瀬安範とは俺のことよ!」
「いよっ、逝かせ屋!」
「おおぅ!」
 あのなお豆ちゃん、安物歌舞伎じゃねえんだからよ・・とは思
ったが、次の一瞬、電光石火よ!

 柳生新陰流、免許再交付の俺の刃が、帯を断ち着物を断ち、褌
までを布切れにしちまって、亭主なんぞは丸裸。お豆ちゃんと女
房のお郁は着物姿よ、南蛮渡りの、しーえふえぬえむ?
 力づくで押さえられ、丸太の泣き柱を抱かされて縛られたのさ。
お豆ちゃんたら、ぶいさいんで決めのぽーず。
「よっ、クリちゃん!」
 パッコーンと、南蛮渡りの、すりっぱイッパツ、頭くらくら。
「その言い方やめいっ! あたしはお豆ちゃんです! 栗とリス
ではありませぬ!」

 あのな、ヘボ作家、なんだかなー・・作家やめたら?

「さあお郁さん、しこたま仕置だよ、心底懲りるまでねっ!」
 お豆ちゃんが南蛮渡りの、乗馬鞭をお郁さんに握らせた。そし
たらそのとたん、あれほどおしとやかだった女房殿が豹変したぜ。

「あんたのせいであたしゃ裸でマワされたのよ、くるくると。口
惜しくて悲しくて気持ちよくて、身投げしたのよ! 泣いちゃう
から。わかっとんのかワレぃコラぁ! しばき倒すぞ、アホンダ
ラー!」

 ぉえ?
 俺とお豆ちゃんが抱き合っちゃった。女は怖いわ、うん怖い。

「尻出せ、尻ぃ! いざ覚悟ぉーっ!」
 ビッシィィーッ!
「ギャィィーン!」
 手加減なしだぜ。マジ激怒。しかもだよ乗馬鞭じゃ飽きたらず、
南蛮渡りの、一本鞭に持ち替えやがった。
「もっと欲しいか! 嫌ならちょろまかした金よこしな!」
 ピッシィィーッ!
「キャィィィーン!」
「あっはっは、これは楽しか、おもしろか! あっはっは!」

 そんでまあ百打はこえたね。亭主ボロ布。
 しかし気持ちはよっくわかる。お郁の手から一本鞭を受け取っ
て、俺はお豆ちゃんにニヤリと笑った。
「尻に『お郁命』と焼き印でもしてやんな。そうすりゃ二度とし
ねえだろうぜ」
「わーん、ごめんよごめんよ、わーんわーんわーんわーんわーん
わーんわーんわーんわーん」

 ダラダラ泣かせるな! いっぺん斬るぞ、ヘボ作家。

 そんな言葉も脅しの一つ。そこまでやっちゃぁおしめえよ。
「お郁、そこに立って尻めくれ。尻の穴でも舐めさせてやるんだ
な」
 お郁さん、両手で壁ドン。着物をまくって可愛い尻を出しやが
る。亭主もまた可愛いもんで、泣きながら女房の尻に顔を突っ込
み舐めてやがった。お郁も亭主が可愛いのさ。尻の穴まで舐めて
くれる奴隷亭主を見下ろして、やさしい顔に戻っていたね。
 お豆ちゃんが、ちょんまげつかんでお郁さんの尻の奥へと頭を
押して遊んでやがる。女上位のなんとも穏やかな虐待だ。
「おい亭主、身に沁みたなら、これから朝に夕に舐めてやりな。
心底許されるまで、みすとれすおいくおくさまと呼ぶんだぜ」
 あー、舌噛みそ。
「みすとれ・・すお・・いくいく? はー?」
「いいんだいいんだ、南蛮渡りの方言を無理からひらがなにする
からわかりにくいのさ。ほんとにてめえはヘボ作家」 

 ンま、一件落着。二人仲良く帰って行ったぜ。うんうん。

一幕 両替商 若妻お郁(その二)


その二


 さて地下だ。お郁の尻をオイラが押すとお郁め観念したらしい。
番頭におまえはいいから先にお帰りと言うんだよ。この期に及ん
で潔いと思ったね。事情はわかった。しかしまだ言ってねえこと
があるはずだ。ご都合主義の依頼は受けねえ俺だぜ。

 押入れの下の板壁をドンと押したらドンデン返しよ。地下への
口が開くというわけ。階段を降りてしまえば蝋燭照明ゆらゆら揺
らぐ。可哀想にお郁のヤツは胸に手をやり、あたりを見回し、カ
タまってたぜ。
「ここは・・いかにしてこのような?」
「見た目こそボロ長屋だがな、かつては甲賀のくノ一、マン毛の
お貞(さだ)って、それは恐ろしい女の棲家だったんだ」
 そんとき階段から、いまにも見えそうな、みにすか小袖が降り
てきやがる。

「幻魔のお貞だよ! ゲ・ン・マ! どこぞの世界にマン毛を名
乗るくノ一なんぞいるもんかい! なんでもかんでもいやらしく
言うのはおよしってば! メシ作ってやんないぞっ!」
「うーーー。えらいすまぬこって」
 まあ、ぽんぽんぽんぽーんと言うわけさ。お豆ちゃんは、たか
が十七、小娘なんだが、さすが江戸っ子、キップがいいぜ。
 往復キップだ、ああ言や、こう言う。

 そんでまあ、オイラが怖い顔をつくり直してお郁を壁際まで追
い詰めて、お郁の背が壁にドンして、俺の左手がお郁を追いかけ、
壁ドンよ。
 胸に手を組み上目づかいで怯えていたが、まんざらでもないよ
うに「ンふ」と笑う。お豆ちゃんが俺の威厳を潰してまった。

「見な」と俺がいろいろさまざま指差してく。真ん中で天井支え
る太い丸太の柱から。
「泣き柱だよ。裸で抱かされ、尻の皮が剥けるまで鞭だからね」
 お豆ちゃんの解説付きよ。南蛮渡りの、ぱいぷ椅子に腰掛けて
足でも組みゃぁ、尻ぎりぎりまで白い太腿。手の中で南蛮渡りの
乗馬鞭をぴしゃぴしゃしてら。みすとれすお豆ちゃん。
 さて次に俺が指差す。すかさず、お豆ちゃん解説が。
「南蛮渡りの、でるどーってのが付いてる椅子でね。アソコにズ
ブリ! アハンだよっ!」
 さてさて次だ。
「南蛮渡りの、どくたー椅子だよ。両足それぞれ縛られて、お股
ぱっくりご開帳って寸法さっ」
 そんで最後に俺が壁一面を見渡した。

「バラ鞭に一本鞭、縄そのほか、泣かせるものならなんでもある
よっ。いえね、ついこないだ渡海屋ってぇワルがいてさ、抜け荷
しやがったもんを旦那がかっぱらって来たってわけなんだ」
 かっぱらった?
 おいっ、人聞きの悪いこと言うもんじゃねえぜ、業務上横領と
カッコよく言え・・とは思ったが、そこで俺が気合いを込めて壁
ドンふたたび。ドーンだぜ。安普請でよく響く。
「おめえさん、まだ話してねえことがあるはずだ。ご亭主の悪事
はわかった。けどそれでなんでおまえさんが身投げする? 合点
がいかねえ。合点がいかなかや合体できねえ、それが男と女って
ぇもんだろう。脱ぎな! 素っ裸ぜよ!」

 そんときお郁、震えていたね。悪い女じゃねえようだ。
 帯を解き、着物をはだけりゃ、ぱっしょんれっどの腰巻きだい。
 顔色なんぞ白くして、そいでまた綺麗なお乳をぷるぷる震わせ
素っ裸。乳首も勃って美しいぜよお郁さん。でるたーの三角黒毛
がたまらねえ。
「うむ、素直でいいぜ、そこへ寝な」
「これはなんと言うものでござりましょうやら? なにやらふか
ふかしておりますが?」
「南蛮渡りの、ダブルなべっどーと言うもんよ」
「べっどーでございますか?」
「南蛮人どもの布団だよ、さあ寝な!」
 背中をぽーんと突いてやる。
「あーれぇぇーっ」
 ヨヨとしなだれ崩れたうつぶせ裸身にオイラがのっかり、腰の
くびれにそっと手をやる。腰痛はすべての人の宿命でもあり、ま
ずはそこから。押せばアソコの泉湧くってね。

「ンはぁぁ、心地いいですぅ伊香瀬様ぁ…はぁぁぁ」
 甘ったるい、いい吐息。そんときじつは俺の息子がボッキンキ
ンで痛ぇえぐれぇよ。
「綺麗だぜ。なのになぜだ? なぜどうしてホワイだが、死のう
としやがった? もったいねえぜ、これだけの尻してやがって」
 パシンと尻っぺた叩いてやると、お肉プルプル…ああきゅーと。
「じつは…」
「うむ?」
 そんとき俺は尻をモミモミ。
「ンっふ・・じつを申しますと・・ンっふ・・勘定奉行の茶羅銭
様(ちゃらせんさま)の思惑でウチの人がニセ金を・・どうかも
うお許しくださいとお願いにあがりましたところ・・」
「うむ?」
「わたくしはもう汚されてしまいました」
「なんだと? 茶羅銭にか?」
「そのあと配下のお侍衆にも下げ渡されて・・後ろから前から、
上の口から、お尻の穴まで」
 俺は裸身をそっと登り、肩を揉み上げながら言ってやったぜ。
「汚れちゃいねえ。それどころか亭主のために懸命だった。おめ
えさんはいい女だ、そうとも心の綺麗な女だぜ」
「伊香瀬様・・ほんとに汚れてはいませんでしょうか?」

 なんたる健気。なんたるいじらしさ。
 肩から首筋、背から腰から尻まで揉んで、真っ白な太腿をぷる
ぷるしてやり、ふくらはぎをモーミモミ。
「綺麗だ。心が真っ白で、アソコの毛が真っ黒で、綺麗だぜ」
「はぃ。はぁぁぁ心地いいですぅ伊香瀬様ぁ・・」
「うんうん、いつでもおいで、こうして揉んでやるからよ」
「ぁぃ・・ンふ・・はぁぁ・・ぁ・・Z・・」
「おえ?」
「ZZZ・・ZZZZZZっ!」

「ちぇっ、寝ちゃったがね」
「うぷぷ」
 お豆ちゃんがこらえきれずに吹き出しやがって、俺の顔をじと
ーと見やがる。
「寝かせてどうすんだよー」と目の色で言うわけよ。
「そっとしといてやんな、疲れてるのさ可哀想に」
「旦那やさしいんだもん。旦那が好きさ」
「後でな。乳揉んで尻揉んで、舐めたおして、逝かせてアハンだ」
 すると、パッコーン!
 南蛮渡りの、すりっぱだ。そのすいーとすぽっとで、頭イッパ
ツぶん殴られたさ。

『ああそんな御無体な・・嫌ぁぁ・・どうぞもうお許しを』
「可哀想にうなされてやがるぜ」
「許せないね」
「あたぼうよ、今宵まとめて叩っ斬ってやる!」
『あぁん、もう嫌ぁぁん、ぁぁん、もっとシテ・・一本知ったら
二本も五本も一緒なこと・・ンふぅ』

 ぉえ?
 女の正体、見た気がしたぜ。


 その夜よ!
 性戯の味方、伊香瀬安範、白の着流し、紫頭巾で見参!

「コラてめえ! 勘定奉行、茶羅銭貯男!(ちゃらせんためお)」
「貴様、何奴! 曲者ぞーっ、者ども出会えーっ!」
「ぞろぞろとしゃらくせえ! 柳生新陰流、免許不携帯、伊香瀬
安範! 女を泣かせる極悪人は許しちゃおけねえ、覚悟せい!」

 おーい演出家、ここでこそ、びーじーえむ!
 ぉえ? 
 正月特番のすぺしゃるばーじょんにつき、二時間ドラマですぅ?

一幕 両替商 若妻お郁(その一)


その一

 カラコロカラコロカラコロカラコロカラコロカラコロカラコロ…。
 もういい。だらだら書くな、ヘボ作家。

 女の下駄音が迫ってきたんだ。
 夕刻前のことだった。大川の橋のたもとに人集りができていた。
身投げらしい。ずぶ濡れの若い女がヨヨと崩れていたのだが、助
けられて生きている。カラコロカラコロと女下駄がやってきて俺
を追い抜き、人集りに突っ込みながら言ったのよ。
 しかしまあ、生きてりゃいいやと素通りしようとしたんだが。
行きつけの小料理屋のちーまま熟女がお誕生日だったから、俺も
急いでいたっていうわけさ。

「イクーっ! ああイクぅーっ!」

「ぉえ? なんですと?」
 そのテの言葉にニャンコみてえに耳だけ向いたさ。
「あーよかった、よかったよー、お郁ちゃーん」
「ちぇっ…まぎらわしい、ドキンとしたがね」
 そんで横を通るときチラ見した。そしたらこれが三十前のいい
女。川に飛び込み、通りがかった同心ポリスに助けられたってこ
とだった。まさしく水もしたたるいい女。死ななくてよかったぜ。

 さてそんで、その翌日だ。
 深川あたりの路地裏長屋。隣りに越してきやがったお豆(さね)
ちゃんが昼餉をつくって持ってきやがる。
 色メク名前だ、お豆ちゃん。界隈きっての三味線屋の末娘なん
だがよ、親と喧嘩しちまって勘当されたらしくって。
 ところがどっこい気立てのいい娘でな。花も恥じらう十七で、
おメメぱっちりボンキュッボン。みにすか小袖が似合うのさ。
 どういうわけか俺とウマが合うようで、仲はたいへんよくでき
ました。
「おーおー、焼き飯かい、こりゃ美味そうだ」
 南蛮渡りのすぷーん持ったそんときだ。

 外に気配。どこぞの番頭らしき中年男がやってきて、破れた障
子の穴から覗いてけつかる。
「そこにいるのは誰でい?」
「はい! あのう、こちら逝かせ屋アハン様のお宅でしょうか?」
「うははは」と、お豆ちゃんがゲラゲラ笑った。
 戸が開いて入ってきやがる。
 ほんでお豆ちゃんが言うわけよ。
「そうだけどさ、この人、伊香瀬の旦那って言うんだよ。どこの
どいつが言ったのか、逝かせ屋になっちっまったけどね。伊香瀬
安範(やすのり)様ってんだ。安範を音読みしたらアハンでしょ」
 事細かに説明するこたぁねえだろうとは思ったが、お豆ちゃん
はしっかりしてるぜ。態度もデカいが尻もデカい。

 そしたらよ、その番頭の後ろから、いい女が入ってきやがる。
 ひと目でわかった。ああイクぅーっ。大川の身投げ女さ。
 名はお郁。イキそうな名前だもん、いっぺん聞いたら忘れねえ。
 黒髪もちゃんと結い上げ、着物もきっちり着こなして、見るか
らにうまそうだったぜ焼き飯よりも。
 浅草の両替商、銀行屋(ぎんゆきや)の若妻、お郁。二十九と
二か月あまり。乳まわり腰まわり尻まわりと、お豆ちゃんが計測
してよ、南蛮渡りの、かるてーに書き込んでいくんだわ。

「何だと、ニセ金を?」
「そうなのです、千両箱につき百両のニセ金を混ぜて流しており」
「10ぱーせんとかい」
「てんぱぁ? はい?」
 首を傾げて微笑むお郁だったのだが、それがまた可愛いの可愛
くないの。
「いいんだいいんだ南蛮渡りの方言よ。それよりおめえさん身投
げしたのかい? じつはあの場に居合わせちまってよ」
 可哀想に悲しそうな顔をしやがる。悲しそうでも、いい女はい
い女。だからよけいに可哀想でいい女。
「おめえさんみてえないい女が死んじゃいけねえな。しっかりし
ろや、いい子だいい子だ」
 引き寄せて、押し倒して、尻でも撫でて抱いてやったぜ。

 旦那の悪さを叱ってやってほしいと言う。身に沁みるまで思い
知らせてやりてえらしい。いいカミさんだ、見過ごせねえや。
「ほれよ、これ使いな」
「これは何と言うものでござりましょうやら?」
「南蛮渡りの一本鞭よ」
「鞭でございますか?」
「ほんの冗談。わかった引き受けようじゃねえか。ついては当屋
の地下室でしんねりしねえか」
「しんねりと申されますと?」
「壊れた心をほぐしてやらぁ。性戯の味方よ、逝かせ屋アハン」

 美人ハト豆、きょとんとしてら。

「それでお礼はいかほど差し上げれば?」
 ちっちっちっと俺は人差し指を横に振ったぜ。
「外の看板見てみなよ、常連客になってくれりゃぁ、それでいい」
 番頭が慌てて外へ飛び出して大きな声で言いやがったぜ。

「よろず性感按摩と書いてあり!」

 伊香瀬安範、変態侍。歳はあらふぉー、素浪人。
 だから言うのよ、性戯の味方だ、逝かせ屋アハン。
 いよいよ開演いたし申ぉぉーす!

大江戸変態事件帖(序章の下)


●廻船問屋 若妻千代(序章の下)

 品川あたりの船着場。
 月闇に小舟が来る。岸に着くと、風体のよくねえ野郎どもが
群がったのだが、そん中に結構いい女がいやがるぜ。

「渡海屋さん、抜け荷はもう勘弁してつかあさい」
「うるさいんだよ、誰のおかげで商売してると思ってるんだい」

 弱っちい男が一人。可哀想なお千代の亭主だと思われた。
 安物時代劇のワルの定番、渡海屋さん。エラそうな女は渡海
屋のカミさんらしい。お千代の亭主は下請けで、脅されて抜け
荷に手を染めたってぇことだった。
 性戯の味方、伊香瀬安範、見過ごせねえぜ。柳生新陰流、免
許更新講習中の腕が鳴る!

 ナーオ! フギャァ! サカリのついたニャンコがうるせえ!
「誰だ、そこにいるのは!」
 ほら、めっかっちゃった。このラブ猫め。

「ふっふっふ、悪事もたいがいにしな、この俺が知ったからに
ゃぁ見過ごせねえな」
「しゃらくさいねサンピン! 野郎ども、やっちまいな!」
 野郎どもは、ひぃ、ふぅ、みぃ…ざっと八名、エイトマン。
 馬鹿な奴らだ、この俺様に抜かせるとは。
「アチョォー!」
「ヒー!」
 てめえらショッカーか? あっという間の悪人退治、男ども
はバタバタ倒れた。

 そんとき健気なお千代さんが駆けつけらーな。
「おまいさん怪我はない? もうっ、だから危ない真似はよし
なって言ったじゃないか。ばかばかばかばかばかばかばか!」
 なんたる茶番。亭主に胸ドンしちゃって可愛いなー。
「おい亭主!」
「へい!」
「こんつぎ恋女房泣かせやがったら叩っ斬るぞ! おうちに帰
ってやさしくパコパコしてやんな、わかったかい!」
「あぁん伊香瀬の旦那ぁ、かっこいーい。きっとお礼にうかが
いますから、南蛮渡りの、でるどーで逝かせちょーだい、アハ
ンアハン」

※おいヘボ作家、この寸劇、書き直したほうがいいんでねーか。

 さて渡海屋の美人妻。どうしてくれよう、むっふっふ。
「見逃しておくれよ、命ばかりはお助けを」
「許せねえな、覚悟しな!」
 シュパパパッ! 電光石火のオイラの剣が帯を断ち、着物を
切り裂き、真っ赤な腰巻きをスパッと両断。いい女は素っ裸!
「ひぃぃ、どうかお助け、カラダをあげる、好きにして」
 素っ裸でまつわりついて泣いちゃったがね。

「抜け荷の中身は! こりゃ何でい!」
「南蛮渡りのバラ鞭に一本鞭、これがぎやまん浣腸、ばいぶぅ
とかもありますけどね、ンっふ」
「こっちは!」
「南蛮渡りの、穴開きぶらじゃー、その他もろもろ、えすえむ
ぐっず」
「コラてめえ! 不埒な良品ばかりじゃねえか! オイラが全
部もらっとく!」

 やさしいオイラにゃ女は斬れねえ。
「もうしねえな? 悪いことしたって思ってるよな?」
「あい。ぇぇーん、ごめんなさーい」
「うんうん、いい子いい子。しかしついでにお仕置きだ、向こ
う向いて四つん這い」
 南蛮渡りの、ばいぶぅで、くねくねビィィーン。

「アハンアハン、逝かせ屋アハーン!」
 性戯の味方だ、伊香瀬安範、悶える女はカワユイぜー。


追記)序章はあくまで冗談ですよ。逝かせ屋アハンの活躍に
   ご期待ください。近日開演予定です。

2017年01月03日

大江戸変態事件帖(序章の上)


●廻船問屋 若妻千代(序章の上)


 呼ばれてホイホイ向かったのは出会い茶屋よ。
 お豆ちゃんも、もちろん一緒で楽しいなっと。
 出会い茶屋っていうのはよ、いまふうならラブホかもだぜ。

 チリンチリン!

「ちょいと待てぃ変態侍。またしても二人仲良く、どこぞの女
を逝かせに行くか? 猥褻物生命体として捕縛するぞー」
「がっはっは、違いねえやな。されど久しい同心ポリスよ、そ
れはいったいなんなんでい? 妙に骨っぽい馬だよな?」
「馬じゃねーや。南蛮渡りのままちゃりよ。おめえごとき素浪
人には買えないシロモノ、ざまあみろ」
「おいコラてめえ、いっぺん斬るぞ」
「へん、こちとら南蛮渡りの、りぼるばーだぜ、勝負すっか」

※というわけで、この物語、都合が悪くなると何でも南蛮渡り
 にしちゃいますから、そのへんご了承願います。

 そんでまあ出会い茶屋よ。お千代さんて若い女房、かなりな
べっぴん、いい女。薄い着物が尻ぴっちりでウキウキしたぜ。
「お侍様が逝かせ屋アハン様で?」
「いかにも左様。出会い茶屋ゆえ時間制限アリってことで、さ
っそくはじめやしょうかしら。まずお脱ぎ。そんでこいつを穿
いとくれ」
「それは何と申すもの?」
 腰巻きよりも真っ赤なひらひらカワユイなー。
 すでにもうホッペがリンゴで羞恥メロメロ、アソコしっとり。
「南蛮渡りの、ぱんてぇーと申すもの」
「ぱ、ぱんてぇー?」
「左様でござるよ、アソコぴっちり気持ちよかたい」

 着物を脱いで腰巻きはだけてすっぽんぽん。オイラとお豆ち
ゃんにニタリ笑われ、恥ずかしそうに身悶えしてら。
 そんでまた真っ赤な、ぱんてぇーがよくお似合いで、オイラ
このときボッキッキーでふんどしテント。
「ではそこへお立ちになられてご用向きを。はじめますわよ、
お千代さん」とお豆ちゃんが事務的対応。
 そんでオイラが、すいっちプチ。
 すると、ブィィィーン。
「ああ! あぁぁー! 伊香瀬様、アハン、アッハーン」
「南蛮渡りの、ろーたーと申すものがクリちゃんにあたってお
り申す」
 お千代さん、お乳ぷらぷら腰をクネクネ踊ってらーな。

 そうなのサ、それでオイラは逝かせ屋アハンになってもた。

「じつは主が…アハンアハン…抜け荷を…アハンアハン…それ
で注意しましたところ拗ねてまい…もうダメ、ねえねえ、アハ
ンアッハーン」
「まだまだよ、お続けなされ」
 オイラ意地悪、ぶるぶるまっくす。
 ビィィィーン!
「嫌ぁぁぁーん…それで一月ほども夜のナニが…ああダメもう
ダメ逝ってきまーす!」
 お千代さん、崩れ落ちてもがき倒して逝ってもたがね。

 抜け荷をやらかし奉行所に目をつけられた。しかしそれは脅
されてやったこと。どうか主人を助けてやってちょーだいネ。
 とまあ、そんな話しだったわけだがね。
 そんでオイラはお千代さんを四つん這いにさせておき、すぺ
しゃるな南蛮渡りで愛を届ける。
「南蛮渡りの、でるどーと申すもの。イッパツ昇天間違いナシ」
「ああそんな! 太くて長くて硬そうなモノ! 早くちょうー
だい嬉しいなー!」

 ふっふっふ、どうでい?
 性戯の味方よ、伊香瀬安範。哀れな女を見捨てちゃおけねえ。

大江戸変態事件帖(序章の序章)


序章の序章

 ~江戸は深川、路地裏長屋。

 
「おはよーさん」
「あらまー、伊香瀬の旦那じゃござんせんか。今日も今日とて
すかんぴん? あっはっは!」
「うっさいわ、どうにか生きてら」


 てなことを言いながら尻でも揉んでやったりすりゃぁ、女は
たいがい大はしゃぎ。
 オイラの名前ぇは、伊香瀬安範(いかせ・やすのり)。
 長屋住まいの素浪人だが、自慢じゃねえけどお人よし。
 
 そんなオイラのお隣りさんに気のいい町娘がやってきた。
 エッチな名前ぇだ、お豆(さね)ちゃん。
 花も恥じらう十七で、深川きっての三味線屋の末娘。
 気立てはいいのにどういうわけかおっ父相手に喧嘩ばかり
で勘当された。

「おーおー、そうかいそうかい、親元離れてシングルらいふ?
そんじゃまぁ、オイラの仕事を手伝っちゃくれめえか」
 そんなこんなで意気投合。いまじゃ夕餉ぐれえは差し向かい
で喰う仲よ。


 ~さてと、あるとき。

 どこぞの番頭が訪ねてきやがった。お豆ちゃんがフロント係。
「あのう、もし。こちらが逝かせ屋アハン様のお住まいで?」

 おいこらてめえ、ぶった斬るぞ! あっはっはっ!

 そうよ、オイラが巷で噂の逝かせ屋アハン。伊香瀬は逝かせ、
安範を音読みしてみ、アハンじゃねえか。
 親にもらった名前ぇだけにどーにもならねえ変態暮らし。

「オイラに会いてぇってのは廻船問屋のお内儀かい?」

 今宵もまた逝かせてほしい女のもとへと駆けつける。
 性戯の味方さ変態侍、伊香瀬安範。寂しい女を救いに行くぜ。

 今回こりゃまたプロローグ。時代混乱、一見ハチャメチャ、
半パロ半マジ時代劇は次回からということで、予告編まで。